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第1.5部
番外編 〈魔国英雄〉は嫁達の転生を見届ける
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〈魔国英雄ヒガン〉
72層に登った所で休憩、というより野戦病院状態の一団と会った。
死ぬことはないようだが、痛みは本物。ダメージが大きすぎて進めず戻れずといった様子。
オレたちには準備運動くらいの相手だが、他はそういうわけでもないようだ。
やはり、装備の質が数段低いのが気になるな…
とは言え、ここまでで死屍累々となる様な状況の痕跡はなかった。この先か?
「…通り抜ける?」
「ポーションくらいは協力しよう。」
一生懸命治療をしている所に声を掛ける。
「なんだ!?今は忙しい!」
「必要ならポーションを融通するが?」
その提案に、一瞬だけ治療しているヤツが喜色を浮かべるが、オレの顔を見て表情が曇る。
「…英雄か。返せるものがない。」
「構わない。
死ぬことに慣れるつもりがないなら、いくらでも手伝おう。」
「ありがたい。だが、ポーションだけで良い。貴殿の魔法の強力さは耳に届いているからな。」
ポーションも大概だ、とよく言われるが。
ストックは潤沢なので20本ほど提供した。
「使うのは最後だ。欠損部分が再生しなくなるからな。細かい傷なら少量で良い。」
「あ、ああ。助言感謝する。」
「では、オレたちは行く。また会おう。」
「助かったよ、またな。」
他の皆も、会釈してから安全地帯を抜けた。
血痕を辿っていくと、すぐにモンスターハウスに遭遇する。予兆も無くだ。感知にも掛かっていない。
フェルナンドさん姿の大きなドッペルドールと、無数の植物系魔物。しばらく来ない間に、厄介になっているな。
「ステップ2!」
一気に警戒度を上げ、オレとアリスを中心に縦長の陣形。全員にバフを掛けて備える。
「柊、いけるな?」
「うん。油断はしない!」
返事をした柊は、先に前に出て構える。
「フィオナ、ジュリアのサポートだ。」
「承りますわ。」
「ジュリア、矢は吹っ飛ばせるもので良い。柊を自由にさせろ。数が減ったら他に切り替えだ。」
「わかった!」
二人は右側へ移動し、ジュリアは弓とは呼べそうにない、攻城兵器かと思うような物体を地面に固定して構える。本体も弓弦も金属製で、エルフの装備という感じが微塵もない。
「アリス、側でバッファ役を頼む。」
「あなたは?」
「魔法攻撃を担うよ。」
「わかった。」
相手のドッペルドールたちが先に向かってくる。だが、射程はこちらが上。
魔導師用の杖と盾を構え、準備万端。
【インクリース・オール】【バリア・オール】
バフを貰い、いよいよ臨戦態勢。
「3、2、1、行け!」
合図と共に柊が駆け出し、先頭の飛び出していた一体を蹴り飛ばす 。
右側から柊を狙って、攻撃を繰り出そうとしたヤツはジュリアの一矢で後続を巻き込みながら吹き飛んだ。
オレも悠長にしていられない。
【ヴォイド・ブラスト】
範囲を狭め、威力重視の放射。
ジュリアに負けない数を巻き込んだ。
吹き飛ばされたヤツの3割程度が再起不能だが、数はまだまだいる。
柊を巻き込まないよう、10射ほどしたところで、ようやく向こうが見えた。
なんでこんなことになっているんだ?
【インクリース・オール】【バリア・オール】
アリスによる掛け直し。
油断するなと尻を叩かれた気持ちだ。
「柊、もう少しだが油断するな。
ジュリア、矢を切り替えて良いぞ。」
「うん。」
返事をしたのはジュリアだけ、柊も分かっていそうだな。
柊が一体の首を殴り飛ばすと、なんだか嫌な予感がしてくる。
「警戒高めろ!」
【ヴォイド・ストライク】
雑魚を一ヶ所にまとまるように弾き飛ばし、意図を理解したジュリアが的確に串刺しにしていく。
【フォース・インパクト】
それを柊の生んだ巨大な拳による一撃が、まとめてぺちゃんこにした。
極まるとこういう使い方も出来るのか。凄いな。
感心していると、目の前に一体のドッペルドールが現れる。いや、違う。これは…
「レア種のドッペルキラーだ!強さを見誤るなよ!」
油断する連中じゃないが、声は掛けておく。
見た目はカトリーナに戻っているな。
カトリーナと同じなのは、見た目だけじゃなかった。あの強烈なパワーと速さを備え、武器もククリと同じ。完全再現カトリーナとなっていた。
初擊を柊は、キラーの手首を押さえて止め、それで把握できたようだ。
初擊のでは押し切れないと判断したのか、キラーは跳躍して離れ、自らに魔法を掛ける。そんな事もするのかよ。
同じではないが、インクリース・パワーとスピードが近いか。
柊もその間に準備をする。
【フォースインパクト】【ハードインパクト】
フォースインパクトにハードインパクトを掛けるなどというイレギュラーを行い、それで挑むようだ。
短剣と格闘。二人とも武器が短いせいで援護攻撃をしてやれない。
フィオナを見ると確信した笑みを浮かべ、首を横に振った。
「娘を信じましょう。」
アリスの言葉に頷き、盾だけ構え続ける事にした。
先に仕掛けたのは柊。幹が折れるのでは?と思うほどの踏み込みからの右ストレート。
キラーはそれを更に柊の右側へと跳んで避ける。左からのカウンターを警戒したか?
範囲が広いフォースインパクトの影響を警戒してか、距離を取った為に即カウンターとはならず、キラーが動く間に柊も構え直す。
キラーの斬擊を殴り弾き、二擊、三擊と繰り返す。なるほど、フォースインパクトを大きなグローブに見立てたのか。
キラーがバックステップして離れ、高く跳躍。そのまま、エア・ストライクのような魔法を撃った反動で加速して落下してきた。
紙一重で避け、後ろ頭を殴りつけようとする柊。だが、それはキラーを捉えられなかった。これはまずい。
キラーが影に落ちたのだ。察した柊も跳躍するが、遅れる。足元からキラーが速く空へと落ち、斬擊が柊の胸当てを切り裂いた。
アリスの悲鳴に近い、あっと言う声が耳に入る。視線を向けられないが、戦っている本人以上に緊張しているのは伝わってきていた。
柊の表情も歪んでいる。痛み、というより悔しさだろうか。胸当てをやられただけで、ダメージにはなっていない。
だが、そのまま見過ごす柊ではない。1対1の支援がない状況でのその一撃は、捨て身の高リスクな一撃だった。キラーも察し、空中で姿勢を整えて防御体勢。
しかし、放ったのは胸を突く右ストレートの動作だが、手から離れたハードインパクトを纏ったフォースインパクトは側頭部へ吸い込まれるように決まる。
自分の動作そのものをフェイントに利用したか。
キラーは凄まじい勢いでぶっ飛ばされ、壁となっている幹にぶつかって止まる。
まだ戦意を見せたが、致命的な一撃だったようですぐに動かなくなった。
「…ありがとうございました。」
構えを解き、一礼をする柊。そういう場所じゃないからな?
「シュウ!」
駆け寄ったのはフィオナ。心配そうに体のあちこちを触る。
胸当てが脱落し…すぐ目を逸らした。
「賢明な判断よ。」
「…オレたちはキラーを見るよ。」
最早残骸と成り果てたドッペルキラー。
調べても中身の違いは分からないが、柊に一撃を与えた凄い個体だ。放置ももったいないので回収しておいた。
「強かったわね。柊、手合わせしてどうだった?」
「単調で助かったかな。母さんなら、あんな見え透いた手は使わないと思う。影に落ちるのは想定してなかったけど…」
「あれを見抜けるのは、勘の鋭すぎるヤツだけだよ。怪我はないか?」
回収している間に着替え、装備も予備のに取り替えていた。
「大丈夫ですわ。流石はアズサの防具ですわね。」
「また梓に助けられちゃったよ。私もまだまだだ。」
「梓は喜びそうだな。インパクトの使い方はバニラの入れ知恵か?」
「ううん。自分で考えたよ。」
「良い使い方だったな。後でバニラに相談して、最適化してもらうと良い。」
真正面から叩き付けるかと思いきや、手から離して側頭部への一撃。扱いなれているなぁと感心してしまった。
「私としては逃げの一撃だったけどね。これ以上は長引かせられない。そう思っての一撃だったから…」
「そうか。」
オレとそう身長の変わらない娘の頭を撫でてやる。出会った時はもう少し低かった気がするな。
「私は子供じゃないよ?」
「それでも、大事な次女だよ。長女や四女、五女ほど手は掛からないが、危なっかしい。」
「ふふ。そうだったね。」
反省会、回収、装備チェックを終え、オレたちは再び攻略を再開し、消耗を考慮して74層の安全地帯で一晩過ごす事にした。
72層のモンスターハウス以降、特に問題が起こる事もなく、ビフレストに到着する。
『お前たちか。通ると良い。』
姿すら見せないヘイムダルに許可を得て、オレたちはビフレストを渡り始める。
「メイプル、着いたから頼む。」
『わかりましたー』
『虹の彼方に』を歌い始めるメイプル。初回メンバーが居る時は、これが恒例となっている。
「何度も聞いたけど、やっぱり自分で見て、歩いて、聞くのは違うわね。」
目を潤ませながら言うアリス。
最初は覚束ない足取りだったが、今はしっかりと補助器具無しで歩いている。
顔色は相変わらず良くないが、興奮して少し顔に赤みがあった。
「轟音で大声じゃないと聞こえないけどな。」
「しかたないわよ!」
悪戯をするような笑みを浮かべ、大きな声で叫ぶように言うアリス。
母の顔ではなく、幼い頃に夢見たであろう場所に立つ無邪気な顔。久し振りにそんな顔を見れた気がする。
「あれが北の果てね。」
「次の攻略目標だ。」
「何かあるの?」
「行くまでが大冒険だよ。常に極寒で生き物を拒む大地だ。」
明らかに夏場と違って白い所が多い。エルディーも、不自然に雪に覆われている様に見えるな。
「ここから観測し続けて分かることもあるんでしょうね。」
「オーディンが嘘を見せていなければな。」
