24 / 103
第2章 港湾都市
24話 話しをするということ
しおりを挟む
「さて、どうしようかね」
飯を食い終わって、街を歩きながらレーテがオレを見てくる。
「さあな、適当に歩いてりゃいいんじゃねえの」
義兄さんのことを考え出すと、なぜか気が沈んだままになってしまう。
大好きな義兄さんのことのはずなのに、最後の瞬間だけが頭から離れなくて、それ以外が思い出せなくて。
道を行く大勢の人の視線が、声が、あの日のオレを責めているように感じる。
「なにか思うところがあるようだけれど、言いたいことがあるなら言っておくれ」
フードを深く被っていて、レーテの視線がどこを見ているのかはわからない。
「ゴーヴァンを連れ出したのも、これから連れ歩こうとしているのも私なんだ。愚痴や不満なら聞くし、私に出来ることなら、可能な範囲でやってあげるさね」
「別に、なんでもねえ」
「そうなのかい? 顔がまるで、泣く寸前の子供みたいだよ」
「ハッ、オレぁ青の氏族の戦士だぞ。泣いたりなんざするかってんだ」
「おやおや、なら良いんだがね。もし泣きたいなら、胸なり膝なり貸そうと思ったんだが、必要ないかい?」
「いらねえよ。青の氏族の戦士はな、人生で泣くのは三度までだ。赤ん坊じゃねえのに、誰がぴーぴー泣くかってんだ」
フードを被っていて表情が見えねえが、肩震えてる。笑ってんな、コイツ。
「ならいいさね。そうだ、大きな街にいる次いでじゃないけど、一つ大事なことを確認しておこうか」
「大事? なんだよ」
「私の体じゃ使い物になるかわからないし、そもそも別種相手はお互い興味ないだろうからね。ゴーヴァンは、下の相手を買う必要があるのかい?」
は?
「私はそもそも経験がないし、女だからわからないんだがね。男はそういう相手が必要だと、聞いたことがあるからね」
「待て待て待て、テメエ何を言ってやがんだ!」
「夜の相手をしてくれる女を買うかと聞い、て……ひょっとして、女より男のほうが好みかね?」
「そういう意味じゃねえ! どうして、オレの、そっちの心配を、テメエにされなきゃなんねえんだ!」
いきなり何の話始めてんだ、コイツは!
「金はレオナルドから貰っているし、必要ならそっちの心配もしたほうが良いと思ってね。それもまあ、生活の一部みたいなものだろう」
「必要ねえ! 大体そういうのは、自分の嫁さんとするもんだろうが。オレぁまだ結婚すらしてねんだぞ」
「ほほう、そういうものなのかね。私の聞いた話とは違うのだが、それはゴーヴァンの故郷でのことなのかね? 世間一般的にかね?」
「義兄さんと姉さんからそう言われたから、そうなんだろ」
義兄さんと姉さんが言ったんだから、それが正しいんだろう。
「そういうことは妻を娶ってからだって言われたし、人にそういうことを聞いたり話したりするんじゃない、って散々言われたからな」
ふぅん、へぇ、ほぉ、とレーテは納得したのかしていないのかわからない返事を返してくる。
適当な返事返しやがって。フード被ってるからどんな顔してるのか、こっちを見てるのかもわかりゃしねえ。
「やっぱり人と話すのは大事だね。自分の知識が古いことを実感するよ」
「知識が古いって、テメェこそどこで何してたんだよ」
「こう見えてもゴーヴァンより、ずっと、歳上なのだよ。ただ、人と一緒にいたことはあまりなくてね。レオナルドと会うまで、長い間、一人だったから考えや知っていることが古くてね」
ため息のような、笑い出すような息を吐く。
只人の見た目の年はよくわからねえが、年上と言われても違和感があった。只人は年を取ると顔がしわくちゃになるが、こいつの顔にはシワなんて一つもなかった。
「レオナルドは少し考え方が極端だから、ゴーヴァンのようにこうして話せる相手がいるというのは、本当に良いものだね」
「まるで村の年寄りみたいなこと言うんだな」
「年寄りか、あながち間違えてないのだがね。それらしく言うなら、若い者と話すのは刺激になって楽しいね」
