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1章 人生逆転の一手
第9局 棋士に友達探しは似合わない?
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「天野君、今の本当なの?」
「逆に僕が嘘をついて何のメリットがあるの?」
「そ、それは‥‥‥」
彼女は不服そうにため息を吐く。
「そうだよね、貴方には何のメリットもないものね」
「それより、僕は彼女に会いたい。もう一度、ちゃんと話がしたいんだよ」
「でも何で?貴方は中村さんを振ったんでしょ?なら仲村さんも、貴方と会いたいなんて思うかしら」
「普通はそうなの?」
「そうね、振られた男子の顔なんて見たくないわ。少なくとも私は」
成る程。つまり、全駒にしてきた相手と対局をしたくないのと同じ理屈だろうか。
「それでどうするの?」
「え、何が?」
「そんなの決まってるでしょ。仲村さんに会いに行くの?行かないの?」
答えは決まっている。僕は、迷いもせずに答える。
「会いに行く。それが僕の思う最善手だから」
「‥‥‥そっか。私の話を聞いてもその気持ちは変わらないのね」
僕は軽く頷き、後ろに振り返る。
「なら、私はもう止めない。仲村さんを探せばいいわ。先生なら分かるんじゃない?」
「わかった。行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
僕を見送る彼女はどこか清々しい笑顔であった。
そして、僕は職員室へと向かうが
「先生!至急です。仲村さんの‥‥‥仲村 楓の住所を教えてください」
「天野‥‥‥。お前は仲村に最後に挨拶をしにくつもりか?」
「はい、まぁそんなとこです」
息を切らしながらも、睨みつけるような眼差しで見つめる僕を真剣に見つめ先生は
「天野‥‥すまない。実は先生も仲村がどこにいるか分からないんだよ」
と言う。その時に僕は、何故か分からなかったけど、無性に怒りが込み上がってきた。
そして気づいた時には、僕は先生の胸倉をつかんでいた。
「何で先生が知らないんだよ!普通知ってるはずだろ!」
僕は周りの先生に取り押さえられながらも必死に訴えかける。
すると、先生は頭を地面につけ泣いていた。
僕には何故そんなことをしているのかが分からなかった。
「すまない天野!私は昨日、仲村の家に行ったんだ。お前と同じように挨拶をしに行こうと思ってた。でも、誰もいなかった。何故か鍵が開いていたから中を除いても、中には何もなかった。
私がもう少し早く訪れていればこんなことにはならなかったはずだ。
だから、許してくれとは言わない!私をいくらでも殴ってくれてもいい。君が望むなら私は教師を辞めてもいい。でも、その代わりに仲村を私に見つけさせてくれ」
大人の対応だ。そんな先生を見て自分の行動がバカらしく思えた。
「先生‥‥ごめんなさい。僕も先生に生意気な口を利いてすみませんでした。だから僕にも手伝わさせて下さい」
少し間が空いて、その言葉の意味を理解した先生は、先程にも増して泣いていた。
「天野ぉ‥‥。ありがとう‥‥」
顔がぐちゃぐちゃになった先生はいつもと違って面白くて、本当に生徒のことを考えているんだ。と思えた。
「先生、行きましょう。仲村さんを探しに」
「逆に僕が嘘をついて何のメリットがあるの?」
「そ、それは‥‥‥」
彼女は不服そうにため息を吐く。
「そうだよね、貴方には何のメリットもないものね」
「それより、僕は彼女に会いたい。もう一度、ちゃんと話がしたいんだよ」
「でも何で?貴方は中村さんを振ったんでしょ?なら仲村さんも、貴方と会いたいなんて思うかしら」
「普通はそうなの?」
「そうね、振られた男子の顔なんて見たくないわ。少なくとも私は」
成る程。つまり、全駒にしてきた相手と対局をしたくないのと同じ理屈だろうか。
「それでどうするの?」
「え、何が?」
「そんなの決まってるでしょ。仲村さんに会いに行くの?行かないの?」
答えは決まっている。僕は、迷いもせずに答える。
「会いに行く。それが僕の思う最善手だから」
「‥‥‥そっか。私の話を聞いてもその気持ちは変わらないのね」
僕は軽く頷き、後ろに振り返る。
「なら、私はもう止めない。仲村さんを探せばいいわ。先生なら分かるんじゃない?」
「わかった。行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
僕を見送る彼女はどこか清々しい笑顔であった。
そして、僕は職員室へと向かうが
「先生!至急です。仲村さんの‥‥‥仲村 楓の住所を教えてください」
「天野‥‥‥。お前は仲村に最後に挨拶をしにくつもりか?」
「はい、まぁそんなとこです」
息を切らしながらも、睨みつけるような眼差しで見つめる僕を真剣に見つめ先生は
「天野‥‥すまない。実は先生も仲村がどこにいるか分からないんだよ」
と言う。その時に僕は、何故か分からなかったけど、無性に怒りが込み上がってきた。
そして気づいた時には、僕は先生の胸倉をつかんでいた。
「何で先生が知らないんだよ!普通知ってるはずだろ!」
僕は周りの先生に取り押さえられながらも必死に訴えかける。
すると、先生は頭を地面につけ泣いていた。
僕には何故そんなことをしているのかが分からなかった。
「すまない天野!私は昨日、仲村の家に行ったんだ。お前と同じように挨拶をしに行こうと思ってた。でも、誰もいなかった。何故か鍵が開いていたから中を除いても、中には何もなかった。
私がもう少し早く訪れていればこんなことにはならなかったはずだ。
だから、許してくれとは言わない!私をいくらでも殴ってくれてもいい。君が望むなら私は教師を辞めてもいい。でも、その代わりに仲村を私に見つけさせてくれ」
大人の対応だ。そんな先生を見て自分の行動がバカらしく思えた。
「先生‥‥ごめんなさい。僕も先生に生意気な口を利いてすみませんでした。だから僕にも手伝わさせて下さい」
少し間が空いて、その言葉の意味を理解した先生は、先程にも増して泣いていた。
「天野ぉ‥‥。ありがとう‥‥」
顔がぐちゃぐちゃになった先生はいつもと違って面白くて、本当に生徒のことを考えているんだ。と思えた。
「先生、行きましょう。仲村さんを探しに」
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