「ふふ。そうね。」
笑顔でそう言うと、オレの手を引いて歩き出す。
「さあ、行きましょう。私たちに立ち止まってる暇はないんだから!」
こうして、足早にビフレストの残りを渡り終え、久し振りに花畑へと足を踏み入れた。
『では、オリハルコンのインゴット、金貨100枚、イグドラシルの種を貰おう。』
「どうかお受け取り下さい。」
跪き、貢ぎ物を丁寧に差し出すアリス。
『他の者に見習わせたいくらいだ。』
そう言われ、目を逸らすオレと柊。オレはそれどころじゃなかったけどな…
『だが、汝の問題は根深い。転生だけで解決するものではない。』
「…どういうことですか?」
『魂に刻まれた呪いとでも言うべきか。なんとしても次世代へ命を繋がせない、という意志を感じる。』
「それじゃあ…」
『汝の苦悩は子供にも受け継がれる事になる。』
その場で崩れ落ちるように座り込み、オーディンの前であることを忘れているかの様な大泣き。
オレとの子供なら大丈夫。そう思っていたに違いない。
だが、現実はそうではなかったようで、双子、特に娘はアリスの問題を継承する事になってしまった。
「母方の呪いか?」
『そうだな。恐らく、この者の母達はそれを覚悟した上で産んだのだろう。』
「でも…兄、妹は私の問題を抱えていないわ…」
『そうか。代を重ねる事で、綻びが生まれているのかも知れぬ。だったら、汝の子供は無事な可能性が高い。』
可能性、という事は、成長するまで分からないな。
『泣き虫な方のアリス。心配する必要はない。おまえの子供の4人の姉は色んな事を乗り越えてきた。可愛い弟と妹がどんな苦難の沼に沈もうとも引っ張り上げてみせるよ。』
聞いていたバニラが、通話器越しでアリスに話し掛ける。
姉妹3人が幼い弟と妹と一緒に、寄り添って通話器を見つめている。そんな気がした。
柊を見ると当然の様に頷く。横に居るフィオナとジュリアは、心配はないと言う様に微笑んでいた。
『おかーちゃん。オーディンへの質問はもう決まったよね。』
『私たちは家族のためなら何処だって行くから。』
大きく息を吐き、涙を拭って立ち上がる。
アリスにとって、何度目の挫折だったのだろう。でも、その度に立ち上がってきた。立ち上がってこれた。
「アリス、お前のそういう所が好きだよ。」
思わず口にしてしまった言葉にアリスはビクッとする。
「オーディン、聞きたいことは他にもあったけど、今聞きたいのは一つだけ。転生試験を始めましょう。」
『もう十分に見せてもらった。その意志を示したことで汝は合格とする。』
「…ありがとう。みんな、ありがとう!」
一生、忘れることの無さそうな良い笑顔をオレたちに見せ、アリスの身体は光に包まれて消えた。
『事情が事情だ。通常より少し時間が掛かるから暫し待て。』
腕組みをし、動かなくなるオーディン。
それほどの事なのだろう。
『…母がずっと娘に引け目を感じていた事も知っている。ちゃんと母らしくあろうと悩んでいたことも知っている。
だったら、娘もちゃんと姉らしくしてみせないとな。』
『うん。そうだね。』
『大丈夫。この子たちは強くなるよ。
だって、私たちの弟と妹だもん。』
通話器の向こうから聞こえる無邪気なチビ達の声。
姉妹が居れば大丈夫。道を誤っても、きっと正しい方向へ導いてくれるはずだ。
『おとーちゃんも頑張ってね?』
「…善処しよう。」
『頼りにならない父親だ!』
バニラにそう言われ、笑いに包まれるのであった。
30分ほど経ったところで、ようやく裸のアリスが戻ってくる。事前に用意していた毛布でその体を受け止めると、自信と確信に満ちた表情になっており、角は変わらずに歪なままであった。
「おかえり、アリス。」
「待たせてごめんね。これでまたちゃんと戦える。もう足手まといにはならないから。」
「足手まといになった事はないよ。少なくとも、オレと一緒の時はいつだって頼りしてるくらいだったからな。」
「…ありがとう。」
自然と互いに唇を重ねる。
咳払い聞こえたところで、状況に気付いて互いに顔を離した。
「次は私の番だよ。」
『えっ!?』
フィオナとオーディン以外、通話器からも驚きの声が聞こえた。
ジュリアが名乗り出たのだ。
「私だって一家を支えたい。だから転生を望んでも不思議じゃないでしょ?」
「そうだが…」
「それで十分だよ。パーティーメンバーでアリスだけ抜け駆けは許さないからね。
結婚も転生も自分だけはズルいもん。」
アリスの様に供物を捧げると、オーディンは頷いてそれを受け取った。
オレたちとの育ちの違いが出てしまうな。
『では、試験を開始する。全ての的を射抜くのだ。』
的として現れたのは無数の鳥。しかも小さい。
それを見て取り出したのは標準サイズの弓。物は金属で標準とは言い難いが。
【集中】【全身全霊】
全てを懸けるという意志がスキルに現れる。
ゴッソリと、ジュリアから何かが奪われるのを感知し、悪寒を覚える。
オレも【全身全霊】を使ったが、これは本当に最後の手段だな…
芸術的。その一言に尽きる。
素早い小さな的を的確に射抜いていく。最初は力任せで危なっかしいだけの狙撃手だったが、長い間修練を重ねる事でその才能を見事に開花させていた。
これ以上の射手は見付けられない。そう思わせるには十分の腕前だ。
不規則な軌道を描く最後の的も射抜いて見せると、オーディンを見た。
『合格だ。世に並ぶ事なき腕前であると我が保証しよう。』
「ううん。まだやれる。もっと上手くなれる。その保証はそれからが良いな。」
『汝にはまだ先の高みが臨めているという事か。面白い。』
強面のオーディンが笑顔を浮かべて納得した。
『では、転生を開始する。』
「ヒガン、私…私、もっと強くなるからね。」
そう言って、ジュリアは光に包まれて消えた。
出会った頃のロクに声が聞こえず、酷い猫背だった面影はもうない。
エルフにとってはそう長くはない期間だろうが、その間にジュリアは努力して才能を開花させた。姉妹揃って素晴らしい逸材だったという事を誰にも否定させない。
『…まったく、最後に悪い癖が出やしたね。』
聞いていたユキがぼやくように言った。
「良いのよ。私たちの時間は、特にエルフはまだ長いんだから。」
着替え終えたアリスがオレの横に来て言う。
服装が変わっており、今日のために準備したと思われる新しい冒険用の服装だ。
赤と黒なのは相変わらずだが、露出は一切無く、ヒラヒラしたものがいくつか付いているが、動きやすそうではあった。
「アリス、似合っているよ。」
「ありがとう。あなたに言われるのが一番嬉しいわ。」
『やい歪角魔人、あたしと旦那の間に割り込むんじゃねぇですぜ。』
「割り込んでないわよ。寄り添ってるだけだから。」
『ぐぎぎ…』
この二人も相変わらずである。
『…角はそのままなんですね。』
しおらしい声で呟くユキ。
言い合いは散々見てきたが、胸のサイズ以外で見た目を揶揄するのは初めてだな。
「そうよ。角のせいかと思ったけど違うみたいだからそのままにしたの。
だってこれは、私とお母様の数少ない繋がりだから。」
『羨ましいですぜ…』
珍しい反応のユキにオレたちは困惑して顔を見合わせた。
ユキはユキで苦悩があるのだろう。今まで、そんなものはあまり見せてこなかったが。
「というか、アリス、少し若くなったか?」
「え?見た目は変えてないわよ?」
『子育てに疲れ、老けて見えていたんですねわかります。』
『えっ!?』
バニラの放った一言に母親達の声が揃った。
メイドの誰かの声も聞こえていた気がするな…
そろそろだな、という事で再び毛布を準備する。
戻ってきた裸のジュリアを受け止めると、照れた様子で強引に唇を奪われた。
えっ!?なにこれ!?どういうこと!?
呆気に取られたのはオレだけでなく、アリスと柊もだ。
フィオナはガッツポーズをしている。分かっていて何も言わなかったな!?
「…夢を叶えてくれたお礼だよ。これからも何処へだって付いていくからね?」
「お、おう。」
困惑して頭が回らない。とにかく色々柔らかかったという印象のみが残る。
最後にフィオナもオーディンのエインヘリャルと戦う試験を終えると、転生に向かっていった。
上の空で詳細が認識できず、毛布を柊に渡す。
「ジュリアのキスで旦那様が壊れてしまったわよ?」
『えっ!?』
「…フィオナ、これは流石に想定してないんじゃないかしら?」
『…それは、気の毒に。』
少し胸の大きくなったフィオナが戻ってくると、柊が受け止める。そして、何やら話をしてから振り向き様に柊と唇を重ねて
『わああああっ!!!?』
二人とも叫んだ。
『策士、策に沈んだか…』
『奇策が効きすぎちゃったね…』
二人揃って顔を赤くし、念入りに唇を拭う姿が年相応に見えず、なんだか微笑ましかった。
72層に登った所で休憩、というより野戦病院状態の一団と会った。
死ぬことはないようだが、痛みは本物。ダメージが大きすぎて進めず戻れずといった様子。
オレたちには準備運動くらいの相手だが、他はそういうわけでもないようだ。
やはり、装備の質が数段低いのが気になるな…
とは言え、ここまでで死屍累々となる様な状況の痕跡はなかった。この先か?
「…通り抜ける?」
「ポーションくらいは協力しよう。」
一生懸命治療をしている所に声を掛ける。
「なんだ!?今は忙しい!」
「必要ならポーションを融通するが?」
その提案に、一瞬だけ治療しているヤツが喜色を浮かべるが、オレの顔を見て表情が曇る。
「…英雄か。返せるものがない。」
「構わない。
死ぬことに慣れるつもりがないなら、いくらでも手伝おう。」
「ありがたい。だが、ポーションだけで良い。貴殿の魔法の強力さは耳に届いているからな。」
ポーションも大概だ、とよく言われるが。
ストックは潤沢なので20本ほど提供した。
「使うのは最後だ。欠損部分が再生しなくなるからな。細かい傷なら少量で良い。」
「あ、ああ。助言感謝する。」
「では、オレたちは行く。また会おう。」
「助かったよ、またな。」
他の皆も、会釈してから安全地帯を抜けた。
血痕を辿っていくと、すぐにモンスターハウスに遭遇する。予兆も無くだ。感知にも掛かっていない。
フェルナンドさん姿の大きなドッペルドールと、無数の植物系魔物。しばらく来ない間に、厄介になっているな。
「ステップ2!」
一気に警戒度を上げ、オレとアリスを中心に縦長の陣形。全員にバフを掛けて備える。
「柊、いけるな?」
「うん。油断はしない!」
返事をした柊は、先に前に出て構える。
「フィオナ、ジュリアのサポートだ。」
「承りますわ。」
「ジュリア、矢は吹っ飛ばせるもので良い。柊を自由にさせろ。数が減ったら他に切り替えだ。」
「わかった!」
二人は右側へ移動し、ジュリアは弓とは呼べそうにない、攻城兵器かと思うような物体を地面に固定して構える。本体も弓弦も金属製で、エルフの装備という感じが微塵もない。
「アリス、側でバッファ役を頼む。」
「あなたは?」
「魔法攻撃を担うよ。」
「わかった。」
相手のドッペルドールたちが先に向かってくる。だが、射程はこちらが上。
魔導師用の杖と盾を構え、準備万端。
【インクリース・オール】【バリア・オール】
バフを貰い、いよいよ臨戦態勢。
「3、2、1、行け!」
合図と共に柊が駆け出し、先頭の飛び出していた一体を蹴り飛ばす 。
右側から柊を狙って、攻撃を繰り出そうとしたヤツはジュリアの一矢で後続を巻き込みながら吹き飛んだ。
オレも悠長にしていられない。
【ヴォイド・ブラスト】
範囲を狭め、威力重視の放射。
ジュリアに負けない数を巻き込んだ。
吹き飛ばされたヤツの3割程度が再起不能だが、数はまだまだいる。
柊を巻き込まないよう、10射ほどしたところで、ようやく向こうが見えた。
なんでこんなことになっているんだ?
【インクリース・オール】【バリア・オール】
アリスによる掛け直し。
油断するなと尻を叩かれた気持ちだ。
「柊、もう少しだが油断するな。
ジュリア、矢を切り替えて良いぞ。」
「うん。」
返事をしたのはジュリアだけ、柊も分かっていそうだな。
柊が一体の首を殴り飛ばすと、なんだか嫌な予感がしてくる。
「警戒高めろ!」
【ヴォイド・ストライク】
雑魚を一ヶ所にまとまるように弾き飛ばし、意図を理解したジュリアが的確に串刺しにしていく。
【フォース・インパクト】
それを柊の生んだ巨大な拳による一撃が、まとめてぺちゃんこにした。
極まるとこういう使い方も出来るのか。凄いな。
感心していると、目の前に一体のドッペルドールが現れる。いや、違う。これは…
「レア種のドッペルキラーだ!強さを見誤るなよ!」
油断する連中じゃないが、声は掛けておく。
見た目はカトリーナに戻っているな。
カトリーナと同じなのは、見た目だけじゃなかった。あの強烈なパワーと速さを備え、武器もククリと同じ。完全再現カトリーナとなっていた。
初擊を柊は、キラーの手首を押さえて止め、それで把握できたようだ。
初擊のでは押し切れないと判断したのか、キラーは跳躍して離れ、自らに魔法を掛ける。そんな事もするのかよ。
同じではないが、インクリース・パワーとスピードが近いか。
柊もその間に準備をする。
【フォースインパクト】【ハードインパクト】
フォースインパクトにハードインパクトを掛けるなどというイレギュラーを行い、それで挑むようだ。
短剣と格闘。二人とも武器が短いせいで援護攻撃をしてやれない。
フィオナを見ると確信した笑みを浮かべ、首を横に振った。
「娘を信じましょう。」
アリスの言葉に頷き、盾だけ構え続ける事にした。
先に仕掛けたのは柊。幹が折れるのでは?と思うほどの踏み込みからの右ストレート。
キラーはそれを更に柊の右側へと跳んで避ける。左からのカウンターを警戒したか?
範囲が広いフォースインパクトの影響を警戒してか、距離を取った為に即カウンターとはならず、キラーが動く間に柊も構え直す。
キラーの斬擊を殴り弾き、二擊、三擊と繰り返す。なるほど、フォースインパクトを大きなグローブに見立てたのか。
キラーがバックステップして離れ、高く跳躍。そのまま、エア・ストライクのような魔法を撃った反動で加速して落下してきた。
紙一重で避け、後ろ頭を殴りつけようとする柊。だが、それはキラーを捉えられなかった。これはまずい。
キラーが影に落ちたのだ。察した柊も跳躍するが、遅れる。足元からキラーが速く空へと落ち、斬擊が柊の胸当てを切り裂いた。
アリスの悲鳴に近い、あっと言う声が耳に入る。視線を向けられないが、戦っている本人以上に緊張しているのは伝わってきていた。
柊の表情も歪んでいる。痛み、というより悔しさだろうか。胸当てをやられただけで、ダメージにはなっていない。
だが、そのまま見過ごす柊ではない。1対1の支援がない状況でのその一撃は、捨て身の高リスクな一撃だった。キラーも察し、空中で姿勢を整えて防御体勢。
しかし、放ったのは胸を突く右ストレートの動作だが、手から離れたハードインパクトを纏ったフォースインパクトは側頭部へ吸い込まれるように決まる。
自分の動作そのものをフェイントに利用したか。
キラーは凄まじい勢いでぶっ飛ばされ、壁となっている幹にぶつかって止まる。
まだ戦意を見せたが、致命的な一撃だったようですぐに動かなくなった。
「…ありがとうございました。」
構えを解き、一礼をする柊。そういう場所じゃないからな?
「シュウ!」
駆け寄ったのはフィオナ。心配そうに体のあちこちを触る。
胸当てが脱落し…すぐ目を逸らした。
「賢明な判断よ。」
「…オレたちはキラーを見るよ。」
最早残骸と成り果てたドッペルキラー。
調べても中身の違いは分からないが、柊に一撃を与えた凄い個体だ。放置ももったいないので回収しておいた。
「強かったわね。柊、手合わせしてどうだった?」
「単調で助かったかな。母さんなら、あんな見え透いた手は使わないと思う。影に落ちるのは想定してなかったけど…」
「あれを見抜けるのは、勘の鋭すぎるヤツだけだよ。怪我はないか?」
回収している間に着替え、装備も予備のに取り替えていた。
「大丈夫ですわ。流石はアズサの防具ですわね。」
「また梓に助けられちゃったよ。私もまだまだだ。」
「梓は喜びそうだな。インパクトの使い方はバニラの入れ知恵か?」
「ううん。自分で考えたよ。」
「良い使い方だったな。後でバニラに相談して、最適化してもらうと良い。」
真正面から叩き付けるかと思いきや、手から離して側頭部への一撃。扱いなれているなぁと感心してしまった。
「私としては逃げの一撃だったけどね。これ以上は長引かせられない。そう思っての一撃だったから…」
「そうか。」
オレとそう身長の変わらない娘の頭を撫でてやる。出会った時はもう少し低かった気がするな。
「私は子供じゃないよ?」
「それでも、大事な次女だよ。長女や四女、五女ほど手は掛からないが、危なっかしい。」
「ふふ。そうだったね。」
反省会、回収、装備チェックを終え、オレたちは再び攻略を再開し、消耗を考慮して74層の安全地帯で一晩過ごす事にした。
72層のモンスターハウス以降、特に問題が起こる事もなく、ビフレストに到着する。
『お前たちか。通ると良い。』
姿すら見せないヘイムダルに許可を得て、オレたちはビフレストを渡り始める。
「メイプル、着いたから頼む。」
『わかりましたー』
『虹の彼方に』を歌い始めるメイプル。初回メンバーが居る時は、これが恒例となっている。
「何度も聞いたけど、やっぱり自分で見て、歩いて、聞くのは違うわね。」
目を潤ませながら言うアリス。
最初は覚束ない足取りだったが、今はしっかりと補助器具無しで歩いている。
顔色は相変わらず良くないが、興奮して少し顔に赤みがあった。
「轟音で大声じゃないと聞こえないけどな。」
「しかたないわよ!」
悪戯をするような笑みを浮かべ、大きな声で叫ぶように言うアリス。
母の顔ではなく、幼い頃に夢見たであろう場所に立つ無邪気な顔。久し振りにそんな顔を見れた気がする。
「あれが北の果てね。」
「次の攻略目標だ。」
「何かあるの?」
「行くまでが大冒険だよ。常に極寒で生き物を拒む大地だ。」
明らかに夏場と違って白い所が多い。エルディーも、不自然に雪に覆われている様に見えるな。
「ここから観測し続けて分かることもあるんでしょうね。」
「オーディンが嘘を見せていなければな。」
「ふふ。そうね。」
笑顔でそう言うと、オレの手を引いて歩き出す。
「さあ、行きましょう。私たちに立ち止まってる暇はないんだから!」
こうして、足早にビフレストの残りを渡り終え、久し振りに花畑へと足を踏み入れた。
『では、オリハルコンのインゴット、金貨100枚、イグドラシルの種を貰おう。』
「どうかお受け取り下さい。」
跪き、貢ぎ物を丁寧に差し出すアリス。
『他の者に見習わせたいくらいだ。』
そう言われ、目を逸らすオレと柊。オレはそれどころじゃなかったけどな…
『だが、汝の問題は根深い。転生だけで解決するものではない。』
「…どういうことですか?」
『魂に刻まれた呪いとでも言うべきか。なんとしても次世代へ命を繋がせない、という意志を感じる。』
「それじゃあ…」
『汝の苦悩は子供にも受け継がれる事になる。』
その場で崩れ落ちるように座り込み、オーディンの前であることを忘れているかの様な大泣き。
オレとの子供なら大丈夫。そう思っていたに違いない。
だが、現実はそうではなかったようで、双子、特に娘はアリスの問題を継承する事になってしまった。
「母方の呪いか?」
『そうだな。恐らく、この者の母達はそれを覚悟した上で産んだのだろう。』
「でも…兄、妹は私の問題を抱えていないわ…」
『そうか。代を重ねる事で、綻びが生まれているのかも知れぬ。だったら、汝の子供は無事な可能性が高い。』
可能性、という事は、成長するまで分からないな。
『泣き虫な方のアリス。心配する必要はない。おまえの子供の4人の姉は色んな事を乗り越えてきた。可愛い弟と妹がどんな苦難の沼に沈もうとも引っ張り上げてみせるよ。』
聞いていたバニラが、通話器越しでアリスに話し掛ける。
姉妹3人が幼い弟と妹と一緒に、寄り添って通話器を見つめている。そんな気がした。
柊を見ると当然の様に頷く。横に居るフィオナとジュリアは、心配はないと言う様に微笑んでいた。
『おかーちゃん。オーディンへの質問はもう決まったよね。』
『私たちは家族のためなら何処だって行くから。』
大きく息を吐き、涙を拭って立ち上がる。
アリスにとって、何度目の挫折だったのだろう。でも、その度に立ち上がってきた。立ち上がってこれた。
「アリス、お前のそういう所が好きだよ。」
思わず口にしてしまった言葉にアリスはビクッとする。
「オーディン、聞きたいことは他にもあったけど、今聞きたいのは一つだけ。転生試験を始めましょう。」
『もう十分に見せてもらった。その意志を示したことで汝は合格とする。』
「…ありがとう。みんな、ありがとう!」
一生、忘れることの無さそうな良い笑顔をオレたちに見せ、アリスの身体は光に包まれて消えた。
『事情が事情だ。通常より少し時間が掛かるから暫し待て。』
腕組みをし、動かなくなるオーディン。
それほどの事なのだろう。
『…母がずっと娘に引け目を感じていた事も知っている。ちゃんと母らしくあろうと悩んでいたことも知っている。
だったら、娘もちゃんと姉らしくしてみせないとな。』
『うん。そうだね。』
『大丈夫。この子たちは強くなるよ。
だって、私たちの弟と妹だもん。』
通話器の向こうから聞こえる無邪気なチビ達の声。
姉妹が居れば大丈夫。道を誤っても、きっと正しい方向へ導いてくれるはずだ。
『おとーちゃんも頑張ってね?』
「…善処しよう。」
『頼りにならない父親だ!』
バニラにそう言われ、笑いに包まれるのであった。
30分ほど経ったところで、ようやく裸のアリスが戻ってくる。事前に用意していた毛布でその体を受け止めると、自信と確信に満ちた表情になっており、角は変わらずに歪なままであった。
「おかえり、アリス。」
「待たせてごめんね。これでまたちゃんと戦える。もう足手まといにはならないから。」
「足手まといになった事はないよ。少なくとも、オレと一緒の時はいつだって頼りしてるくらいだったからな。」
「…ありがとう。」
自然と互いに唇を重ねる。
咳払い聞こえたところで、状況に気付いて互いに顔を離した。
「次は私の番だよ。」
『えっ!?』
フィオナとオーディン以外、通話器からも驚きの声が聞こえた。
ジュリアが名乗り出たのだ。
「私だって一家を支えたい。だから転生を望んでも不思議じゃないでしょ?」
「そうだが…」
「それで十分だよ。パーティーメンバーでアリスだけ抜け駆けは許さないからね。
結婚も転生も自分だけはズルいもん。」
アリスの様に供物を捧げると、オーディンは頷いてそれを受け取った。
オレたちとの育ちの違いが出てしまうな。
『では、試験を開始する。全ての的を射抜くのだ。』
的として現れたのは無数の鳥。しかも小さい。
それを見て取り出したのは標準サイズの弓。物は金属で標準とは言い難いが。
【集中】【全身全霊】
全てを懸けるという意志がスキルに現れる。
ゴッソリと、ジュリアから何かが奪われるのを感知し、悪寒を覚える。
オレも【全身全霊】を使ったが、これは本当に最後の手段だな…
芸術的。その一言に尽きる。
素早い小さな的を的確に射抜いていく。最初は力任せで危なっかしいだけの狙撃手だったが、長い間修練を重ねる事でその才能を見事に開花させていた。
これ以上の射手は見付けられない。そう思わせるには十分の腕前だ。
不規則な軌道を描く最後の的も射抜いて見せると、オーディンを見た。
『合格だ。世に並ぶ事なき腕前であると我が保証しよう。』
「ううん。まだやれる。もっと上手くなれる。その保証はそれからが良いな。」
『汝にはまだ先の高みが臨めているという事か。面白い。』
強面のオーディンが笑顔を浮かべて納得した。
『では、転生を開始する。』
「ヒガン、私…私、もっと強くなるからね。」
そう言って、ジュリアは光に包まれて消えた。
出会った頃のロクに声が聞こえず、酷い猫背だった面影はもうない。
エルフにとってはそう長くはない期間だろうが、その間にジュリアは努力して才能を開花させた。姉妹揃って素晴らしい逸材だったという事を誰にも否定させない。
『…まったく、最後に悪い癖が出やしたね。』
聞いていたユキがぼやくように言った。
「良いのよ。私たちの時間は、特にエルフはまだ長いんだから。」
着替え終えたアリスがオレの横に来て言う。
服装が変わっており、今日のために準備したと思われる新しい冒険用の服装だ。
赤と黒なのは相変わらずだが、露出は一切無く、ヒラヒラしたものがいくつか付いているが、動きやすそうではあった。
「アリス、似合っているよ。」
「ありがとう。あなたに言われるのが一番嬉しいわ。」
『やい歪角魔人、あたしと旦那の間に割り込むんじゃねぇですぜ。』
「割り込んでないわよ。寄り添ってるだけだから。」
『ぐぎぎ…』
この二人も相変わらずである。
『…角はそのままなんですね。』
しおらしい声で呟くユキ。
言い合いは散々見てきたが、胸のサイズ以外で見た目を揶揄するのは初めてだな。
「そうよ。角のせいかと思ったけど違うみたいだからそのままにしたの。
だってこれは、私とお母様の数少ない繋がりだから。」
『羨ましいですぜ…』
珍しい反応のユキにオレたちは困惑して顔を見合わせた。
ユキはユキで苦悩があるのだろう。今まで、そんなものはあまり見せてこなかったが。
「というか、アリス、少し若くなったか?」
「え?見た目は変えてないわよ?」
『子育てに疲れ、老けて見えていたんですねわかります。』
『えっ!?』
バニラの放った一言に母親達の声が揃った。
メイドの誰かの声も聞こえていた気がするな…
そろそろだな、という事で再び毛布を準備する。
戻ってきた裸のジュリアを受け止めると、照れた様子で強引に唇を奪われた。
えっ!?なにこれ!?どういうこと!?
呆気に取られたのはオレだけでなく、アリスと柊もだ。
フィオナはガッツポーズをしている。分かっていて何も言わなかったな!?
「…夢を叶えてくれたお礼だよ。これからも何処へだって付いていくからね?」
「お、おう。」
困惑して頭が回らない。とにかく色々柔らかかったという印象のみが残る。
最後にフィオナもオーディンのエインヘリャルと戦う試験を終えると、転生に向かっていった。
上の空で詳細が認識できず、毛布を柊に渡す。
「ジュリアのキスで旦那様が壊れてしまったわよ?」
『えっ!?』
「…フィオナ、これは流石に想定してないんじゃないかしら?」
『…それは、気の毒に。』
少し胸の大きくなったフィオナが戻ってくると、柊が受け止める。そして、何やら話をしてから振り向き様に柊と唇を重ねて
『わああああっ!!!?』
二人とも叫んだ。
『策士、策に沈んだか…』
『奇策が効きすぎちゃったね…』
二人揃って顔を赤くし、念入りに唇を拭う姿が年相応に見えず、なんだか微笑ましかった。
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