108 / 179
第5章:華菜と柊
2
しおりを挟む
「あの情報を得たのは偶然だったという。
まさか、捨てていく基地のデータベースに
それを残していくとは思っていなかったが……
この世界では何百年か前に発見されたもの。
形式上機密ということになっているだけで
守るほどの情報ではないのかも知れないな」
ああ、教えないで。
私は何も知らない。
そういうことにしておかないと……。
「だがあの情報を元に別世界を構築したのは事実。
おそらく、気の遠くなるような計算を重ね
我々はある未来の技術を超えたのだと思う」
「そ、そうなんですか……」
今は相槌を打っておくしかない。
「あのデータがそのまま使える、なんてことは
まずない。過去に失敗している。
だから、新天地を作ろうとなど考えるな」
柊さんが、私を睨む。
「はぁ……そんなことは出来ないから、
きっとその心配はないと思います」
「貴女たちは、きっと元の世界に帰す。
貴女たちの未来への対策が
何も見つからなかった時は……
俺としては非常に不本意だが……
それでも帰す。だから」
「はい。お願いします」
「……あぁ」
私の素直な態度と自分の態度に
温度差を感じたのか、
柊さんの熱っぽい口調は元に戻った。
「とにかく、妙なことは考えるな。
それと、無理はするな」
念を押す柊さん。
「しませんよ。これ以上、人が倒れたら……
ここ、どうやって回すんですか?
私なんてどうせ猫の手ですけど
それでもいないよりマシでしょう?」
「猫の手だなどとは……」
「ふっふーん」
私は自分の席に戻った。
新天地なんて、作れないよ。
そんな大それた事、できるわけがない。
私が考えているのは別のこと……。
柊さんが違うことを連想してくれて助かった。
私はそれに安心したせいで、気づきもしなかった。
ここでもさりげなく、密かに……
違う私と柊さんの間で起こったことが
繰り返されていたことに。
ふたりきりの場所で倒れた私は
誰かの助けを望まず
柊さんとふたりきりの時間を望んだ。
……ということに。
まさか、捨てていく基地のデータベースに
それを残していくとは思っていなかったが……
この世界では何百年か前に発見されたもの。
形式上機密ということになっているだけで
守るほどの情報ではないのかも知れないな」
ああ、教えないで。
私は何も知らない。
そういうことにしておかないと……。
「だがあの情報を元に別世界を構築したのは事実。
おそらく、気の遠くなるような計算を重ね
我々はある未来の技術を超えたのだと思う」
「そ、そうなんですか……」
今は相槌を打っておくしかない。
「あのデータがそのまま使える、なんてことは
まずない。過去に失敗している。
だから、新天地を作ろうとなど考えるな」
柊さんが、私を睨む。
「はぁ……そんなことは出来ないから、
きっとその心配はないと思います」
「貴女たちは、きっと元の世界に帰す。
貴女たちの未来への対策が
何も見つからなかった時は……
俺としては非常に不本意だが……
それでも帰す。だから」
「はい。お願いします」
「……あぁ」
私の素直な態度と自分の態度に
温度差を感じたのか、
柊さんの熱っぽい口調は元に戻った。
「とにかく、妙なことは考えるな。
それと、無理はするな」
念を押す柊さん。
「しませんよ。これ以上、人が倒れたら……
ここ、どうやって回すんですか?
私なんてどうせ猫の手ですけど
それでもいないよりマシでしょう?」
「猫の手だなどとは……」
「ふっふーん」
私は自分の席に戻った。
新天地なんて、作れないよ。
そんな大それた事、できるわけがない。
私が考えているのは別のこと……。
柊さんが違うことを連想してくれて助かった。
私はそれに安心したせいで、気づきもしなかった。
ここでもさりげなく、密かに……
違う私と柊さんの間で起こったことが
繰り返されていたことに。
ふたりきりの場所で倒れた私は
誰かの助けを望まず
柊さんとふたりきりの時間を望んだ。
……ということに。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
【完結】浮気現場を目撃してしまい、婚約者の態度が冷たかった理由を理解しました
紫崎 藍華
恋愛
ネヴィルから幸せにすると誓われタバサは婚約を了承した。
だがそれは過去の話。
今は当時の情熱的な態度が嘘のように冷めた関係になっていた。
ある日、タバサはネヴィルの自宅を訪ね、浮気現場を目撃してしまう。
タバサは冷たい態度を取られている理由を理解した。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
夫が大人しめの男爵令嬢と不倫していました
hana
恋愛
「ノア。お前とは離婚させてもらう」
パーティー会場で叫んだ夫アレンに、私は冷徹に言葉を返す。
「それはこちらのセリフです。あなたを只今から断罪致します」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる