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留守番のトオヤ達[美香月さん!リクエストありがとうございます!『アミューズメントパーク』『犬獣人視点』]その参

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ー 屋台店主 セントバーナード獣人 ゴール視点ー

 ……ワイルの奴、こんなところに来てまでシン様への熱弁吐いてるとは……!流石、シン様一筋の雄……!自分もかなりモテてるってのになぁ、勿体ねえ。

 だが、セレリオ国でもやっぱりいたか……!トオヤ様を強く思う奴が。俺達獣人の悲しい性だなぁ……『番』の匂いって奴は。

 しかも、転移者に限っては該当者が一人とは限らない。ああ、そのとおりだ。実は、結構な人数が該当する。だが、そこは獣人らしく実力とタイミングがモノを言う。

 それに、獣人にとっての強さは、ただの力自慢じゃねえ。誠実、実直、柔和さと言った性質を含め、真の権力と実力の持ち主の事だ。

 だから、その点においてもカレッド殿下やヴァレリー騎士団長は言う事はない。そして最後には、転移者から選ばれて正式な番となる。

 ……ああ見えて、ワイルの奴も着実に地位も器もデカくなっているからなぁ。大したもんだよ。セレリオ国側の若いピューマの兄ちゃんは、もっと頑張らないといけない様だが……

 「おーい、ゴールの親父?まあた、何をボヤッとしているんだよ?」

 「お?いや、ついワイルを見かけてな?」

 「ああ、まあたシン様への愛を叫んでたんだろ?あいつの想いもここまで来ると立派だよ。まあ、でもそれは置いといて、見ろよコレ!さっき、そこの大通りを踊っていた一団がばら撒いていたんだ!」

 「あ?何だコリャ?」

 同じ屋台店主のハスキー獣人のベリアルが、何やら期待した表情で俺に渡したのは……

 「間もなく開演?音と映像と踊りのシンフォニー?『アラ○ン』?」

 どうやら催し物らしいな?ん?三刻(10:00)の部と四刻半(13:30)の部の二回公演?

 ほおお……!見る限り面白そうじゃ無いか……!

 「な!一緒に見に行かねえか?どうせお前も独り身でぶらぶらしてたんだろ?」

 「仕方ないだろうが。俺の連れ合いまで遠征に連れて来れなかったんだから」

 「そりゃ、俺も同じだっての。それに、さっきシン様とトオヤ様もそれに行くって言ってたし、面白そうだろ?」

 「まあな。で、何処でやるんだ?」

 「ほれ、ここをまっすぐ行った大きな丸い建物だと」

 「ん、なら行くか」

 遠征に来てよかった、と今日ほど思った事はないな。シン様の能力とトオヤ様の能力の恩恵にあずかれるんだ。

 どちらも凄えが、トオヤ様の能力は桁違いだ。これの他にもいろんな場所を召喚出来るんだからなぁ。

 そんな事を考えて歩いていると、大きな建物の入り口まで着いたんだが、俺とベリアルは動けないでいた。

 「なあ、ベリアル?……ここ、本当に俺らが入れる場所なのか?」

 「……俺も、自信無くなってきた……!」

 俺らがこうやって立ち尽くすのも、無理はないと思うぜ?なんせ、見た感じ宮殿の様に立派な造りで煌びやかなんだ。

 ……こちとら宮殿にすら行った事のねえ、生粋の庶民だっての!足がすくむのも仕方ねえだろ?

 「あれ?ゴールさんじゃん?どうした?」
 「……!(セントバーナード獣人さんとシベリアンハスキー獣人さんだ!)」

 この声は……!と思って振り向くと、噂の当事者のシン様となぜか口を押さえたトオヤ様がいた。

 ……おお、後ろをいつものカワタ温泉スタッフがついて来てるわ。護衛はイゲルだけ?……じゃねえよなぁ。当然距離をとってワイル達もいたわ。

 しかし、この目立つ集団が同じ方向に来たって事は……

 「ラッキー!シン様とトオヤ様が揃ってるぜ」
 「やっぱり良いよなあ、あの二人……!」

 そういやいたなぁ…まだまだ若い屋台の店主の奴ら。馬鹿だなぁ、アイツら。護衛達に目をつけられてるわ。……うん、まあ何事も経験だな。

 「きゃあ!牙狼部隊のイゲルさんよ!あ、ワイルさんも見つけたわ!」
 「え、ちょっと待って!セレリオ国側の護衛さん達も素敵……!」

 まあ、アイツら目立つからなぁ。当然、非戦闘員の雌共も一緒に来るか。仕方ないとはいえ……うるせえんだよなあ。全く。

 「………!クリィ君やっぱり良い!」
 「ピューリたん……!可愛い……!」
 「うおおお!四人揃ってる……!」

 ん?こっちは……ああ、カワタ温泉の職員は人気あっからなぁ。まだ番のいない若い雄の奴らを引き連れて来たか……
 
 「なあ、よかったらゴール達も一緒に俺達と見てみないか?面白いと思うぜ」

 なんて周囲を見てたら、こっちはこっちでまさかシン様から誘われるとは……!

