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24. 好きは止められない (前編)
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Side.依(より)
宙読(そらよみ)高校、放課後、体育館倉庫。
繋(けい)先生と一緒に、来月の体育祭の準備をしてる。
今日の作業は、横断幕とか、得点版とか、一年で一回しか使わない備品を取り出して壊れてないかチェックするだけ。
これが終わったら部活で、17:00には帰れる。
今日は糸(いと)ちゃんの帰りが遅いから、夕飯とお風呂、張り切る…!
こうやって準備してると、旅行の前日を思い出すなぁ。
なんでだか、最後の日だけ記憶があいまいだけど…
わかったことも多かった。
「せ、狭いですね!この倉庫!」
そんなに狭いかな?
むしろ広いと思うんだけど、繋先生は大きいからそう感じるのかも。
「・・・」
糸(いと)ちゃんが隣にいたら、アタシはこの人が見えなくなるんだよね。
…いや、難しいの考えるのキラい。
旅行、楽しかったなぁ。
「ふふっ」
「?!」
「どうしました?」
旅行のこと思い出してたら、楽しくてつい笑っちゃったんだけど、変だったかな。
「あ、いや、その!
え、ええええ笑顔がかわっ、あ、わ、笑ってるなぁって!!」
「?」
驚いたり、焦ったり、繋先生の方が変。
なんだかまた笑えてきちゃう。
「依先生、最近めちゃ笑いますね」
「そうですか?」
自分ではそんなことないと思うんだけど。
「はい!特にこの前1週間お休みなさった後から、いつもニコニコしてます!」
「そうなんですね」
旅行に行ったことは学校の誰にも伝えてない。
糸ちゃんと結婚したことも。
「そのせいか、生徒が用もないのに職員室に来るんすよ」
「?」
「男女問わず、毎日毎日『依ちゃん先生いますか…?』なんて顔赤くして!」
「??」
確かに、前より生徒に話しかけられるなぁとは思ってたけど、職員室にも来てたんだ。
でもなんで?
「…依先生、ハテナマーク出てますよ」
「あ、しまいます」
**************************
Side.繋(けい)
「どこにしまいましょう」
「・・・」
自分は依先生のことが好きだ。
一目ぼれだった。
この小動物のような小ささ。そこからは想像もつかないほどの強さ。
何を考えているのかわからない表情、たまに見せる笑顔。
可憐だ。
今日の体育祭の準備は、他の教員が仕掛けたようなもの。
自分と依先生が2人きりになれる機会を作ってくれたんだ。
そりゃ、2人きりになれてうれしい。
『保護者呼ぼっか。ああ、警察の方がいいかな?』
忘れもしないあの"事故"があってから、依先生が隣にいても急に冷静になるときがある。
けど、やっぱり好きの方がでかい。
『糸ちゃん、うれしくないの?せっかく学校でも会えたのに』
糸さん。
あれ以来、あの人と会ってない。
あの人は結局、依先生にとっての何者なんだ?
『家ではいつもニコニコしてるのにね』
『依、やっぱり先に帰ってるよ』
「・・・」
あの人の前ではいつも笑ってるのか。
一緒に住んでるみたいだった。
依先生のこと、呼び捨てにしてた。
…付き合ってる?
いや、女性同士だろ。
ないない。
ない、けど…
依先生にとって特別な存在であることは、バカな自分でもわかる。
きっと、依先生がよく笑うようになったのも糸さんが関係してる。
告ってもないのに、負けたってわかる。
「はぁ~」
もう結婚までいってたりして。
それでも自分は、自分の好きを止めることなんて…
「ひゃ!虫…!」
「っ!ど、どうしました?!」
いけない!せっかく依先生と一緒なのにボーっとして…
「虫が…足がいっぱいある虫がぁ…!」
「あ、ほんとだ」
依先生ったら、虫なんかに怯えちゃって。
やっぱり可愛い。
あんなに空手が強い依先生でも、虫は苦手―――
「わぁああああ!!!」
ドゴッ
鈍い音がしたと思ったら、自分は宙に浮いてた。
宙読(そらよみ)高校、放課後、体育館倉庫。
繋(けい)先生と一緒に、来月の体育祭の準備をしてる。
今日の作業は、横断幕とか、得点版とか、一年で一回しか使わない備品を取り出して壊れてないかチェックするだけ。
これが終わったら部活で、17:00には帰れる。
今日は糸(いと)ちゃんの帰りが遅いから、夕飯とお風呂、張り切る…!
こうやって準備してると、旅行の前日を思い出すなぁ。
なんでだか、最後の日だけ記憶があいまいだけど…
わかったことも多かった。
「せ、狭いですね!この倉庫!」
そんなに狭いかな?
むしろ広いと思うんだけど、繋先生は大きいからそう感じるのかも。
「・・・」
糸(いと)ちゃんが隣にいたら、アタシはこの人が見えなくなるんだよね。
…いや、難しいの考えるのキラい。
旅行、楽しかったなぁ。
「ふふっ」
「?!」
「どうしました?」
旅行のこと思い出してたら、楽しくてつい笑っちゃったんだけど、変だったかな。
「あ、いや、その!
え、ええええ笑顔がかわっ、あ、わ、笑ってるなぁって!!」
「?」
驚いたり、焦ったり、繋先生の方が変。
なんだかまた笑えてきちゃう。
「依先生、最近めちゃ笑いますね」
「そうですか?」
自分ではそんなことないと思うんだけど。
「はい!特にこの前1週間お休みなさった後から、いつもニコニコしてます!」
「そうなんですね」
旅行に行ったことは学校の誰にも伝えてない。
糸ちゃんと結婚したことも。
「そのせいか、生徒が用もないのに職員室に来るんすよ」
「?」
「男女問わず、毎日毎日『依ちゃん先生いますか…?』なんて顔赤くして!」
「??」
確かに、前より生徒に話しかけられるなぁとは思ってたけど、職員室にも来てたんだ。
でもなんで?
「…依先生、ハテナマーク出てますよ」
「あ、しまいます」
**************************
Side.繋(けい)
「どこにしまいましょう」
「・・・」
自分は依先生のことが好きだ。
一目ぼれだった。
この小動物のような小ささ。そこからは想像もつかないほどの強さ。
何を考えているのかわからない表情、たまに見せる笑顔。
可憐だ。
今日の体育祭の準備は、他の教員が仕掛けたようなもの。
自分と依先生が2人きりになれる機会を作ってくれたんだ。
そりゃ、2人きりになれてうれしい。
『保護者呼ぼっか。ああ、警察の方がいいかな?』
忘れもしないあの"事故"があってから、依先生が隣にいても急に冷静になるときがある。
けど、やっぱり好きの方がでかい。
『糸ちゃん、うれしくないの?せっかく学校でも会えたのに』
糸さん。
あれ以来、あの人と会ってない。
あの人は結局、依先生にとっての何者なんだ?
『家ではいつもニコニコしてるのにね』
『依、やっぱり先に帰ってるよ』
「・・・」
あの人の前ではいつも笑ってるのか。
一緒に住んでるみたいだった。
依先生のこと、呼び捨てにしてた。
…付き合ってる?
いや、女性同士だろ。
ないない。
ない、けど…
依先生にとって特別な存在であることは、バカな自分でもわかる。
きっと、依先生がよく笑うようになったのも糸さんが関係してる。
告ってもないのに、負けたってわかる。
「はぁ~」
もう結婚までいってたりして。
それでも自分は、自分の好きを止めることなんて…
「ひゃ!虫…!」
「っ!ど、どうしました?!」
いけない!せっかく依先生と一緒なのにボーっとして…
「虫が…足がいっぱいある虫がぁ…!」
「あ、ほんとだ」
依先生ったら、虫なんかに怯えちゃって。
やっぱり可愛い。
あんなに空手が強い依先生でも、虫は苦手―――
「わぁああああ!!!」
ドゴッ
鈍い音がしたと思ったら、自分は宙に浮いてた。
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