19 / 39
じゅうく(3/22修正)
しおりを挟む
かなり手直ししてます。
✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️
「ホームから落ちたって、どういう事?!」
ユウキの顔が険しい。
いつもニコニコしてるリコも―――2人のこんな顔を見たのは初めてかもしれない。まあ、こめかみの絆創膏もマズかったね。
とは言え、授業をサボるわけにはいかないし、何とか宥めて、昼休憩までは待ってもらった。
半ば連行されるように空き教室に入った所で、昨日の出来事を説明する。
またしても、あの気持ち悪い茶髪男に会ってしまった事。
それを避けようとしてホームに落ちてしまった事。
そこから“彼”が連れて上がってくれた事を話すと、ユウキは更に顔を顰めた。
「それって、偶然なの?」
「それ?」
「いや、助けてくれたのは確かなのかもしれないけどさ。」
「あー……」
「ん?」
「うーん…」
言うべきか、言わざるべきか。
一瞬悩んでから、息をついた。
「直接知ってる訳じゃ無いけど、知り合いの、知り合いだった。」
「知り合いの、知り合い?友達じゃなくって?」
「…違うよ。」
少なくとも、今は。
いや、向こうにとっては元々友達じゃなかったんだと思う。
憂鬱な気分でため息をついた。
「小学校ん時に入ってたサッカークラブのチームメイトに会ったんだよ。…“彼”は、ソイツと、知り合い。まあ、名前で呼び合ってたから友達なのかもね。」
言いながら肩を竦めると、リコが首を傾げた。
「何か、あんまり良い関係じゃない、の?」
「“知り合い”はね。昨日も、謝りに来たとか言いながら、逆ギレしてったし。」
「それは、助けてくれた“彼”じゃないの?」
「うん。あの人とは…」
面識が無い―――と言いかけて、彼の言葉を思い出した。
―――中学は、同じになるだろうと思ってたんだけど、違うとこ行ったんだろ?
―――サッカーも辞めたって、大地が。
自分では、会った事が無いと思ってる。でも、彼の言い方だと、そうじゃない気もする…けど。
釈然としないまま、首を振った。
「少なくとも、同じ小学校じゃないと思う。名前も、何だっけ…」
昨日大地が言ってたな。確か―――
「“篠崎悠斗”」
リコの声に、驚いて顔を上げると、リコがスマートフォンを掲げて見せた。
「“中”で話題になってる。“リアル王子”って。」
「おうじ?」
何だそれ、と、眉を顰めると、リコが、話題の動画を再生しながら、スマートフォンを差し出してきた。
問題の(?)動画は非常用のベルが鳴り響く所から始まっていた。誰が押したのかは分からなかったけど、それによって発車するハズだったホーム反対側の電車が止まり、階段を降りようとしていた降車客達が立ち止まってざわめく。
正直、周りにこんなに人いたんだ…って気分。
『何?』
『誰か落ちたらしいよ?』
『あっ、飛び降りたっっ』
画像がぐるんと動いて、線路を映し出す。
ちょっと離れていたのに、ギリギリまでズームされたお陰で、ぼやけてるのにも拘わらず、倒れてるのが自分だとハッキリわかってしまった。
彼が覆い被さるようにしながら頭を持ち上げるのを見て、思わず顔を背ける。
だって、思い出してしまった。
匂いとか、腕とか胸の諸々―――ざわざわと何かが身体の内側から沸き立つような、そんな感覚を覚えて、居たたまれずに腕を擦った。
心臓がスゴくへんなカンジ。ホントに、これ、どうしたらいいんだろう。
昨日から、彼の事を思い出す度にコレなんだけど。
「…何て言うか、スゴく丁寧?だよね?」
リコの声に我に返った。
ユウキは無表情。リコは感心したように画面を見ている。
「ほら、ちゃんと頭と身体を密着させてから持ち上げてるでしょ? うち、母さんがお祖母ちゃんの世話してたからわかるんだよ。負担かけないようにしてくれてるって。姫抱っことかもさ、あれはする方もされる方もスゴい負担かかるらしいんだけど、この抱き方なら、スカートの中身も見えないし、スゴい安定してたんじゃない?」
うん、してたよ。安定はしてた。
でも近すぎるよね?どう考えても近すぎる!
おかげで私の心臓が(以下略)
「うわ…マジで王子っぽい。」
ホームに上がって私を下ろした彼が、側に膝をついて話し掛けてる。次いで、彼が私の手に自分の手の平を重ねたものだから、2人が顔を上げてこっちを見た。
うう、イタタマレナイ―――!!!
『いいな~、彼氏やさしー。』
その声を残して、画像が終了した。
リコがため息をついて画面をタップした。
「こういうの、直ぐ拡散するよね。この“彼”の情報も、スゴい出回ってた。」
彼の写真―――たぶん、中学のかな。
ネットワークの中では、プライバシーなんて無いんだな…とボンヤリと思いながら、画面をスクロールしていく。
やっぱり、小学校は違っていた。
でも、中学校は“東一中”に行かなければ、私も通っていたハズの学校に彼は通っていて、そして、サッカー部に入っていた。
全国大会出場決定!―――という文字と一緒にアップされた写真の中で、他のメンバーと一緒に腕を組んでポーズをとっている。背の高い彼と小柄な大地は、離れて写っていたけど。
「…もしかしたら、会った事はあるのかも。でも、サッカーやってたのなんて小学校ん時だからねぇ。」
「ていうか、サッカーやってたんだね。全然知らなかったよ。」
あれ、何か怒ってる?
ユウキってば、ちょっと顔が無表情なんですけど。
「だって、もうしないのに、言ってもしょうが無くない?」
「そういう問題じゃない!!」
そこまで言って、ユウキはため息をついた。
「いいよ、もう。」
吐き捨てるように言って、ユウキが背中を向けた。
✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️
「ホームから落ちたって、どういう事?!」
ユウキの顔が険しい。
いつもニコニコしてるリコも―――2人のこんな顔を見たのは初めてかもしれない。まあ、こめかみの絆創膏もマズかったね。
とは言え、授業をサボるわけにはいかないし、何とか宥めて、昼休憩までは待ってもらった。
半ば連行されるように空き教室に入った所で、昨日の出来事を説明する。
またしても、あの気持ち悪い茶髪男に会ってしまった事。
それを避けようとしてホームに落ちてしまった事。
そこから“彼”が連れて上がってくれた事を話すと、ユウキは更に顔を顰めた。
「それって、偶然なの?」
「それ?」
「いや、助けてくれたのは確かなのかもしれないけどさ。」
「あー……」
「ん?」
「うーん…」
言うべきか、言わざるべきか。
一瞬悩んでから、息をついた。
「直接知ってる訳じゃ無いけど、知り合いの、知り合いだった。」
「知り合いの、知り合い?友達じゃなくって?」
「…違うよ。」
少なくとも、今は。
いや、向こうにとっては元々友達じゃなかったんだと思う。
憂鬱な気分でため息をついた。
「小学校ん時に入ってたサッカークラブのチームメイトに会ったんだよ。…“彼”は、ソイツと、知り合い。まあ、名前で呼び合ってたから友達なのかもね。」
言いながら肩を竦めると、リコが首を傾げた。
「何か、あんまり良い関係じゃない、の?」
「“知り合い”はね。昨日も、謝りに来たとか言いながら、逆ギレしてったし。」
「それは、助けてくれた“彼”じゃないの?」
「うん。あの人とは…」
面識が無い―――と言いかけて、彼の言葉を思い出した。
―――中学は、同じになるだろうと思ってたんだけど、違うとこ行ったんだろ?
