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スパ・リゾート『宮』の過ごし方

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 「ようこそ!スパ・リゾート『宮』へ!皆さんを常夏のリゾートにご案内致します!」

 アロハシャツのような花柄のシャツを着た男性ネコ獣人(スタッフ)が、両手を開いて俺達を歓迎し、まず連れて行ってくれたのは中央フロント。
 
 此処で受付してから、その後はそれぞれのコースで動くらしい。因みに、みんなが選んだコースはこれ。

 『番限定!個室露天風呂パック』は、俺とヴァレリーのみ。これはやっぱり……って思ってしまった。

 ん?俺はそれでいいのかって?

 正直、子供達を見たかったけど、折角来てくれたヴァレリーの毛並みを堪能&ケアも良いか、って思い直したんだ。……かーなーり、残念で残念だけど……!次がある……筈!

 そして、『貴方の美を追求する露天エステコース』参加者は、四つ子メイドさん達と院長先生とイエーナさんをはじめ、イエネコ女性職員さん二人と年長組のスナネコちゃん(14)とサーバルちゃん(14)。

 つい、イエーナさんに「露天平気?」って聞いてみたら……

 「美しさ、の前で、は、我慢、致し、ます、わ!」

 うん、覚悟の上らしい……。震えながらも残りのイエネコ職員さん達と手を組み合う姿は、ちょっと萌えました。悶えていたら、すかさずヴァレリーに捕まったけどさ。

 年長組さんは、うん、毛並みに気を使って居るだけに女の子獣人さんって感じの子達。嬉しそうに「楽しみです!」「ね!」と笑いあう姿はほっこり。うむ、眼福。

 更に、『仕事にお疲れの貴方を応援!温泉と飲み比べツアーパック』には、さっきまでの表情とは違いご機嫌な黒虎のスタッグさんと、男性庭師のジャガーさんと、オオヤマネコさん、孤児院護衛のトラさん達数名。

 みんなガタイいいわ、カッコいいわ、豪快だわで、ここは此処で楽しんでいる姿を見たかった。と言うか、混ざって馬鹿騒ぎもいいよなぁ……ヴァレリー、駄目?あ、うん、わかったって!怒るなよ!

 あー、ヤバかった……!ヴァレリー、かなり楽しみにしてたらしい。歯を剥き出して唸られたよ……

 あ、すまん。話しを戻すぞ。それで、『スパリゾートフリーパス券(エステ/ウォーターパーク/ビュッフェレストラン『宮』一日使い放題)』の参加者は、残りの職員さんと年少年長組の子達。

 ……正直言って、1番心残りが此処。でも、今だって小虎君達やイエネコちゃん達、子豹君にチーター君達がわちゃわちゃしている姿は愛らしい……!

 しかも、年長組の虎君、ヤマネコ君、ピューマ君達も笑顔なのが良い!うん、イエネコ職員さんも集まってほのぼのしてて良いね!

 因みに、各コースには、きっちり案内役獣人スタッフが何人もついているんだ。だから、院長先生達も護衛さん達も自由にコースを選択出来たってわけ。

 なんて、頭の中で説明しながら子供達の様子に癒されてたら、待ちきれなかったヴァレリーが俺に声をかけて来た。

 「トオヤ?そろそろ移動するぞ?」

 「うおっ、ヴァレリー!俺歩けるって!」

 「俺がトオヤ不足なんだ」
 
 「ったく……!仕方ないなぁ」

 とか言いながらも、しっかりもふもふを堪能しつつヴァレリーに縦抱っこされて移動する俺。ん?ああ、俺達にもスタッフさんが付いて、ちゃんと誘導してくれているぞ。

 それより、ここからは俺が見れない分、皆の様子をそれぞれに伝えて貰おうと思う!

 という事で、院長先生!宜しくお願いします!