「なんだ、じゃあバアさん呼びでもしたほうがいいか?」
「それは止めとくれね。中身は年寄りかもしれないけど、見た目だけならまだまだ若いんでね。ところでゴーヴァンは、お兄さんとお姉さんの他に家族はいるのかい?」
「オレの家族は義兄さんと姉さんだけだ。父さんと母さんはオレがガキの頃に、流行り病で死んだって聞いてる」
レーテは何か考えるように腕を組む。
「そのお兄さんとお姉さんの話し、聞いてもいいかね?」
「何だよ急に」
「どんな人に育てられたのか、聞きたくなっただけさね。話したくなければ話さなくてもいいのだよ」
義兄さんと姉さんの話、か。
「話すのは構わねえけど、つまんねえとか言ったら叩き倒すぞ」
「安心おしね。自分から聞いたのだ、話し終わるまでちゃんと聞くさね」
「なら別にいいけどよ」
オレたちはどこへ行くというわけでもなく、ただ人並みの中を歩きながら話した。身内の自慢話のような内容ばかりだったが、オレにとって自慢の家族だ。二人のことで話したいことはいくらだってある。
レーテは相槌を打つだけで、オレの話をただ静かに聞いていた。ただ時折、小さな手でオレの背中を撫でることが何度かあった。
「話したくないことも、話せないことも、今は話さなくていいよ。今は楽しかったこと、嬉しかったこと、それを聞かせとくれね。そういうことを話すときの声、聞いている私も嬉しくなれるし、楽しくなれるからね」
なんでそんな事を言うのかはわからなかった。ただ義兄さんや姉さんの笑顔を思い出すと、胸が暖かくなるのだけは確かだった。
ああ、また会えるなら、二人に会いたい。許してはくれないだろう、オレもオレを許すことは出来ない、けど何度だって謝りたい。何度だってありがとうを言いたい。
泣いちゃいけないとわかっちゃいるが、オレの中にいるガキのオレが泣いているのがわかる。背中を撫でるレーテの手は、オレじゃなくて、ガキのオレを撫でているように思えた。
飯を食い終わって、街を歩きながらレーテがオレを見てくる。
「さあな、適当に歩いてりゃいいんじゃねえの」
義兄さんのことを考え出すと、なぜか気が沈んだままになってしまう。
大好きな義兄さんのことのはずなのに、最後の瞬間だけが頭から離れなくて、それ以外が思い出せなくて。
道を行く大勢の人の視線が、声が、あの日のオレを責めているように感じる。
「なにか思うところがあるようだけれど、言いたいことがあるなら言っておくれ」
フードを深く被っていて、レーテの視線がどこを見ているのかはわからない。
「ゴーヴァンを連れ出したのも、これから連れ歩こうとしているのも私なんだ。愚痴や不満なら聞くし、私に出来ることなら、可能な範囲でやってあげるさね」
「別に、なんでもねえ」
「そうなのかい? 顔がまるで、泣く寸前の子供みたいだよ」
「ハッ、オレぁ青の氏族の戦士だぞ。泣いたりなんざするかってんだ」
「おやおや、なら良いんだがね。もし泣きたいなら、胸なり膝なり貸そうと思ったんだが、必要ないかい?」
「いらねえよ。青の氏族の戦士はな、人生で泣くのは三度までだ。赤ん坊じゃねえのに、誰がぴーぴー泣くかってんだ」
フードを被っていて表情が見えねえが、肩震えてる。笑ってんな、コイツ。
「ならいいさね。そうだ、大きな街にいる次いでじゃないけど、一つ大事なことを確認しておこうか」
「大事? なんだよ」
「私の体じゃ使い物になるかわからないし、そもそも別種相手はお互い興味ないだろうからね。ゴーヴァンは、下の相手を買う必要があるのかい?」
は?
「私はそもそも経験がないし、女だからわからないんだがね。男はそういう相手が必要だと、聞いたことがあるからね」
「待て待て待て、テメエ何を言ってやがんだ!」
「夜の相手をしてくれる女を買うかと聞い、て……ひょっとして、女より男のほうが好みかね?」
「そういう意味じゃねえ! どうして、オレの、そっちの心配を、テメエにされなきゃなんねえんだ!」
いきなり何の話始めてんだ、コイツは!
