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え〜と……これって異世界転移ってやつ?

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 ーーーーだれにも邪魔されずに朝の静かな森の中でコーヒーをゆったり飲む……

 それが、慌ただしい現代社会を生きる上での潤滑剤だった俺こと久我 凍夜(クガ トオヤ)27歳。

 夏も終わりに近づき、艶やかな秋の気配が忍びよる山の雰囲気を求めて、有休を使ってやっと実現したのが昨日の事。

 くああ……と欠伸をし寝袋を片付け、さあ待ちに待ったコーヒータイム!と準備をしテントのジッパーを開けると………

 そこは草原でしたーーーーー


 ………うん、落ち着こう。


 徐にジッパーを閉めて元の体勢に戻る。テントの真ん中に座り直し、冷静になって今までの事を思い出してみる。

 確かに俺は自然は好きだ。

 でも、それは人の手が入ったキャンプ場の話であって、サバイバルキャンプなんぞ望んではいない。

 と言うか、俺は地元のキャンプ場に確かにいたよな?通い慣れた場所だし、間違える筈がない……!

 ん?もしかして寝ぼけてたか?
 …………そうだよ!そうに違いない!

 そう思い再度入り口のジッパーを開けると、俺の目の前にはいつものキャンプ場の風景が……

 ……………………………広がってる筈だったんだよなぁ。ハハッ……(泣)

 半泣き状態で脱力してしまった俺だけどさ。目の前にはサヤサヤと風に靡く雄大な草原が広がっている訳で。

 ……参ったな。コレどうなっているんだよ……

 人間って、許容範囲の超えた余りの出来事に遭遇すると、思考が停止するんだなぁ。

 なんて思いながら、しばらく草が揺れている様子をただただ眺めていた俺。

 不意に頭によぎった言葉は、暇つぶしに見ていたWEB小説にありがちな[異世界転移]と言う言葉。

 まさかな……と思いつつも定例の言葉を口にしてみる。

 「……ステータス……って、うわっ!!!」

 すると、目の前には宙に浮いた青い画面が出現したんだ。しかも、そこには日本語でしっかり個人情報が表示されている。

 [トオヤ クガ 27  人間(希少種) 
 HP  150
 MP  1,000,000
 スキル 言語理解 生活魔法 アイテムボックス
 ギフト 召喚
 称号 招かれ人/童貞処女/ケモナー
 祝福 クウェイト神の加護  ]

 ……異世界転移三点セット揃ってるやん。

 驚きでエセ関西弁が出たわ……!しかも称号要らんもんが書かれていやがる!!要らねえわ、童貞処女の情報!!称号にすんな!!

 とは言え……ケモナーに至ってはその通りだからなぁ。まあ、現実は動物が好きすぎて逃げられてたし。

 ……主に実家の猫に。いや、野良猫にも逃げられてたか……!猫好きなのに……!!

 そんな俺だったけど、夢はソロキャンしながら膝に猫を乗せて朝コーヒーを満喫する事だったんだよなぁ。……実現できたら凄えわって話だけどさ。

 いやいや、話を戻そう。
 えーとギフトが[召喚]って……?

 そう思って召喚の文字を触って見ると、詳しい情報がきた。

 [住居召喚]
 (使用毎に呼び出し撤去可能。一回の召喚時間制限無し。電気/ガス/水道使用可能)
 ・ログハウス(3LDK)   MP100,000
 ・コンテナハウス(1LDK) MP90,000
 [店舗召喚]
 (店舗呼び出しMPと商品購入時のMPは毎回召喚時必要)
 ・スーパーマーケット  召喚MP10,000
 ・家電量販店      召喚MP30,000
  *(家電のみ召喚住居内限定で使用可能)   
 ・インテリア・雑貨店  召喚MP20,000
 ・ドラッグストア    召喚MP10,000
 ・ホームセンター    召喚MP25,000
 ・車量販店       召喚MP50,000
  
 ………!!!!!……マジか!コレ!やべえ、めちゃくちゃ助かる!
 
 だって考えてみろよ!いきなり投げ出されて人は生きていけるわけねえし!現代人は便利・快適・清潔必須だろ⁉︎何より日本人の我儘舌を満足させるものが手に入るんだぜ!

 いやっふぅーー!!異世界最高!

 って思っていたのはほんの僅かな時間。
 耳に聞こえてくる不穏な鳴き声に振り向いたら、一気に血の気が引いた。

 ガルルルル……
 グルルル……
 
 いや、その……夢中になってたのは俺が悪い……
 だけど、だけどさぁ……

 転移後すぐに獣の群れに囲まれるって、俺の異世界生活詰んでないか……⁉︎
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