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第18章 冬、繫栄する島国で遭遇したのは
第541話 まさか、すぐ翌日に来るなんて…
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さて、マーブル青年ですが、アルムハイムへお連れする約束の日まで会うことは無いと思っていました。
ところが、その翌日。
私が子供達や精霊達と午後のティータイムを楽しんでいる時のことです。
ブラウニーのステラちゃんもテーブルに腰を下ろして、ハグハグとお菓子を食べていました。
そのステラちゃんが、ハッとした表情をしてお菓子から顔を上げます。
どうやら、屋敷の前に来客があったようです。
「ねえ、ロッテ、何やら門の前に昨日の男が来ているわよ。
ほら、門扉をよじ登ろうとした男。」
この屋敷は門番がいなので。
どうやって訪問を知らせるのかわからずに、まごついているようです。
また門扉によじ登られると面倒ですので、仕方なく私が出迎えることにしました。
「どうなされましたか? まだ、お約束の日にはいささか早過ぎるようですけど。」
私が門扉越しにマーブル青年に問い掛けると。
「度々、アポなしでお邪魔しまして申し訳ございません。
ここでは、話に差支えがあるので屋敷に入れてもらえませんか。」
昨日とは違い、非常に真剣な眼差しでマーブル青年は返答しました。
どうやら、真面目なお仕事の話のようです。
取り敢えず、私は青年を招き入れ話を伺うことにしました。
そして、青年は応接に腰を落ち着けるやいなや、開口一番に言ったのです。
「今日の午前の国会で、ミリアム首相が小アルビオン島に於ける飢饉の終息を宣言しました。
そして、今まさに、小麦相場の大暴落が始まっています。」
青年は興奮気味に言葉を発しますが。
ミリアム首相と謀って暴落を仕掛けた私としては、想定通りのシナリオです。
ミリアム首相が今日、議会で終息宣言をする事も知らされていましたし。
特段驚くほどの事でもありません。
「そうですか。
それで、何故、こちらにいらしたのですか?
取材であれば、議事堂に行くか、首相官邸に行くか…。
若しくは、穀物市場の立ち会い所ではなくて。」
「やはり驚かないのですね。」
私が尋ねると青年は一言呟いただけでした。
「いえ、驚くも何も、私はこの国の小麦相場には詳しくないもので…。
と言うよりも、私くらいの年の女性に相場の話などされても誰しも同じような反応かと。
今日マーブルさんは、お仕事の話で見えられたようですので、そう言う話でも良いですが。
プライベートな席で、女性に向かって相場の話など持ち出したら引かれてしまいますよ。」
小麦の相場の暴落の話に驚いて、喰い付いてくる女性の方が稀だと思います。
まさか、この国の貴族令嬢で小麦相場を張っている猛者はいないでしょうから。
「そういう話では無いです。
大公は、飢饉が終息したことも、小麦が暴落するであろうこともご存じだったのでしょう。
いいえ、知っていたも何も、大公ご自身がなさったことの結果なのでしょう。」
「なぜ、そう思うのですか?」
私は余計な事は言うまいと、マーブル青年がそう考える根拠を尋ねることにしました。
藪をつついて蛇を出す必要はないですからね。
**********
「ボクの勤める新聞社が小アルビオン島の飢饉の第一報を掴んだのは十二月の頭でした。
それから、すぐに特派員を小アルビオン島に送り込んだのです。
知っていますか、王都から小アルビオン島へ行こうとすると。
船で川を下って海に出て、小アルビオン島の南に上陸するのが最短なのです。
特派員もそうしてたのですが、非常に不思議なことに出くわしたそうです。
確かに、酷い飢饉があったのは間違いないと確信したみたいなのですが…。」
そう切り出したマーブル青年の話はと言うと。