「金はレオナルドから貰っているし、必要ならそっちの心配もしたほうが良いと思ってね。それもまあ、生活の一部みたいなものだろう」
「必要ねえ! 大体そういうのは、自分の嫁さんとするもんだろうが。オレぁまだ結婚すらしてねんだぞ」
「ほほう、そういうものなのかね。私の聞いた話とは違うのだが、それはゴーヴァンの故郷でのことなのかね? 世間一般的にかね?」
「義兄さんと姉さんからそう言われたから、そうなんだろ」
義兄さんと姉さんが言ったんだから、それが正しいんだろう。
「そういうことは妻を娶ってからだって言われたし、人にそういうことを聞いたり話したりするんじゃない、って散々言われたからな」
ふぅん、へぇ、ほぉ、とレーテは納得したのかしていないのかわからない返事を返してくる。
適当な返事返しやがって。フード被ってるからどんな顔してるのか、こっちを見てるのかもわかりゃしねえ。
「やっぱり人と話すのは大事だね。自分の知識が古いことを実感するよ」
「知識が古いって、テメェこそどこで何してたんだよ」
「こう見えてもゴーヴァンより、ずっと、歳上なのだよ。ただ、人と一緒にいたことはあまりなくてね。レオナルドと会うまで、長い間、一人だったから考えや知っていることが古くてね」
ため息のような、笑い出すような息を吐く。
只人の見た目の年はよくわからねえが、年上と言われても違和感があった。只人は年を取ると顔がしわくちゃになるが、こいつの顔にはシワなんて一つもなかった。
「レオナルドは少し考え方が極端だから、ゴーヴァンのようにこうして話せる相手がいるというのは、本当に良いものだね」
「まるで村の年寄りみたいなこと言うんだな」
「年寄りか、あながち間違えてないのだがね。それらしく言うなら、若い者と話すのは刺激になって楽しいね」
「なんだ、じゃあバアさん呼びでもしたほうがいいか?」
「それは止めとくれね。中身は年寄りかもしれないけど、見た目だけならまだまだ若いんでね。ところでゴーヴァンは、お兄さんとお姉さんの他に家族はいるのかい?」
「オレの家族は義兄さんと姉さんだけだ。父さんと母さんはオレがガキの頃に、流行り病で死んだって聞いてる」
レーテは何か考えるように腕を組む。
「そのお兄さんとお姉さんの話し、聞いてもいいかね?」
「何だよ急に」
「どんな人に育てられたのか、聞きたくなっただけさね。話したくなければ話さなくてもいいのだよ」
義兄さんと姉さんの話、か。
「話すのは構わねえけど、つまんねえとか言ったら叩き倒すぞ」
「安心おしね。自分から聞いたのだ、話し終わるまでちゃんと聞くさね」
「なら別にいいけどよ」
オレたちはどこへ行くというわけでもなく、ただ人並みの中を歩きながら話した。身内の自慢話のような内容ばかりだったが、オレにとって自慢の家族だ。二人のことで話したいことはいくらだってある。
レーテは相槌を打つだけで、オレの話をただ静かに聞いていた。ただ時折、小さな手でオレの背中を撫でることが何度かあった。
「話したくないことも、話せないことも、今は話さなくていいよ。今は楽しかったこと、嬉しかったこと、それを聞かせとくれね。そういうことを話すときの声、聞いている私も嬉しくなれるし、楽しくなれるからね」
なんでそんな事を言うのかはわからなかった。ただ義兄さんや姉さんの笑顔を思い出すと、胸が暖かくなるのだけは確かだった。
ああ、また会えるなら、二人に会いたい。許してはくれないだろう、オレもオレを許すことは出来ない、けど何度だって謝りたい。何度だってありがとうを言いたい。
泣いちゃいけないとわかっちゃいるが、オレの中にいるガキのオレが泣いているのがわかる。背中を撫でるレーテの手は、オレじゃなくて、ガキのオレを撫でているように思えた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
支援者ギルドを辞めた支援術士の男、少年の頃に戻って人生をやり直す
名無し
ファンタジー
30年もの間、クロムは支援者ギルドでひたすら真面目に働いてきた。
彼は天才的な支援術士だったが、気弱で大のお人よしだったため、ギルドで立場を作ることができずに居場所がなくなり、世渡りが上手かった狡賢いライバルのギルドマスターから辞職を促されることになる。
ギルドを介さなければ治療行為は一切できない決まりのため、唯一の生き甲斐である支援の仕事ができなくなり、途方に暮れるクロム。
人生をやり直したいが、もう中年になった今の自分には難しい。いっそ自殺しようと湖に入水した彼の元に、謎の魚が現れて願いを叶えてくれることに。
少年だった頃に戻ったクロムは、今度こそ自分の殻を破って救えなかった人々の命を救い、支援者としての居場所を確保して人生を素晴らしいものにしようと決意するのだった。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!
猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」
無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。
注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる