166 / 580
第7章 できることから始めましょう
第164話 なんと温泉付きの宿舎です
しおりを挟む「んっ……ん、あふっ……」
寝室に戻ると、殿下はそのまますぐにシディを寝台へ連れていった。
ちなみにティガリエ以下の護衛たちは、魔法訓練場の時点から遠い物陰に隠れ、敢えてこちらを見ないようにしていたらしい。どうやらそれが貴人の護衛官として当然の作法であるようだ。
だが、ただの平民であるシディにとってこれは恥ずかしい以外のなにものでもなかった。殿下に抱かれて移動しながらいきなりその事実に気付いたとき、ほとんど蒸発しそうな気分にさせられる羽目になったのである。
いま、そのティガリエたちは部屋の外での警護になっている。かれらも獣人だからシディ同様耳はいいはずだ。だからあまり声をあげたりしたらマズイのだろうな、とちょっと思った。
しかし、結果的にそれは「思っただけ」ということになった。
「あ、あんっ……や、ああ……っ」
そうなのだ。声を我慢するなんて無理だった。
殿下は巧みにシディの衣服を脱がしていきながら、肌の上にひとつひとつ、優しく口づけを落としている。まるで「どこもかしこも私のものだ」と言わんばかりに、彼の唇が触れていない場所などいっさい許さないかのように。
額から頬、鼻先、顎。
それから耳、うなじを通って首筋から鎖骨。
……そして、胸の小さな尖りへ。
「はうっ……!」
そこをぺろりと舐められ、ちゅうっと吸い上げられた時、シディの背中はビクンと弓なりに跳ねた。片方を舌先でさらにちろちろと舐められ、もう片方は指でつままれ、こねられる。
触れられるごとに下腹部にどんどん熱が溜まっていく。するとそれを堪えようとして、つい膝が上がってしまう。まるで殿下の身体を挟むみたいにして。
「シディ……シディ。可愛い、愛してる……シディ」
「ん、んんぅ……でん、かあ……っ」
勝手にあふれてくる涙をどうすることもできない。
つらいからでもなく、こんな風に涙が溢れたのは初めてかもしれなかった。
そうして潤んだ目と、半泣きみたいになった甘い声。別にシディ自身が何を意図したわけでもないけれど、勝手にそうなってしまうのだ。でもそれが、ますます殿下を興奮させてしまうようだった。
殿下の頬が紅潮し、吐息が荒くなっていく。その手が胸元から脇腹を撫で、臍のところからさらに下りていく。指先がそうっと優しくシディの足の間のものに触れ、ビクッと腰が震えた。
「はうっ!」
「ふふ。気持ちよさそうだな? シディ」
「うっ……うう」
そうだった。シディのそこはすっかり欲望を主張して、殿下の胸元をぐいぐい押し戻すような勢いだ。そう言う殿下も、すでにかなりおつらそうに見えた。
(ああ……ちゃんと準備しなきゃ、いけなかったのに──)
朦朧となりながらそう思うけれど、すっかり腰が砕けていて、もう起き上がることもできない。殿下の腰がしっかり自分の上に乗っているので、ほとんど身動きもできないのだ。
本来であれば客をとる前に、きちんと自分の身体の準備をしておかねばならないのに。いやもちろん、殿下は「客」ではないけれど。
そうでなければ、結局自分自身が後悔することになる。穴と奥をしっかりきれいにし、入口は十分に広げて柔らかくしておく。滑りをよくするために、専用の油や塗り薬を塗っておく。でないとひどく傷つけられて流血の憂き目を見ることになるからだ。
傷ができて痛むからといって、男娼に次の客を拒む権利はない。そういう傷がもとで熱病にかかり、死んでいった仲間もたくさんいた。だからこれは、自分の命を守るために必須の準備だったものだ。
それなのに。
「でっ……殿下! なにを──」
殿下の手が寝台の脇から油壺のようなものを取り、たらたらとその中身を自分の股間に垂らしたのに気づいて、シディは慌てた。すっかり天を向いてそそり立ってしまっているシディのものの先端に、温かい油がとろとろと注がれる。どうやらそれも、ちゃんと事前に温められていたらしい。
「だめ……殿下。そんなの、オレが」
「だめだ。準備はすべて私がする」
「でも──」
「いいから。どうか私にさせてくれ。シディ」
首をのばして、殿下がちゅっとまた唇に口づけを落としてくださる。優しい瞳で見つめられると、もう何も言えなくなった。
油はシディのものから自然に下へと垂れていき、袋を濡らして最奥への入り口までをもぬるりと濡らした。香ばしい油の香りに、また意識がふわふわしはじめる。男娼のときに使ったものとは雲泥の差だ。きっとこれは貴人がお使いになる特別なものなのだろう。
と、股間からにちゅっと淫靡な音がして、シディはまた仰け反った。
「はううっ!」
殿下の手が自分の芯をつかみ、ゆっくりと上下し始めたのだ。
0
お気に入りに追加
326
あなたにおすすめの小説
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
悪女と言われた令嬢は隣国の王妃の座をお金で買う!
naturalsoft
恋愛
隣国のエスタナ帝国では七人の妃を娶る習わしがあった。日月火水木金土の曜日を司る七人の妃を選び、日曜が最上の正室であり月→土の順にランクが下がる。
これは過去に毎日誰の妃の下に向かうのか、熾烈な後宮争いがあり、多くの妃や子供が陰謀により亡くなった事で制定された制度であった。無論、その日に妃の下に向かうかどうかは皇帝が決めるが、溺愛している妃がいても、その曜日以外は訪れる事が禁じられていた。
そして今回、隣の国から妃として連れてこられた一人の悪女によって物語が始まる──
※キャライラストは専用ソフトを使った自作です。
※地図は専用ソフトを使い自作です。
※背景素材は一部有料版の素材を使わせて頂いております。転載禁止

転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
かの世界この世界
武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
人生のミス、ちょっとしたミスや、とんでもないミス、でも、人類全体、あるいは、地球的規模で見ると、どうでもいい些細な事。それを修正しようとすると異世界にぶっ飛んで、宇宙的規模で世界をひっくり返すことになるかもしれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる