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第5章 渡りに船と言いますが…

第75話 小っちゃくても元気になるそうです……

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 *本日、お昼に1話投稿しています。
  まだお読みでない方は、お手数をお掛けしますが1話戻ってお読みください。

     **********

 私は、みんなに紹介するために、二人を一階のリビングルームに案内しました。
 リビングルームに入ると、私に気が付いたアリィシャちゃんが駆け寄ってきます。

「ロッテお姉ちゃん、お帰りなさい。
 大丈夫だった? 何処もケガしていない?」

 心配そうな表情のアリィシャちゃんを安心させてあげないといけませんね。

「ええ、平気よ。ご覧の通り何処も怪我はしていないわ。
 ちゃんと海賊も退治したから安心してちょうだい。」

「本当に?」

「ええ、本当よ。」

「良かった~!やっぱり、ロッテお姉ちゃんはすごいや!」

 やっと安心したようで、アリィシャちゃんは満面の笑みを浮かべました。

「ところで、後ろの二人は誰?」

 アリィシャちゃんは、ホッとしたことで周りを見回す余裕ができたようで、やっと私の後ろに立つ二人に気が付きました。

「みんなのところで紹介するから少し待ってね。」

 私は三人を引き連れてソファーで待つリーナのところに向かいました。

「お帰りなさい、ロッテ。お疲れ様でした。
 あら、なんか人が増えていますね?」

 リーナは私が海賊などに不覚を取るとは微塵も思っていなかったようです。
 まるで私がお使いから帰ったような出迎え方でした。
 それより、私が連れている二人のことが気になる様子です。
 ちょうどカーラもリーナの後ろに控えているので、ここで紹介してしまいましょう。

「ただいま、リーナ。
 この二人は海賊に捕らわれていたのを救い出したの。
 紹介するわ、お姉さんの方がフランシーヌさん、妹さんの方がシャルちゃんね。」

「まあ、そうでしたの。
 はじめまして、私はカロリーネ・フォン・アルトブルクです。よろしくお願いしますね。
 賊に捕らわれて大変な思いをしたでしょう、ここは安全ですので肩の力を抜いてくださいね。」

 姉妹を労わる言葉をかけたリーナに、フランシーヌさんが言葉を返します。

「お気遣い頂き有り難うございます。
 私はフランシーヌ・ド・ベルホン=カンティと申します。こちらは、妹のシャルです。
 よろしくお願いします。」

 フランシーヌさんの自己紹介を聞いたリーナがハッとした表情を見せ私の顔を伺いました。
 家名を聞いて、フランシーヌさんがセルベチア王家に連なる人だと理解したようです。
 少しリーナと二人で話がしたいので、姉妹には一旦席を外してもらうことにします。

「さて、紹介も済んだところで今後について話がしたいのですけど。
 その前に、二人とも汗を流した方がよろしいようですね。
 カーラ、衣裳部屋はわかりますね。
 お二人をご案内してサイズのあう服を貸して差し上げて。
 それから、浴場にお連れして疲れを癒して頂きなさい。
 お二方ともやんごとなき生まれの方ですから、ご自分でお体を洗ったことがないと思います。
 湯船につかる前にカーラが洗って差し上げるのですよ。」

 実際、何日海賊に捕らわれていたのか知りませんが、二人からすえた臭いがします。
 浴場できれいに洗う必要がありそうなのです。 

「かしこまりました。
 では、お嬢様方、お着換えの用意をさせて頂きます。
 どうぞ、こちらへ。」

 私の指示に従い、カーラは二人を連れてリビングルームを出ていきました。


     **********


 三人を見送り、リーナの向かいに腰を下ろすとリーナは気まずそうに尋ねてきました。

「ロッテ、良いのですか、セルベチア王家の方など連れてきてしまって。
 揉め事に巻き込まれることになりかねませんよ。」

「一応ね、セルベチアの王政復古運動には一切関わらないと誓わせてはあるのですけどね。
 それと、あの姉妹はセルベチア共和国の連中から逃げるのに疲れているようで、自ら関わり合いになることはないと思うのよ。
 もし、帝国に火種を持ち込むようであれば、その辺の港町で放り出してしまおうかと思ったのですけど。
 姉妹は二人共平穏な生活を求めているようなので、放り出すのも可哀想だと思って連れてきたのですけどね。」

「ロッテがそう決めたのなら、私は何も言わないわ。
 それで、これからどうするつもり?」

「どうもあの二人、おじいさまと血縁があるらしいの。
 あの二人のお祖母様おばあさまが、帝国の皇室から嫁いだ人らしいのよ。
 だから、今日、明日にでもおじいさまに意向を伺いに行こうかと思っています。」

「そう、皇室の血も引いてらっしゃるのね。
 それでは、皇帝陛下のご意向を確認する必要がありますね。」

 私がリーナと話をしていると、何やら廊下から駆け足の音がしてきました。
 廊下を駆ける者などカーラしかおりません、ヘレーナさんに預けて躾けてもらったはずなのにまだガサツさが抜けきらないようですね。また、叱らないといけませんか。

「お嬢様、大変です!」

 扉を開けたカーラが開口一番叫びました。

「なんですか騒がしい。少し落ち着きなさい。
 だいたい、あの二人はどうしました。ちゃんとお世話するように言いつけたでしょう。」

「お二人には湯船に浸かって寛いで頂いております。
 その二人の件で大変なことがあったのです。
 妹さんの方、シャル様でしたっけ。
 お体をお流ししていたら付いていたのです。可愛らしいこのくらいのナニが。」

 カーラが自分の小指を私に示しながら言いました。

「はあ?」

 私がカーラの言わんとすることを理解できずにいると、……。

「ですから、石鹸で洗って差し上げていたら、ムクムクと元気になったのです。
 あれは間違いなく殿方のしるしです。」

「あ~、わたしそれ知っている!
 シャルちゃん、男の子だったんだ!
 おちん……。」

 私は慌ててアリィシャちゃんの口を塞ぎました。ダメです、淑女がそのような言葉を口にしては。
 そろそろ、アリィシャちゃんにも淑女教育をしないといけませんか。

 どうやら、シャルちゃんはシャル君だったようです……。
 道理でフランシーヌさんが断頭台を恐れていた訳です、王位継承権を保有していたのはフランシーヌさんではなくシャル君だったのですね。
 ずっと寝ていたし、どこから見ても可愛らしい女の子でしたので疑いもしませんでした。

 セルベチア革命の時、王家の本家の者は年齢を問わず全員が断頭台行きになりました。
 そして、分家の者も革命の時点で王位継承権が一桁の者は同様に死罪、それ以下の者は王位継承権を放棄すれば財産没収の上で永久国外追放で済んだと聞いております。

 恐らくは追手の目を欺くために、シャル君は女装をしていたのでしょう。
 帝国から嫁いできた姉妹のお祖母様おばあさまは王妃だったと言っていました。
 ということは、シャル君は最後の王の甥っ子に当たります。
 もしかしたら、革命時点での王位継承権が一桁だったのかも知れません。

 これは二人のことをもう少しよく聞く必要がありますね。
 それと、大至急おじいさまの許に相談に行く必要がありそうです。
 
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