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第9章 雪解け
第216話【閑話】ある男の災難
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次に余に襲い掛かった信じ難い出来事は…。
アルム山脈越えの作戦断念から一年もしない翌年の春の事であった。
我がセルベチア共和画には不俱戴天の仇ともいえる国がある。
それは、我が国の沖合に浮かぶ巨大な島国、アルビオン王国である。
どのくらい仲が悪いかといえば、その昔、百年にもわたって戦争をしていたくらいに。
良くも飽きずに戦えたものだなと呆れるが、そのくらい犬猿の仲なのだ。
そのアルビオン王国、最近は大陸にちょっかいを出してくることが無くなっている。
彼の国は島国だけあって海軍力が充実しており、それをもって世界各地に植民地を築き上げた。
今は、植民地支配に力を注ぐ方が国を富ませると判断して、大陸情勢には余り関与しない事にしてるようだ。
よって、こちらが手を出さなければ、彼の国と戦いになる事は無いのだが…。
彼の国には、余が喉から手が出るほど欲しいものがあるのだ。
軍事力を強化するために必要な鉄、その原料である鉄鉱石と製鉄に用いる石炭。
彼の国では、それが潤沢に採掘できるのだ。
それに加え、彼の国が抱えている広大な植民地。
ちっぽけな島国ではあるが、植民地からの上りで、その経済力たるや悔しいが我が国より一段上なのだ。
彼の国を支配下に置ければ、それを全て自由にできるのだ。
我が国は更に繁栄し、余の権勢もより強くなることであろうと考えたのだ。
勝算はある。
幸い彼の国と我が国を隔てる海峡は、その気になれば泳いで渡れるほど狭いのだ。
本当に目と鼻の先と言って良い近さである。
この狭い海峡を大規模な輸送船団を組んで一気に渡って、陸戦隊を送り込むのだ。
彼の国の海軍は、兵士の練度や軍艦の数、どれをとっても我が国より数段上である。
だが、陸軍に関しては我が国の方がはるかに兵士の練度も高いし、武装も充実しているのだ。
アルビオン王国侵攻のために用意した陸戦隊の総員は十四万人、これを大船団で一気に進攻させる。
そのために、余は我が国の虎の子とも言えるアクデニス艦隊を、対アルビオンに集結させることとしたのだ。
海軍力総体では彼の国には勝てないが、だが、それは植民地支配のために広い世界に散らばっている。
局所、局所では我が国の方が戦力が上回っているところだってあるのだ。
その一つが、アクデニス海の制海権を維持するために配備しているアクデニス艦隊だ。
余は、これを、アルビオン王国と対峙する軍港に配備している艦隊と合流させることに決めたのだ。
それにより、一時的にではあるが、この方面の海軍力はアルビオン海軍を凌駕することになる。
この海軍力をもって、兵員輸送船団を護衛し、無事に海峡を渡らせようと計画したのだ。
**********
そして、作戦決行迄あと一ヵ月と迫った五月下旬の事である。
「何?まだ、アクデニス艦隊が合流しない?
いったいどういう事だ、遅くとも五月中旬には合流するように命令したはずであるぞ。
たしか、出港した時に早馬で知らせが来たな。
たしか、三月下旬には出港したと報告があったはずだぞ。」
「はっ、私もそう伺っていますが…。」
海軍からの知らせに疑問を抱き、従来聞かされていた情報を確認したところ。
宰相は間違いないと言う。
では、アクデニス艦隊はどこをうろついているのだ。
「至急、アクデニス艦隊の艦隊司令部に確認の早馬を出すのだ。
それと、アルビオン侵攻部隊の司令部にも早馬を出して、まだ到着していないかを確認するだ。
ここに連絡の早馬が着くまでの間に合流が叶っているやも知れんからな。」
余が情報の確認の指示を出した、まさにその時のことであった。
息を切らした海軍の幹部が一通の書状を持って走り込んで来たのだ。
「失礼します。緊急故、ご無礼をお許しください。
ただいま、アクデニス艦隊司令部より早馬による報告がございました。
アルビオン王国侵攻部隊に合流すべく出港した軍用艦百隻が海難事故を起こしました。
八十余隻が沈没、沈没を免れた艦の多くも損傷が酷く航行を断念、帰投できた艦はわずかに八隻とのこと。
実に九十隻以上の艦が失われたとのことです。」
余はそれを聞いて耳を疑ったぞ、百隻中、無事帰投したのがわずかに八隻?
