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孤児院の午後の一時と驚き。

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 お腹いっぱいになれば子供達はどうなるのか……そう、小さな子供達は寝るのも仕事。

 お気に入りのソファーで並んで寝ている小虎君達や、王妃様が贈ったおっきなふわふわクッション(子供なら三、四人は寝れる)に身を寄せ合って寝ているイエネコちゃんズ。

 お布団で絵本を読んでもらいながら、お腹を出して寝ているチーターちゃんと一緒に寝ちゃったピューマ君。階段登っている最中で眠くなった子豹君。プラプラ片足が揺れているのがこれまた可愛い……!

 そんな子供達を愛おしそうに抱き上げるロップイヤーの院長先生や、イエネコ職員さん達。

 くううううう……!もう、俺、ここに住む……!

 「トオヤ様の考えている事が、手に取るようにわかりますわ」
 「ええ、気持ちはわかりますもの」
 「でも、無理ですわねぇ」
 「あれだけマーキングされているんですもの」

 ……うん、俺の考えは四人メイドさんにはバレバレだ。それにわかってますよ、俺だって。あの番一筋ヴァレリーが此処にくる事を許したのだってかなり譲歩した結果だって。

 とはいえ、此処はあまりにも天国過ぎた……!だって今俺の膝にはうつらうつらしている小虎ちゃんが乗っているんだ。子供に関しては撫で撫で解禁だし、抱っこして背中ポンポンはオッケーなんだぜ!

 しかもこの子、自分から俺の膝に来てくれたんだ!

 「あのね?おいしかったの。またたべれる?」

 つぶらなお目目で見上げられた俺は、ヴァレリーの気持ちがわかった気がする。片手で両目を覆って天井を向いたさ。

 そして俺はすかさず了承したさ!これを断れるケモナーはいない、と断言しよう!

 「チョロいですわ」
 「チョロ過ぎですわ」
 「即落ちですわ」
 「秒殺ですわ」

 いいんだ、メイドさん達になんと言われようと!

 そんな開き直った俺がメイドさん達と現在いる場所は、孤児院のリビングに当たる部屋。応接間兼子供達との触れ合い場所なんだって。

 ……でもさ、やっぱり気になったのは、ソファーの傷やら使い古された毛布。俺の膝にいる子の服もやっぱり着まわしているって感じ。

 そこは王妃様もわかっていて、ファビアン君やフルールちゃんの服を下げ渡す事もしてたんだって。毎回は無理でも少しずつ、毛布やシーツを持ってきたり。

 実は、さっきまでその事で院長先生と職員さん交えて話してたんだけどさ……

 「この子達には、出来れば物を大切にする気持ちを培って欲しいのです。王家の後押しがあれど、此処を卒業すればこの子達は平民。自分達でしっかりと生きていけるようにしてあげたいのです……」

 王妃様にはちゃんとよくして頂いていますし、と院長先生に微笑まれたんだよなぁ。

 俺、それ聞いて、一挙に備えてあげるのはなんか違うよなぁ……って思ったわけよ。で、実の所、午後に子供達の為にファッションパレス『Q』で服を備えてあげようと思ったんだけど……一旦保留にしている。

 そうそう。王家からも孤児院資金に関しては、俺が王妃様と変わったとしても補助金は継続って言われているし。王様もその点は同じ考えなんだなぁって改めてこの国の良さを実感した俺。

 じゃ、俺は何が出来る?

 俺の膝で眠るこの子の背中を優しく撫でながら、ちょっと考えてたんだ。

 そうしていると、職員さんが小虎ちゃんを引き取りにきて、お休みルームに連れて行ってくれて、入れ違いに院長先生が戻って来た。

 「ふふ、お待たせ致しましたわ。幼子達相手に大人の都合は関係ありませんもので、トオヤ様にも助けて頂き感謝いたします」

 「いえいえ。俺も子供達と接する事が出来てとても嬉しかったです。……ところで院長先生、この孤児院で困っている事とかありませんか?力になりたいのですが……」

 「あらあら、トオヤ様はお優しいのですわね。勿論、生活の面では困っている事はございませんわ。……ただ……「院長先生!」?」

 何かを言おうとしていた院長先生の言葉を遮り、イエネコ職員さんが慌てて部屋に入って来たんだけど……

 「どうしたのです?珍しく声を上げて?」
 
 「あの!フェザーラプラス部隊のベルシェンド騎士様とバーニア騎士様がいらっしゃったんです!どうしましょう!サイン?いえ、ローランを呼ぶべきでしょうか?」

 「まあ!それはなんて光栄なのかしら!でも落ち着いてイエーナ。まずはこちらにお通しして。お待たせするのは失礼だわ」

 「はい!お二人をお連れ致しますね!」

 ウキウキ顔のイエネコ職員さん、イエーナさんっていうのか。なんてポケーと思っていると、ウチのメイドさん達が俺の顔をジッと見てくるんだけど……?

 「これは本気でわかってない顔ですわ」
 「ええ、キョトンとしていますもの」
 「なんでか教えない方がいいですわね」
 「ええ、その方がいいですわ」

 目を合わせて頷くメイドさん達よ……?何故か面白そうなのは何故かな?院長先生まであらあらって顔してるし。

 「お連れしましたわ!院長先生!」

 コンコンコン……とノックをして入って来たイエーナさんと一緒にいたのは……

 「トオヤ!助っ人に来たぞ」

 「団長はトオヤ様に会いたかっただけでしょうに……!」

 「え?ヴァレリー?と、スタッグさん?」

 首を傾げる俺を素早く抱き上げ、頬にキスをしてくるヴァレリーとお久しぶりのスタッグさん。若干お疲れ気味に見えるのは気のせいだろうか……

 「半日振りのトオヤ……!相変わらずなんて可愛いんだ!大丈夫か?何か困った事はないか?」

 ゴロゴロ言いながら俺の顔に顔を擦り付けてくるヴァレリーに、現在ヴァレリーが来て困ってます、とは言えない俺。だってスリスリが思いっきり出来る相手だぜ?思わず堪能しちゃったんだ。

 「ん、大丈夫。ヴァレリーこそどうした?ってこら!尻を揉むな!胸を舐めるなって!」

 まあ、調子に乗ったヴァレリーが俺の部屋にいる時のようになって来たから慌てて止めさせたけど……

 「ああ、もう連れて帰りたい……!」

 「だから!今、話し中だったんだって!」

 俺をいつも通り膝に乗せてすっぽり包み込むヴァレリーの様子に、スタッグさんは呆れ顔だし、ウチのメイドさん達はニコニコと後ろに控えている。

 一方で、何故かイエーナさん、院長先生は俺達の様子を見てうっとりしているんだよなぁ。

 「まあまあまあ!なんて素晴らしいのでしょう。あのベルシェンド様の番がトオヤ様なんて!」

 「まあ!素敵ですわ!王国一の騎士とこの地に降り立った儚げな人間のトオヤ様……!今回のお話は溺愛がテーマですわね……!」

 ん?待て?何か引っ掛かる?思わず院長先生を見つめ返すと、にっこり笑って教えてくれたのは……

 「え?転移者と番獣人の話が本になってる?」

 「ええ!前回の転移者様話は、それはもうベストセラーですわ。ふふっ、一時期グラム様が告げたプロポーズが流行ったくらいですのよ?」

 「言われてみたいですわぁ!『君の代わりなど見つかる筈がない!君が、ハルキだからこそ俺の運命の人なんだ!』ですわよね!」

 目の前でキャイキャイと照れながら語るイエーナさんと院長先生。

 ……いや、とっても可愛いんですよ?イエネコさんとロップイヤーさんがクネクネ恥ずかしがっているのは……!問題は、そんな話は一っ言も聞いてないって事なだけで!

 「ご安心下さい、トオヤ様。今回その大役は、私共四人姉妹が承っておりますわ!」
 「現在四人がかりで執筆中ですの!」
 「トオヤ様の可愛さ、ヴァレリー団長の格好良さを全面に押し出して書いておりますのよ!」
 「勿論、今回は濡れ場がありますもの!大人向けと子供向けの2種類を気合いを入れて制作中ですわ!」

 更に加わった意外な情報に、メイドさん達も含めて院長先生達が盛り上がってしまった。

 しかし!もっと聞き捨てならないのが濡れ場だって⁉︎

 「だーーーーー!!!駄目駄目駄目!!!制作中止!中止!!」

 メイドさん達は本当に俺達の現場を聞いているから厄介だ!つーか、俺達の事をそんな細かく伝えられてたまるか!!

 ヴァレリーの膝の上で慌てる俺に対して、わかっていたかのように動じないのが我が有能メイドさんズ。ツツツツ……と近寄って来ては一言ずつ俺を煽り立てていくんだ……

 「子供達の人気者になりますわよ?」
 
 「っ!!」

 ……あの可愛い天使達が近寄って来てくれる……?

 「多くの住民が期待しておりますわ。トオヤ様裏切れますの?」

 「……!」

 ……確かにヘタッとした耳と元気のない尻尾にはしたくはないけど……

 「ファビアン様とフルール様が悲しみますわ」

 「!!」

 ……あの二人に悲しい顔はさせたくないけど……!

 「大丈夫ですわ。無敵の言葉、『この話はフィクションです』をきっちり入れますもの」

 「……」

 ……いや、そこまでして書きたいのか?てか、なんでその言葉がこっちで伝わっているんだよ……!

 でも……題材になるだけって事なら……いや、待て……

 「「トオヤ様……!!」」

 「!!」

 ぬおおお!院長先生とイエーナさんのウルウル攻撃とは!!!しかももうひと押しと思ったのか、ウチのメイドさんズが二人に何か伝えてから、更にお耳ピクピクまでさせてきたああああ!

 だ、駄目だ……!俺だけでは負けてしまう……!ってヴァレリーをみたら「何が駄目なのだ?トオヤ?」とグルゥ?と喉を鳴らして首を傾げて来たヴァレリー。

 まっふまふの毛を擦りつけて問われて見ろ!!………まさか味方から追撃がくるとは……!!!



 ーーーーーーはい、俺の敗北です。

 予定通りにこの年末に発売予定だそうです。え?予約完売してんの?まだ制作中なのに?

 ……そりゃ、説得に力が入るわ。と納得した俺。

 目の横でスタッグさんが気の毒そうに俺を見てたのには、気付かないようにするのが1番だと思いこむことにしたけどさ。

 ん?これで孤児院編終わりかって?

 いやいや、俺は俺なりに孤児院の為に頑張る決意はしたからな!次回こそ、子供達の健康(毛艶)の為にも、スパ・リゾート『宮』でリフレッシュさせるんだ!(俺の精神回復の為にも……!)


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 読んで下さりありがとうございます♪

注記: フェザーラプラス部隊は、庶民からすると憧れの職業。ヴァレリーやスタッグは、特に憧れている子供や女性(男性)多数あり。
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