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第四章 魔物暴走(スタンピード)顛末記
第79話 落とし前つけるのは誰?
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「お願いいたします。どうかお気を鎮めてください。
これ以上されますと、我が国が滅びてしまいます。」
そう言って、平謝りするのは王様の護衛と思しきモカさん。
放心している王様は、モカさんに無理やり土下座させられ、頭を下げさせられている。
「まあ、良いわ。
このくらいすれば、そいつも少しは身の程を弁えるでしょう。」
何とか嵐をやり過ごしたかと安心したのか、ホッとした表情で土下座の姿勢から上体を起こしたモカさん。
頭を押さえ付けられていた王様も、解放されて上体を起こしてた。
「それで、今日はどのようなご用件でこちらにお越しになられてのでしょうか?」
いまだに涙目の王様に代わってモカさんが、尋ねてきたんだ。
「今日はね、そいつに落とし前を付けさせるために来たのよ。
この国の連中がやらしかしてくれてね、私に酷い迷惑をかけたの。」
アルトは、王様を指差して凄んで見せたの。
「ひっ!」
アルトの怖さが身に染みたんだろね。凄まれた王様、悲鳴にもならない悲鳴を漏らしてた。
「お尋ねしますが、妖精様にご迷惑とはいったい我が国の者がどんな不始末をしましたか。
王に直接、『落とし前』などと申されると言うことは余程の事があったのかと存じますが。」
「ああ、その前に妖精様って言うのは止めてもらえる。
その呼び方は余り気分良くないわ。
私はアルトローゼン、この国の辺境にある妖精の森の長をしているの。
ちなみに、二百年前、あんた達が攻めてきたのが私の森で。
二万の軍勢を一人で相手したと言うのがこの私よ。」
アルトが自分の素性を明かし、再度王様を睨みつけると。
王様、怯えちゃって、地べたに座ったままで後退りしてたよ。
「あっ、これは失礼しました。
私は、モカ・シュアラ・ド・クレーム。
近衛騎士団長を拝命しております。
この通り、王の護衛役と言う名目でお世話係を押し付けられている者でございます。
それで、アルトローゼン様、我が国の者が仕出かした不始末についてお聞かせ願えますか。」
そんな王様は放置で、モカさんはアルトに先を促したんだ。
やっぱり、モカさんってダメダメな王様の尻拭い役を押し付けられているんだね。
「この国の騎士団が、『ハエの王』を討伐して辺境にスタンピードを引き起こしたのよ。
おかげで、穢らわしい『虫』どもが妖精の森にも押し寄せてきて撃退に手間をかけさせられたわ。
一々、私が説明するのも面倒だから、下っ端を捕らえて来たの。
細かいことは、こいつらに話させるわ。」
そういって、アルトは捕らえた番外騎士団の騎士十人を『積載庫』から放り出したんだ。
********
「臭いでやんす! 馬のションベンは勘弁して欲しいでやんす!」
二日振りに『積載庫』から解放された騎士十人、その中の一人が開口一番そう叫んだの。
クッころさんの愛馬と一緒に『獣舎』に放り込んであったんで、色々浴びてしまったみたいだね。
「うっ、臭いぞ! なんであるかこの小汚い連中は!
余の前に、そんななりで現れるとは無礼にもほどがあるぞ!」
今まで放心していた王様だけど、騎士から漂う臭いがよっぽど酷かったのか正気に戻ったみたい。
「あら、これは本当に汚いわね。これじゃ、話が進まないわ。
勿体ないけど、『泉』の水で洗っちゃおうかしら。」
そう呟いたアルトは、『積載庫』から大量の水を出して十人の頭上から浴びせかけてたよ。
ああ、アルトも『虫』が持っている『病原菌』対策として、妖精の泉の水を積載庫に貯めていたんだね。
やがて、降り注ぐ水が無くなると。
「これで良いわね、少しはキレイになったでしょう。
あんた達、私に誓ったことは覚えているでしょうね。
『ハエの王』の討伐に始まる今回の悪だくみを洗い浚い話しなさい。
嘘をついたり、隠し立てしたりしたら、どうなるか分かっているでしょうね。」
アルトが騎士に、悪事の一部始終を証言するように指示すると。
「分かっているでやんす。
騎士団長が企んだ悪事を一切合切話すでやんすから、トレントの餌だけは勘弁でやんす。」
そう言って、騎士の一人が、王様とモカさんに向き合って。
「えっ…。」
予想外の人物を目にして言葉に詰まったの。
この騎士、やっと自分の置かれた立場に気付いたみたい。
この場で、全部話せばおそらく死罪だもね。話すも地獄、話さないも地獄だという事を…。
「どうしたの? 早く話しなさいよ。」
「ええっと…、でもでやんすよ…。」
「話すの、話さないの? ここで一思いに殺っちゃても良いのよ。」
「話すでやんす、話すでやんすから、殺さないで欲しいでやんす。」
王様と騎士団長を前にして悪事の暴露を渋った騎士だったけど、アルトに脅されて渋々話し始めたよ。
どうやら、アルトの指示に従った方がまだ生き残れる可能性が高いと思ったみたい。
********
「なんと、私のバカ息子がそんな大それたことを…。
バカだ、バカだとは思っていたが、そこまでバカだったとは。
やはり、あのバカ息子を騎士に叙任すると聞いた時、この身を張ってでも止めるべきだった。」
悪だくみの一部始終を聞き終えたモカさんは、後悔を露わにしながら王様を睨みつけたの。
「余は悪くないぞ。
貴様が長男の叙任を辞退すると、他にも辞退しないといけなくなる貴族が出て来るだろうが。
貴様には優秀な次男がいるから、長男を斬り捨てても構わんかも知れんが。
世の中には一人しかいない息子が出来の悪い貴族だっておるのだ。
後継ぎが騎士の叙任もできないと対面が悪いと、他の貴族たちから陳情を受けたのだ。
貴様が自分の長男の叙任を拒んでも、叙任させろと言う貴族の方が多いのだから仕方ないであろう。」
王様も騎士の叙任に不正がまかり通っていること知っているんだ。
どうやら、モカさんの方は至極まともな人みたいだね。
長男がダメダメと見て、長男への騎士の叙任を辞退したみたい。
でも、近衛騎士団長であるモカさんが、自分の長男に騎士の資格なしと範を示すと困っちゃう人が沢山いるんだね。
それが先例になると、出来の悪い息子を騎士にゴリ押しできなくなっちゃうから。
で、王様は出来の悪い息子を持つ貴族の方へ流されたと…。
「その結果が、これですか…。
『魔王』に手を出すことも、我が国の禁忌の一つですよ。
しかも、これはきちんと王の勅を持って禁じられている事です。
それを、仮にも民を守るべき騎士が禁を破るなど赦されざることです。
私のバカ息子は当然として、番外騎士団全員、極刑に処すべきでしょうな。
全ての処分が終ったら、私も騎士を辞し毒をあおることにします。」
モカさんは、中々潔いことを言うけど…。
「バカ言うな!
貴様が詰め腹を切るのは勝手だが、番外騎士団全員を死罪なんてできる訳なかろうが。
あの騎士団には有力貴族の跡取り息子だっているのだぞ。
そんなことをしたら、反乱がおこるわ!」
王様はモカさんの示した対処方針に対して、烈火のごとく怒って、それを却下したんだ。
でも、王様、分かっているのかな…、アルトが最初になんて言ったか。
「うるさいわね!
あんた達、私を無視して、なに二人で話を進めてんのよ。
言っとくけど、私が落とし前を付けろと言ってんのはあんたの方よ、王様。
詰め腹を切るのは、そっちの騎士じゃなくて、あ・ん・た・なの。」
うん、そう言うと思ったよ。
それまで蚊帳の外に置かれていたアルトが王様を指差して憤慨している。
「ちょっと待て、何で余が落とし前をつけねばならんのだ。
悪いのは『番外騎士団』、特にこやつの長男であろう。
そやつに落とし前をつけさせれば良いであろうが。
そんな事のために、余は家宝の『エルダートレント』を台無しにされたと言うのか?
それは、とんだ、とばっちりであろうが。」
アルトの言葉に、逆に不満を漏らした王様。
「あんた、『任命責任』とか『監督責任』という言葉を知らないの?
騎士を任命したのは誰?
いまのあんたらの話を聞いてたわよ。
あんた、そっちの騎士の反対を押し切って騎士の任命をしてるみたいじゃない。
騎士団のしたことに最終的な『監督責任』を持つのは誰?
