48 / 78
第48話 オッサンとご令嬢の溜息
しおりを挟む
「……あれが『エルフの森の宝石』か……」
「確かにそう言われるだけはありますね」
「はー、見るだけで、寿命が延びるとかご利益がありそうです」
ムジカの提示した『裏ギルド壊滅作戦』について、大まかな合意を得た後の事。
緊張が解けたのか、ゼルドナ王国の3人の重臣達——近衛騎士団長、宰相、侍従長は、そんな軽口を言いながら部屋を出て行った。
「ぷぷっ、ムジカが『エルフの森の宝石』だって!」
「………そんな異名はじめて聞きました」
「良いな。俺も『エルフの森の疾風』とか、かっこいいヤツ欲しいな」
「ええー、私はやだ」
ミィナ達もワチャワチャと、気の抜けた会話を交わしている。
とにかくも、俺達は裏ギルドの件が解決するまで、王城に留まることになったのだ———
そして城に泊まって3日目の午後。
最初は気後れするほど豪華絢爛な建物も、数日泊まればさすがに目が慣れてくる。
ムジカは王子や臣下達とのやり取りで、今は俺に構っている暇は無く、ミィナとモルソも単独行動をしている。
護衛の兵士をつける事で、俺も城内での自由な行動を許されていた。
まあ、人様のお家に滞在している訳だし、自由と言っても城の中を散歩する程度だ。
その行動範囲の中に、庭園も含まれていた。
何となく足を踏み入れた時、俺は彼女とバッタリ出会ってしまった。
「あ」
「あなたは………ムジカ様のお付きの方でしたわね」
美しい花の咲き誇る庭園をバックに、メルクリオ王子の婚約者リーウス・ヴィーバル侯爵令嬢が、メイドさんを従え、俺の目の前に立っていた。
優雅に礼をする彼女に対し、そう言えばまだだったと「俺はユイと言います」と、最低限の自己紹介をする。
「ユイ様……ですか。失礼ですが、あなたはヒト族の方ですわよね?」
「ええ。エルフの森の入り口で行き倒れているところを、ムジカに救われました」
真実は言ってないが、嘘もついていない。
リーウスは何故か俺をじっと見つめると、不意に扇子を開き、口元を隠してメイドさんに何やら耳打ちしている。
え? 俺、お嬢様の気に触る事、何か言った?
リーウスは扇子を閉じると、
「ユイ様。これからお時間はございますか?」
と、唐突に聞いてきた。
「はあ……ムジカ達と違って、俺はやる事も無いですし」
「では決定ですね。ユイ様、私の午後のお茶に付き合って下さいませ」
「はい?」
展開が早過ぎて頭が追い付かない。
何故か俺は、王子様の婚約者とお茶会するハメになってしまった———
急遽決まった2人だけのお茶会は、庭園の東屋でひっそりと行われた。
テーブルの上には瀟洒なティーカップやティーポット。
3段のケーキスタンドには一口サイズのケーキが並んでいる。
自分より若い女の子と話すのは緊張するが、ケーキのような甘味は久し振りなので、こちらは有り難く頂戴した。
「あら、ユイ様は甘い物がお好きですの?」
「特別好きではなかったんですが、久し振りに食べると美味いですね」
「………ユイ様は、どこかの国のお貴族様でいらっしゃいますか?」
「へ!? い、いやあ、平民ですよ!? しかも底辺の方の……」
「そうですの……」
じとりと、胡乱な視線をお嬢様から頂いてしまった。
危ない危ない。
異世界ではこういったスウィーツも貴族しか口にしないかもしれない。
目立つ言動は避けなければ!
「あのー、それで、リーウスさん——じゃなかった、リーウス様は何か俺にご用ですか?」
「『リーウスさん』で結構ですわ。メルクリオ殿下が、エルフの族長であるムジカ様と同等の扱いをせよと仰せですもの。私相手にへりくだる必要はありません」
「さようですか」
うーん。あの王子、そんな事を周りのヒトに言ってたのか。
どおりで城内での俺に対する扱いは丁寧だけど、たまにチクチクする視線を感じるワケだ。
『虎の威を借る狐』とでも思われているんだろう。
初日以降すれ違うだけで接触は無い宰相と近衛騎士団長の視線は、特にそれが顕著だった。
「あ、リーウスさんはメルクリオ殿下の用事で、今日はこちらにいらっしゃるんですか?」
侯爵令嬢は俺の言葉に首を傾げる。
「いいえ。私は殿下の婚約者に決まってから、幼い頃よりこちらに部屋を頂いております。将来の王妃としての教育を受ける為ですわ」
「それは……大変そうですね」
親元を離れ、自分の将来の為に勉強するというのは、俺の元いた世界でもままある話だ。
しかし目標が『王妃』となると、その華奢な肩に大きな責任も背負わなくてはならない。
「最初の頃は確かに慣れなくて、心細い思いをしましたわね」
リーウスはカップに視線を落とし、呟いた。
「でもメルクリオ殿下とクヴェレ殿下が良くしてくださいましたし、侍従長であるニエンテ伯爵も、それこそ親のように私の事を気遣って下さいました……」
「ああ、あの侍従長さんは、気さくな良い人ですね」
城の管理者たる侍従長には作戦会議の後、俺もアレコレお世話になっている。
メルクリオ王子に言いつかっているのか、城での生活で不便は無いかと、俺に対しても何かと気にしてくれる。
「ええ。人が良過ぎるのが、貴族として玉に瑕なくらいですわ。ニエンテ伯爵は昔、馬車の事故で奥様とご令息とご令嬢を亡くされて……それで同じ年頃の私達を、自分の子どものように可愛がって下さったのです。だから王妃教育と言っても、辛い事はちっともありませんでしたのよ」
それは本心からの言葉のようで、俺は初めて彼女の笑みを見た。
「じゃあ、殿下達は本当にリーウスさんとって、兄弟のような幼馴染みなんですね」
何気なく俺が相槌を打つと、ご令嬢の笑顔がスッと翳った。
「そうですわね……私達は、同じ時を過ごしてきた筈なのに…………」
「リーウスさん?」
次の瞬間、彼女の目が、俺を真っ直ぐ見た。
「ユイ様は、ムジカ様の恋人なのですか?」
「ぶっっ!!」
俺は口に含んでいたお茶を噴き出した。
ご令嬢の顔にぶち撒けるという大惨事は回避したが、そのせいで気管に入って酷く咳き込む羽目になった。
「ゴホッ、ゲホッ、な、何で、そうなるんです!?」
「あ、申し訳ありません。ここ数日、お二人の様子を遠くから拝見しておりましたら、そんな気がして———」
「誤解です!」
確かに俺もムジカも、互いに好意は持っている。
しかしムジカのそれは、放っておけない迷子の子どもに対する、庇護欲のようなものだろう。
時々距離感がバグっているとしか思えない時もあるが、それはアレだ。
きっとヒトとエルフのコミュニケーションや文化の違いなんだ。
多分、おそらく…………………………。
自分自身によく分からない言い訳をしている最中に、俺ははたと気づいた。
「もしかして、リーウスさんはメルクリオ殿下との関係で、何か悩んでるんですか?」
「っ!!」
今度は彼女がお茶を噴き出しそうになって、すんでのところで飲み込んだ。
さすがはご令嬢だ。
俺みたいに無様に咳き込む事もなく、「失礼」とハンカチで優雅に口許を拭っただけで済んだ。
「………ええと、すみません。俺が変な事言ったせいですね」
「いえ、元はと言えば私が———」
リーウスは言葉を切ると、今度は俺から視線を逸らした。
「そうですわね。私はきっと戸惑っているのです」
「リーウスさん?」
「ユイ様は、最初に私とメルクリオ殿下を見て、どう思われましたか?」
「どう……とは?」
「私が殿下の婚約者だとは、いいえ、それどころか私が殿下より歳下だとは思わなかったでしょう」
自嘲する彼女に、俺はかける言葉に詰まった。
確かに、今でこそメルクリオ王子の方が彼女より歳上だと知っているが、初めて彼らに会った時は、リーウスの言うとおりだと思ってしまったから……。
「これから先、その差が縮む事はありません。私はメルクリオ殿下の婚約者だと言うのに、不釣り合いなのです」
リーウスは視線を自分の手元に落とす。
「それは見かけだけの話ではありません。あの方は民が困っているとなれば、危険を顧みず飛び込んでいける。けれど私は———」
ああ、彼女はきっと自信が無いないだけなんだ。