全滅ではないか。なぜそんなことが起こりうるのだ。
「至急、アクデニス艦隊の提督を招聘しろ、余自ら尋問を行う。
なぜ、そんな事態になったのかを問い質してやろう。」
「はあ、それが旗艦は行方不明、提督も帰投しておらずとのことでして。
おそらく、提督も旗艦と共に海に沈んでしまったのではとのことです。」
結局、旗艦の行方は杳として知れず、艦隊指揮官であった提督も行方不明のまま殉職したことになった。
そして、無事帰投できた海軍の者達への尋問結果であるが…。
にわかには信じられないモノであった。
事故の原因は、居眠り操船だと言う。
弛んでるとしか言いようがない、海軍は軍規がそこまで乱れているのであるか。
余は呆れて、居眠りをした者を割り出し、銃殺刑にしろと命じたのだが。
「陛下は帰投した兵士全てを銃殺刑にしろと申しますか?
ご命令とあらば、仰せの通りにいたしますが。
一人前の船乗りを育てるのには十年を要することをお忘れなきよう。」
こいつは何を言っておるのだ?
それでは、帰投した者すべてが居眠りをしていたようではないか。
余はそれを問い質すと報告に来た海軍の幹部は言ったのだ。
「はい、おっしゃられる通りでございます。
艦隊に乗艦していた者はことごとく居眠りをしていたそうです。」
「それは、もしや、海難事故は深夜の話であるか?」
「いいえ、昼の日中の話だそうです。」
この男、余をおちょくっているのではあるまいな。
余は本気で目の前にいる海軍の幹部を斬り捨ててやろうかと思った。
百隻の艦隊に乗艦していた者が全て居眠りをしていた?
軍規が緩むにも限度というものがあろうに。
すると、この男、こんなことを言いおった。
「実は帰投した者が口を揃えて証言するのです。
『耳に心地よい歌声が何処からともなく聞こえてきたかと思ったら、急に眠くなったと。』
皆が言います、艦隊はセイーレンに魅入られたのだと。」
余はこの時、思わず言いそうになったぞ、寝言は寝て言えと。
この時、余はつゆほども考えていなかったのだ。
まさか、ほとんど同じ言葉をもう一度聞くことになろうとは。
**********
昨年の六月、余は頭を悩ませていた。
もう慢性の胃痛は止むことが無い状態であった。
それほどまでに、精神的ストレスが溜まっていたのだ。
頭を悩ましているのは、集結した十四万の軍勢を如何にして対岸のアルビオン王国に送り込むかについてである。
アクデニス艦隊が失われた今となっては、兵員輸送船を護衛する軍艦の数さえ心もとないのだ。
当初の作戦では、一部の戦列艦を用いた奇襲でアルビオン海軍の軍港ポートチェスターを襲撃することになっていた。
それによって、アルビオン王国の本土防衛用の艦隊を釘付けにしてしまおうと計画したのだ。
より確実に陸戦隊をアルビオン王国に渡らせるために。
ところが、アクデニス艦隊の壊滅によって、ポートチェスターの襲撃に割く戦列艦は無くなってしまった。
果たして、確実に陸戦隊をアルビオン王国に侵攻させられるのであろうか…。
キリキリと痛む胃を押さえながら、執務机で作戦を練り直していると。
血相を変えた男が余の執務室に飛び込んできおった。
その男の顔を見た時、余は嫌な予感がしたのだ。
部屋に跳び込んできたのは、いつぞやの海軍幹部であった。
名は知らん、聞くほど高位な者でない事は確かだ。
「ただいま、アルビオン王国侵攻部隊、作戦司令部から早馬による知らせが入りました。
アルビオン王国侵攻ために集結した艦艇が全て消失したとの報告です。」
ほら見た事か、この男が血相を変えて持ってくる話はロクでもない事ばかりだ…。
「こら、言葉遣いは正確にしないか。
消え失せたとはどういう事であるか、船が消える訳がなかろうが。」
余が直々にその者に注意をすると、こんな言葉が返ってきたのだ。
「いえ、文字通り消滅したとしか言えない現象が起こったそうです。
司令部の施設内にいる者が目を離した数時間のうちに艦艇が消えてしまったとの報告です。」
「それは、夜中の出来事であるか?」
「いえ、昼下がりの事だそうです。」
「バカなことを言うのも大概にしろ。
あれだけ大きな軍事施設だぞ、十万人以上の兵士達がいる軍港だぞ。
多くの者が見ているのだ、多数の艦艇がどうやって消えると言うのか。」
「それが、軍港内の施設にいる者、全てが居眠りをしていたそうです。
やはり、何処からか心地良い歌が聞こえてきたかと思ったら、激しい睡魔に襲われたそうで。
数時間後、施設内の者が目を覚ますと、艦艇は一隻もなかったそうです。」
停泊していた艦艇には必ず艦艇の整備等をしている者が乗っていたのだが。
不思議な事に、その全員が沖合にある軍港防衛用の海上要塞で寝ていたそうだ。
当然、そんな場所に行った覚えがないと全員が証言していると言う。
この男は報告の後に言いおった。
「海軍の兵士達の間には、我が国の海軍はセイレーンに魅入られていると言う噂が流布しているようです。」
また、セイレーンか、いったい何が起こっていると言うのだ。
分からないことだらけである。
だが、この時、余の悩みが一つ解決したことが判明した。
もう、十四万の軍勢をどうやって送り込むかに頭を悩ませる必要はないと。
作戦は中止だ、兵員を送る手段が失われたのなら決行は不可能ではないか。
最近、余の辞書に多いな、…不可能という文字…。
アルム山脈越えの作戦断念から一年もしない翌年の春の事であった。
我がセルベチア共和画には不俱戴天の仇ともいえる国がある。
それは、我が国の沖合に浮かぶ巨大な島国、アルビオン王国である。
どのくらい仲が悪いかといえば、その昔、百年にもわたって戦争をしていたくらいに。
良くも飽きずに戦えたものだなと呆れるが、そのくらい犬猿の仲なのだ。
そのアルビオン王国、最近は大陸にちょっかいを出してくることが無くなっている。
彼の国は島国だけあって海軍力が充実しており、それをもって世界各地に植民地を築き上げた。
今は、植民地支配に力を注ぐ方が国を富ませると判断して、大陸情勢には余り関与しない事にしてるようだ。
よって、こちらが手を出さなければ、彼の国と戦いになる事は無いのだが…。
彼の国には、余が喉から手が出るほど欲しいものがあるのだ。
軍事力を強化するために必要な鉄、その原料である鉄鉱石と製鉄に用いる石炭。
彼の国では、それが潤沢に採掘できるのだ。
それに加え、彼の国が抱えている広大な植民地。
ちっぽけな島国ではあるが、植民地からの上りで、その経済力たるや悔しいが我が国より一段上なのだ。
彼の国を支配下に置ければ、それを全て自由にできるのだ。
我が国は更に繁栄し、余の権勢もより強くなることであろうと考えたのだ。
勝算はある。
幸い彼の国と我が国を隔てる海峡は、その気になれば泳いで渡れるほど狭いのだ。
本当に目と鼻の先と言って良い近さである。
この狭い海峡を大規模な輸送船団を組んで一気に渡って、陸戦隊を送り込むのだ。
彼の国の海軍は、兵士の練度や軍艦の数、どれをとっても我が国より数段上である。
だが、陸軍に関しては我が国の方がはるかに兵士の練度も高いし、武装も充実しているのだ。
アルビオン王国侵攻のために用意した陸戦隊の総員は十四万人、これを大船団で一気に進攻させる。
そのために、余は我が国の虎の子とも言えるアクデニス艦隊を、対アルビオンに集結させることとしたのだ。
海軍力総体では彼の国には勝てないが、だが、それは植民地支配のために広い世界に散らばっている。
局所、局所では我が国の方が戦力が上回っているところだってあるのだ。
その一つが、アクデニス海の制海権を維持するために配備しているアクデニス艦隊だ。
余は、これを、アルビオン王国と対峙する軍港に配備している艦隊と合流させることに決めたのだ。
それにより、一時的にではあるが、この方面の海軍力はアルビオン海軍を凌駕することになる。
この海軍力をもって、兵員輸送船団を護衛し、無事に海峡を渡らせようと計画したのだ。
**********
そして、作戦決行迄あと一ヵ月と迫った五月下旬の事である。
「何?まだ、アクデニス艦隊が合流しない?
いったいどういう事だ、遅くとも五月中旬には合流するように命令したはずであるぞ。
たしか、出港した時に早馬で知らせが来たな。
たしか、三月下旬には出港したと報告があったはずだぞ。」
「はっ、私もそう伺っていますが…。」
海軍からの知らせに疑問を抱き、従来聞かされていた情報を確認したところ。
宰相は間違いないと言う。
では、アクデニス艦隊はどこをうろついているのだ。
「至急、アクデニス艦隊の艦隊司令部に確認の早馬を出すのだ。
それと、アルビオン侵攻部隊の司令部にも早馬を出して、まだ到着していないかを確認するだ。
ここに連絡の早馬が着くまでの間に合流が叶っているやも知れんからな。」
余が情報の確認の指示を出した、まさにその時のことであった。
息を切らした海軍の幹部が一通の書状を持って走り込んで来たのだ。
「失礼します。緊急故、ご無礼をお許しください。
ただいま、アクデニス艦隊司令部より早馬による報告がございました。
アルビオン王国侵攻部隊に合流すべく出港した軍用艦百隻が海難事故を起こしました。
八十余隻が沈没、沈没を免れた艦の多くも損傷が酷く航行を断念、帰投できた艦はわずかに八隻とのこと。
実に九十隻以上の艦が失われたとのことです。」
余はそれを聞いて耳を疑ったぞ、百隻中、無事帰投したのがわずかに八隻?
全滅ではないか。なぜそんなことが起こりうるのだ。
「至急、アクデニス艦隊の提督を招聘しろ、余自ら尋問を行う。
なぜ、そんな事態になったのかを問い質してやろう。」
「はあ、それが旗艦は行方不明、提督も帰投しておらずとのことでして。
おそらく、提督も旗艦と共に海に沈んでしまったのではとのことです。」
結局、旗艦の行方は杳として知れず、艦隊指揮官であった提督も行方不明のまま殉職したことになった。
そして、無事帰投できた海軍の者達への尋問結果であるが…。
にわかには信じられないモノであった。
事故の原因は、居眠り操船だと言う。
弛んでるとしか言いようがない、海軍は軍規がそこまで乱れているのであるか。
余は呆れて、居眠りをした者を割り出し、銃殺刑にしろと命じたのだが。
「陛下は帰投した兵士全てを銃殺刑にしろと申しますか?
ご命令とあらば、仰せの通りにいたしますが。
一人前の船乗りを育てるのには十年を要することをお忘れなきよう。」
こいつは何を言っておるのだ?
それでは、帰投した者すべてが居眠りをしていたようではないか。
余はそれを問い質すと報告に来た海軍の幹部は言ったのだ。
「はい、おっしゃられる通りでございます。
艦隊に乗艦していた者はことごとく居眠りをしていたそうです。」
「それは、もしや、海難事故は深夜の話であるか?」
「いいえ、昼の日中の話だそうです。」
この男、余をおちょくっているのではあるまいな。
余は本気で目の前にいる海軍の幹部を斬り捨ててやろうかと思った。
百隻の艦隊に乗艦していた者が全て居眠りをしていた?
軍規が緩むにも限度というものがあろうに。
すると、この男、こんなことを言いおった。
「実は帰投した者が口を揃えて証言するのです。
『耳に心地よい歌声が何処からともなく聞こえてきたかと思ったら、急に眠くなったと。』
皆が言います、艦隊はセイーレンに魅入られたのだと。」
余はこの時、思わず言いそうになったぞ、寝言は寝て言えと。
この時、余はつゆほども考えていなかったのだ。
まさか、ほとんど同じ言葉をもう一度聞くことになろうとは。
**********
昨年の六月、余は頭を悩ませていた。
もう慢性の胃痛は止むことが無い状態であった。
それほどまでに、精神的ストレスが溜まっていたのだ。
頭を悩ましているのは、集結した十四万の軍勢を如何にして対岸のアルビオン王国に送り込むかについてである。
アクデニス艦隊が失われた今となっては、兵員輸送船を護衛する軍艦の数さえ心もとないのだ。
当初の作戦では、一部の戦列艦を用いた奇襲でアルビオン海軍の軍港ポートチェスターを襲撃することになっていた。
それによって、アルビオン王国の本土防衛用の艦隊を釘付けにしてしまおうと計画したのだ。
より確実に陸戦隊をアルビオン王国に渡らせるために。
ところが、アクデニス艦隊の壊滅によって、ポートチェスターの襲撃に割く戦列艦は無くなってしまった。
果たして、確実に陸戦隊をアルビオン王国に侵攻させられるのであろうか…。
キリキリと痛む胃を押さえながら、執務机で作戦を練り直していると。
血相を変えた男が余の執務室に飛び込んできおった。
その男の顔を見た時、余は嫌な予感がしたのだ。
部屋に跳び込んできたのは、いつぞやの海軍幹部であった。
名は知らん、聞くほど高位な者でない事は確かだ。
「ただいま、アルビオン王国侵攻部隊、作戦司令部から早馬による知らせが入りました。
アルビオン王国侵攻ために集結した艦艇が全て消失したとの報告です。」
ほら見た事か、この男が血相を変えて持ってくる話はロクでもない事ばかりだ…。
「こら、言葉遣いは正確にしないか。
消え失せたとはどういう事であるか、船が消える訳がなかろうが。」
余が直々にその者に注意をすると、こんな言葉が返ってきたのだ。
「いえ、文字通り消滅したとしか言えない現象が起こったそうです。
司令部の施設内にいる者が目を離した数時間のうちに艦艇が消えてしまったとの報告です。」
「それは、夜中の出来事であるか?」
「いえ、昼下がりの事だそうです。」
「バカなことを言うのも大概にしろ。
あれだけ大きな軍事施設だぞ、十万人以上の兵士達がいる軍港だぞ。
多くの者が見ているのだ、多数の艦艇がどうやって消えると言うのか。」
「それが、軍港内の施設にいる者、全てが居眠りをしていたそうです。
やはり、何処からか心地良い歌が聞こえてきたかと思ったら、激しい睡魔に襲われたそうで。
数時間後、施設内の者が目を覚ますと、艦艇は一隻もなかったそうです。」
停泊していた艦艇には必ず艦艇の整備等をしている者が乗っていたのだが。
不思議な事に、その全員が沖合にある軍港防衛用の海上要塞で寝ていたそうだ。
当然、そんな場所に行った覚えがないと全員が証言していると言う。
この男は報告の後に言いおった。
「海軍の兵士達の間には、我が国の海軍はセイレーンに魅入られていると言う噂が流布しているようです。」
また、セイレーンか、いったい何が起こっていると言うのだ。
分からないことだらけである。
だが、この時、余の悩みが一つ解決したことが判明した。
もう、十四万の軍勢をどうやって送り込むかに頭を悩ませる必要はないと。
作戦は中止だ、兵員を送る手段が失われたのなら決行は不可能ではないか。
最近、余の辞書に多いな、…不可能という文字…。
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