騎士団長ではなく、王であるあんたでしょう。
それにね、この際、そんなスジ論はどうでも良いのよ。
あんた、二百年前に私に誓った言葉忘れちゃったの?
これだから人間って物覚えが悪くて困るのよね。
二百年っていったら昨日みたいなもんじゃない。」
もしもし、アルトさん、普通の人間は二百年も生きていないから。
二百年前の誓いとか言われても、王様、困っちゃってるよ。
「二百年前の誓い? そんなもの余が知る訳ないであろう。」
案の定、王様がアルトに不満を言うと。
「陛下、王家の禁忌を記した書にはきちんと書き残されていますよ。
二百年前に助命してもらった王子の誓いが。
『今後、我が国が存続する限り、我が国の者が妖精の森に迷惑を掛けた時は、王が身命を賭して責任を取ることを誓います。』と誓約したと。
そこには、時の王の言葉で、妖精に対する誓いはほぼ永遠であるので子々孫々に至るまで心すべしと書かれていたはずです。
更に、国に属する者の不始末も覆い被さってくるので、努々監督を怠るべからずとも記してあります。
これも、陛下が幼少の頃に何度も聞かされているはずですが。」
これ以上アルトを怒らせてはならじと、モカさんが横から口を挟んだの。
モカさんに諭されて、王様、苦い顔をしていたよ。
この王様、妖精の話を与太話だと思っていたようだから。
きっと、それに続く誓約の事も聞き流していたんだね。
「なんだ、ちゃんと覚えている者もいるじゃない。
この王様が特別におバカさんなだけなのね。
分かったわ、こんなおバカさんが国の舵取りをすると皆が不幸になるだけね。
今回は、『番外騎士団』全員の命とこの王様の命で手打ちにしましょうか?」
アルトからの死刑判決に、さすがの王様も顔を真っ青にしてたよ。
アルトがホントにヤバい存在だとやっと気づいたみたいだね。…遅いよ。
「何とぞ、命だけはお助け下さい。
もう、アルトローゼン様には逆らいません、妖精の森にも一切手出ししませんので。
此度の件も、どのような御沙汰でも受け入れますので、どうか命だけはご勘弁を。」
土下座姿勢で、額を地面に擦り付けて除名嘆願する王を見て、アルトは満足そうに笑ってたよ。
これ以上されますと、我が国が滅びてしまいます。」
そう言って、平謝りするのは王様の護衛と思しきモカさん。
放心している王様は、モカさんに無理やり土下座させられ、頭を下げさせられている。
「まあ、良いわ。
このくらいすれば、そいつも少しは身の程を弁えるでしょう。」
何とか嵐をやり過ごしたかと安心したのか、ホッとした表情で土下座の姿勢から上体を起こしたモカさん。
頭を押さえ付けられていた王様も、解放されて上体を起こしてた。
「それで、今日はどのようなご用件でこちらにお越しになられてのでしょうか?」
いまだに涙目の王様に代わってモカさんが、尋ねてきたんだ。
「今日はね、そいつに落とし前を付けさせるために来たのよ。
この国の連中がやらしかしてくれてね、私に酷い迷惑をかけたの。」
アルトは、王様を指差して凄んで見せたの。
「ひっ!」
アルトの怖さが身に染みたんだろね。凄まれた王様、悲鳴にもならない悲鳴を漏らしてた。
「お尋ねしますが、妖精様にご迷惑とはいったい我が国の者がどんな不始末をしましたか。
王に直接、『落とし前』などと申されると言うことは余程の事があったのかと存じますが。」
「ああ、その前に妖精様って言うのは止めてもらえる。
その呼び方は余り気分良くないわ。
私はアルトローゼン、この国の辺境にある妖精の森の長をしているの。
ちなみに、二百年前、あんた達が攻めてきたのが私の森で。
二万の軍勢を一人で相手したと言うのがこの私よ。」
アルトが自分の素性を明かし、再度王様を睨みつけると。
王様、怯えちゃって、地べたに座ったままで後退りしてたよ。
「あっ、これは失礼しました。
私は、モカ・シュアラ・ド・クレーム。
近衛騎士団長を拝命しております。
この通り、王の護衛役と言う名目でお世話係を押し付けられている者でございます。
それで、アルトローゼン様、我が国の者が仕出かした不始末についてお聞かせ願えますか。」
そんな王様は放置で、モカさんはアルトに先を促したんだ。
やっぱり、モカさんってダメダメな王様の尻拭い役を押し付けられているんだね。
「この国の騎士団が、『ハエの王』を討伐して辺境にスタンピードを引き起こしたのよ。
おかげで、穢らわしい『虫』どもが妖精の森にも押し寄せてきて撃退に手間をかけさせられたわ。
一々、私が説明するのも面倒だから、下っ端を捕らえて来たの。
細かいことは、こいつらに話させるわ。」
そういって、アルトは捕らえた番外騎士団の騎士十人を『積載庫』から放り出したんだ。
********
「臭いでやんす! 馬のションベンは勘弁して欲しいでやんす!」
二日振りに『積載庫』から解放された騎士十人、その中の一人が開口一番そう叫んだの。
クッころさんの愛馬と一緒に『獣舎』に放り込んであったんで、色々浴びてしまったみたいだね。
「うっ、臭いぞ! なんであるかこの小汚い連中は!
余の前に、そんななりで現れるとは無礼にもほどがあるぞ!」
今まで放心していた王様だけど、騎士から漂う臭いがよっぽど酷かったのか正気に戻ったみたい。
「あら、これは本当に汚いわね。これじゃ、話が進まないわ。
勿体ないけど、『泉』の水で洗っちゃおうかしら。」
そう呟いたアルトは、『積載庫』から大量の水を出して十人の頭上から浴びせかけてたよ。
ああ、アルトも『虫』が持っている『病原菌』対策として、妖精の泉の水を積載庫に貯めていたんだね。
やがて、降り注ぐ水が無くなると。
「これで良いわね、少しはキレイになったでしょう。
あんた達、私に誓ったことは覚えているでしょうね。
『ハエの王』の討伐に始まる今回の悪だくみを洗い浚い話しなさい。
嘘をついたり、隠し立てしたりしたら、どうなるか分かっているでしょうね。」
アルトが騎士に、悪事の一部始終を証言するように指示すると。
「分かっているでやんす。
騎士団長が企んだ悪事を一切合切話すでやんすから、トレントの餌だけは勘弁でやんす。」
そう言って、騎士の一人が、王様とモカさんに向き合って。
「えっ…。」
予想外の人物を目にして言葉に詰まったの。
この騎士、やっと自分の置かれた立場に気付いたみたい。
この場で、全部話せばおそらく死罪だもね。話すも地獄、話さないも地獄だという事を…。
「どうしたの? 早く話しなさいよ。」
「ええっと…、でもでやんすよ…。」
「話すの、話さないの? ここで一思いに殺っちゃても良いのよ。」
「話すでやんす、話すでやんすから、殺さないで欲しいでやんす。」
王様と騎士団長を前にして悪事の暴露を渋った騎士だったけど、アルトに脅されて渋々話し始めたよ。
どうやら、アルトの指示に従った方がまだ生き残れる可能性が高いと思ったみたい。
********
「なんと、私のバカ息子がそんな大それたことを…。
バカだ、バカだとは思っていたが、そこまでバカだったとは。
やはり、あのバカ息子を騎士に叙任すると聞いた時、この身を張ってでも止めるべきだった。」
悪だくみの一部始終を聞き終えたモカさんは、後悔を露わにしながら王様を睨みつけたの。
「余は悪くないぞ。
貴様が長男の叙任を辞退すると、他にも辞退しないといけなくなる貴族が出て来るだろうが。
貴様には優秀な次男がいるから、長男を斬り捨てても構わんかも知れんが。
世の中には一人しかいない息子が出来の悪い貴族だっておるのだ。
後継ぎが騎士の叙任もできないと対面が悪いと、他の貴族たちから陳情を受けたのだ。
貴様が自分の長男の叙任を拒んでも、叙任させろと言う貴族の方が多いのだから仕方ないであろう。」
王様も騎士の叙任に不正がまかり通っていること知っているんだ。
どうやら、モカさんの方は至極まともな人みたいだね。
長男がダメダメと見て、長男への騎士の叙任を辞退したみたい。
でも、近衛騎士団長であるモカさんが、自分の長男に騎士の資格なしと範を示すと困っちゃう人が沢山いるんだね。
それが先例になると、出来の悪い息子を騎士にゴリ押しできなくなっちゃうから。
で、王様は出来の悪い息子を持つ貴族の方へ流されたと…。
「その結果が、これですか…。
『魔王』に手を出すことも、我が国の禁忌の一つですよ。
しかも、これはきちんと王の勅を持って禁じられている事です。
それを、仮にも民を守るべき騎士が禁を破るなど赦されざることです。
私のバカ息子は当然として、番外騎士団全員、極刑に処すべきでしょうな。
全ての処分が終ったら、私も騎士を辞し毒をあおることにします。」
モカさんは、中々潔いことを言うけど…。
「バカ言うな!
貴様が詰め腹を切るのは勝手だが、番外騎士団全員を死罪なんてできる訳なかろうが。
あの騎士団には有力貴族の跡取り息子だっているのだぞ。
そんなことをしたら、反乱がおこるわ!」
王様はモカさんの示した対処方針に対して、烈火のごとく怒って、それを却下したんだ。
でも、王様、分かっているのかな…、アルトが最初になんて言ったか。
「うるさいわね!
あんた達、私を無視して、なに二人で話を進めてんのよ。
言っとくけど、私が落とし前を付けろと言ってんのはあんたの方よ、王様。
詰め腹を切るのは、そっちの騎士じゃなくて、あ・ん・た・なの。」
うん、そう言うと思ったよ。
それまで蚊帳の外に置かれていたアルトが王様を指差して憤慨している。
「ちょっと待て、何で余が落とし前をつけねばならんのだ。
悪いのは『番外騎士団』、特にこやつの長男であろう。
そやつに落とし前をつけさせれば良いであろうが。
そんな事のために、余は家宝の『エルダートレント』を台無しにされたと言うのか?
それは、とんだ、とばっちりであろうが。」
アルトの言葉に、逆に不満を漏らした王様。
「あんた、『任命責任』とか『監督責任』という言葉を知らないの?
騎士を任命したのは誰?
いまのあんたらの話を聞いてたわよ。
あんた、そっちの騎士の反対を押し切って騎士の任命をしてるみたいじゃない。
騎士団のしたことに最終的な『監督責任』を持つのは誰?
騎士団長ではなく、王であるあんたでしょう。
それにね、この際、そんなスジ論はどうでも良いのよ。
あんた、二百年前に私に誓った言葉忘れちゃったの?
これだから人間って物覚えが悪くて困るのよね。
二百年っていったら昨日みたいなもんじゃない。」
もしもし、アルトさん、普通の人間は二百年も生きていないから。
二百年前の誓いとか言われても、王様、困っちゃってるよ。
「二百年前の誓い? そんなもの余が知る訳ないであろう。」
案の定、王様がアルトに不満を言うと。
「陛下、王家の禁忌を記した書にはきちんと書き残されていますよ。
二百年前に助命してもらった王子の誓いが。
『今後、我が国が存続する限り、我が国の者が妖精の森に迷惑を掛けた時は、王が身命を賭して責任を取ることを誓います。』と誓約したと。
そこには、時の王の言葉で、妖精に対する誓いはほぼ永遠であるので子々孫々に至るまで心すべしと書かれていたはずです。
更に、国に属する者の不始末も覆い被さってくるので、努々監督を怠るべからずとも記してあります。
これも、陛下が幼少の頃に何度も聞かされているはずですが。」
これ以上アルトを怒らせてはならじと、モカさんが横から口を挟んだの。
モカさんに諭されて、王様、苦い顔をしていたよ。
この王様、妖精の話を与太話だと思っていたようだから。
きっと、それに続く誓約の事も聞き流していたんだね。
「なんだ、ちゃんと覚えている者もいるじゃない。
この王様が特別におバカさんなだけなのね。
分かったわ、こんなおバカさんが国の舵取りをすると皆が不幸になるだけね。
今回は、『番外騎士団』全員の命とこの王様の命で手打ちにしましょうか?」
アルトからの死刑判決に、さすがの王様も顔を真っ青にしてたよ。
アルトがホントにヤバい存在だとやっと気づいたみたいだね。…遅いよ。
「何とぞ、命だけはお助け下さい。
もう、アルトローゼン様には逆らいません、妖精の森にも一切手出ししませんので。
此度の件も、どのような御沙汰でも受け入れますので、どうか命だけはご勘弁を。」
土下座姿勢で、額を地面に擦り付けて除名嘆願する王を見て、アルトは満足そうに笑ってたよ。
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