特派員が上陸した小アルビオン島の南部の飢饉の状況は酷いものだったそうです。
同時に特派員は商人の話で、北部の状況はもっと酷いと聞かされたそうです。
島の北部には飢饉で全滅した村さえあると。
その情報を基に、特派員は島を北上して取材を続けたそうですが。
ある時、不思議なモノに出会ったと言います。
不思議なモノと言っても、目の前の青年が言うようなオカルティックなものではありません。
辻褄があわないと言う意味で不思議なモノと言う事です。
それは何かというと…。
前サウスミンスター公爵夫人、メアリーさんが率いる炊き出し部隊です。
早耳を誇るはずの新聞記者よりも早く、有力貴族の大奥様が小アルビオン島で炊き出しをしているのも不思議ですが。
その事実以上に不可解なのは、炊き出し部隊が島の北部から救援活動をしてきたと言う事です。
特派員が上陸した南部の港から島の北部までは、船でも一日以上かかります。
しかも、メアリーさんが率いる救援部隊は島の北部から隈なく炊き出しをしてきたと言います。
特派員がメアリーさん一行と遭遇したのは、小アルビオン島の中央付近、十二月の十日過ぎだと言います。
島の北部から遭遇した辺りまでは、普通に旅をしても四、五日掛かります。
炊き出しをしながらであれば、そんなに早く移動できるはずがありません。
いったい何時から炊き出しを始めたのか、いったい何時頃小アルビオン島の飢饉の情報を掴んだのか。
特派員はとても疑問に感じたそうです。
もちろん、煩いブンヤさんです。疑問に思う事はしつこく尋ねる訳ですが。
メアリーさんは、事実をありのままに伝えたようでした。
十一月の下旬に、小アルビオン島の飢饉から逃れてきた少女から助けを求められたこと。
その少女から、小アルビオン島の飢饉が危機的な状況にあると聞かされ、すぐさま救援活動を組織したこと。
十一月中には、活動を開始したことなどを。
その内容は一応は辻褄があっていて、特派員にはそれ以上の突っ込みようがなかったそうです。
唯一、特派員がメアリーさん達に苦情に近いことを言ったのが。
なぜ、十一月の下旬に飢饉の情報を掴んでいたのなら、新聞社に教えてくれなかったのかと言う事だったみたいですが。
メアリーさんはこう答えたそうです。
「何故、切羽詰まっているときに悠長に新聞屋さんに報告しないといけないの。
そんなことをしている間に、救援のためのお金や物資、それに人手を集める方が良いに決まっているでしょう。
それとも、新聞社さんが、救援のための物資や人を出してくださるのかしら。
ここに集まった皆さんは、手弁当で支援活動をしてくださるだけではなく、多額の支援金も出してくださっているのよ。」
そう言われると特派員はぐうの音も出なかったそうです。
その日は、釈然としないものを感じつつも、特派員は炊き出しが終るのを見ると次の町に向かったそうです。
その時の特派員の感じた違和感、その時は気付かなかったそうですが。
後になって、その違和感が何だったのか、ハッキリしたと言います。
メアリーさん達一行、半月近くも小アルビオン島の中を旅して、多大な物資を支援しているはずなのです。
本来であれば軍隊の輜重隊のような一団を引き連れていなければならないのに、それが見当たらなかったことだそうです。
その頃の私は、新聞に取り上げらてしまったこともあり。
姿を隠す意味もあって、一旦メアリーさん達とは別行動をしていました。
ナンシーさんの実家に行っていた頃のことですね。
ただ、アリィシャちゃんとノノちゃん、ナナちゃん姉妹には同行してもらっており。
毎日、アリィシャちゃんの魔法で、王都との送り迎えと物資の補給をしていました。
メアリーさん達にとっては、日帰りの救援活動だったのです。
そう言えば、私が別行動をとる切っ掛けとなったあの新聞記事。
なんで、同じ新聞記者のマーブル青年は知らないのでしょうか?
