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第三章 女騎士(クッころさん)奮闘記
第57話 やっぱり、食べきれないみたい
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冒険者ギルドを離れてからしばらくして。
「あのくらいしておけば、当面、マロンに悪さする事は無いでしょう。
マロン、最初の三人をとっちめたくらいで安心したらダメだったのよ。
あの組長なんか、ちょっとや、そっとで諦めるタマじゃないから。
貴族の娘を手に入れるため、二番目、三番目と手下を送って来たわ。
そうなると、マロンを人質にとって貴族の娘を誘き出そうとする輩や。
マロンと貴族の娘が一緒にいるところを襲ってくる輩もいるかも知れないでしょう。
だから、元から断つことにしたの、徹底的にね。
ああいう連中に中途半端な仕打ちは逆効果よ、逆恨みで仕返しして来るから。
やる時は徹底的に、格の違いというのを見せつけてやるの。」
そう言って、アルトは今日わざわざ町まで出張ってきた訳を教えてくれたんだ。
おいらが、あの三人組をアルトに飛ばしてもらって安心しちゃったので拙いと感じたらしいの。
アルトは、おいらに火の粉が降りかかるのを未然に防いでくれたんだね。
「アルト、おいらの心配をしてくれて有り難う。
またクッころさんが襲われるかも知れないなんて、おいら、考えもしなかったよ。」
「良いのよ、まだ八歳のマロンにそこまで気付けというのも難しいと思うわ。
それに、あの組長には因縁があって、二十年前の誓いを破ったという口実もあったからね。
何の遠慮もなく、お仕置きが出来たわ。
これで、あの冒険者ギルドも少しはまともになれば良いけど…。
まあ、無理でしょうね。
喉元過ぎれば何とかで、しばらくは大人しいでしょうけど、半年もすればまた悪さを始めるでしょう。
まあ、今度何か仕出かしたら、あの建物ごと破壊してあげるわ。」
その時のアルトの表情は、マジで冒険者ギルドの建物を粉砕する気満々だったよ。
「そうそう、私が、組長の手先三人組をとっちめたことにして、トレントを狩ったことにしておいたから。
トレントから採れた『ハチミツ壺』とか、余るようなら店で売ると良いわ。
私から貰ったと言えば、堂々と売れるでしょう。」
アルトは、そう言って森に帰って行ったの。
家に帰る途中にタロウの家に寄って、アルトと冒険者ギルドであったことを話したんだけど。
その時、公衆の面前でアルトがトレントを倒したと言い触らしたことも伝えたよ。
知り合いのアルトから貰ったと言えば、『ハチミツ壺』とかを売っても良いと話したんだ。
「そりゃ、助かるぜ。
『スキルの実』、欲張っていっぱい採って来たのは良いんだが。
まだ、十個ずつしか食べ終わってないんだ。
どうがんばっても、三日でレベル六なんて無理だぜ。
レベル五を目標にして、残りは金に換えておくわ。
その金で、少しずつ『スキルの実』を買うことにするぜ。
腐らしちまったら勿体ないかな。」
タロウは、そう言って早速スキルの実を売りに行ったよ。
いったい、何個拾ってあったのか知らないけど、大きな袋に入った銀貨を抱えて嬉しそうにしてた。
********
家へ帰ると、一足先に帰っていたクッころさんが土間のテーブルで『スキルの実』を食べていた。
おいらが帰って来ても気付かないくらい、黙々と食べてるの。
その姿は鬼気迫るものがあったよ。
クッころさん、何でこんなに必死に食べてるんだろう。
「クッころさん、ただいま。」
おいらが、声をかけると、
「ゴホッ、ゴホッ!」
どうやら、不意に声を掛けられ、驚いた拍子にスキルの実をのどに詰まらせたみたい。
苦しそうにむせてるし…。
おいらが、慌ててカップに水を注いで渡したら、一気に飲み干してたよ。
「ありがとう、マロン。
恥ずかしいところを見せてしまいましたね。
少しでもスキルレベルを上げようと思い、頬張り過ぎましたわ。
せっかく、手に入れたスキルの実ですもの。
腐らしてしまったら勿体ないと思って食べてましたの。」
貴族のクッころさんから、勿体ないなんて言葉、初めて聞いたよ。
スキルの実は、貴族の人にとっても貴重なのかな。でも…。
「ねえ、クッころさん。
こんなこと聞いて良いのか分からないけど…。
クッころさんの家って、貴族なのに結構貧乏なの?」
「えっ、何を唐突に…。
失礼なことを言わないでください。
わたくしのクレール家は爵位こそ子爵家ですが。
数多くの武勲の恩賞で、王都に多くの土地を有する裕福な家ですわよ。」
たしかに、もの凄い数の銀貨を持ち歩いているクッころさんが貧乏な家の人とは思えないようね。
じゃあ、なんで…。
「おいら、父ちゃんから聞いたことがあるんだ。
貴族の家に生まれると、子供の頃から良いスキルを与えられるって。
でも、クッころさん、その歳になってもスキル枠が空いてるようだから。
てっきり、お金が無いのかと思ったんだ。」
おいらは、さっきから疑問に思ってたことをぶつけてみたの。
「マロンがお父様から聞かされたことは、ある意味本当ですわ。
ですが、それは男児に限った事ですの。
貴族の娘にスキルなど、はしたないって言われますのよ。
貴族の娘に必要なのはスキルなどではなく、歌舞音曲や刺繍の能力だと。
ですから、貴族の娘でスキルを持っている者はほとんどおりません。
その代わり、歌舞音曲の家庭教師や楽器にお金が掛けらるのですわ。」
スキルは、戦闘系のモノか採集系のモノなんだけど。
貴族の女は子を産み育て家庭を守るもので、外に出て働くものではないと言われるらしいの。
女が戦場に出る事や農園で土に塗れることは、はしたないんだって。
だから、余計なスキルが与えられることはないらしいの。
そう言えば、お酒を飲んだ時にクッころさん、愚痴ってたね。
礼儀作法やら刺繍やらばっかり、毎日ちまちまやらされてうんざりするって。
「でも、今、クッころさんが食べているのって騎士には余り関係ないスキルの実だよ。
四つしかしないスキル枠を、そんなスキルで埋めちゃって良いの?」
騎士に必要なのは、『攻撃力アップ』とか『防御力アップ』とかの戦闘系スキルだよね。
「何を言います。
戦場に出た時に、『野外移動速度アップ』のスキルは進軍速度を上げるの役立ちますわ。
『野外採集能力アップ』だって、戦場で重宝します。
野外で食料を調達できれば、補給線が途絶えても何とか生き延びられるじゃないですか。」
おお、初めてクッころさんからまともな言葉を聞いたような気がする。
騎士の夢見るだけの、オツムお花畑な貴族のお嬢様じゃなかったんだ。
********
おいらは、クッころさんにも、アルトのことを話したよ。
アルトの事を教えないと、冒険者ギルドとの間で何があったかを説明できないからね。
「まあ、妖精さんですの。
マロンは、とても素敵な方に守ってもらっていますのね。
今日は、何から何まで、マロンのお世話になってしまいましたわ。
マロン、本当に有り難うございます。」
冒険者ギルドのゴロツキ狙われることがもうないと分かると、クッころさんはホッとした顔をしてたよ。
やっぱり、また襲われるかもと、不安だったみたい。
そして、ハニートレントの収穫物を売っても良いと告げると。
「それは、助かりますわ。
スキルの実を欲張って拾い過ぎました。
とても三日間では食べきれませんわ。
貴重なスキルの実ですから、腐らせたら勿体ないと思っていましたの。
お金には困っていませんが、この『実』が欲しい方の手に届く方が良いですから。
『ハチミツ壺』の方もこんなには食べきれませんね。
マロン、申し訳ないけど、お店に案内して頂けるかしら。」
そう言って、クッころさんも喜んだよ。
それで、クッころさんを案内したのだけど…。
二種類の『スキルの実』と『ハチミツ壺』を売って、千枚以上の銀貨を手にしたクッころさん。
その銀貨を丸ごとおいらに差し出して言ったんだ。
「では、マロン、これで滞在期間を一ヶ月延長してくださいね。
よろしくお願いしますね。」
えっ、クッころさん、これだけ危ない目に遭ってもまだ懲りないんですか。
もう、王都へ帰りましょうよ…。
「あのくらいしておけば、当面、マロンに悪さする事は無いでしょう。
マロン、最初の三人をとっちめたくらいで安心したらダメだったのよ。
あの組長なんか、ちょっとや、そっとで諦めるタマじゃないから。
貴族の娘を手に入れるため、二番目、三番目と手下を送って来たわ。
そうなると、マロンを人質にとって貴族の娘を誘き出そうとする輩や。
マロンと貴族の娘が一緒にいるところを襲ってくる輩もいるかも知れないでしょう。
だから、元から断つことにしたの、徹底的にね。
ああいう連中に中途半端な仕打ちは逆効果よ、逆恨みで仕返しして来るから。
やる時は徹底的に、格の違いというのを見せつけてやるの。」
そう言って、アルトは今日わざわざ町まで出張ってきた訳を教えてくれたんだ。
おいらが、あの三人組をアルトに飛ばしてもらって安心しちゃったので拙いと感じたらしいの。
アルトは、おいらに火の粉が降りかかるのを未然に防いでくれたんだね。
「アルト、おいらの心配をしてくれて有り難う。
またクッころさんが襲われるかも知れないなんて、おいら、考えもしなかったよ。」
「良いのよ、まだ八歳のマロンにそこまで気付けというのも難しいと思うわ。
それに、あの組長には因縁があって、二十年前の誓いを破ったという口実もあったからね。
何の遠慮もなく、お仕置きが出来たわ。
これで、あの冒険者ギルドも少しはまともになれば良いけど…。
まあ、無理でしょうね。
喉元過ぎれば何とかで、しばらくは大人しいでしょうけど、半年もすればまた悪さを始めるでしょう。
まあ、今度何か仕出かしたら、あの建物ごと破壊してあげるわ。」
その時のアルトの表情は、マジで冒険者ギルドの建物を粉砕する気満々だったよ。
「そうそう、私が、組長の手先三人組をとっちめたことにして、トレントを狩ったことにしておいたから。
トレントから採れた『ハチミツ壺』とか、余るようなら店で売ると良いわ。
私から貰ったと言えば、堂々と売れるでしょう。」
アルトは、そう言って森に帰って行ったの。
家に帰る途中にタロウの家に寄って、アルトと冒険者ギルドであったことを話したんだけど。
その時、公衆の面前でアルトがトレントを倒したと言い触らしたことも伝えたよ。
知り合いのアルトから貰ったと言えば、『ハチミツ壺』とかを売っても良いと話したんだ。
「そりゃ、助かるぜ。
『スキルの実』、欲張っていっぱい採って来たのは良いんだが。
まだ、十個ずつしか食べ終わってないんだ。
どうがんばっても、三日でレベル六なんて無理だぜ。
レベル五を目標にして、残りは金に換えておくわ。
その金で、少しずつ『スキルの実』を買うことにするぜ。
腐らしちまったら勿体ないかな。」
タロウは、そう言って早速スキルの実を売りに行ったよ。
いったい、何個拾ってあったのか知らないけど、大きな袋に入った銀貨を抱えて嬉しそうにしてた。
********
家へ帰ると、一足先に帰っていたクッころさんが土間のテーブルで『スキルの実』を食べていた。
おいらが帰って来ても気付かないくらい、黙々と食べてるの。
その姿は鬼気迫るものがあったよ。
クッころさん、何でこんなに必死に食べてるんだろう。
「クッころさん、ただいま。」
おいらが、声をかけると、
「ゴホッ、ゴホッ!」
どうやら、不意に声を掛けられ、驚いた拍子にスキルの実をのどに詰まらせたみたい。
苦しそうにむせてるし…。
おいらが、慌ててカップに水を注いで渡したら、一気に飲み干してたよ。
「ありがとう、マロン。
恥ずかしいところを見せてしまいましたね。
少しでもスキルレベルを上げようと思い、頬張り過ぎましたわ。
せっかく、手に入れたスキルの実ですもの。
腐らしてしまったら勿体ないと思って食べてましたの。」
貴族のクッころさんから、勿体ないなんて言葉、初めて聞いたよ。
スキルの実は、貴族の人にとっても貴重なのかな。でも…。
「ねえ、クッころさん。
こんなこと聞いて良いのか分からないけど…。
クッころさんの家って、貴族なのに結構貧乏なの?」
「えっ、何を唐突に…。
失礼なことを言わないでください。
わたくしのクレール家は爵位こそ子爵家ですが。
数多くの武勲の恩賞で、王都に多くの土地を有する裕福な家ですわよ。」
たしかに、もの凄い数の銀貨を持ち歩いているクッころさんが貧乏な家の人とは思えないようね。
じゃあ、なんで…。
「おいら、父ちゃんから聞いたことがあるんだ。
貴族の家に生まれると、子供の頃から良いスキルを与えられるって。
でも、クッころさん、その歳になってもスキル枠が空いてるようだから。
てっきり、お金が無いのかと思ったんだ。」
おいらは、さっきから疑問に思ってたことをぶつけてみたの。
「マロンがお父様から聞かされたことは、ある意味本当ですわ。
ですが、それは男児に限った事ですの。
貴族の娘にスキルなど、はしたないって言われますのよ。
貴族の娘に必要なのはスキルなどではなく、歌舞音曲や刺繍の能力だと。
ですから、貴族の娘でスキルを持っている者はほとんどおりません。
その代わり、歌舞音曲の家庭教師や楽器にお金が掛けらるのですわ。」
スキルは、戦闘系のモノか採集系のモノなんだけど。
貴族の女は子を産み育て家庭を守るもので、外に出て働くものではないと言われるらしいの。
女が戦場に出る事や農園で土に塗れることは、はしたないんだって。
だから、余計なスキルが与えられることはないらしいの。
そう言えば、お酒を飲んだ時にクッころさん、愚痴ってたね。
礼儀作法やら刺繍やらばっかり、毎日ちまちまやらされてうんざりするって。
「でも、今、クッころさんが食べているのって騎士には余り関係ないスキルの実だよ。
四つしかしないスキル枠を、そんなスキルで埋めちゃって良いの?」
騎士に必要なのは、『攻撃力アップ』とか『防御力アップ』とかの戦闘系スキルだよね。
「何を言います。
戦場に出た時に、『野外移動速度アップ』のスキルは進軍速度を上げるの役立ちますわ。
『野外採集能力アップ』だって、戦場で重宝します。
野外で食料を調達できれば、補給線が途絶えても何とか生き延びられるじゃないですか。」
おお、初めてクッころさんからまともな言葉を聞いたような気がする。
騎士の夢見るだけの、オツムお花畑な貴族のお嬢様じゃなかったんだ。
********
おいらは、クッころさんにも、アルトのことを話したよ。
アルトの事を教えないと、冒険者ギルドとの間で何があったかを説明できないからね。
「まあ、妖精さんですの。
マロンは、とても素敵な方に守ってもらっていますのね。
今日は、何から何まで、マロンのお世話になってしまいましたわ。
マロン、本当に有り難うございます。」
冒険者ギルドのゴロツキ狙われることがもうないと分かると、クッころさんはホッとした顔をしてたよ。
やっぱり、また襲われるかもと、不安だったみたい。
そして、ハニートレントの収穫物を売っても良いと告げると。
「それは、助かりますわ。
スキルの実を欲張って拾い過ぎました。
とても三日間では食べきれませんわ。
貴重なスキルの実ですから、腐らせたら勿体ないと思っていましたの。
お金には困っていませんが、この『実』が欲しい方の手に届く方が良いですから。
『ハチミツ壺』の方もこんなには食べきれませんね。
マロン、申し訳ないけど、お店に案内して頂けるかしら。」
そう言って、クッころさんも喜んだよ。
それで、クッころさんを案内したのだけど…。
二種類の『スキルの実』と『ハチミツ壺』を売って、千枚以上の銀貨を手にしたクッころさん。
その銀貨を丸ごとおいらに差し出して言ったんだ。
「では、マロン、これで滞在期間を一ヶ月延長してくださいね。
よろしくお願いしますね。」
えっ、クッころさん、これだけ危ない目に遭ってもまだ懲りないんですか。
もう、王都へ帰りましょうよ…。
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