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第五章 王都でもこいつらは・・・
第103話 少し手強い感じがするよ
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『スイーツ団』の建物から出て来た見た目普通のおじさん。
でも、なんかヤバそうな眼光をしてるの。
アルトも『真打』なんて言ってるし、『スイーツ団』の幹部みたいだね。
「親分、申し訳ねぇ、下手打っちめいやした。
こいつら、シマ荒らしでして。」
地べたに這いつくばる下っ端の人がそのおじさんに声をかけると。
「『親分』では無くて、『理事長』と呼びなさいといつも言っているでしょう。
うちは、カタギの商人なのですから、そんな冒険者のような言葉遣いは慎みなさいと。」
穏やかな声で嗜めながら…、おっちゃん、下っ端に蹴りを入れたよ。
硬そうな革靴の爪先で、顔面におもっいっきり。
余りの、言行不一致に、おいら、呆気にとられちゃった。
あれで、カタギと言われてもね。
「失礼、私は『王都甘味流通管理シンジケート団』理事長のゴーヨクと申します。
これはいったいどうしたことでしょうか。
何か、手前どもの使用人が粗相でも致しましたか。
ご説明願えれば有り難いのですが。」
事情が分からないようなそぶりを見せるゴーヨク、そんな訳ないじゃない。
あんたの指図で、若頭達が露店にイチャモン付けに来たんでしょうが。
丁重な言葉遣いのゴーヨクだけど、おいら達を見る目は急所を射貫くようだよ。
「知らないと言うのなら、教えてあげるわ。
私達、昨日から自由市場で『砂糖』とか甘味料の露店を出しているの。
そしたら、昨日、今日と『スイーツ団』を名乗るならず者が私達に難癖をつけてきてね。
あろうことか子供相手に、剣を振り回してきたのよ。
昨日は撃退して広場に晒し者にしといたのだけど。
今日は二度目だし、釘を刺しとこうかと思ってね。
難癖を付けに来た五人を返しがてら、出向いて来たの。
そしたら、五人を返した途端に殴りかかって来たのよこいつら。
人に殴りかかって来るのだもの、殴り返されても文句はないわよね。」
アルトは、足元に転がした若頭を指差しながら、これまでの経緯を説明したんだ。
ゴーヨクは、そこで初めて足元のズタボロになった男が若頭だと気付いたみたい。
変わり果てた若頭の姿を目にして一瞬、苦々しい表情を見せたけどすぐに穏やかな表情を取り繕ったよ。
「それは、それは不幸な行き違いがあったようで申し訳ございません。
私共は、甘味料の適切な価格での流通を目的に設立された商会でして。
王都にある三つの冒険者ギルドから、甘味料に関する『のれん』を買い取ったのです。
今まで、甘味料は三つのギルドがシノギを削っていたのですが。
うちが、まとめて取り仕切ったものですから、うちの独占になったと勘違いしている者があるようですな。
何分、うちの使用人は冒険者ギルドから移って来た者が多ございまして。
甘味料を手放した関係で余剰人員が生じると聞き、うちで引き受けたのです。
冒険者気質が抜け切らず、シノギを荒らされたと思ったようです。
よく注意しておきますので、どうかこの場はお気を鎮めて頂けないでしょうか。」
さすがは、理事長を名乗るだけあって、いきなり喧嘩腰にはならないね。
丁重に詫びの言葉を口にして、転がっている連中の非を認めたよ。
ただ、あくまで使用人の独断暴走で済ませるつもりみたい。
表向きはカタギの商人を装っていて、そう簡単には化けの皮を剥がすつもりは無いようだね。
「そう、分かったわ。
じゃあ、使用人の躾はちゃんとしてちょうだい。
しばらく王都で甘味の露店を続けるけど、今後は私達の邪魔しないでね。
自由市場は、誰が、何を売っても自由なのだから。
『砂糖』も、『ハチミツ』も、『メイプルシロップ』も。
どれも、まだ手持ちが三千個以上あるから、頑張って売らないといけないの。」
アルトもここでことを構える気は無いようで。
聞こえよがしに、大量の甘味料を持っていることを告げたんだ。
ゴーヨクは、自由市場の露店なんて大した数を売らないだろと高を括っていたみたい。
アルトの言葉を耳にして、驚きの表情を見せたよ。
「失礼ですが、あなた方は王都の方ではないようですが。
どちらかの、大手さんの使用人ですかな。」
アルトが明かした手持ちの数の多さに、おいら達が誰かに雇われていると思ったみたい。
ゴーヨクは、おいら達三人でトレントを沢山狩ったとは思いもしないみたいだ。
「あら、イヤだ。
私達がスジ者に見えるような言い方は心外だわ。
別に、何処の冒険者ギルドの回し者でもないわよ。
用事があって田舎から出て来たんだけど。
王都に来る道すがら、トレントの林があったから狩って来たの。
旅費の足しにでもしようかと思ってね。
行き掛けの駄賃よ。」
アルトはケラケラと笑いながら言ったよ、トレントなんて難無く狩れると言わんばかりに。
ゴーヨクは、アルトの言葉の真偽を測るように見つめていたけど、やがて…。
「そうでございますか。
トレントを易々と狩れるなんて、羨ましい限りです。
では、良いご商売をなさってください。」
話しはもうお終いとばかり、そう告げたんだ。
********
その帰り道。
「本当の悪党というのは表だって騒ぎは起こさないモノよ。
裏でコソコソ、仕掛けてくるの。
今も、私達の後を手下がつけてきているわ。
大方、泊っている宿に夜討ちをかけて寝首を搔こうとでも思ってるのでしょう。
私達が、貴族の屋敷、しかも、騎士団長の屋敷に帰ると知ったらビックリするでしょうね。
ゴーヨクの悔しががる顔が目に浮かぶようだわ、迂闊に手が出せないものね。」
アルトは、私とタロウに後ろを振り向かないように指示して、そう言ったの。
すぐに尾行を付けるなんて、ゴーヨクも抜け目ないね。
「怖えよ、まんま極道モノのマンガなんかに出てくるフロント企業じゃねえか。
ゴーヨクって奴なんか、インテリヤ〇ザのイメージそのモンだし。
笑いならが近づいて来て、匕首でズブリなんてシャレになんねえぜ。」
タロウは、また意味不明な事を呟いていたよ。
「困ったわね。
もっと沸点の低いおバカがトップに立っていて。
その場で仕掛けてくれると助かったんだけど。
あんな、冷静な奴が相手だと、持久戦になるかも知れないわね。
私もそう長くは、森を空けてはおけないし。
どうしたものかしら。」
そんな呟きをもらしたアルト。
うん、おいらもそろそろ辺境の町に帰りたいよ。
もし、父ちゃんが戻ってきたら、おいらが留守にしてたら心配するだろうしね。
でも、なんかヤバそうな眼光をしてるの。
アルトも『真打』なんて言ってるし、『スイーツ団』の幹部みたいだね。
「親分、申し訳ねぇ、下手打っちめいやした。
こいつら、シマ荒らしでして。」
地べたに這いつくばる下っ端の人がそのおじさんに声をかけると。
「『親分』では無くて、『理事長』と呼びなさいといつも言っているでしょう。
うちは、カタギの商人なのですから、そんな冒険者のような言葉遣いは慎みなさいと。」
穏やかな声で嗜めながら…、おっちゃん、下っ端に蹴りを入れたよ。
硬そうな革靴の爪先で、顔面におもっいっきり。
余りの、言行不一致に、おいら、呆気にとられちゃった。
あれで、カタギと言われてもね。
「失礼、私は『王都甘味流通管理シンジケート団』理事長のゴーヨクと申します。
これはいったいどうしたことでしょうか。
何か、手前どもの使用人が粗相でも致しましたか。
ご説明願えれば有り難いのですが。」
事情が分からないようなそぶりを見せるゴーヨク、そんな訳ないじゃない。
あんたの指図で、若頭達が露店にイチャモン付けに来たんでしょうが。
丁重な言葉遣いのゴーヨクだけど、おいら達を見る目は急所を射貫くようだよ。
「知らないと言うのなら、教えてあげるわ。
私達、昨日から自由市場で『砂糖』とか甘味料の露店を出しているの。
そしたら、昨日、今日と『スイーツ団』を名乗るならず者が私達に難癖をつけてきてね。
あろうことか子供相手に、剣を振り回してきたのよ。
昨日は撃退して広場に晒し者にしといたのだけど。
今日は二度目だし、釘を刺しとこうかと思ってね。
難癖を付けに来た五人を返しがてら、出向いて来たの。
そしたら、五人を返した途端に殴りかかって来たのよこいつら。
人に殴りかかって来るのだもの、殴り返されても文句はないわよね。」
アルトは、足元に転がした若頭を指差しながら、これまでの経緯を説明したんだ。
ゴーヨクは、そこで初めて足元のズタボロになった男が若頭だと気付いたみたい。