 うおっ!ワイルの馬鹿、殺気飛ばして来やがった!わかってる!わかってるからその殺気しまえ!次に俺の店来た時、お前だけ肉の量減らしてやるぞ⁉︎

 「えっと……?ゴールさんとそちらの方も是非!(うおおお!この面子貴重だぜ!逃すかよ!)」

 うわ、トオヤ様まで笑顔で誘って来やがった……!に、逃げられねえ……!

 「ご迷惑でなければ……」
 「勿論です!」

 ベリアルは喜んで返事していたが、この目立つ面子とともにこの催しを見るという事は、俺らも見せ物になる事なるんだろうなぁ。

 とか、思ってたんだけどよお……!中に入って更にそれどころじゃ無くなったんだ!

 「うわっ、すっげえフッカフカ。しかも一人一人の座るスペース広くって良い感じ!」
 「? 晋さん、コレもしかして電動リクライニングチェアじゃないか?ほらシネマなんとかってとこのSクラス席の」
 「あ?俺、わかんねーけど、この席ランクめっちゃ高そうだよなぁ」

 この場所について前の席に座るシン様と勿論トオヤ様は知っている様だったが、正直言って俺は落ち着かねえ……!庶民の俺達が、こんな高級な椅子に座って良いのか……?

 横を見るとベリアルの奴も俺と同じでソワソワしていて、ちょっとホッとする。が、慣れた様に飲み物を買ってきたセリレオ国側の護衛騎士の奴らから、飲み物まで貰っちまった……!

 うぉ、此処でうっかり零(こぼ)したらどうすんだ!!!

 とりあえず貰うだけ貰って、見よう見まねで椅子の飲料置き場に置くと……いきなりフッと照明が消えて辺りが暗くなる。

 足元にぼんやりとした灯りがあるが、俺らは夜目も効くから関係ないが……なんて思ってたら、どこからか声が聞こえてきたんだ。

 『ご来場の皆様、シネマパレス・クガへようこそおいで下さいました。当館は、最新の立体システムを搭載した物語を提供する為、初見の皆様には一度テスト視聴を受けて頂いております』

 もはや俺には何を言っているのかよくわからんかったが、何か本編が始まる前にお試しがあるらしい。(コッソリシン様が俺達に教えてくれた)
 
 『ではテスト視聴をお楽しみ下さい』

 声が聞こえなくなったと思ったら、なんと椅子から音楽が聞こえてきたんだ。音に気を取られていると「ええええ!」というベリアルの叫び声が聞こえて来た。

 どうしたのか確認しようと横を見ると、なんといつのまにか俺達が水に包まれていたんだ!

 「おおー、すっげ!コレ立体映像だろ?」
 「ホログラム?とは違う見たいだな……?」

 状況についていけず焦る俺だったが、ザワザワとする場内からシン様とトオヤ様の声を拾ったんだ。

 二人の話からすると、どうやらコレは「えいぞう(映像)」というモノで、肉眼では実物の様に見えるが実体のないただの透き通る動く絵というものらしい。

 ……しかし、実際に水の中にいる様な音や肌寒さや匂いまでするとは、大したもんだと思う。しかも、魚が真っ直ぐ俺に向かって泳いでくるんだぜ!驚いたのなんのって!

 でもよぉ、それが実体がないとわかっていても、猫科の獣人には耐えられなかったんだろうなぁ。シン様達の更に前の席で、その魚を捕らえようとするセレリオ国の護衛達の手が見えたのには、ベリアルと二人思わず吹いてしまったさ。

 でも、前の席から「ぐうっ!」というトオヤ様の声が聞こえて来て、トオヤ様の隣の席のカワタ温泉の番頭に心配されていたのは、流石に俺らもオロオロしちまった。

 ……噂通り病弱なんだな、トオヤ様ってのは。

 前の席のトオヤ様が心配でそのまま様子を見ていると、軽快な音楽が流れ出し、また不思議な声が聞こえてきた。

 『これが我がシネマパレス・クガの技術です。この様に実体験に近い形で視聴して頂きますが、危害はございませんので安心してご視聴下さいませ。では、これより本編の上映をお楽しみ下さい』

 説明が終わるとスッと景色が通常の建物内部に戻り、また暗くなって、どうやら本編が始まったらしい。

 ーーーー此処からが凄く面白かったんだよ!!

 まず最初に、館内様子が異国のスラム街に一変し、その中を自由に人間の青年が動き出したんだ。

 おそらく主人公であるその青年に、俺の頭の上を飛び越えられた時は思わず「ヒエッ!」て声を上げてしまった。

 そして場所が変わり、人間のお姫様視点で気味の悪い魔法使いの痩せ男の手が伸びて来た時には、館内のあちらこちらから唸り声が聞こえて来たほどだ。

 そして話を進ませる為に、なんと度々観客が巻き込まれるんだ。例えば、こんな感じに……

 『さあ、魔法のランプが目の前にあるよ?目の前にある獣人君は立ってくれる?』

 そう言われて立ったのが、チワワ獣人のピューリだ。

 『さあ、中から不思議な魔人を出す為の魔法の手順を教えるよ?まずは、腰に手を当てて、尻尾を上下に振りながらお尻を振って!』

 そう言って、主人公の青年が先に手本を見せて動くんだけどよ。この時の青年は、追っ手から逃げる為に半獣人の格好をしていたんだ。だから人間なのに獣耳と尻尾があったんだけど……

 「やべえ、あの主人公色っぽい……!」
 「うわ、アレに実体があったらヤバかったんじゃね?」

 なんて声が聞こえるほど、主人公の青年が俺達には魅力的に映った。

 そして、恥ずかしがりながらその通りに真似するピューリの姿に、館内は更に盛り上がりを見せる。

 『さあ、リズムに乗ってお尻を振りつつ、目の前のランプを擦ってくれ!』

 笑顔で指示する主人公の言葉に一生懸命従うピューリに、ピュウウッと口笛や「「ピューリちゃーん!」」「「「可愛いーー!!」」」と、野次や野太い歓声が飛ぶわ飛ぶわ。

 更に此処でトオヤ様がまた具合が悪くなった時には、焦ったがシン様の素早いフォローで、事なきを得た。流石シン様!

 そして、煙幕の中から出てきた緑色の魔人が出て来てからは更に凄え!魔法であちこちに果物や料理や金貨、宝石を出していくんだ!美味そうな匂いまで漂って来て俺も腹の音が鳴っちまったくらいさ!

 圧巻だったのは、お姫様と主人公が出会い、二人だけの夜空の空中デートの場面。

 何せ、座っている俺達も一緒になって飛んでいたんだぜ?

 そして、直接感じる風や水の匂いに、俺達の足の下に見える異国の風景。なにより、主人公とお姫様の歌声に酔いしれた。

 ……地元に残して来た伴侶が此処に居れば……なんて柄にもない事を思わせる綺麗な歌声だったからなぁ。

 なんて余韻も引きずりながら更に話は進みーーー

 囚われたお姫様を救う為に青年が魔人と立ち上がった時は、思わず手を握りしめ、気味の悪い魔法使いと対峙した時には、手に汗をかいていた俺。

 この時、セレリオ国の騎士が主人公に呼ばれて、立ち上がって助けに入ったのも見応えがあった。

 面白いんだよ!ガタイのいいジャガー獣人が殴る真似をすると、目の前の気味の悪い魔法使いがドンドン弱っていくんだ!

 いやぁ、俺も年甲斐もなく叫んじまった……!隣のベリアルなんか一緒に拳を出すほど熱狂してたしなぁ。

 そして、物語の終盤。

 青年とお姫様の空飛ぶ絨毯が俺達の上を通り越して行く姿には、なんていうか共にやり切った感があって、ジーンと胸があったかくなったもんだ。

 更に高揚感を増す二人の歌声に聴き入っていると……

 パッと周囲の景色が切り替わり、現実の煌びやかな建物に戻っていたんだ。

 ………ああ、終わっちまった……!

 隣を見ると、ベリアルの奴も同じような残念な表情になっていた。そして、俺達はようやく貰った飲み物を飲んで、それはもうガキの頃に戻ったように、今見たばかりの事を語りあった。

 ートウヤ視点ー

 うんうん、みんなが楽しそうに面白かった事を語り合うのって、映画を見た後の醍醐味だよなぁ。

 なんて思ってたら、晋さんはもうアミューズメントパークの地図を開いていたんだ。

 「さて、トオヤ。次どうする?」

 「晋さん、もう次かよ」

 「時間は有限だぜ!今、目一杯遊んでおかないとな!」

 「確かになぁ」

 俺達もまたそう言って席を立ち上がり、映画の話を語りあいながら歩き出す。

 あーーもう!アミューズメントパーク、最っっっ高!

 ーーーーーーーーー

 すみません!大遅刻です!!

 うわあ!遅れてすみません!(;´Д`A
 今、書き終わりました!ヒエエエエエエ!こんな時間になってた!
 でもとりあえず、書ききりました!アミューズメントパーク!
 楽しかったぁ。美香月さん!ありがとうございました!
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