他の新聞社の新聞には目を通さないなどと言う、了見の狭いことは無いと思うのですが…。
**********
マーブル青年は、尚も言葉を続けます。
「御婆様と遭遇した後に目撃したことは、特派員にもっと混乱をもたらしたのです。」
それは何かというと、…。
より北部へ向かった特派員が目にしたのは、数多くの真新しいお墓。
これは、理に適っているのです。
北部の飢饉はとても酷いと南部で聞いたからこそやって来たのですから。
では、特派員が何に混乱したのかと言えば、飢饉があったとは俄かに信じられない元気な住民たちの姿にです。
皆一様に血色がよく、健康的なほど良い肉付きをしていて、ガリガリにやせ細った人は誰一人としていなかったのですから。
メアリーさん達が一日炊き出しをしたくらいで、こんなに健康的になるはずが無いと思ったと言います。
しかも、飢饉が襲ったはずの村には食料が溢れていたと言います。
幾ら何でも、これだけの支援物資をメアリーさん達が届けられる訳が無い、というくらい大量の。
特派員がそれを尋ねると決まって帰って来た言葉が。
「女神様が、あっという間にジャガイモを実らせてくれたんだ。
それと、薪を買えと持ち切れないくらいの銀貨をくださった。」
などと言うもので、女神様が何者で、どうやって実らせたのか、終ぞ分らなかったそうです。
村々の住民たちには『言霊』を使って、私の素性と魔法の事を口止めをしておきました。
なので、私に関することは抽象的にしか伝えられなかったようです。
「結局、特派員はおびただしい数の真新しいお墓を目にして、そこが悲惨な飢饉に見舞われたことは確信したようです。
最後に目にした村などは、無人になっており、御婆様達が作ったと思しき新しいお墓だけがあったと言いますし。
ですが、ついさっき飢饉に見舞われていたとは思えない健康的な住民を目にして頭を抱えてしまったと言います。
いったい、これはどうなっているのかと。」
水の精霊アクアちゃんが、住民たちの体調を万全に整えてくれましたからね。
十分な食料も支援しましたので、それは健康的に見えるはずです。
「それで、それがいったい私とどう関係するのですか?」
取り敢えず、私は知らぬ存ぜぬで通してみることにしました。
マーブル青年がどこまで情報を掴んでいるのかを確認するためです。
「北部の住民たちが言っている女神様って、アルムハイム大公のことでは無いですか?
それに、これ、アルムハイム大公でしょう、『黒尽くめの魔女がもたらした奇跡』って。」
私に向かってそう尋ねた青年は、紙束を差し出してきました。
やっぱり、目にしているではないでか、その新聞。
何で、今ままで気付かなかったのですか…。
ところが、その翌日。
私が子供達や精霊達と午後のティータイムを楽しんでいる時のことです。
ブラウニーのステラちゃんもテーブルに腰を下ろして、ハグハグとお菓子を食べていました。
そのステラちゃんが、ハッとした表情をしてお菓子から顔を上げます。
どうやら、屋敷の前に来客があったようです。
「ねえ、ロッテ、何やら門の前に昨日の男が来ているわよ。
ほら、門扉をよじ登ろうとした男。」
この屋敷は門番がいなので。
どうやって訪問を知らせるのかわからずに、まごついているようです。
また門扉によじ登られると面倒ですので、仕方なく私が出迎えることにしました。
「どうなされましたか? まだ、お約束の日にはいささか早過ぎるようですけど。」
私が門扉越しにマーブル青年に問い掛けると。
「度々、アポなしでお邪魔しまして申し訳ございません。
ここでは、話に差支えがあるので屋敷に入れてもらえませんか。」
昨日とは違い、非常に真剣な眼差しでマーブル青年は返答しました。
どうやら、真面目なお仕事の話のようです。
取り敢えず、私は青年を招き入れ話を伺うことにしました。
そして、青年は応接に腰を落ち着けるやいなや、開口一番に言ったのです。
「今日の午前の国会で、ミリアム首相が小アルビオン島に於ける飢饉の終息を宣言しました。
そして、今まさに、小麦相場の大暴落が始まっています。」
青年は興奮気味に言葉を発しますが。
ミリアム首相と謀って暴落を仕掛けた私としては、想定通りのシナリオです。
ミリアム首相が今日、議会で終息宣言をする事も知らされていましたし。
特段驚くほどの事でもありません。
「そうですか。
それで、何故、こちらにいらしたのですか?
