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『大地の宮』に来てみた。
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今日は、待ちに待った外出日!
ヴァレリーにお願いして、昨日は二回で終わってもらったから、身体も軽いし動けるし!
そして、準備しましたよ!お土産という、一緒に遊ぶおもちゃやお菓子!まずは子供達の心を掴まないとな!
って思っていたんだけどさぁ……
もふもふ天国初潜入と浮かれて『大地の宮』に入った俺を待っていたのは、俺の予想とは違う現実だった。
「王妃様来ないのですか?」
「マリッサ様に勉強を見てもらおうと思っていたのに」
「え?では、お昼も違うという事ですか……」
これは主に年長さんの13、14歳の子供達の反応。院長から紹介された俺を上から下まで値踏みをして、ガッカリした表情を隠さない子達。しかも獣人だから、もう俺よりデカい……
まあ、王家からの紹介とはいえ、突然現れたよく知らない人族だしなぁ。気持ちはわかる。
でも!コレぐらいで落ち込んだりしないのが俺だ!君達はもっと磨き上げて上げるからな!さ、次行こう!
「えええ!騎士様来ないの?」
「俺今度こそ剣を教えてもらうつもりだったのに……!」
「あ、メイド様も変わっているね」
「刺繍の続き教えてもらいたかったわ」
これは10ー12歳の子供達の反応。値踏みまではしなくとも、あからさまにガッカリされた俺。院長先生もアワアワしてきたなぁ。うん、この子達もちょっと毛並みが惜しい!これはアレを投入か……?あ、院長先生、お気になさらず!次にいきましょう!
「いやああ、怖い~~!」
「僕、王妃様に絵本読んでもらいたかった」
「あっち行って遊ぼ」
7~9歳の子供達は俺が紹介されても、怖がったり俺をスルーしたり。うん、見事に俺に興味が無いのがよくわかる。
でも、やっぱりもうひとつ惜しい毛艶……!ああ、世話したい!あ、やばい、本気で変な目で見られてる……!ささっ、院長先生次は?(焦り)
ジッ……………(視線多数)
4~6歳の子供達は俺が入った途端に部屋から出ていき、ドアからジッと俺を見て、紹介されても俺達に近寄っても来ない。
でもでも、集まっているもふもふは目の保養ですな!うんうん頷いている俺に不審な視線が集まってきたし、変な目で見られる前に次行きましょう、院長先生!
「だあれ?」
「毛がないよ?」
「変な人にはついていかないの」
2、3歳の子供達には変な人認定をされて、これまた近寄って貰えない。……が、うおお!子もふもふがあんなに!と俺のテンションは高い。俺の楽園はここにあり!院長先生は子供達の様子に頭を抱えていたけどさ。大丈夫ですって、さあ、次は?
「うあああああん」
「いやあああああ」
「あーん!!おうひしゃまー!」
一歳から下の子達には紹介される前から泣かれっぱなし。
あああ、なんて羨ましいお世話係の大人獣人さん!というか、これもまた有りでないか?うんうん、もふもふがもふもふを抱いているんだ!最高じゃん!
……でもさあ、ここまで受け入れられないなんて、思わなかったよなぁ。俺、人間だし、獣人に必然的に受け入れられると思っていたからなぁ。
あ、一応言っとくが、俺も子供達にキッチリ挨拶しているし、四人の俺のメイドさん達もついて来ているんだぞ?
四人のメイドさん達は、俺のニコニコ顔を見て今のところは黙っているけど……いつもの賑やかさはどうしたの?とちょっと心配になっている。
で、でも最初っから受け入れられる訳じゃねえのはわかっていたし!王妃様やマリッサが可愛いのも、騎士さん達がカッコ良いのも知ってるし!
……本音を言えば、これだけ好かれてる王妃様達が羨ましいけどさ。それだけ、王妃様達が子供達を大切にしていたって事だし、良い事だ。
俺は俺の立場を作るまで!俺の未来の楽園の為に、初日の今日はせめて気持ちだけでも届けようではないか!
◇
と、いう事でやってきました、孤児院の調理場!うんうん、王妃様が管理しているだけあって綺麗で立派。
因みに、普段の料理はお手伝いさん達が交代で作っているらしい。今は朝食後だから誰もまだ作業はしていないんだってさ。
で、その場所をお借りして、お昼ご飯を用意させてもらおうとしている俺を見て、申し訳なさそうに院長先生が頭を下げてきた。
「本当に申し訳ありません!王妃様直々に依頼をされたトオヤ様に対して、子供達のあの不敬な態度……当宮を預かる者として、お詫び致します!」
「いえいえ、それだけ王妃様が慕われていたのでしょう。そうであれば、後から突然現れた俺を警戒するのは当然ですよ。大丈夫です!俺は長期戦を覚悟してますから!顔を上げて下さい!」
そう、何よりも!この猫科の国で、珍しいロップイヤー獣人の院長先生に頭を下げられる状況の方が、俺的には辛い!俺は、貴方のフサフサ耳にも癒されていたんですからっっっ!とは流石に言えないけどさ。
そんな俺達の会話を聞いていた俺専属の四人メイドさん達。フォローに入ってくれたのは良いが……
「院長先生、トオヤ様のお心はとっても広いのですわ」
「ええ、どんな対応されても子度達を嫌いになる事はありませんもの」
「それより心配なのは、たまに子供達を見る目が怪しいのが気付かれたのではないかと……」
「こっそり悶えていたのは丸わかりでしたものねぇ」
ふう、と仲良く四人揃って顔に手を当てているのは可愛いですけど、何気に俺心配されていたんかい!……いや、自覚あるだけに……うん、気をつけよう。
「ま、まあ、良いじゃ無いですか!とにかく、俺が協力するとなると、生活に不便はさせません!許可は貰ってますので、俺のギフトを院長先生と職員さんにお見せします!」
場を誤魔化す為に、店舗召喚でスーパーマーケットを出した俺。調理場に突然現れた自動ドアに、慣れている俺達は良いけど……
「まあ!!」「なに!」「何なの⁉︎」
うっかり院長先生と職員さん二人を驚かせてしまった……!
「皆さん、大丈夫ですわ。これがトオヤ様の力の一つですもの」
「ええ、それに中に入ると驚きますわよ?」
「美味しいものが沢山ありますもの!」
「鮮度だって抜群ですわ!」
そこはそれ、ウチの有能メイドさん達。しっかりフォローして不安がる院長先生や職員さん達の背中を押して、慣れた『ニューマート』に入って行く。うむ、頼もしい。
そしてここでも俺を撃沈させる光景が……!
ぬおおおお!イエネコの職員さん達がカートを押してる……!え!院長先生、遠慮してカゴを手持ちしているなんて、ご褒美ですか……!!
「あら、大変。トオヤ様また悶えていらっしゃるわ」
「慣れて頂くしか無いですわね。院長先生達には」
「ええ、未だに私達のカートを押す姿にもニヤニヤしていますもの」
「そこもまたトオヤ様って感じですわね」
慣れたようにカラカラとカートを押しながら、俺の前を通り過ぎて行く俺のメイドさん達よ……。気づいていたとは……!
何気にショックを受けた俺だが、こんな名場面を逃してなるものか!と急いで院長の元に向かう。
俺は院長のフォローに行ったのを見て、四人のメイドさん達もそれぞれ職員に付いてくれたみたいだ。
院長先生は野菜コーナーでじっくり物を確かめている……が、人参をまず手に取るとは……!ああ、かの有名なウサギを思い出す……!
「トオヤ様!凄いですわ!正に採れたての鮮度ではありませんか!こんなに品質の良いお野菜がこんなにお安くて宜しいのですか⁉︎」
おお!いかんいかん、院長先生が呼んでる。
「勿論です!本日はチラシが入っているようです。入り口にありましたのでどうぞご覧下さい」
そう。何気なく入り口見たらチラシが貼られていて、その下に予備のチラシまで用意されていたんだ。思わず「おい」って一人ツッコミしてしまったが、俺のギフトの不思議さには慣れている為、院長先生の為に持ってきたんだ。
「まあまあまあ!特売日ですって!しかもお肉までお安いわ!」
思わず、やっぱり兎獣人さんも肉食べるのか、と心で思った事は黙っておこう。この世界の獣人さんは人間と同じ雑食らしいし、後は個人的好みらしいからなあ。
何たってヴァレリーが甘い物好きだし。
なんてほんわかしていると、曲が止まり店内アナウンスが流れてきた。
『いらっしゃいませ、いらっしゃいませ!本日はニューマートクガ店にご来店頂きありがとうございます!只今より各コーナーにてタイムサービスを開始させて頂きます!
まずは野菜コーナーにて、1銅貨(百円=MP10)均一開催中です!人気は袋詰めコーナー!一袋に入れるだけ入れても入れば良し!どれも1銅貨!1銅貨均一ですよ!お見逃し無く!』
ニュ♪ニュ♪ニュ♪ニューマート~♪とお馴染みミュージックが終わるやグリンと俺を振り向く院長先生。目がマジですね……!
「トオヤ様!今のは本当ですか⁉︎」
「も、勿論!ほら、そこに現れましたでしょう?」
「まあまあ!不思議過ぎてどこを突っ込めば良いのかわかりませんが、この機会は逃せませんわ!」
目が光るってこういう事なんだなぁ、という表情で突撃していった院長先生。気がつけば、イエネコ職員さん達もいた……!
「皆様!この好機!逃してはなりませんわ!」
「「勿論ですわ!」」
気合い充分、チームワーク良しの院長先生と職員さん達。おお、器用に袋詰めしてくわ……!アレ?院長先生カート持って来たよ……本気だな、こりゃ。
「って、君達まで何してんの?」
「勿論!王宮へのお土産ですわ!」
「料理長から資金は頂いてますもの!」
「ええ!それにこういう作業は得意ですもの!」
「メイド魂お見せしますわよ!」
どうやら、ウチの料理長からも言われているらしい。素晴らしい手際とチームワークでドンドン積み上げていく俺専属のメイドさん達。
しかし、俺のギフトも負けてなかった……!
『ご来店の皆様に鮮魚コーナーよりタイムセールのお知らせを致します。さあ、本日入荷した新鮮な鯛とカツオだよ!何とこちらも詰め放題で、一袋銀貨1枚(千円)!銀貨1枚だああ!出血大サービスはなんと在庫限り!急いでお越し下さい!』
『こちらは精肉コーナーのタイムサービスです!なんとウィンナーとベーコンの詰め放題!一袋5銅貨(五百円)!5銅貨だよ!さあ、いらっしゃいいらっしゃい!』
『惣菜コーナーからは、揚げたて唐揚げ詰め放題です!一パック5銅貨!一パック5銅貨!大型パックで大放出!味も醤油、塩、青のりと3種類ご用意しております!さあ、お急ぎ下さい!』
『こちらはベーカリーコーナータイムサービスです!焼きたてパン詰め放題!一袋銀貨1枚!銀貨1枚でクロワッサン、コッペパン、デニッシュパン、食パン、イングリッシュマフィンの5種類詰め放題をご用意しております!是非!焼きたてをご賞味下さい!』
『こちらはこの時間限定でタイムサービスをします![ケーキのクガ]でも1銀貨でケーキ詰め放題を開催中!我が店舗が誇るショートケーキ、チーズケーキ、モンブラン、フルーツタルト、チョコケーキをご用意しております!さあ、残り半刻です!お急ぎ下さいませ!』
怒涛のタイムサービスコールに、流石の俺もビックリ!
人間余りにも欲しい物が同時に来ると動けなくなるもんだよなぁ。それは獣人も一緒かな?と思って見たら……
「私!魚とお肉行って参りますわ!」
「では、パンともう一つカラアゲという物は私が!院長先生は是非!子供達の為にケーキをお願い致します!」
「ええ!皆さんの分もご用意致しますわね!」
「「ありがとうございます!院長先生!」」
……うん、チームワークというか、生活がかかっているからというか取り組む本気度が違った……!バッとカートを押してそれぞれ向かって行ったんだよ……あ、院長先生、道間違えてるけど。
ん?因みにウチの有能四人メイドさん達はどうしたかって?あの人達一瞬目線合わせただけで、各自別々に動き出したんだよ。……マジで凄えわ。
とりあえず俺はヴァレリーの為にケーキ詰め放題へ向かうと、院長先生が華麗にケーキを詰めて楽しんでいた。嬉しそうな表情だったから、子供達の喜ぶ顔でも思いだしてんのかな?とちょっとほっこり。
そしてタイムセールが終わりーーー
あらかた買い終わると、慣れたウチのメイドさん達が院長先生達のレジを手助けして今度は金額にビックリしてたなぁ。
「いつもの三分の二の金額でこれだけ買えるなんて……!!」
イエネコ獣人職員さんの尻尾がご機嫌でピーンとなっているわ、院長先生の丸い尻尾が揺れているわで、俺はまた一人悶えていた。
勿論ウチのメイドさん達も、ご機嫌で太い尻尾が揺れているのもコッソリ見て俺も満足。
さあ今度は、戻って子供達にも癒されようじゃないか!
「あ、トオヤ様?王宮分の食材をアイテムボックスにお願いできますか?」
……ちゃっかりもののメイドさん達には敵わねえな。ま、次回はお楽しみのランチタイムで好感度アップさせて見せるぜ!
ーーーーーーーーーーー
作者より
お気に入り登録が初1000越え!ありがとうございます!!
本っっっ当に励みになります!
ヴァレリーにお願いして、昨日は二回で終わってもらったから、身体も軽いし動けるし!
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って思っていたんだけどさぁ……
もふもふ天国初潜入と浮かれて『大地の宮』に入った俺を待っていたのは、俺の予想とは違う現実だった。
「王妃様来ないのですか?」
「マリッサ様に勉強を見てもらおうと思っていたのに」
「え?では、お昼も違うという事ですか……」
これは主に年長さんの13、14歳の子供達の反応。院長から紹介された俺を上から下まで値踏みをして、ガッカリした表情を隠さない子達。しかも獣人だから、もう俺よりデカい……
まあ、王家からの紹介とはいえ、突然現れたよく知らない人族だしなぁ。気持ちはわかる。
でも!コレぐらいで落ち込んだりしないのが俺だ!君達はもっと磨き上げて上げるからな!さ、次行こう!
「えええ!騎士様来ないの?」
「俺今度こそ剣を教えてもらうつもりだったのに……!」
「あ、メイド様も変わっているね」
「刺繍の続き教えてもらいたかったわ」
これは10ー12歳の子供達の反応。値踏みまではしなくとも、あからさまにガッカリされた俺。院長先生もアワアワしてきたなぁ。うん、この子達もちょっと毛並みが惜しい!これはアレを投入か……?あ、院長先生、お気になさらず!次にいきましょう!
「いやああ、怖い~~!」
「僕、王妃様に絵本読んでもらいたかった」
「あっち行って遊ぼ」
7~9歳の子供達は俺が紹介されても、怖がったり俺をスルーしたり。うん、見事に俺に興味が無いのがよくわかる。
でも、やっぱりもうひとつ惜しい毛艶……!ああ、世話したい!あ、やばい、本気で変な目で見られてる……!ささっ、院長先生次は?(焦り)
ジッ……………(視線多数)
4~6歳の子供達は俺が入った途端に部屋から出ていき、ドアからジッと俺を見て、紹介されても俺達に近寄っても来ない。
でもでも、集まっているもふもふは目の保養ですな!うんうん頷いている俺に不審な視線が集まってきたし、変な目で見られる前に次行きましょう、院長先生!
「だあれ?」
「毛がないよ?」
「変な人にはついていかないの」
2、3歳の子供達には変な人認定をされて、これまた近寄って貰えない。……が、うおお!子もふもふがあんなに!と俺のテンションは高い。俺の楽園はここにあり!院長先生は子供達の様子に頭を抱えていたけどさ。大丈夫ですって、さあ、次は?
「うあああああん」
「いやあああああ」
「あーん!!おうひしゃまー!」
一歳から下の子達には紹介される前から泣かれっぱなし。
あああ、なんて羨ましいお世話係の大人獣人さん!というか、これもまた有りでないか?うんうん、もふもふがもふもふを抱いているんだ!最高じゃん!
……でもさあ、ここまで受け入れられないなんて、思わなかったよなぁ。俺、人間だし、獣人に必然的に受け入れられると思っていたからなぁ。
あ、一応言っとくが、俺も子供達にキッチリ挨拶しているし、四人の俺のメイドさん達もついて来ているんだぞ?
四人のメイドさん達は、俺のニコニコ顔を見て今のところは黙っているけど……いつもの賑やかさはどうしたの?とちょっと心配になっている。
で、でも最初っから受け入れられる訳じゃねえのはわかっていたし!王妃様やマリッサが可愛いのも、騎士さん達がカッコ良いのも知ってるし!
……本音を言えば、これだけ好かれてる王妃様達が羨ましいけどさ。それだけ、王妃様達が子供達を大切にしていたって事だし、良い事だ。
俺は俺の立場を作るまで!俺の未来の楽園の為に、初日の今日はせめて気持ちだけでも届けようではないか!
◇
と、いう事でやってきました、孤児院の調理場!うんうん、王妃様が管理しているだけあって綺麗で立派。
因みに、普段の料理はお手伝いさん達が交代で作っているらしい。今は朝食後だから誰もまだ作業はしていないんだってさ。
で、その場所をお借りして、お昼ご飯を用意させてもらおうとしている俺を見て、申し訳なさそうに院長先生が頭を下げてきた。
「本当に申し訳ありません!王妃様直々に依頼をされたトオヤ様に対して、子供達のあの不敬な態度……当宮を預かる者として、お詫び致します!」
「いえいえ、それだけ王妃様が慕われていたのでしょう。そうであれば、後から突然現れた俺を警戒するのは当然ですよ。大丈夫です!俺は長期戦を覚悟してますから!顔を上げて下さい!」
そう、何よりも!この猫科の国で、珍しいロップイヤー獣人の院長先生に頭を下げられる状況の方が、俺的には辛い!俺は、貴方のフサフサ耳にも癒されていたんですからっっっ!とは流石に言えないけどさ。
そんな俺達の会話を聞いていた俺専属の四人メイドさん達。フォローに入ってくれたのは良いが……
「院長先生、トオヤ様のお心はとっても広いのですわ」
「ええ、どんな対応されても子度達を嫌いになる事はありませんもの」
「それより心配なのは、たまに子供達を見る目が怪しいのが気付かれたのではないかと……」
「こっそり悶えていたのは丸わかりでしたものねぇ」
ふう、と仲良く四人揃って顔に手を当てているのは可愛いですけど、何気に俺心配されていたんかい!……いや、自覚あるだけに……うん、気をつけよう。
「ま、まあ、良いじゃ無いですか!とにかく、俺が協力するとなると、生活に不便はさせません!許可は貰ってますので、俺のギフトを院長先生と職員さんにお見せします!」
場を誤魔化す為に、店舗召喚でスーパーマーケットを出した俺。調理場に突然現れた自動ドアに、慣れている俺達は良いけど……
「まあ!!」「なに!」「何なの⁉︎」
うっかり院長先生と職員さん二人を驚かせてしまった……!
「皆さん、大丈夫ですわ。これがトオヤ様の力の一つですもの」
「ええ、それに中に入ると驚きますわよ?」
「美味しいものが沢山ありますもの!」
「鮮度だって抜群ですわ!」
そこはそれ、ウチの有能メイドさん達。しっかりフォローして不安がる院長先生や職員さん達の背中を押して、慣れた『ニューマート』に入って行く。うむ、頼もしい。
そしてここでも俺を撃沈させる光景が……!
ぬおおおお!イエネコの職員さん達がカートを押してる……!え!院長先生、遠慮してカゴを手持ちしているなんて、ご褒美ですか……!!
「あら、大変。トオヤ様また悶えていらっしゃるわ」
「慣れて頂くしか無いですわね。院長先生達には」
「ええ、未だに私達のカートを押す姿にもニヤニヤしていますもの」
「そこもまたトオヤ様って感じですわね」
慣れたようにカラカラとカートを押しながら、俺の前を通り過ぎて行く俺のメイドさん達よ……。気づいていたとは……!
何気にショックを受けた俺だが、こんな名場面を逃してなるものか!と急いで院長の元に向かう。
俺は院長のフォローに行ったのを見て、四人のメイドさん達もそれぞれ職員に付いてくれたみたいだ。
院長先生は野菜コーナーでじっくり物を確かめている……が、人参をまず手に取るとは……!ああ、かの有名なウサギを思い出す……!
「トオヤ様!凄いですわ!正に採れたての鮮度ではありませんか!こんなに品質の良いお野菜がこんなにお安くて宜しいのですか⁉︎」
おお!いかんいかん、院長先生が呼んでる。
「勿論です!本日はチラシが入っているようです。入り口にありましたのでどうぞご覧下さい」
そう。何気なく入り口見たらチラシが貼られていて、その下に予備のチラシまで用意されていたんだ。思わず「おい」って一人ツッコミしてしまったが、俺のギフトの不思議さには慣れている為、院長先生の為に持ってきたんだ。
「まあまあまあ!特売日ですって!しかもお肉までお安いわ!」
思わず、やっぱり兎獣人さんも肉食べるのか、と心で思った事は黙っておこう。この世界の獣人さんは人間と同じ雑食らしいし、後は個人的好みらしいからなあ。
何たってヴァレリーが甘い物好きだし。
なんてほんわかしていると、曲が止まり店内アナウンスが流れてきた。
『いらっしゃいませ、いらっしゃいませ!本日はニューマートクガ店にご来店頂きありがとうございます!只今より各コーナーにてタイムサービスを開始させて頂きます!
まずは野菜コーナーにて、1銅貨(百円=MP10)均一開催中です!人気は袋詰めコーナー!一袋に入れるだけ入れても入れば良し!どれも1銅貨!1銅貨均一ですよ!お見逃し無く!』
ニュ♪ニュ♪ニュ♪ニューマート~♪とお馴染みミュージックが終わるやグリンと俺を振り向く院長先生。目がマジですね……!
「トオヤ様!今のは本当ですか⁉︎」
「も、勿論!ほら、そこに現れましたでしょう?」
「まあまあ!不思議過ぎてどこを突っ込めば良いのかわかりませんが、この機会は逃せませんわ!」
目が光るってこういう事なんだなぁ、という表情で突撃していった院長先生。気がつけば、イエネコ職員さん達もいた……!
「皆様!この好機!逃してはなりませんわ!」
「「勿論ですわ!」」
気合い充分、チームワーク良しの院長先生と職員さん達。おお、器用に袋詰めしてくわ……!アレ?院長先生カート持って来たよ……本気だな、こりゃ。
「って、君達まで何してんの?」
「勿論!王宮へのお土産ですわ!」
「料理長から資金は頂いてますもの!」
「ええ!それにこういう作業は得意ですもの!」
「メイド魂お見せしますわよ!」
どうやら、ウチの料理長からも言われているらしい。素晴らしい手際とチームワークでドンドン積み上げていく俺専属のメイドさん達。
しかし、俺のギフトも負けてなかった……!
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『こちらは精肉コーナーのタイムサービスです!なんとウィンナーとベーコンの詰め放題!一袋5銅貨(五百円)!5銅貨だよ!さあ、いらっしゃいいらっしゃい!』
『惣菜コーナーからは、揚げたて唐揚げ詰め放題です!一パック5銅貨!一パック5銅貨!大型パックで大放出!味も醤油、塩、青のりと3種類ご用意しております!さあ、お急ぎ下さい!』
『こちらはベーカリーコーナータイムサービスです!焼きたてパン詰め放題!一袋銀貨1枚!銀貨1枚でクロワッサン、コッペパン、デニッシュパン、食パン、イングリッシュマフィンの5種類詰め放題をご用意しております!是非!焼きたてをご賞味下さい!』
『こちらはこの時間限定でタイムサービスをします![ケーキのクガ]でも1銀貨でケーキ詰め放題を開催中!我が店舗が誇るショートケーキ、チーズケーキ、モンブラン、フルーツタルト、チョコケーキをご用意しております!さあ、残り半刻です!お急ぎ下さいませ!』
怒涛のタイムサービスコールに、流石の俺もビックリ!
人間余りにも欲しい物が同時に来ると動けなくなるもんだよなぁ。それは獣人も一緒かな?と思って見たら……
「私!魚とお肉行って参りますわ!」
「では、パンともう一つカラアゲという物は私が!院長先生は是非!子供達の為にケーキをお願い致します!」
「ええ!皆さんの分もご用意致しますわね!」
「「ありがとうございます!院長先生!」」
……うん、チームワークというか、生活がかかっているからというか取り組む本気度が違った……!バッとカートを押してそれぞれ向かって行ったんだよ……あ、院長先生、道間違えてるけど。
ん?因みにウチの有能四人メイドさん達はどうしたかって?あの人達一瞬目線合わせただけで、各自別々に動き出したんだよ。……マジで凄えわ。
とりあえず俺はヴァレリーの為にケーキ詰め放題へ向かうと、院長先生が華麗にケーキを詰めて楽しんでいた。嬉しそうな表情だったから、子供達の喜ぶ顔でも思いだしてんのかな?とちょっとほっこり。
そしてタイムセールが終わりーーー
あらかた買い終わると、慣れたウチのメイドさん達が院長先生達のレジを手助けして今度は金額にビックリしてたなぁ。
「いつもの三分の二の金額でこれだけ買えるなんて……!!」
イエネコ獣人職員さんの尻尾がご機嫌でピーンとなっているわ、院長先生の丸い尻尾が揺れているわで、俺はまた一人悶えていた。
勿論ウチのメイドさん達も、ご機嫌で太い尻尾が揺れているのもコッソリ見て俺も満足。
さあ今度は、戻って子供達にも癒されようじゃないか!
「あ、トオヤ様?王宮分の食材をアイテムボックスにお願いできますか?」
……ちゃっかりもののメイドさん達には敵わねえな。ま、次回はお楽しみのランチタイムで好感度アップさせて見せるぜ!
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