 ー『貴方の美を追求する露天エステコース』サイドー

 まあ、大変!私が大役を任されましたわ。でも、確かにしっかりマーキングされながら移動していらっしゃるトオヤ様が、全体の様子を見るのは難しいですわね。

 ……本当に、不思議で強力なお力をお持ちのトオヤ様。それでいて、親しみやすくお優しい方ですわ。

 でも、驚かされてばかりですのよ?こんな場所まで召喚できる能力なんて聞いたことないですもの!それに……

 「さあ、院長先生!時間が惜しいですわ!行きますわよ!」
 「最初はこの説明によると入浴ですって!」
 「まあ、全身艶々も期待出来る乳白色のお風呂らしいですわ」
 「イエーナさん達もまずは入らないと!エステ効果が倍増ですのよ?」

 まあまあ、トオヤ様付きメイドさん達も素に戻ってらっしゃるわ。うふふ、可愛いリス獣人さん達がはしゃぐ姿はかわいいですわ。

 「院長先生……!手を……手を握って入って下さいます?」
 「あの、私も」「私も」

 「勿論お手伝い致しますわ」

 イエーナをはじめイエネコ職員さん達も頑張りますわね。イエネコさん達のシャンプーもお手伝いしましょうかしら。ええと……年長組のスナネコのスーとサーバルのメイナは大丈夫そうね。

 「さあ、皆様、行きましょう!まずは、露天風呂ですわ!」
 「次は、ボディエステ?ですのよ。全身のマッサージですって!」
 「更に、アロマオイルといういい香りの油で、全身を仕上げてくれるらしいですわ!」
 「最後にフェイシャルエステで顔もしっかり整えられるそうですの!楽しみですわぁ!」

 ふふっ、先頭を歩く気合い十分のメイドさん達の尻尾が、ポワっと膨らんでいるわ。なんて可愛い光景なんでしょう。

 「院長先生!私達も早く行きましょう!」
 「あらあら。スー、押さなくてもちゃんと行きますよ」
 「院長先生ゆっくりなんだもの。ね、メイナ」
 「うん、早く行きましょう?院長先生!」

 まあまあ、スーもメイナもよっぽど楽しみなのねぇ。ふふ、イエーナ達もなんだかんだで楽しそうだわ。じゃ、賑やかな男性陣の様子は、ウチの庭師のジャガーのジェイクに頼もうかしら?

 ジェイク、宜しくね。「院長先生!」あらあら、今行きますわ。

 ー『仕事にお疲れの貴方を応援!温泉と飲み比べツアーパック銀貨二枚』サイドー

 おうおうおう……院長先生、子供らに引っ張っていかれて大変だ。アイツら楽しみなのは良いが、院長先生に迷惑かけんなよなぁ。

 さて、俺ことジェイクが伝える事になったが、俺は面倒は嫌いでな。好きにやらせて貰うぜ。おっと、スタッグの旦那に挨拶しとかねえと。

 「スタッグの旦那、今日はご一緒させてもらうぜ」
 
 「ああ、こちらこそ有難い。酒は楽しんで飲むもんだからな。それに助かる。普段の俺にまで、敬語は要らないからなぁ。」

 「俺は、むしろ敬語が苦手でな。だが、ウチの護衛達はそうもいかねえよ?」

 俺がスタッグの旦那に話しかけて居ると、やっとウチの虎の奴ら(護衛達)が緊張して近づいて来やがった。

 「あの!スタッグさん!ヴァレリーさんとの共闘で倒したキルスパイダーの群れの話が、俺、1番憧れてます!」
 「いや、俺はビッグヘルスネークが現れた時のスタッグさんの動きの話が迫力あって、すげえって思ったっす!」
 「馬鹿!敬語忘れんな!あ、俺はガチで目の前で見たかったキリングレッドダイルの話が……」

 「待て待て待て!今日はそういうのは無しだ!俺に敬語も要らないから、純粋に此処を楽しもうぜ!トオヤ様の力は俺達を超えるんだからなぁ」

 あ、アイツらスタッグの旦那に制せられて、今頃気づいてやがる。

 実際よお、どうなっているのかさっぱり分からねえが、ギフトって奴は謎だらけだからなぁ。特に、転移者のギフトは桁違いだって言われるのがよくわかったぜ。

 ま、理屈じゃねえって事だな。お?悪いなスタッフさんよ。ん?なんだ、これ?…………っ!!

 「スタッグの旦那!見てみろ、これ!酒の種類がありすぎる!」

 「あ?ああ、酒のリスト貰ったのか。そうさ!凄いんだ!トオヤ様の故郷の酒は!孤児院辺りだといつもエールで、良くてワインだろ?だが!!トオヤ様の世界は違う!エールやワインだけでも種類が多く、度数の強いウイスキーや日本酒、それに色々な酒の飲み方があるらしいんだ!」

 「うおおお!マジか!!!」

 「マジだ!実は、この間トオヤ様から差し入れがあってな……」
  
 ……あーあー。ジェイクの親父、歩きながらスタッグさんと話始めちまったわ。ウチの護衛達も話に混ざって、声でけえのなんのって……

 あ、割り込んじまって悪い。俺は、庭師のオオヤマネコのグスクっていうんだ。一応あの中ではまともな方じゃねえか?

 って言いながらも、俺も酒好きだし、ああいう馬鹿騒ぎは嫌いじゃねえけどよぉ。

 ま、今に至っても色々意味わかんねえ事だらけだが、この場所に居て一つ言えるとしたら、楽しまなきゃ損って事だ。

 つーわけで、おそらく風呂の中で馬鹿騒ぎして、なだれこむパターンになるだろうから、この後の役目は年長組のお人よしピューマのカイトに後は頼むか。

 「おい、グスク!行くぞ!」

 「わーってるって!」
 

 ー『『スパリゾートフリーパス券(エステ/ウォーターパーク/ビュッフェレストラン『宮』一日使い放題)』サイドー

 びっくりしたあ……!グスクさんたら僕に頼むって、いきなりなんだもん!

 あ、改めてまして、僕は『大地の宮』にお世話になっているピューマ獣人のカイト(14)です。この孤児院では年長組になります。

 因みに、この世界は15で成人。『大地の宮』も15になったら卒業なんだ。だから僕も後少しで卒業なんだけど……

 「カイト!また、お前最後尾に居て!探しただろっ!」

 「ん?だって一人でもハグれたら大変じゃないか。それよりアイン、良いの?フェリス達置いて来て」

 「良いんだって。アイツらうるせえし……お前の姿見えなかったし」

 「ふーん……」

 あ、今、僕と一緒に歩いているのは同じ年の幼馴染、虎獣人のアイン。ガタイは僕よりいいし、ヴァレリーさんを目標に鍛えていたから、卒業後は騎士団の見習いに入る予定なんだ。

 すごい倍率の試験を潜って見習いになった割には、アインの奴僕には何故か弱い。というか、本気を出してくれないんだ。因みに僕は兵士見習いになる予定。ウチの卒業生が多い職場だよ。

 でもねえ、アインの奴それを言うと機嫌が悪くなるし、それに……

 「おい、カイト。お前、まさか泳ぐつもりか?」

 「あたり前じゃん、イエネコ種じゃあるまいし。それに見てよ、これ!さっきスタッフさんから貰ったチラシにウォーターパークにすごい面白そうなものいっぱるんだよ!ウォータースライダーだって!アインもやるだろ?」

 「お前……絶対シャツ着ろ」

 ほらコレだ……!必ず僕に服を着せたがるんだ。僕は別に恥ずかしい体型でもないんだよ?アインはマッチョだけど、僕は細マッチョって感じなんだから!

 「はああ?なんで動き辛いもの着なきゃいけないんだよ?」

 「……ガキ共の相手するんだろうが」

 「残念でした!僕の代わりに此処のスタッフさん達が見てくれるから、今日は僕だって自由なんですぅ。ほら、だから一緒にジェットボードってヤツもやろうよ!面白そうだろ?」

 「……ん(これ二人乗りか!カイトと密着出来る……!)」

 ったく、もう。よくわかんないんだけど、アインのおかげで最近は水浴びもみんなと一緒に出来ないんだよ。だから、この凄い機会に思いっきり楽しみたいのにさ。

 「かいとぉー!て、つなご?」
 「あ、ずるい!かいとぉ、ぼくも~!」

 「チッ」

 「コラ!アイン、舌打ちしない!」

 小虎のヴァンとディグが僕を見つけて近づいて来たんだけど、またアインの機嫌が下がっちゃったよ。この子達めっちゃ可愛いのにさ。あ、もう先歩いていっちゃった。アインの気分屋め。

 「かいと?あいんとけんか?」
 「けんかは、めっ!よ?」

 うわあ、可愛い。ウチの子達良い子すぎ。……そういえばトオヤさんもこの子達を見る目が蕩けてたなぁ。あの人本当に獣人が好きなんだなあ。

 でも、すっごい強いオスのマーキングが付いていると思ったら、ヴァレリー騎士団長さんのなんだもんなぁ。番かあ……憧れるけど、どうなんだろう?

 そういえば、トオヤさん達の方はどうなっているのかなぁ?

 ーーーーーーー

 はい、次はトオヤ達です。背後注意も入りますので、お気をつけて下さいね。
 ああ、私も行きたいよぉ……!
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