軌跡を創る

鳳雛

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1. あなたと出会う

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『たていし~、たていし~』

8:30 立石(たていし)駅。

「遅刻だ…」
閃(せん)は青ざめた顔で改札を出た。
高校の始業時刻に、電車が学校の最寄り駅に到着したのだ。
その理由は、寝坊でも電車の遅延でもない。
「余裕持って家出たのに…」
迷子だ。
自宅から駅までの道で迷い、その駅の構内でも迷った。
そしてこの立石駅から立石高校までの通学路でも、おそらく迷う。

昨日の入学式は親も参加したので車で来ていた。
しかし、今日からは自力登校。
自分の力だけで学校に向かう難しさを閃は痛感した。
(今まで遅刻なんか、欠席だってしたことなかったのに、よりにもよってこんな…)
もう駅に学生の姿はない。
その事実が心細さと不安をより強くする。
(先生に怒られる…)
『たていし~、たていし~』
別の路線の電車が到着して、時間の経過を思い知らされる。
(…泣いてたまるか!自分で決めた高校なんだから!)
マイナスの感情を振り切って、閃は勇ましく歩き出した。
交番へ。



「ねえ、きみサボり?」
「!?」
10歩も歩かないうちに声をかけられた。
閃は振り向きも返事もしない。
(まさか警察の方から来た…?)
警察に声をかけられたと思い、体が固まる。
(どうしよう、警察、どうしよう)
悪いことをしたわけではないのに、汗がにじみ出てくる。
(警察に話しかけられてる、怒られる、親に…)

「ねえって」
「やっ…、?」

怯える閃の肩を掴み、顔を覗いてきたのは、警察ではなかった。
「なんだよ、怖がっちゃって。サボりじゃないの?」
同じ制服を着た、背の高い茶髪の女の子。

「・・・」
「ねー」
「は、はい!」
警察じゃなかったことに安心するとともに、不良らしき少女に話しかけられて、閃は困惑する。
「やっと返事した。
で、どうなの?サボり?」
「ち、違います…」
「なーんだ違うのかぁ」
少女は残念そうな声を出す。
(そんなにサボりたいのかな…)
閃には学校をサボるという行為が理解できない。
だから、目の前でため息をつく少女が宇宙人のように思えた。

「学校と反対方向に歩いてったから絶対仲間だと思ったのに」
「…!」
交番に向かっていたとはいえ、迷子を指摘されて閃は恥ずかしくなる。
「チクられてもめんどいし、学校行くか」
「え」
少女は閃に背を向けて歩き出した。
(あの人についていけば…)
少女は学校への道を知っているらしい。
もしかしたら、学校ではないどこかへサボりに行くのかもしれない。
しかし、閃に残された選択肢は2つ。
交番か、少女。

「・・・」

閃は一瞬迷いながらも少女を選択し、その背中を追いかけて走り出した。
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