取材であれば、議事堂に行くか、首相官邸に行くか…。
若しくは、穀物市場の立ち会い所ではなくて。」
「やはり驚かないのですね。」
私が尋ねると青年は一言呟いただけでした。
「いえ、驚くも何も、私はこの国の小麦相場には詳しくないもので…。
と言うよりも、私くらいの年の女性に相場の話などされても誰しも同じような反応かと。
今日マーブルさんは、お仕事の話で見えられたようですので、そう言う話でも良いですが。
プライベートな席で、女性に向かって相場の話など持ち出したら引かれてしまいますよ。」
小麦の相場の暴落の話に驚いて、喰い付いてくる女性の方が稀だと思います。
まさか、この国の貴族令嬢で小麦相場を張っている猛者はいないでしょうから。
「そういう話では無いです。
大公は、飢饉が終息したことも、小麦が暴落するであろうこともご存じだったのでしょう。
いいえ、知っていたも何も、大公ご自身がなさったことの結果なのでしょう。」
「なぜ、そう思うのですか?」
私は余計な事は言うまいと、マーブル青年がそう考える根拠を尋ねることにしました。
藪をつついて蛇を出す必要はないですからね。
**********
「ボクの勤める新聞社が小アルビオン島の飢饉の第一報を掴んだのは十二月の頭でした。
それから、すぐに特派員を小アルビオン島に送り込んだのです。
知っていますか、王都から小アルビオン島へ行こうとすると。
船で川を下って海に出て、小アルビオン島の南に上陸するのが最短なのです。
特派員もそうしてたのですが、非常に不思議なことに出くわしたそうです。
確かに、酷い飢饉があったのは間違いないと確信したみたいなのですが…。」
そう切り出したマーブル青年の話はと言うと。
特派員が上陸した小アルビオン島の南部の飢饉の状況は酷いものだったそうです。
同時に特派員は商人の話で、北部の状況はもっと酷いと聞かされたそうです。
島の北部には飢饉で全滅した村さえあると。
その情報を基に、特派員は島を北上して取材を続けたそうですが。
ある時、不思議なモノに出会ったと言います。
不思議なモノと言っても、目の前の青年が言うようなオカルティックなものではありません。
辻褄があわないと言う意味で不思議なモノと言う事です。
それは何かというと…。
前サウスミンスター公爵夫人、メアリーさんが率いる炊き出し部隊です。
早耳を誇るはずの新聞記者よりも早く、有力貴族の大奥様が小アルビオン島で炊き出しをしているのも不思議ですが。
その事実以上に不可解なのは、炊き出し部隊が島の北部から救援活動をしてきたと言う事です。
特派員が上陸した南部の港から島の北部までは、船でも一日以上かかります。
しかも、メアリーさんが率いる救援部隊は島の北部から隈なく炊き出しをしてきたと言います。
特派員がメアリーさん一行と遭遇したのは、小アルビオン島の中央付近、十二月の十日過ぎだと言います。
島の北部から遭遇した辺りまでは、普通に旅をしても四、五日掛かります。
炊き出しをしながらであれば、そんなに早く移動できるはずがありません。
いったい何時から炊き出しを始めたのか、いったい何時頃小アルビオン島の飢饉の情報を掴んだのか。
特派員はとても疑問に感じたそうです。
もちろん、煩いブンヤさんです。疑問に思う事はしつこく尋ねる訳ですが。
メアリーさんは、事実をありのままに伝えたようでした。
十一月の下旬に、小アルビオン島の飢饉から逃れてきた少女から助けを求められたこと。
その少女から、小アルビオン島の飢饉が危機的な状況にあると聞かされ、すぐさま救援活動を組織したこと。
十一月中には、活動を開始したことなどを。
その内容は一応は辻褄があっていて、特派員にはそれ以上の突っ込みようがなかったそうです。
唯一、特派員がメアリーさん達に苦情に近いことを言ったのが。
なぜ、十一月の下旬に飢饉の情報を掴んでいたのなら、新聞社に教えてくれなかったのかと言う事だったみたいですが。
メアリーさんはこう答えたそうです。
「何故、切羽詰まっているときに悠長に新聞屋さんに報告しないといけないの。
そんなことをしている間に、救援のためのお金や物資、それに人手を集める方が良いに決まっているでしょう。
それとも、新聞社さんが、救援のための物資や人を出してくださるのかしら。
ここに集まった皆さんは、手弁当で支援活動をしてくださるだけではなく、多額の支援金も出してくださっているのよ。」
そう言われると特派員はぐうの音も出なかったそうです。
その日は、釈然としないものを感じつつも、特派員は炊き出しが終るのを見ると次の町に向かったそうです。
その時の特派員の感じた違和感、その時は気付かなかったそうですが。
後になって、その違和感が何だったのか、ハッキリしたと言います。
メアリーさん達一行、半月近くも小アルビオン島の中を旅して、多大な物資を支援しているはずなのです。
本来であれば軍隊の輜重隊のような一団を引き連れていなければならないのに、それが見当たらなかったことだそうです。
その頃の私は、新聞に取り上げらてしまったこともあり。
姿を隠す意味もあって、一旦メアリーさん達とは別行動をしていました。
ナンシーさんの実家に行っていた頃のことですね。
ただ、アリィシャちゃんとノノちゃん、ナナちゃん姉妹には同行してもらっており。
毎日、アリィシャちゃんの魔法で、王都との送り迎えと物資の補給をしていました。
メアリーさん達にとっては、日帰りの救援活動だったのです。
そう言えば、私が別行動をとる切っ掛けとなったあの新聞記事。
なんで、同じ新聞記者のマーブル青年は知らないのでしょうか?
他の新聞社の新聞には目を通さないなどと言う、了見の狭いことは無いと思うのですが…。
**********
マーブル青年は、尚も言葉を続けます。
「御婆様と遭遇した後に目撃したことは、特派員にもっと混乱をもたらしたのです。」
それは何かというと、…。
より北部へ向かった特派員が目にしたのは、数多くの真新しいお墓。
これは、理に適っているのです。
北部の飢饉はとても酷いと南部で聞いたからこそやって来たのですから。
では、特派員が何に混乱したのかと言えば、飢饉があったとは俄かに信じられない元気な住民たちの姿にです。
皆一様に血色がよく、健康的なほど良い肉付きをしていて、ガリガリにやせ細った人は誰一人としていなかったのですから。
メアリーさん達が一日炊き出しをしたくらいで、こんなに健康的になるはずが無いと思ったと言います。
しかも、飢饉が襲ったはずの村には食料が溢れていたと言います。
幾ら何でも、これだけの支援物資をメアリーさん達が届けられる訳が無い、というくらい大量の。
特派員がそれを尋ねると決まって帰って来た言葉が。
「女神様が、あっという間にジャガイモを実らせてくれたんだ。
それと、薪を買えと持ち切れないくらいの銀貨をくださった。」
などと言うもので、女神様が何者で、どうやって実らせたのか、終ぞ分らなかったそうです。
村々の住民たちには『言霊』を使って、私の素性と魔法の事を口止めをしておきました。
なので、私に関することは抽象的にしか伝えられなかったようです。
「結局、特派員はおびただしい数の真新しいお墓を目にして、そこが悲惨な飢饉に見舞われたことは確信したようです。
最後に目にした村などは、無人になっており、御婆様達が作ったと思しき新しいお墓だけがあったと言いますし。
ですが、ついさっき飢饉に見舞われていたとは思えない健康的な住民を目にして頭を抱えてしまったと言います。
いったい、これはどうなっているのかと。」
水の精霊アクアちゃんが、住民たちの体調を万全に整えてくれましたからね。
十分な食料も支援しましたので、それは健康的に見えるはずです。
「それで、それがいったい私とどう関係するのですか?」
取り敢えず、私は知らぬ存ぜぬで通してみることにしました。
マーブル青年がどこまで情報を掴んでいるのかを確認するためです。
「北部の住民たちが言っている女神様って、アルムハイム大公のことでは無いですか?
それに、これ、アルムハイム大公でしょう、『黒尽くめの魔女がもたらした奇跡』って。」
私に向かってそう尋ねた青年は、紙束を差し出してきました。
やっぱり、目にしているではないでか、その新聞。
何で、今ままで気付かなかったのですか…。
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