召喚者は一家を支える。

RayRim

文字の大きさ
上 下
124 / 307
第1.5部

番外編 〈白閃法剣〉達は新規ダンジョンに挑む

しおりを挟む
〈白閃法剣ハルカ〉

 初のダンジョンアタック、という事で、今回だけお父さんが同行することになった。
 近場のダンジョンを、1日から2日掛けて攻略するという計画なので、イグドラシルの時とそれほど変わらない気がする。ただ、直帰は出来ないので、体調管理は怠れない。

「食料の扱いは気を付けろ。環境によって腐食が起こる事がある。当然、野宿道具もだ。
 浄化、防御魔法を忘れるなよ。
 むやみやたらとダンジョンを出入りするのもダメだ。こちらのEXPが下がった分、ダンジョンが強化されるからな。」

 お父さんが皆にダンジョンの注意事項を伝える。
 バニラお姉ちゃんが魔導具研究でいないので、元同級生が二人同行していた。当然、ご両親の許可は取ってある。
 東方エルフのトムと、ディモスのテレサだ。
 ソニアちゃん程ではないが、優秀で来年には卒業出来るだけの資格が得られそうな二人。それですんなり卒業するかは別だが。
 あとはソニアちゃん、柊お姉ちゃん、梓ちゃん、フィオナ、ジゼル。最寄りのキャンプ地には、荷物番としてアクアとアッシュ君を待機させている。
 通話器でこちらの会話は聞こえているはずなので、退屈はしないはず。

「ここはダンジョンと言っても、そう深いものでもないはず。
 王都に近いし、頻繁に潰されている。新しいもので怖いのは特性くらいだからな。」

 事前に説明されたが、ダンジョンには様々な特性があるらしい。
 例えば、フロアの大半が毒沼だったり、水没していたり。空気が人の長時間吸えるものでなかったり、装備を腐食させるものだったり。マナが存在せず、魔法が使えない事もあるそうだ。
 装備はそんな状況の分からない新規ダンジョンアタックの為に、再調整されている。とにかく攻撃力を求めていたイグドラシルとは真逆で、生存性、耐久性を求めるエンチャントになっている。
 入ったら最後、という物でもない様なので、無理なら諦められるのが良心的。ペナルティで1レベル失われてダンジョンが強化されるらしいが。
 その為に、斥候役は知識と技術と経験が求められる。何処で気付くか、気付いてから無事に戻れるか。パーティー全体の生存に関わる非常に重要な役割である。

「斥候役は…ジゼル、トム。オレに付いてきてもらうぞ。」
「はい。」

 ジゼルは目を買われてだろう。異論はない。
 トムは…理由がわからない。

「ぼ、僕ですか?」
「感知力に期待する。オレより早く、道中の獣に気付いている様子だったからな。」
「…は、はい!」

 お父さんに褒められて、嬉しそうに顔を赤くする。
 それなら納得だ。確かに、私よりずっと早く何かに気付く事が多かった。臆病者の気のせいかと思って軽んじたけど、そうじゃなくて大惨事になり欠けた事があったっけ…

 お父さんはすぐに二人を連れて中に入る。
 入口は巨大な洞穴で、10人くらいは並んで横に入れそうだ。だが、中は全く見えない。
 入った三人の姿も、かき消える様に見えた。ビフレストの向こうとこっち、みたいな感覚になるのだろうか?

 10分くらい経つ。それなりに長い時間を掛けて二人が出てきた。

「お父さんは?」
「レベルが高過ぎるから出てこれないそうです。」
「んん?」
「あ、出れるのですが、高過ぎる旦那様の1レベルの影響が私たちと同じとは限らないそうなので。」

 なるほど。130越えと50、60のペナルティによる影響が同じとは限らないという事か。ペナルティを糧に、一気にダンジョンが強化される可能性もある。
 それから中の様子の説明を受ける。魔眼で人よりよく見えるジゼルと、感知力の高いトム。二人が合わさるとどんなダンジョンも丸裸にされそうな説明だった。

「中は外見通りの広い岩窟で、最深部まで整備はされていません。いくつか横穴はありますが、どれも魔物の待機部屋で宝物は無い様です。」
「水の流れている所があるようで、外と温度が違うようです。実際、中は暖かく、防寒着を着ていると暑いくらいでした。
 ソニア、ハルカに匹敵するような反応はなく、新しいダンジョンに間違いない様です。」

 丸裸だった。哀れなダンジョンに手を合わそう。合掌。

「何をしてらっしゃるんですの…」
「潜る前に攻略されてた。」
「…否定ができませんわ。」

 ソニアちゃんとそんなやり取りをして、斥候の二人を見る。首を横に振り、これ以上の情報はないようだ。

「毒もガスも無いならこのまま進もう。装備の準備はバッチリだよー」

 梓ちゃんの言葉に全員が頷く。
 準備は万全。もう言う事はただ一つ。

「じゃあ、突入!」
『おー!』

 私たちは意気揚々とダンジョンに踏み込んだ。



 報告通り、内部は暑いくらいで私たちはすぐに防寒着を脱ぐ。

「来たな。」

 魔法の光で周囲を調べていたお父さんがこちらを向いた。
 何だか纏っている雰囲気が少し違う。イグドラシルの時とも、ボス退治の時とも。何処が違うのだろうか?

「ここからはオレと斥候役が先頭で行く。オレがいない時は、遥香かフィオナが良いだろう。
 もしもの時に斥候役を守る役割だ。」
「うん。」
「わかりました。」

 次にソニアちゃんと梓ちゃんを見る。

「一番後ろ、防御の低い後衛の背を守る役目も必要だ。前衛の盾役より注意が必要だぞ。
 遥香とフィオナが揃ってるならどちらかで良いが、そうでないなら梓かソニアだな。」
「私がやりますわ。フィオナ様と梓さんは別な事を。」

 ソニアが名乗り出たことに頷くお父さん。

「では、私はテレサと後衛をしましょう。魔導弓を試したいですし。」

 そう言って、剣と盾をしまって弓を取り出す。
 深雪祭の間は、王都の実家で訓練を重ねていたらしい。
 弓は新調したものだそうだが、既に手に馴染んでいるように見える。

 先頭は斥候役の二人とそれを守るお父さん、その後ろにアタッカーの私と柊お姉ちゃん、中衛の梓ちゃん、後衛はフィオナとテレサで、最後尾はソニアちゃんとなった。ソニアちゃんが近いと、つい話し掛けたくなるからちょうど良い。

「トイレは良いな?」

 お父さんの言葉に全員が呆れ顔になる。
 このタイミングでそれはちょっと…

「…いや、しばらく休めないから念のためにな。」
「ゲームのクセだったんだろうねー…」

 図星だったようで、目を逸らしてから拳を掲げて宣言する。

「…ダンジョン攻略スタートだ!」
『おー…』

 なんともテンションの上がらない事態となってしまったが、気持ちが昂り過ぎず、このくらいでちょうど良いのかもしれないとも思ってしまった。



 攻略は順調そのもの。
 魔眼によってトラップの意味を為さないトラップ。逆に奇襲される待ち伏せと、あまりにも無惨である。
 スキルを駆使するとはこういう事か、と改めて思い知った。
 ジゼルの魔眼がダンジョン殺し過ぎるし、待ち伏せの背後を取れる影移動が強すぎる…
 魔眼で仕掛けそのものが見えてしまうのは、ボスに同情したくなる。 
 とはいえ、安心して罠の動作を見れるのは、前衛としてはとてもありがたい。一目では無理だが、気を付けるべき場所が見えてきている。ジゼルがいない時の役に立てよう。

 こうして色々と学びながら、私たちはダンジョンの最深部に辿り着いた。

「先頭はオレ。斥候役は横に広がって、その間を遥香と柊。梓とソニアは後衛のサポートだ。
 トムはなるべく遥香の近くにいろ。遥香も良いな?」
『はい。』

 入る前に大雑把な指示が出される。

「指示出しは…ソニアに任せる。まあ、必要もないかもしれないがな。」

 ここまでの道程を思い出し、全員が父さんに釣られて苦笑いをした。

「だが、ボスはボスだ。気を引き締めろ。手加減はなしだ。」
『了解。』

 徐々に戦闘モードに変わっていくお父さんの話し方に、思わず気圧される。
 …こんなの初めてかもしれない。

 お父さんがドアを開け放つと一気になだれ込み、陣形を整える。
 ボスの姿は…ない?

「オブジェの後ろにいます!」

 ジゼルの言葉を聞き、フィオナがオブジェに魔導弓で撃ち込んだ。
 容赦ない一撃。ジュリアのようなパワーは無いが、高密度の魔力の塊がオブジェを木っ端微塵にした。

『ヒイィィィ!!』

 守るものがなくなり、悲鳴が聞こえてくる。
 そこにお父さんが踏み込み、何かをつまみ上げた。
 妖精?
 拳大の桃色の妖精がそこにいた。

『ゆ、許してください!まだなにもしてないんです!』

 顔の前で力一杯拳を握り、涙声で命乞いをしている。
 こんなことをされたら戦えない。私たちの殺る気は一気にしぼんでしまった。



 どうやら、この妖精がダンジョンマスターと呼ばれる存在らしい。
 ダンジョンを管理し、ダンジョンで生き、ダンジョンと共に生まれ、そして、死ぬ。そういうものだそうだ。

『あんたたちが強すぎてボスを作るリソースが作れなかったのよ!作ってもイチコロだったでしょうけど!』

 なんだか憎めない妖精である。

「だが、ダンジョンには消えてもらう。悪く思うな。」

 お父さんが手に魔力弾を生む。

『やめて!殺さないで!なんでもするから!!』

 本気の命乞い。人の言葉が使える魔物はやりにくいなぁ…

 「何ができるんだ?
 だいたい、お前はダンジョンから出られないだろう?」

 お父さんがそう言うと、妖精は小さな赤いクリスタルに姿を変えた。

「お前、その姿…」

 とても驚いた様子のお父さん。それもそのはずだ。

『あなたたちがブラッドクリスタルと呼ぶものがあたし。命を糧に命を産み続けるのがダンジョンマスターの使命よ。』

 私の知るものとかなり違う。あれはもっと大きく、禍々しいオーラを放っていた。

「スタンピードの原理が、レイドボスの仕組みが解ってしまった…」

 クリスタルを手の平に乗せ、お父さんが呟く。

『…ダンジョンは命の奪い合いをする場所。怨嗟が怨嗟を産み、怨嗟を呼び込み、新たな怨嗟を産む。
 囚われた命や魂は新たな魔物となり、それは時に強大な魔物に変貌するわ。』
「タイラントオーガキングは、ダンジョンに逃げ込んだ同胞の末路か…」

 強かったオーガ女を思い出す。
 あれも二度と戦いたくない部類のボスだ。よく喋る上にとても強かった…

『人が魔物に変貌し、ダンジョンマスターに取って代わる事は珍しくないわ。
 意思や知性を残すのは稀だけど…』
「運が良かったのか、生への執着が強かったのか…」
『後者ね。運で選別されるほど世界は甘くない。』
「生まれたばかりにしては詳しいな。」

 お父さんがそう言うと、宝石は妖精に戻って胸を張る。

『当たり前じゃない。ダンジョンマスターはこの世界を輪廻するの。だから前世の事も…』

 妖精が私を見て固まる。そして、首を気にする。

『…首を斬るのはもうやめてよね?』

 分かってしまった。

「あー…あのげろげろわんこ…」
『誰がげろげろよ!』
「げろげろ妖精と名付けよう。」
『今回はげろげろじゃないでしょ!?』

 なんだか楽しい。アッシュ君とは違う楽しさがある。

「で、お前は何ができるんだ?」
『何処でもダンジョンが作れるわ。屋敷だってダンジョンになるのよ。』
「メリットはあるのか?」
『非致死設定があるから、訓練が出来るわね。』
「連れて帰ろう。」
「そうしましょう。」

 即決のお父さんと、即賛同のソニアちゃん。

「おかーちゃんの顔が強張りそうな事案。」
「…そろそろフォロー必要だが、この着せ替え妖精を手土産にすれば大丈夫だろう。」
『あたしは人形じゃないんだけど?』
「大人しくしてれば、色々と着飾らせてもらえると思うぞ?」
『…悪くない話ね。』

 意外とちょろい妖精である。

「連れていくには条件がある。」
『何よ?』
「嘘はダメだ。隠し事もな。あと、他所に迷惑を掛けるのも無しだ。それと…」
『それと?』
「おまえの意思での殺しは絶対に無しだ。」

 有無を言わせない凄み。

「おまえのクリスタルを濁らせたくないからな。」
『…わかったわ。』

 あー、ついに人外をたらし込んでしまった…
 小さな妖精は、照れてお父さんから目を背ける。

「これはリナおかーちゃんに説教されるかもねー… 」

 一家に新たなという仲間を加え、私たちはダンジョンを後にする。
 主人不在のダンジョンはすぐに消え、奥の見えない穴は浅い洞穴へと変化していた。
 キャンプ地に戻ると、アクアがアッシュ君に組み付かれており、二人ともなんだか妙な感じである。
 …ただ遊んでるだけなら何も言わないからね?

 こうして私たち初のダンジョンアタックは、消化不良気味に引き上げとなったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

修行マニアの高校生 異世界で最強になったのでスローライフを志す

佐原
ファンタジー
毎日修行を勤しむ高校生西郷努は柔道、ボクシング、レスリング、剣道、など日本の武術以外にも海外の武術を極め、世界王者を陰ながらぶっ倒した。その後、しばらくの間目標がなくなるが、努は「次は神でも倒すか」と志すが、どうやって神に会うか考えた末に死ねば良いと考え、自殺し見事転生するこができた。その世界ではステータスや魔法などが存在するゲームのような世界で、努は次に魔法を極めた末に最高神をぶっ倒し、やることがなくなったので「だらだらしながら定住先を見つけよう」ついでに伴侶も見つかるといいなとか思いながらスローライフを目指す。 誤字脱字や話のおかしな点について何か有れば教えて下さい。また感想待ってます。返信できるかわかりませんが、極力返します。 また今まで感想を却下してしまった皆さんすいません。 僕は豆腐メンタルなのでマイナスのことの感想は控えて頂きたいです。 不定期投稿になります、週に一回は投稿したいと思います。お待たせして申し訳ございません。 他作品はストックもかなり有りますので、そちらで回したいと思います

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

女神様から同情された結果こうなった

回復師
ファンタジー
 どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。 何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。 何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。 それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。 そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。 見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。 「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」 にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。 「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。 「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。

処理中です...