エルフの血を引き、これからもゆっくり歳をとっていくメルクリオ王子に対して、普通のヒトであるリーウス侯爵令嬢。
生きる時間の違いだけでは無く、革新的な王子と保守的な侯爵令嬢。
だからリーウスは同じ立場に見える俺に、助言を求めたんだ。
俺はただの無責任なオッサンだから、気の利いたことは言えないけど…………。
「そんな事、気にする必要無いと思います」
俯いていた彼女の視線が、再び俺に向けられる。
「失礼ながらリーウスさんは武芸に秀でているわけでは無いでしょう? 俺だってそうです。って言うか先日の捕物で、出しゃばって危険な目に遭って、ムジカに怒られました」
「………それは駄目ですわね」
「そうです。駄目です。餅は餅屋に任せるべきなのです」
クスッと、リーウスの顔に笑みが戻った。
黙っていても綺麗な女性だが、彼女は笑った方がより魅力的だ。
「ユイ様のお陰で少し気が紛れましたわ、有意義な時間を有難うございました」
「いえいえ。俺なんかがお役に立てたら光栄です」
他人の俺に打ち明けて、少しスッキリしたのだろう。
心なしか、最初より明るくなった表情で、侯爵令嬢は東屋から去って行った。
リーウスとメルクリオ王子の間に、どんな時間が流れていたのか、余人には預かり知らぬ事だ。
今はぎこちない彼らの関係も、堆積した時間の表層に過ぎない。
だから変わろうと思えば変われる筈なんだ。
本人にその気さえあれば———
「確かにそう言われるだけはありますね」
「はー、見るだけで、寿命が延びるとかご利益がありそうです」
ムジカの提示した『裏ギルド壊滅作戦』について、大まかな合意を得た後の事。
緊張が解けたのか、ゼルドナ王国の3人の重臣達——近衛騎士団長、宰相、侍従長は、そんな軽口を言いながら部屋を出て行った。
「ぷぷっ、ムジカが『エルフの森の宝石』だって!」
「………そんな異名はじめて聞きました」
「良いな。俺も『エルフの森の疾風』とか、かっこいいヤツ欲しいな」
「ええー、私はやだ」
ミィナ達もワチャワチャと、気の抜けた会話を交わしている。
とにかくも、俺達は裏ギルドの件が解決するまで、王城に留まることになったのだ———
そして城に泊まって3日目の午後。
最初は気後れするほど豪華絢爛な建物も、数日泊まればさすがに目が慣れてくる。
ムジカは王子や臣下達とのやり取りで、今は俺に構っている暇は無く、ミィナとモルソも単独行動をしている。
護衛の兵士をつける事で、俺も城内での自由な行動を許されていた。
まあ、人様のお家に滞在している訳だし、自由と言っても城の中を散歩する程度だ。
その行動範囲の中に、庭園も含まれていた。
何となく足を踏み入れた時、俺は彼女とバッタリ出会ってしまった。
「あ」
「あなたは………ムジカ様のお付きの方でしたわね」
美しい花の咲き誇る庭園をバックに、メルクリオ王子の婚約者リーウス・ヴィーバル侯爵令嬢が、メイドさんを従え、俺の目の前に立っていた。
優雅に礼をする彼女に対し、そう言えばまだだったと「俺はユイと言います」と、最低限の自己紹介をする。
「ユイ様……ですか。失礼ですが、あなたはヒト族の方ですわよね?」
「ええ。エルフの森の入り口で行き倒れているところを、ムジカに救われました」
真実は言ってないが、嘘もついていない。
リーウスは何故か俺をじっと見つめると、不意に扇子を開き、口元を隠してメイドさんに何やら耳打ちしている。
え? 俺、お嬢様の気に触る事、何か言った?
リーウスは扇子を閉じると、
「ユイ様。これからお時間はございますか?」
と、唐突に聞いてきた。
「はあ……ムジカ達と違って、俺はやる事も無いですし」
「では決定ですね。ユイ様、私の午後のお茶に付き合って下さいませ」
「はい?」
展開が早過ぎて頭が追い付かない。
何故か俺は、王子様の婚約者とお茶会するハメになってしまった———
急遽決まった2人だけのお茶会は、庭園の東屋でひっそりと行われた。
テーブルの上には瀟洒なティーカップやティーポット。
3段のケーキスタンドには一口サイズのケーキが並んでいる。
自分より若い女の子と話すのは緊張するが、ケーキのような甘味は久し振りなので、こちらは有り難く頂戴した。
「あら、ユイ様は甘い物がお好きですの?」
「特別好きではなかったんですが、久し振りに食べると美味いですね」
「………ユイ様は、どこかの国のお貴族様でいらっしゃいますか?」
「へ!? い、いやあ、平民ですよ!? しかも底辺の方の……」
「そうですの……」
じとりと、胡乱な視線をお嬢様から頂いてしまった。
危ない危ない。
異世界ではこういったスウィーツも貴族しか口にしないかもしれない。
目立つ言動は避けなければ!
「あのー、それで、リーウスさん——じゃなかった、リーウス様は何か俺にご用ですか?」
「『リーウスさん』で結構ですわ。メルクリオ殿下が、エルフの族長であるムジカ様と同等の扱いをせよと仰せですもの。私相手にへりくだる必要はありません」
「さようですか」
うーん。あの王子、そんな事を周りのヒトに言ってたのか。
どおりで城内での俺に対する扱いは丁寧だけど、たまにチクチクする視線を感じるワケだ。
『虎の威を借る狐』とでも思われているんだろう。
初日以降すれ違うだけで接触は無い宰相と近衛騎士団長の視線は、特にそれが顕著だった。
「あ、リーウスさんはメルクリオ殿下の用事で、今日はこちらにいらっしゃるんですか?」
侯爵令嬢は俺の言葉に首を傾げる。
「いいえ。私は殿下の婚約者に決まってから、幼い頃よりこちらに部屋を頂いております。将来の王妃としての教育を受ける為ですわ」
「それは……大変そうですね」
親元を離れ、自分の将来の為に勉強するというのは、俺の元いた世界でもままある話だ。
しかし目標が『王妃』となると、その華奢な肩に大きな責任も背負わなくてはならない。
「最初の頃は確かに慣れなくて、心細い思いをしましたわね」
リーウスはカップに視線を落とし、呟いた。
「でもメルクリオ殿下とクヴェレ殿下が良くしてくださいましたし、侍従長であるニエンテ伯爵も、それこそ親のように私の事を気遣って下さいました……」
「ああ、あの侍従長さんは、気さくな良い人ですね」
城の管理者たる侍従長には作戦会議の後、俺もアレコレお世話になっている。
メルクリオ王子に言いつかっているのか、城での生活で不便は無いかと、俺に対しても何かと気にしてくれる。
「ええ。人が良過ぎるのが、貴族として玉に瑕なくらいですわ。ニエンテ伯爵は昔、馬車の事故で奥様とご令息とご令嬢を亡くされて……それで同じ年頃の私達を、自分の子どものように可愛がって下さったのです。だから王妃教育と言っても、辛い事はちっともありませんでしたのよ」
それは本心からの言葉のようで、俺は初めて彼女の笑みを見た。
「じゃあ、殿下達は本当にリーウスさんとって、兄弟のような幼馴染みなんですね」
何気なく俺が相槌を打つと、ご令嬢の笑顔がスッと翳った。
「そうですわね……私達は、同じ時を過ごしてきた筈なのに…………」
「リーウスさん?」
次の瞬間、彼女の目が、俺を真っ直ぐ見た。
「ユイ様は、ムジカ様の恋人なのですか?」
「ぶっっ!!」
俺は口に含んでいたお茶を噴き出した。
ご令嬢の顔にぶち撒けるという大惨事は回避したが、そのせいで気管に入って酷く咳き込む羽目になった。
「ゴホッ、ゲホッ、な、何で、そうなるんです!?」
「あ、申し訳ありません。ここ数日、お二人の様子を遠くから拝見しておりましたら、そんな気がして———」
「誤解です!」
確かに俺もムジカも、互いに好意は持っている。
しかしムジカのそれは、放っておけない迷子の子どもに対する、庇護欲のようなものだろう。
時々距離感がバグっているとしか思えない時もあるが、それはアレだ。
きっとヒトとエルフのコミュニケーションや文化の違いなんだ。
多分、おそらく…………………………。
自分自身によく分からない言い訳をしている最中に、俺ははたと気づいた。
「もしかして、リーウスさんはメルクリオ殿下との関係で、何か悩んでるんですか?」
「っ!!」
今度は彼女がお茶を噴き出しそうになって、すんでのところで飲み込んだ。
さすがはご令嬢だ。
俺みたいに無様に咳き込む事もなく、「失礼」とハンカチで優雅に口許を拭っただけで済んだ。
「………ええと、すみません。俺が変な事言ったせいですね」
「いえ、元はと言えば私が———」
リーウスは言葉を切ると、今度は俺から視線を逸らした。
「そうですわね。私はきっと戸惑っているのです」
「リーウスさん?」
「ユイ様は、最初に私とメルクリオ殿下を見て、どう思われましたか?」
「どう……とは?」
「私が殿下の婚約者だとは、いいえ、それどころか私が殿下より歳下だとは思わなかったでしょう」
自嘲する彼女に、俺はかける言葉に詰まった。
確かに、今でこそメルクリオ王子の方が彼女より歳上だと知っているが、初めて彼らに会った時は、リーウスの言うとおりだと思ってしまったから……。
「これから先、その差が縮む事はありません。私はメルクリオ殿下の婚約者だと言うのに、不釣り合いなのです」
リーウスは視線を自分の手元に落とす。
「それは見かけだけの話ではありません。あの方は民が困っているとなれば、危険を顧みず飛び込んでいける。けれど私は———」
ああ、彼女はきっと自信が無いないだけなんだ。
エルフの血を引き、これからもゆっくり歳をとっていくメルクリオ王子に対して、普通のヒトであるリーウス侯爵令嬢。
生きる時間の違いだけでは無く、革新的な王子と保守的な侯爵令嬢。
だからリーウスは同じ立場に見える俺に、助言を求めたんだ。
俺はただの無責任なオッサンだから、気の利いたことは言えないけど…………。
「そんな事、気にする必要無いと思います」
俯いていた彼女の視線が、再び俺に向けられる。
「失礼ながらリーウスさんは武芸に秀でているわけでは無いでしょう? 俺だってそうです。って言うか先日の捕物で、出しゃばって危険な目に遭って、ムジカに怒られました」
「………それは駄目ですわね」
「そうです。駄目です。餅は餅屋に任せるべきなのです」
クスッと、リーウスの顔に笑みが戻った。
黙っていても綺麗な女性だが、彼女は笑った方がより魅力的だ。
「ユイ様のお陰で少し気が紛れましたわ、有意義な時間を有難うございました」
「いえいえ。俺なんかがお役に立てたら光栄です」
他人の俺に打ち明けて、少しスッキリしたのだろう。
心なしか、最初より明るくなった表情で、侯爵令嬢は東屋から去って行った。
リーウスとメルクリオ王子の間に、どんな時間が流れていたのか、余人には預かり知らぬ事だ。
今はぎこちない彼らの関係も、堆積した時間の表層に過ぎない。
だから変わろうと思えば変われる筈なんだ。
本人にその気さえあれば———
43
お気に入りに追加
225
あなたにおすすめの小説
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺
ウミガメ
BL
魔女の呪いで余命が"1年"になってしまった俺。
その代わりに『触れた男を例外なく全員"好き"にさせてしまう』チート能力を得た。
呪いを解くためには男からの"真実の愛"を手に入れなければならない……!?
果たして失った生命を取り戻すことはできるのか……!
男たちとのラブでムフフな冒険が今始まる(?)
~~~~
主人公総攻めのBLです。
一部に性的な表現を含むことがあります。要素を含む場合「★」をつけておりますが、苦手な方はご注意ください。
※この小説は他サイトとの重複掲載をしております。ご了承ください。
魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。
柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。
そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。
すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。
「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」
そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。
魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。
甘々ハピエン。
キスから始まる主従契約
毒島らいおん
BL
異世界に召喚された挙げ句に、間違いだったと言われて見捨てられた葵。そんな葵を助けてくれたのは、美貌の公爵ローレルだった。
ローレルの優しげな雰囲気に葵は惹かれる。しかも向こうからキスをしてきて葵は有頂天になるが、それは魔法で主従契約を結ぶためだった。
しかも週に1回キスをしないと死んでしまう、とんでもないもので――。
◯
それでもなんとか彼に好かれようとがんばる葵と、実は腹黒いうえに秘密を抱えているローレルが、過去やら危機やらを乗り越えて、最後には最高の伴侶なるお話。
(全48話・毎日12時に更新)
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる