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電化製品を王宮で使う為には?

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 「うーん……困ったね」

 カチャ……とコーヒーカップを置き、呟く俺。

 「そうですわねぇ。折角良いものがありますのに」

 向かい側の席でケーキセットを上品に食べるマリッサ。

 あ、失礼。ここは王宮じゃないぞ?今居るここは、俺の召喚店舗家電量販店[ビッガーカメラ]の中の10階にあるカフェラウンジだ。

 落ち着いた雰囲気かつ穏やかなクラシックが流れる店内に、マリッサも一目で気にいったらしく、俺が我儘を言って一緒に席に着いてお茶をして貰っているんだ。

 あ、因みに、店内では精巧に動くAI搭載の獣人スタッフが配置されて、料理も給仕も説明も全て、階層毎にいる獣人アンドロイド(って俺は言っている)スタッフで運営されていたんだ。……マジでこのギフト謎だよなぁ。

 まあそれは良いとして、俺が何を悩んでいるか。それは……

 「王宮で家電製品が使えないって事だよなぁ……」

 「もったいないですわ。あれだけ毛並みをまっすぐにして、艶々にしてくれるスチームドライヤーがありますのに……!それに美容だけじゃありませんわ。調理に清掃、庭の手入れ、更には文官が泣いて喜ぶであろう物まで揃っていらっしゃいますもの」

 「だよなぁ……」

 そう言ってしばらく黙って音楽に耳を傾ける俺達。

 そうそう、勿論俺達以外にも入って来てるぞ?ファビアン君とフルールちゃんは、おもちゃコーナーにメイドさん二人と居るし。今日はお妃様もウキウキしながら朝から来たし。で、当然メイドさん2名付いて、ビューティーコーナーでお試ししまくり。

 マリッサが俺の方にいるのは、今日相談があるからってあえて時間とって貰ったから。そう、俺の相談……それは!!!

 王宮獣人さん達の毛艶アップ作戦!

 だってさ、お試しでやったスチームドライヤーで、俺付きのメイドさん達四人の毛艶はしっとりサラッサラ。光沢もでて、獣人の皮膚にも優しかったんだって。

 で、スチーマーは顔のみならず、尻尾まで良い感じでしっとり。それに電気ブラシなんて、一回の使用で要らない毛がゴッソリ取れるんだ!試したメイドさん四人とも「これ良いですわ!!」って即購入してったんだぞ。……で、使えなかった時のあのシュンとした顔ったら……俺が悶えたくらいだ。

 それでも、その日俺付きのメイドさん達が輝くばかりに綺麗な毛艶になったことで、王宮中の注目の的となったらしい。

 基本、王宮は獣人の中でも美形美人揃いなんだって(俺から言わせればみんな可愛いが)。そのメイドさん達が羨む程の変わり様に、俺付きのメイドさん達に問い合わせが殺到。

 メイドさん達も嬉しいやら困ったやらで、俺に相談にきたんだ。

 んで、そうなると、1番試したいのがヴァレリーにだ!だって、寝る時あいつ裸だから、思いっきり毛並み堪能できるだろ?

 それに、最近は正直言ってもふもふが足りてない。俺の不満ゲージは振り切っているんだ。

 ヴァレリーは良いよ。だって、仕事から帰ってくるなり、俺を舐めまわし、食事の世話から俺の入浴まで甲斐甲斐しく世話をし、最後にはベッドで俺を喘がせられるんだから。それも、毎回満足するまで。

 だから、一度本気で頼み込んださ。

 「俺にヴァレリーを労わらせて?」

 「俺の癒しはトオヤを可愛いがる事だ」

 なんて言って、顔をすりすりして来てゴロゴロ喉を鳴らされると、毎回誤魔化されちゃうちょろい俺よ……!

 でも、ヴァレリーの発情期が迫って来ている今……!だからこそ、もふもふを補給しておきたい!だって今以上に俺喘がせられる時期って事だろ?

 正直、この世界に来て女役の辛さを知ってしまった俺。受け入れ側って本当に負担デカいって!しかもこちとらいくら補正があっても人間だっての!獣人、それも身体を更に鍛えている騎士団長を受け止めているんだぜ?

 ……朝なかなか動けないどころじゃねえって……

 そんな感じで、俺がもふもふを堪能する時間が少なくなって来た今日この頃。目の保養と実際に俺が良い思いしたっていいじゃん!

 って欲望も交えた相談中って訳。

 さあて何があったかなぁ、と考えながらコーヒーを一口飲んでいると……

 『本日もビッカーカメラ久我店へようこそお越し下さいました!本日この時間のお買い得商品をご案内致します。二階防災コーナーにて、大型ポータブル電源に折りたたみ魔素パネル付きでお買い得価格になっております!』

 「ブハッ!」「まあ」

 店内放送の余りのタイミングの良さに、コーヒー吹き出したじゃねえかよ……!マリッサは冷静にハンカチ出してくるし。ん、ありがとう。

 なんて、後処理をしている時も続くアナウンス。

 『色々な場所で家電を使いたいと思っている貴方!そんな貴方におススメなこの商品!魔素急速充電型で、充電時間はほぼ一瞬!一度の充電で使用可能がなんと三刻(6時間)!一台で電化製品3台まで同時使用可能!魔素パネルを開きっぱなしで常時使用可能です!
 気になるお値段は……二階災害コーナーにてお確かめ下さい!』

 思わずガクッとなったが、やるなぁこのアナウンス。確かめに行かなきゃ気になるじゃんか……!

 ビ♪ビ♪ビ♪ビッカーカメラ~♪なんていつ用意したんだかしれない店舗ミュージックと共に席を立つ俺とマリッサ。

 そして、二階防災コーナーに行ってみてビックリ!一台MP500,000だと⁉︎うわぁ高え……!でも、考えてみりゃ一度買えばずっと使えるし……なんて俺が考えていたら、サラっと答えを出すマリッサ。

 「あら?これなら王宮に経費で出させられそうですわ」

 「え?マジで?」

 「ええ、有用性を宰相にじっくりと理解させられますもの」

 にっこりと笑いトオヤ様はご心配なくというマリッサが心強い。俺も欲しいのいっぱいあるし。この件はマリッサにお任せで本日は俺用に一台購入。
 
 俺はもちろんヴァレリーの毛並みの為に色々ビューティー家電を買い占め、マリッサは宰相さんプレゼン用にタブレットを購入。

 早速帰って、俺はヴァレリーが帰って来るまでに自分の支度を全部終わらせて、準備万端に待機。

 その後、マリッサと王妃様が店内にて結託し、商談用商品を持ち帰って宰相のところへ向かったり。満足したファビアン君やフルールちゃん&メイドさんチームも、ボードゲームや人形の服、各自戦利品を抱えて自分の部屋に戻り、今日の店舗召喚は終了。

 まあその頃になると、最近定時で上がって来るヴァレリーに俺が交渉開始。だってすぐヴァレリーのペースに持っていかれちゃうんだよ。だから……思いっきり首に抱きついて、甘えて言ってみたんだ。

 「ヴァレリー?今日は俺のお願い聞いてくれないか?」

 「ん?なんだ?珍しいな、トオヤ」

 ゴロゴロと俺にマーキングを始めながらも、俺に合わせてくれるらしいヴァレリー。

 「今日こそ俺にヴァレリーの世話をさせて!で、思いっきりヴァレリーにベッドで抱き付かせて!」

 「ん?いつもと変わらない気がするが?」

 「違う!今日はセックス無しで!」

 俺がそう言った時のヴァレリーの悲壮感と言ったら……負けちゃ駄目だ!負けちゃ駄目だ!と強く自分に言い聞かせてなきゃ、俺が折れてたなぁ。でも、今回はしっかり了承させたぜ!

 それで、早速ヴァレリーの身体を満遍なくシャンプー中。まあ、俺も裸にはなっているけどさ。

 「お客様、おかゆいところありませんか?」

 「んん“っ、トオヤ……そこもか?」

 「もっちろん!」

 鍛えられたヴァレリーの身体は毛に覆われていても、ムチムチのガチガチ。でもこれは鍛えられないだろうって、調子こいて際どいところを丹念に洗っていたら、ガルルル……て喉を鳴らして威圧をして来るヴァレリー。

 うおっマズい!っと思って洗い流して、しっかりタオルドライまで俺が優しくやっていたら、しっかりヴァレリーの息子さんが臨戦体制になってたんだよ。

 でも俺は負けない!電気ブラシでヴァレリーの無駄毛をゴッソリ取って、スチームドライヤーでしっかり毛並みを揃え、艶出しトリートメントをヴァレリーの身体に塗りたくる!!

 そして、出来上がった艶っ艶ふわふわサラッサラの威圧バリバリヴァレリーさん。……正直、めっちゃ我慢しているのはわかる……!

 だけど、これが仕上げ!

 フルボッキのヴァレリーをベッドに横たわらせ、俺も裸になってヴァレリーにダイブ!

 ウッヒョウ~!すっごい最上の毛並みじゃん!

 俺はヴァレリーの首筋に顔を埋め、心行くまで胸元に顔を擦りつけ、ヴァレリーの足に俺の足を擦りつける。

 「はあ~……幸せ……!!」

 しばらく満喫してヴァレリーに抱きつくと、フルボッキしたままのヴァレリーさんが俺をぎゅっと抱きしめ「満足したか?」と聞いてきた。何も考えず、思いっきり「最高!」って笑顔で言ったらさ……

 「じゃあ、今度は俺の番だ」

 そう言った後、コロリと転がされ俺に覆い被さって来たヴァレリー。後は言わずと知れた展開に。

 「あ、ああっ、あんっ、そこっ、深いっ、ああっ!」

 「んぁっ、乳首ばっかり舐めるなってぇっ!」

 「今イッてるって、ばぁっ!あああん!」

 「え?待って?まだやるの?うあっ!あっ、あっ、ああっ!」

 ……お分かり頂けただろうか?いつも以上にねちっこく、いつも以上に回数が多くなり、荒ぶるヴァレリーが元に戻ったのは朝方。

 俺はいつも以上にぐったり……獣人を弄ぶと3倍返しで戻って来るという事を学んださ……
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