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第二章 ゴミスキルとおいらの平穏な日常

第17話 これ、とっても重宝しそう

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*本日、お昼に1話投稿しています。
 まだ読み出ない方は、お手数をおかけしますが一話戻ってお読みください。
 よろしくお願いいたします。

     ********

 翌朝、何時ものように屋台でウサギ肉の串焼きとパンを買い。
 広場の隅っこに座って朝ごはんを食べたおいらは、町の外に向かったの。

 途中、石造りの立派な建物の中から、ぞろぞろとガラの悪い連中が出てくるのが見えた。
 中には、朝から酒を飲んでたようで、顔を赤くしている人もいるよ。
 そう、そこは昨日話題になってた冒険者ギルドの建物。
 悪どい商売をしているだけあって、町で一番豪勢な建物なんだ。

「おい、聞いたか、昨日ワイバーンが襲って来たんだってな。」

「おお、そうらしいな。
 おりゃ、そん時、ギルドの酒場で酔い潰れてたんで。
 全然知らんかったぜ。」

「俺も似たようなもんだけどな。
 ワイバーンの話を聞いた時、ふと思ったんだ。
 ギルドに寝泊まりしてる若いのを二、三人。
 トレント狩る時みてえに、ワイバーンの前に突き飛ばすんだ。
 ワイバーンが、若いのを食らってる間に、後ろから倒せねえかなって。
 そうすりゃ、俺達も念願のレベル持ちになれんじゃねえか。」

「おめえ、冴えてんな、天才じゃないか。
 そりゃ良い考えだ。
 俺らの贅沢な暮らしの肥やしになるなら、若いのも本望だろうな。
 よし、次にワイバーンが来たらやってみるとすっか。」

 おいらの前を歩くガラの悪い二人組から、そんな会話が漏れて来たよ。
 ひよっこ冒険者を生贄にしてトレント狩るって、普通にしてるんだ…。
 ホント、ロクでもないな。
 でも、こんなに大っぴらに喋ってるのに、引っ掛かる冒険者がいるってどうなのよ。
 相当頭が悪いのか、それとも、毎日のように新顔の冒険者が出てくるのかな

 あれ?
 そう言えば、おいら、昨日、ワイバーンを倒してもレベルが上がらなかったよ。
 レベルは上がらないモノだと思ってたから、うっかりしてた。
 今、二人組の会話を聞くまで、レベルのことを考えもしなかったよ。

 昨日、にっぽん爺が言ってた。
 レベルを上げるには、レベル五以上の魔物を倒さないといけないって。
 ワイバーンのレベルってどのくらいなんだろうね。
 厄災と言われているくらいだから、レベル五より下ってことは無いと思うんだけど…。

 何で、おいらのレベルは上がらなかったんだろう?

 不思議に思いつつも、おいらは町の外に向かったんだ。
 だって、レベルのことを他人に聞く訳にはいかないからね。
 目の前を歩く二人に尋ねるなんて論外、その場で切り殺されそうだよ。
 子供だからと言って手加減するような手合いには見えないからね。

 にっぽん爺なら、教えてくれるだろうけど…。
 その時は、ワイバーンを倒したことを話さないといけなくなる。
 芋づる式に『ゴミスキル』の秘密も。

 やっぱ、聞けないか…。

     ********
 
 レベルの事が分からないでモヤモヤしたけど。

 おいらは、父ちゃんの教え。

「人はレベルゼロ、能力値ゼロが普通。
 一より大きい数字があるのは、プラスの補正。」 

 を心の中で何度も繰り返し、レベルのことは気にしないようにしたの。
 思いがけず、役立つスキルが育ったんだから、これ以上望むのは贅沢だもんね。

 そして、何時もの狩場で、シューティング・ビーンズを狩っている。
 狩りながら思ったよ。
 五歳児の力でも簡単に狩れるシューティング・ビーンズ。
 こればっかり、狩ってるんだから、…。
 正直、『クリティカル発生率アップ』の恩恵なんか気付かないよね。
 クリティカルなんて、必要ないもん。

 シューティング・ビーンズの幼生を持って来た袋いっぱいに詰めたところで。
 おいらは、その布袋を見詰めて『積載』と念じてみた。

 すると、手にした布袋がスッと消えて、脳裏に『積載庫』の中身が浮かんだの。
 ちゃんとそこには、『布袋(シューティング・ビーンズ)』と書かれていたよ。

 今度は、それを取り出したいと念じてみたら。
 手の中に、布袋が戻って来た。
 おいらは、その布袋の出し入れを何度か繰り返し。
 分かったのは、『積載庫』への出し入れに、決まり文句はないこと。
 単に出したい、入れたいと頭で念じるだけで良いみたい。

 それと、便利なのが。
 シューティング・ビーンズを狩るとその辺にドロップするスキルの実。
 落ちている一帯を見ながら、スキルの実を積載庫に入れたいと念じると。
 何と、一つ残らず収納する事が出来たんだ。
 屈んで拾う事もないし、拾い残しも無い。
 出す時だって、布袋を手にしてその中にと念じると、ちゃんと袋の中に納まる。
 これは、とっても楽だよ。

 そんな事を調べているうちに気付いたの。
 昨日、入れたワイバーンがない事に。

 その代わりにあったのが、…。

『ワイバーンの肉』、『ワイバーンの皮』、『ワイバーンの血』、『ワイバーンの爪』、…。

 …解体されてんの。

 試しに、『ワイバーンの爪』を出してみたら鋭いナイフのような白い爪が出てきたよ。
 それと、『積載庫』の中の『ワイバーンの肉』を見ると。

『ワイバーンの肉:極めて美味。但し猛毒、食後三時間程度で絶命。暗殺に便利。』

 ご丁寧な事なことに解説付きだった。…なに、暗殺に便利って。

 因みに、ワイバーンは、血や内臓もみんな猛毒で、毒薬の原料になるって。
 いらないな、そんなもの。

 皮や爪は、それに牙は加工すれば、武器や革鎧になるって。
 おいら、戦わないから、これも要らないね。
 売ればお金になりそうだけど、売った途端においらが倒したってバレちゃう。

 解体したワイバーンはしばらく放置だね、どれも危険物だよ。

     ********

 『積載庫』の中にある解体されたワイバーンの一覧を見て行くと、その後に。

 見慣れない文字があったの。

「金貨?」

 金貨なんて物を拾った覚えは無いよ。

 そもそも、金貨ってなに?

 おいらは、金貨を一つ手のひらの上に出してみたんだ。
 それは、ちょうど銀貨と同じくらいの大きさで、キラキラと黄色っぽく輝いていたの。
 確かに、『貨』と書いてあるだけあって、お金のように見えるけど…。

 おいら、父ちゃんから、この国のお金は銀貨と銅貨だと習ったんだ。
 物知りのにっぽん爺も、同じことを言ってた。

 金貨って、お金なのかな?
 そもそも、この金貨、どこから出て来たの?

 まさか、ワイバーンが呑み込んでいて、解体したらお腹の中から出て来たとか。

 これ、にっぽん爺に聞いても大丈夫かな? 

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