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第5章雑談:柊
体質のこと
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「柊さんって、特殊な体質だったりするんですか?」
「……ああ、そうだが」
……なんか当たり前のように
返事されてしまった……。
どう、話を続けよう……。
「ええっと……どんな風に特殊なんですか?」
「空間に強い」
「空間に……強い?」
「そうだ。空間に強い。
普通の幼子や老人、病人などは
時にさらわれるだけで
命が危険に晒されることさえある」
「え……」
「どのくらい空間に強いかは
生まれたときに半分以上決まっている。
空間に強ければ
幼くとも、または老いても……
病に倒れようとも
時空に殺されることはない」
「空間に強い家系というものがある。
俺の父も母も、祖父も祖母も……その前も
俺の家の者のほとんどは、空間に強い」
「あの、それって」
「そうだ、原始的な遺伝子操作だ」
「けっして誰かに強要されるものではない、
柊家に生まれたからと言って
空間に強い者と結ばれねばならないという
決まりなどどこにもない」
「だが、期待はされる。
俺の家だけではない、他の家もだ。
そして、自分の家系の血の強さを
競い合っている。
だから、誰もが知らぬうちに
自分の遺伝子を、自分の体質を
子孫にも残そうと考える」
「……本当にくだらない」
「じゃあ、柊さんは違うんですね」
「そうでもない。
くだらないと理解しているだけで
俺の飛び方は
柊家の者そのものだろう」
「どうして、そんなことを?」
「単純に……」
「単純に、嬉しかったからだ。
俺が助けた者が元の世界に戻り
変わりなく生活していると知ったとき……
嬉しかったからだ」
「でも、体を壊すほど飛ぶことは
無かったんじゃないですか?」
「それでも、飛びたかった」
「駄目ですよ、そういうの」
「…………!
なぜ、そう思う?」
あ、今……。
もしかして……。まぁ、いいか。
「貴方を大切に思っている人が
悲しむでしょう?」
「…………!」
「と、模範解答したいところですけど」
「……模範解答?」
「今の私の意見は、違います。
柊さんがいなくなったら、
私が困るからです」
「困る……?」
「私がコマンド入力を間違ったときは?
機械がエラーを起こしたときは?
誰に頼ればいいんですか」
「…………?
俺以外の者でも……」
「でも、私のパートナーは
柊さんってことになってますから。
私が最初に頼るのは柊さんです」
「…………?」
「そうやって、関わっていくうちに
“大切”になっていくんだと思います。
だからそういう、模範解答が存在するんでしょうね」
「意味が……分からないが」
「分からないなら、それでいいです」
ふふん。
今、ちょっとだけ勝った気分だ。
……違う、私に。
「……ああ、そうだが」
……なんか当たり前のように
返事されてしまった……。
どう、話を続けよう……。
「ええっと……どんな風に特殊なんですか?」
「空間に強い」
「空間に……強い?」
「そうだ。空間に強い。
普通の幼子や老人、病人などは
時にさらわれるだけで
命が危険に晒されることさえある」
「え……」
「どのくらい空間に強いかは
生まれたときに半分以上決まっている。
空間に強ければ
幼くとも、または老いても……
病に倒れようとも
時空に殺されることはない」
「空間に強い家系というものがある。
俺の父も母も、祖父も祖母も……その前も
俺の家の者のほとんどは、空間に強い」
「あの、それって」
「そうだ、原始的な遺伝子操作だ」
「けっして誰かに強要されるものではない、
柊家に生まれたからと言って
空間に強い者と結ばれねばならないという
決まりなどどこにもない」
「だが、期待はされる。
俺の家だけではない、他の家もだ。
そして、自分の家系の血の強さを
競い合っている。
だから、誰もが知らぬうちに
自分の遺伝子を、自分の体質を
子孫にも残そうと考える」
「……本当にくだらない」
「じゃあ、柊さんは違うんですね」
「そうでもない。
くだらないと理解しているだけで
俺の飛び方は
柊家の者そのものだろう」
「どうして、そんなことを?」
「単純に……」
「単純に、嬉しかったからだ。
俺が助けた者が元の世界に戻り
変わりなく生活していると知ったとき……
嬉しかったからだ」
「でも、体を壊すほど飛ぶことは
無かったんじゃないですか?」
「それでも、飛びたかった」
「駄目ですよ、そういうの」
「…………!
なぜ、そう思う?」
あ、今……。
もしかして……。まぁ、いいか。
「貴方を大切に思っている人が
悲しむでしょう?」
「…………!」
「と、模範解答したいところですけど」
「……模範解答?」
「今の私の意見は、違います。
柊さんがいなくなったら、
私が困るからです」
「困る……?」
「私がコマンド入力を間違ったときは?
機械がエラーを起こしたときは?
誰に頼ればいいんですか」
「…………?
俺以外の者でも……」
「でも、私のパートナーは
柊さんってことになってますから。
私が最初に頼るのは柊さんです」
「…………?」
「そうやって、関わっていくうちに
“大切”になっていくんだと思います。
だからそういう、模範解答が存在するんでしょうね」
「意味が……分からないが」
「分からないなら、それでいいです」
ふふん。
今、ちょっとだけ勝った気分だ。
……違う、私に。
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