1 / 8
1. あなたと出会う
しおりを挟む
『たていし~、たていし~』
8:30 立石(たていし)駅。
「遅刻だ…」
閃(せん)は青ざめた顔で改札を出た。
高校の始業時刻に、電車が学校の最寄り駅に到着したのだ。
その理由は、寝坊でも電車の遅延でもない。
「余裕持って家出たのに…」
迷子だ。
自宅から駅までの道で迷い、その駅の構内でも迷った。
そしてこの立石駅から立石高校までの通学路でも、おそらく迷う。
昨日の入学式は親も参加したので車で来ていた。
しかし、今日からは自力登校。
自分の力だけで学校に向かう難しさを閃は痛感した。
(今まで遅刻なんか、欠席だってしたことなかったのに、よりにもよってこんな…)
もう駅に学生の姿はない。
その事実が心細さと不安をより強くする。
(先生に怒られる…)
『たていし~、たていし~』
別の路線の電車が到着して、時間の経過を思い知らされる。
(…泣いてたまるか!自分で決めた高校なんだから!)
マイナスの感情を振り切って、閃は勇ましく歩き出した。
交番へ。
「ねえ、きみサボり?」
「!?」
10歩も歩かないうちに声をかけられた。
閃は振り向きも返事もしない。
(まさか警察の方から来た…?)
警察に声をかけられたと思い、体が固まる。
(どうしよう、警察、どうしよう)
悪いことをしたわけではないのに、汗がにじみ出てくる。
(警察に話しかけられてる、怒られる、親に…)
「ねえって」
「やっ…、?」
怯える閃の肩を掴み、顔を覗いてきたのは、警察ではなかった。
「なんだよ、怖がっちゃって。サボりじゃないの?」
同じ制服を着た、背の高い茶髪の女の子。
「・・・」
「ねー」
「は、はい!」
警察じゃなかったことに安心するとともに、不良らしき少女に話しかけられて、閃は困惑する。
「やっと返事した。
で、どうなの?サボり?」
「ち、違います…」
「なーんだ違うのかぁ」
少女は残念そうな声を出す。
(そんなにサボりたいのかな…)
閃には学校をサボるという行為が理解できない。
だから、目の前でため息をつく少女が宇宙人のように思えた。
「学校と反対方向に歩いてったから絶対仲間だと思ったのに」
「…!」
交番に向かっていたとはいえ、迷子を指摘されて閃は恥ずかしくなる。
「チクられてもめんどいし、学校行くか」
「え」
少女は閃に背を向けて歩き出した。
(あの人についていけば…)
少女は学校への道を知っているらしい。
もしかしたら、学校ではないどこかへサボりに行くのかもしれない。
しかし、閃に残された選択肢は2つ。
交番か、少女。
「・・・」
閃は一瞬迷いながらも少女を選択し、その背中を追いかけて走り出した。
8:30 立石(たていし)駅。
「遅刻だ…」
閃(せん)は青ざめた顔で改札を出た。
高校の始業時刻に、電車が学校の最寄り駅に到着したのだ。
その理由は、寝坊でも電車の遅延でもない。
「余裕持って家出たのに…」
迷子だ。
自宅から駅までの道で迷い、その駅の構内でも迷った。
そしてこの立石駅から立石高校までの通学路でも、おそらく迷う。
昨日の入学式は親も参加したので車で来ていた。
しかし、今日からは自力登校。
自分の力だけで学校に向かう難しさを閃は痛感した。
(今まで遅刻なんか、欠席だってしたことなかったのに、よりにもよってこんな…)
もう駅に学生の姿はない。
その事実が心細さと不安をより強くする。
(先生に怒られる…)
『たていし~、たていし~』
別の路線の電車が到着して、時間の経過を思い知らされる。
(…泣いてたまるか!自分で決めた高校なんだから!)
マイナスの感情を振り切って、閃は勇ましく歩き出した。
交番へ。
「ねえ、きみサボり?」
「!?」
10歩も歩かないうちに声をかけられた。
閃は振り向きも返事もしない。
(まさか警察の方から来た…?)
警察に声をかけられたと思い、体が固まる。
(どうしよう、警察、どうしよう)
悪いことをしたわけではないのに、汗がにじみ出てくる。
(警察に話しかけられてる、怒られる、親に…)
「ねえって」
「やっ…、?」
怯える閃の肩を掴み、顔を覗いてきたのは、警察ではなかった。
「なんだよ、怖がっちゃって。サボりじゃないの?」
同じ制服を着た、背の高い茶髪の女の子。
「・・・」
「ねー」
「は、はい!」
警察じゃなかったことに安心するとともに、不良らしき少女に話しかけられて、閃は困惑する。
「やっと返事した。
で、どうなの?サボり?」
「ち、違います…」
「なーんだ違うのかぁ」
少女は残念そうな声を出す。
(そんなにサボりたいのかな…)
閃には学校をサボるという行為が理解できない。
だから、目の前でため息をつく少女が宇宙人のように思えた。
「学校と反対方向に歩いてったから絶対仲間だと思ったのに」
「…!」
交番に向かっていたとはいえ、迷子を指摘されて閃は恥ずかしくなる。
「チクられてもめんどいし、学校行くか」
「え」
少女は閃に背を向けて歩き出した。
(あの人についていけば…)
少女は学校への道を知っているらしい。
もしかしたら、学校ではないどこかへサボりに行くのかもしれない。
しかし、閃に残された選択肢は2つ。
交番か、少女。
「・・・」
閃は一瞬迷いながらも少女を選択し、その背中を追いかけて走り出した。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】【R18百合】女子寮ルームメイトに夜な夜なおっぱいを吸われています。
千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。
風月学園女子寮。
私――舞鶴ミサが夜中に目を覚ますと、ルームメイトの藤咲ひなたが私の胸を…!
R-18ですが、いわゆる本番行為はなく、ひたすらおっぱいばかり攻めるガールズラブ小説です。
おすすめする人
・百合/GL/ガールズラブが好きな人
・ひたすらおっぱいを攻める描写が好きな人
・起きないように寝込みを襲うドキドキが好きな人
※タイトル画像はAI生成ですが、キャラクターデザインのイメージは合っています。
※私の小説に関しては誤字等あったら指摘してもらえると嬉しいです。(他の方の場合はわからないですが)
私たち、博麗学園おしがまクラブ(非公認)です! 〜特大膀胱JKたちのおしがま記録〜
赤髪命
青春
街のはずれ、最寄り駅からも少し離れたところにある私立高校、博麗学園。そのある新入生のクラスのお嬢様・高橋玲菜、清楚で真面目・内海栞、人懐っこいギャル・宮内愛海の3人には、膀胱が同年代の女子に比べて非常に大きいという特徴があった。
これは、そんな学校で普段はトイレにほとんど行かない彼女たちの爆尿おしがまの記録。
友情あり、恋愛あり、おしがまあり、そしておもらしもあり!? そんなおしがまクラブのドタバタ青春小説!
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
俺を振った元カノがしつこく絡んでくる。
エース皇命
青春
〈未練たらたらな元カノ×エロ教師×超絶ブラコン姉さん〉
高校1年生の山吹秋空(やまぶき あきら)は、日曜日のデート後に彼女である長谷部千冬(はせべ ちふゆ)に別れを切り出される。
同棲してくれるなら別れないであげる、という強烈な条件に愛想を尽かし別れることを了承した秋空だったが、それからというもの、千冬のしつこい絡みが始まることになる……。
頭のおかしい美人教師と、秋空を溺愛する姉、秋空が千冬と別れたことで秋空を狙うクラスメイトの美少女たち。
クセの強い友達に囲まれる、秋空の苦悩に満ちた学校生活!
※小説家になろうにも投稿しています。
百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常
坂餅
青春
毎日更新
一話一話が短いのでサクッと読める作品です。
水原涼香(みずはらりょうか)
黒髪ロングに左目尻ほくろのスレンダーなクールビューティー。下級生を中心に、クールで美人な先輩という認識を持たれている。同級生達からは問題児扱い。涼音の可愛さは全人類が知るべきことだと思っている。
檜山涼音(ひやますずね)
茶色に染められた長い髪をおさげにしており、クリっとした目はとても可愛らしい。その愛らしい見た目は、この学校で可愛い子は? と言えばすぐ名前が上がる程の可愛さ。涼香がいればそれでいいと思っている節がある。
柏木菜々美(かしわぎななみ)
肩口まで伸びてた赤毛の少し釣り目な女子生徒。ここねが世界で一可愛い。
自分がここねといちゃついているのに、他の人がいちゃついているのを見ると顔を真っ赤にして照れたり逃げ出したり爆発する。
基本的にいちゃついているところを見られても真っ赤になったり爆発したりする。
残念美人。
芹澤ここね(せりざわここね)
黒のサイドテールの小柄な体躯に真面目な生徒。目が大きく、小動物のような思わず守ってあげたくなる雰囲気がある。可愛い。ここねの頭を撫でるために今日も争いが繰り広げられているとかいないとか。菜々美が大好き。人前でもいちゃつける人。
綾瀬彩(あやせあや)
ウェーブがかったベージュの髪。セミロング。
成績優秀。可愛い顔をしているのだが、常に機嫌が悪そうな顔をしている、決して菜々美と涼香のせいで機嫌が悪い顔をしているわけではない。決して涼香のせいではない。なぜかフルネームで呼ばれる。夏美とよく一緒にいる。
伊藤夏美(いとうなつみ)
彩の真似をして髪の毛をベージュに染めている。髪型まで同じにしたら彩が怒るからボブヘアーにパーマをあててウェーブさせている
彩と同じ中学出身。彩を追ってこの高校に入学した。
元々は引っ込み思案な性格だったが、堂々としている彩に憧れて、彩の隣に立てるようにと頑張っている。
綺麗な顔立ちの子。
春田若菜(はるたわかな)
黒髪ショートカットのバスケ部。涼香と三年間同じクラスの猛者。
なんとなくの雰囲気でそれっぽいことを言える。涼香と三年間同じクラスで過ごしただけのことはある。
涼香が躓いて放った宙を舞う割れ物は若菜がキャッチする。
チャリ通。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる