太陽のような君

ひろ・トマト

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1.出会い

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自分が主役であったことは生まれてこのかた一度もない。

自分の人生を振り返ってみても、他人に影響を与えられるほどの事を成し遂げたこともなく、感動を与えられるエピソードもない。

どこまでも平凡で、普通な人生だ。そしてこれからも平凡な人生を送ることだろう。

それが良いことなのか、それはわからない。だが少なくとも僕、川口隼人は自分の人生に不満を感じていない。良い人生だと思ったこともないけれど。



某県某所にある平均ぐらいの偏差値の高校。ぼくはそこに通っている。

退屈な授業が終わり皆それぞれ帰路につく。僕は電車通だ。この学校の生徒は電車通もいるのだが自分とは真反対の方向に帰る人が多い。そのため帰り際は一人で帰ることが日課となっていた。



一人で帰ることを冷やかされることもあったがぼくはこの時間が好きだった。今日もイヤホンを耳に突っ込み音楽を聴きながら帰ろうとした時だった。



「あれ、川口くんこっちなの」

急に明るい清涼とした声が僕の耳に飛び込んできた。声のしたほうを向くとそこには隣の席の女子―相川遥がたっていた。



「ていうか川口くんて電車通だったんだ。全然しらなかった」

「え・・・うん」

急に話しかけられたため僕は若干戸惑ってしまった。

相川さんは隣の席ではあるがまったくと言っていいほど話したことはない。せいぜい教科書をわすれたときに見せてもらったことがあるぐらいだ。



それに相川さんはとても明るい。僕のクラスの目立つ女子グループに所属しており、SNSを通じて他学年にも知り合いを作るアクティブさを持っている。



まさしく僕とは正反対の存在。そんな彼女が僕に話しかけてくるものだから驚きだった。

「へー・・・うちも同じ方向だったのに気づかんかった。ていうか何聞いてたの」

そのまま相川さんは僕と一緒に歩き始めた。



なんというか。妙な状況だ。今までしゃべったこともない女子と一緒に帰るというのは体験したことのない状況だった。

僕は女子と一緒に帰ったことなどないのでそこそこに緊張していた。



「最近くそ高いカフェに行った」「もうすぐで髪色変える」「最近、お菓子ばっか食べてる」

そんな僕の心境などお構いなしに相川さんはべらべらと話しかけてくる。ものすごい口数の多さだ。まるで言葉のマシンガンだ。



電車にのっても彼女の話は続いている。よくももまあこんなにも話続けられるものだ。

僕はといえばそんな彼女に圧倒されてうまくしゃべれずにいる。クラスにいる明るく面白い男子などならば状況に合わせた言葉もすらすらと出てくるだろう。

だが……僕は違う。気の利いた事も彼女が面白いと感じることも言えずただ彼女に流されてばかりだった。



「あ、あたしここだから。じゃねー。」

そんなこんなで彼女が下りる駅まで話は続いた。七割ぐらい彼女が主導権を握っていたが。

(まるで嵐みたいだったなあ……)

そんなことを考えながら僕はそそくさとイヤホンを耳に着けた。
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