―――サッカーも辞めたって、大地が。
自分では、会った事が無いと思ってる。でも、彼の言い方だと、そうじゃない気もする…けど。
釈然としないまま、首を振った。
「少なくとも、同じ小学校じゃないと思う。名前も、何だっけ…」
昨日大地が言ってたな。確か―――
「“篠崎悠斗”」
リコの声に、驚いて顔を上げると、リコがスマートフォンを掲げて見せた。
「“中”で話題になってる。“リアル王子”って。」
「おうじ?」
何だそれ、と、眉を顰めると、リコが、話題の動画を再生しながら、スマートフォンを差し出してきた。
問題の(?)動画は非常用のベルが鳴り響く所から始まっていた。誰が押したのかは分からなかったけど、それによって発車するハズだったホーム反対側の電車が止まり、階段を降りようとしていた降車客達が立ち止まってざわめく。
正直、周りにこんなに人いたんだ…って気分。
『何?』
『誰か落ちたらしいよ?』
『あっ、飛び降りたっっ』
画像がぐるんと動いて、線路を映し出す。
ちょっと離れていたのに、ギリギリまでズームされたお陰で、ぼやけてるのにも拘わらず、倒れてるのが自分だとハッキリわかってしまった。
彼が覆い被さるようにしながら頭を持ち上げるのを見て、思わず顔を背ける。
だって、思い出してしまった。
匂いとか、腕とか胸の諸々―――ざわざわと何かが身体の内側から沸き立つような、そんな感覚を覚えて、居たたまれずに腕を擦った。
心臓がスゴくへんなカンジ。ホントに、これ、どうしたらいいんだろう。
昨日から、彼の事を思い出す度にコレなんだけど。
「…何て言うか、スゴく丁寧?だよね?」
リコの声に我に返った。
ユウキは無表情。リコは感心したように画面を見ている。
「ほら、ちゃんと頭と身体を密着させてから持ち上げてるでしょ? うち、母さんがお祖母ちゃんの世話してたからわかるんだよ。負担かけないようにしてくれてるって。姫抱っことかもさ、あれはする方もされる方もスゴい負担かかるらしいんだけど、この抱き方なら、スカートの中身も見えないし、スゴい安定してたんじゃない?」
うん、してたよ。安定はしてた。
でも近すぎるよね?どう考えても近すぎる!
おかげで私の心臓が(以下略)
「うわ…マジで王子っぽい。」
ホームに上がって私を下ろした彼が、側に膝をついて話し掛けてる。次いで、彼が私の手に自分の手の平を重ねたものだから、2人が顔を上げてこっちを見た。
うう、イタタマレナイ―――!!!
『いいな~、彼氏やさしー。』
その声を残して、画像が終了した。
リコがため息をついて画面をタップした。
「こういうの、直ぐ拡散するよね。この“彼”の情報も、スゴい出回ってた。」
彼の写真―――たぶん、中学のかな。
ネットワークの中では、プライバシーなんて無いんだな…とボンヤリと思いながら、画面をスクロールしていく。
やっぱり、小学校は違っていた。
でも、中学校は“東一中”に行かなければ、私も通っていたハズの学校に彼は通っていて、そして、サッカー部に入っていた。
全国大会出場決定!―――という文字と一緒にアップされた写真の中で、他のメンバーと一緒に腕を組んでポーズをとっている。背の高い彼と小柄な大地は、離れて写っていたけど。
「…もしかしたら、会った事はあるのかも。でも、サッカーやってたのなんて小学校ん時だからねぇ。」
「ていうか、サッカーやってたんだね。全然知らなかったよ。」
あれ、何か怒ってる?
ユウキってば、ちょっと顔が無表情なんですけど。
「だって、もうしないのに、言ってもしょうが無くない?」
「そういう問題じゃない!!」
そこまで言って、ユウキはため息をついた。
「いいよ、もう。」
吐き捨てるように言って、ユウキが背中を向けた。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる