召喚者は一家を支える。

RayRim

文字の大きさ
上 下
199 / 307
第2部

34話

しおりを挟む
 探索開始から3日、4日と経つと、寒さと継続的な魔力消費、慣れない足場で疲労が隠せなくなる。
 食料や素材、魔石は大漁だが、それで肉体的な疲労までは癒えない。

「今日は休養日にしよう。全員、ゆっくり休め。」

 朝食の場でそう告げると、全員が安堵の声を漏らした。一番疲労感を見せていない遥香と柊も、だいぶ堪えていたようである。
 アリス、バニラ、フィオナが居ないと、体調のコントロールが上手くいかない。誰かに補佐をしてもらわねば。

「温泉用の部屋を作るか。」
「あ、それなら任せてー。ちゃんと準備してるからー」

 既に朝食を終えた梓が、スキップ気味に外に出て、慌てて引き返してくる。暖気の魔導具を忘れていたようだ。
 扉の開け閉めだけでもだいぶ冷えるので、玄関を区切って設けている。
 手に入れた毛皮は、カーペット代わりに寝袋の中にと大活躍だ。

「遥香もくたびれたか?」
「…正直、甘く見てた。
 海底も慣れない環境だったけど、ここよりはマシだったよ。」

 靴下を脱ぎ、裸足で毛布の感触を楽しんでいる遥香。休養と言われ、気が抜けたように思える。
 わりと皆が疲れ切っている中、ケロッとしているのがカトリーナだ。
 
「お母さんの歩き方を覚えたい。」
「音を立てないように、気を付ければ良いだけですよ。」

 参考にならない回答、有難うございます。

「なるほど…」
「マジか。」

 流石、母子。通じてしまっていた。
 その説明だけじゃオレに理解出来そうもない…

「気にしながら歩いてみよう。」
「明日にしろ。今日はゆっくり休むんだ。」
「うん。」

 遥香を大人しくさせたところで、オレはオレで作業を始めることにする。魔石の結晶化である。
 設備をグロリアスに置いたままなのでピュアクリスタルにまでは出来ないが、今の内にストックは稼いでおきたい。
 全魔石の半分くらい済ませた所で、梓が戻ってきたので作業を切り上げる。
 
「準備できたよー。温泉もバッチリ!」
「梓たちから入ってこい。準備もしたし、前衛だったからな。」
「準備をしろー!行くぞ野郎共ー!」
『おー!』

 既に準備を終えていた柊が声を掛け、あっという間に遥香とソニアが飛び出していった。柊の言い方に少し驚いたが、このくらいふざけないと士気が維持できそうにないのでありがたい。

「ま、まってー!」

 言い出した当人である梓には想定外だったようで、慌てて準備をして追っていく。
 微笑ましい光景に、皆が思わず笑ってしまっていた。

「ヒガン様、ここには雪男以外に何が居るのでしょうか?」

 リリが近くにやって来て尋ねる。

「白いアッシュとか、氷のバケモノと言えば分かりやすいか?
 後は巨大な鳥や、白熊の親分だな。」
「ここで一番強いのはなんなのでしょうか?」
「雪女…じゃないかと思っているが、ちょっと確信はないな。」

 ゲームではまともに戦えば確かに強かった相手だが、道中がキツいせいで、確実な対策法があるせいで印象が霞みがちだ。

「ボスが一番強いのではないのですか?」
「単体ではそうなんだが、どれも複合で出られると厳しい。2体なら良いが、10とか出てくると、魔法を制限されている環境じゃ地獄を見る。進めば魔導弓も使えないだろうしな。」
「空を飛んでいるのは厄介そうだね。」
「ジュリアが居ればどうってことないが、ブリザードの影響がまだ分からないからな。」

 暴風雨の経験どころか、知識も怪しい面々だ。
 恐らく、突入初日は何も出来ない可能性が高い。

「ペンギンは居ないのでしょうか?」
「ペンギン?」

 メイプルに尋ねられるが、記憶から引き出せないので逆に尋ねると、随分と可愛らしい何かをアクアが描いてみせた。

「あー、いるいる。
 こいつは強いと言うより厄介だ。
 体が大きく、数が多い上に、水陸両方を滑るように速く動く。」
「大きいんですか…」

 眉毛を描き足し、なんだか妙に威厳のあるキャラクターにされる。そういう感じではないぞ?

「海から離れていれば脅威じゃないんだが、逆に海に囲まれると油断が出来ない。水中から飛び出して、体当たりで突き落とされたりするからな。」
「白熊にペンギンと、北極、南極の違いみたいなのはないのですね…」

 ここもダンジョンだからな、と言ってしまえばそれまでだが、個人的には知識の輸入元が気になる。

「ここのボスはハメ殺していた覚えがあるのですが、今回もそうするのでしょうか?」
「出来そうならやってみても良いが、恐らくオーディンと似たようなヤツだ。そういう戦法は印象が悪くなりそうなんだよな。」

 絵に手を加えながら質問を続けるアクアに答える。
 今度は筋骨隆々なペンギンに描き換えられる。そういうのでもない。

「ボスはブリザードの魔力妨害が無いはず。カトリーナと柊を中心に、戦いを組み立てるからよろしくな。」
「かしこまりました。」

 不敵な笑みを浮かべるカトリーナ。
 ここのボス相手に、物理アタッカー4枚は心強い。
 魔法に対する妨害を行う土地なだけあり、魔法に対する防御力も高いのがここのボス。物理的な強さを求める土地と言えるだろう。
 本当はフィオナに挑戦してもらいたかったが、別に役割があるので仕方ない。それに、機会はこれっきり、という訳でもないので次があればその時で良いだろう。
 まだビースト領とエルフ領を隔てる湾に辿り着いていないので、道程は1割程度だろうか。ブリザードに入ると更に進行は遅れる。急ぎたいが、急ぎすぎる訳にもいかないので、舵取りが難しいな。

「あーサッパリしたー。」

 普段着姿で戻ってくる遥香と柊。寒くないのだろうか。

「風邪を引かないようにしてくださいね?」

 そう言って、遥香に毛布を掛けるカトリーナだが、やんわり断られていた。

「あったまり過ぎて暑いくらいだよ。」
「そんなに熱くしたのか?」
「梓ちゃんがぬるいぬるいって言うから。」
「ああ、ドワーフだもんな。」

 暑いのも寒いのもあまり苦にならない種族だ。一緒に風呂に入るのは、ちょっとした修行かもしれない。

「でも、おかげで体も気持ちも楽になれたよ。歩くだけでも疲れるからね。」

 出番の少ない柊も、顔を紅潮させて苦笑いをしながら言う。
 対策はしているが、雪がブーツの中に入ったり、落ちてきた雪が首の隙間から服の中へ、ということもある。戦闘以外で気持ちを削られる要素がとても多かった。

「ここの主は性格が悪いよ。」
「そう言ってやるな。人が入らない雪山なんて、こんなもんだろう。」

 むくれ気味の遥香を宥めておく。

「空いたよー。お湯も入れ直しておいたから急いでねー」
「じゃあ、次はあたしらが。」

 準備を終えていたユキ、リリ、ジュリアが、楽しそうに出ていった。

「みんな、風呂好きだよなぁ。気持ちは分かるんだが。」
「入っている時も、出てからも心地よいですからね。」

 そう言って3人にイグドラシル水を振る舞うカトリーナ。
 ほどよく冷えているのか、グラスは結露している。

「あー、風呂上がりの一杯は堪らないねー」

 オッサンみたいな事を言う酒臭くないドワーフ。座り方といい、完全に出来上がっているようにも見える。
 遥香に倣うかのように、二人も裸足になって毛布の感触を楽しんでいた。

「今日はゴロゴロしてても良いぞ。訓練も準備もしなくて良い。だから、出発も少し遅らせようかと思う。」
「あー、一応、剣だけ見せて。手入れはするから。」

 全員が自分の得物を出し、梓の側に積み上げていく。すぐには終わらないだろうし、居ない連中のは後からでも良いだろう。
 毛布の上に布を敷き、冒険用の手入れセットを用意した。
 慣れた作業を手際よく進めていく。邪魔をしないでおこう。

「そう言えば、さっきここの魔物について話したんだよ。」
「あ、教えて。」

 大の字になっていた遥香が体を起こして尋ねてくる。
 ほぼ同じ説明をすると、梓に預けた自分の剣を鞘から抜いて眺め始めた。

「剣で斬れるよね?」
「そりゃな。棒でも殴れるぞ。」

 ふん!と大きめの鼻息を一つし、鞘に納めた。

「最近、良い所ない気がするから頑張らないと。」
「それは私もだよ。」

 ストレッチをしていた柊が、闘志を漲らせて言う。

「良い顔だが、今日の所は抑えておけ。
 特にお前たちとカトリーナには、頑張ってもらわないとダメだからな。」
『うん。』

 声を揃えて頷く二人。その様子に、梓はニコニコしながら作業を続ける。
 そんな梓は二人の保護者という感じが強い。二人とも戦闘に特化した結果、色々と置き忘れてきた責任を感じてしまう。
 だが、柊は服装や化粧について口うるさい叔母フィオナに指摘され続けた結果、女らしさを取り戻している感じはしていた。
 逆に四女はどんどん粗野さが増すのは何故なのか?隙あらば飛び出していきそうな不安が拭えない。

 順番に風呂を終え、いよいよ最後、カトリーナ達の番である。

「旦那様は一緒じゃないのですか?」
『えっ?』

 カトリーナの言葉に、オレとアクアの声が揃った。
 ユキならともかく、アクアと一緒は流石に…

「あ、あ、あたしはその、カトリーナさんと一緒だと比べられてしまいそうであの…」
「あたしとなら大丈夫というみたいな言い方じゃねぇですかい?」

 軽口を叩くユキだが、メイプルと梓と柊とジュリアくらいしか笑っていない。遥香の目が特に怖い!

「流石に一緒は無理だ。オレは最後に入るよ。掃除もしておきたいし。」
「そ、そ、そうですか。」

 ホッと胸を撫で下ろすアクア。
 元々身長は高いのだが、10年で体型まで非常に女性らしくなっている。カトリーナとも、柊とも違う魅力を持っていた。

「旅の間はそういうのは無しで頼むぞ。特に動きが不穏なリリ。」
「えっ!?」

 後ろだったら気付かないと思ったのだろうか。自分の寝袋を、オレのヤツの側に持っていこうとするんじゃない。

「冬の間にお腹が大きくなってエルディーに戻るのはやめてよー?
 そうなると、お姉ちゃんが荒れそうだから…」
『確かに…』

 オレ含め、全員が納得してしまった。
『わたしが!ふゆのあいだ!研究!開発!訓練に励んでいたのに!おまえたちは!子作りに励んでいたのかー!?』とか言いながら、ビビビとビンタの嵐となりそうである。

「口悪ディモスの顔を立てて上げましょう。吹雪の中、ヒガン様と抱き合うのも大変魅力的ではございますが。」
「凍傷を負いそうだから勘弁してくれ。」
「アクア、鼻血が。」
「えっ!?ああっ!?」

 遥香に言われ、慌てて布を突っ込むアクア。久し振りの状況に、思わず皆が吹き出した。

「アクアも変わらないな。すっかり、カトリーナと並んでも遜色のない女性になったのに。」
「だ、旦那様、そういう事を仰られると、鼻血が…」
「アクア、お風呂に行きましょう。向こうなら汚れても大丈夫ですので。」

 そうカトリーナに言われ、着替えなどを持ってそそくさと出ていった。

「で、お父さんとして、アクアはどうなの?」
「オレはその気があるなら受け入れるよ。」
「うーん。それで良いのかなぁ…」

 どうも納得いかない様子の遥香。

「あたしは恩が多すぎて、旦那以外に考えられやせんからね。」
「私も多分、冒険者を続けるのはヒガン以外無理そうだったし。アリスも同じだよ。」
「ココアは悲願叶って、という感じだもんねー」
「母さんは、遥香と離れたくないからだと思うよ?」

 柊の一言でギョッとなる遥香。

「…うう。確かに、お母さんを私も求めたけど、自分が理由にされるのは不本意!」

 落ち着き無く、手の動きまで怪しい遥香。

「多分、遥香が居なかったら、一生エルディーから出なかったと思うぞ。本人もそう言ってたし。」
「ハルちゃんは罪な女だねーうおっぷ!?」
「あずさちゃん!」

 クッションを顔に投げ付けられ、慌てて作業を中断する梓。

「出会った頃から遥香を溺愛していたからな。
 レオンはアレックスや悠里に付けるようだが、もう一人生まれたら、遥香に付けておきたいんじゃないか?」
「そ、そんな事はないと思うけど…」
「オレとしては本人の意志を尊重したいが。」
「そ、そうだよね。そうあるべきだよ。」

 慌てた様子で納得する遥香。
 それを見たリリが、とても良い笑顔をしているが、腹黒さを感じるのは何故なのか。

 この後も、今日一日は雑談や軽い作業のみとなり、平穏な一日が無事に幕を下ろしたのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

修行マニアの高校生 異世界で最強になったのでスローライフを志す

佐原
ファンタジー
毎日修行を勤しむ高校生西郷努は柔道、ボクシング、レスリング、剣道、など日本の武術以外にも海外の武術を極め、世界王者を陰ながらぶっ倒した。その後、しばらくの間目標がなくなるが、努は「次は神でも倒すか」と志すが、どうやって神に会うか考えた末に死ねば良いと考え、自殺し見事転生するこができた。その世界ではステータスや魔法などが存在するゲームのような世界で、努は次に魔法を極めた末に最高神をぶっ倒し、やることがなくなったので「だらだらしながら定住先を見つけよう」ついでに伴侶も見つかるといいなとか思いながらスローライフを目指す。 誤字脱字や話のおかしな点について何か有れば教えて下さい。また感想待ってます。返信できるかわかりませんが、極力返します。 また今まで感想を却下してしまった皆さんすいません。 僕は豆腐メンタルなのでマイナスのことの感想は控えて頂きたいです。 不定期投稿になります、週に一回は投稿したいと思います。お待たせして申し訳ございません。 他作品はストックもかなり有りますので、そちらで回したいと思います

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

女神様から同情された結果こうなった

回復師
ファンタジー
 どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。 何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。 何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。 それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。 そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。 見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。 「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」 にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。 「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。 「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。

処理中です...