変わり果てた若頭の姿を目にして一瞬、苦々しい表情を見せたけどすぐに穏やかな表情を取り繕ったよ。
「それは、それは不幸な行き違いがあったようで申し訳ございません。
私共は、甘味料の適切な価格での流通を目的に設立された商会でして。
王都にある三つの冒険者ギルドから、甘味料に関する『のれん』を買い取ったのです。
今まで、甘味料は三つのギルドがシノギを削っていたのですが。
うちが、まとめて取り仕切ったものですから、うちの独占になったと勘違いしている者があるようですな。
何分、うちの使用人は冒険者ギルドから移って来た者が多ございまして。
甘味料を手放した関係で余剰人員が生じると聞き、うちで引き受けたのです。
冒険者気質が抜け切らず、シノギを荒らされたと思ったようです。
よく注意しておきますので、どうかこの場はお気を鎮めて頂けないでしょうか。」
さすがは、理事長を名乗るだけあって、いきなり喧嘩腰にはならないね。
丁重に詫びの言葉を口にして、転がっている連中の非を認めたよ。
ただ、あくまで使用人の独断暴走で済ませるつもりみたい。
表向きはカタギの商人を装っていて、そう簡単には化けの皮を剥がすつもりは無いようだね。
「そう、分かったわ。
じゃあ、使用人の躾はちゃんとしてちょうだい。
しばらく王都で甘味の露店を続けるけど、今後は私達の邪魔しないでね。
自由市場は、誰が、何を売っても自由なのだから。
『砂糖』も、『ハチミツ』も、『メイプルシロップ』も。
どれも、まだ手持ちが三千個以上あるから、頑張って売らないといけないの。」
アルトもここでことを構える気は無いようで。
聞こえよがしに、大量の甘味料を持っていることを告げたんだ。
ゴーヨクは、自由市場の露店なんて大した数を売らないだろと高を括っていたみたい。
アルトの言葉を耳にして、驚きの表情を見せたよ。
「失礼ですが、あなた方は王都の方ではないようですが。
どちらかの、大手さんの使用人ですかな。」
アルトが明かした手持ちの数の多さに、おいら達が誰かに雇われていると思ったみたい。
ゴーヨクは、おいら達三人でトレントを沢山狩ったとは思いもしないみたいだ。
「あら、イヤだ。
私達がスジ者に見えるような言い方は心外だわ。
別に、何処の冒険者ギルドの回し者でもないわよ。
用事があって田舎から出て来たんだけど。
王都に来る道すがら、トレントの林があったから狩って来たの。
旅費の足しにでもしようかと思ってね。
行き掛けの駄賃よ。」
アルトはケラケラと笑いながら言ったよ、トレントなんて難無く狩れると言わんばかりに。
ゴーヨクは、アルトの言葉の真偽を測るように見つめていたけど、やがて…。
「そうでございますか。
トレントを易々と狩れるなんて、羨ましい限りです。
では、良いご商売をなさってください。」
話しはもうお終いとばかり、そう告げたんだ。
********
その帰り道。
「本当の悪党というのは表だって騒ぎは起こさないモノよ。
裏でコソコソ、仕掛けてくるの。
今も、私達の後を手下がつけてきているわ。
大方、泊っている宿に夜討ちをかけて寝首を搔こうとでも思ってるのでしょう。
私達が、貴族の屋敷、しかも、騎士団長の屋敷に帰ると知ったらビックリするでしょうね。
ゴーヨクの悔しががる顔が目に浮かぶようだわ、迂闊に手が出せないものね。」
アルトは、私とタロウに後ろを振り向かないように指示して、そう言ったの。
すぐに尾行を付けるなんて、ゴーヨクも抜け目ないね。
「怖えよ、まんま極道モノのマンガなんかに出てくるフロント企業じゃねえか。
ゴーヨクって奴なんか、インテリヤ〇ザのイメージそのモンだし。
笑いならが近づいて来て、匕首でズブリなんてシャレになんねえぜ。」
タロウは、また意味不明な事を呟いていたよ。
「困ったわね。
もっと沸点の低いおバカがトップに立っていて。
その場で仕掛けてくれると助かったんだけど。
あんな、冷静な奴が相手だと、持久戦になるかも知れないわね。
私もそう長くは、森を空けてはおけないし。
どうしたものかしら。」
そんな呟きをもらしたアルト。
うん、おいらもそろそろ辺境の町に帰りたいよ。
もし、父ちゃんが戻ってきたら、おいらが留守にしてたら心配するだろうしね。
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