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本編
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騎士団戦が始まったと思われる歓声を聞く。やはりそこは武を志すもの、一目見ようと控室からも見物する。しかし、戦いはあっけなく終わってしまった。猛将ガイザル殿の威風に開幕から動揺していた警備隊員はその剛腕からの一撃を防ぎきれず、吹き飛ばされ戦意を失ってしまったのだ。あまりの実力差にあいつも数日は苦しむだろう。
「あれが、猛将の剣か…」
「どうしたガーランド?ビビったのか?」
「いえ、ガイザル殿の本気の一撃はどれぐらい重いのかなと」
純粋な興味だった。ギルバート殿は類まれな技量を誇るものの、あれほどの一撃は放てないだろう。一撃の重さといえば彼こそが王国ではNo1だろう。
「相変わらずおかしな奴だな。俺なら絶対受けたくないね」
そう話をしている間にも2回戦の為、警備隊員が試合場へと向かう。入れ替わりに1回戦の敗者がここへと来る。
「どうだった?」
「だめだ、あれは重すぎる。力じゃ全くかなわん」
そういう彼も、体格には自信があり、隊でも力がある方だ。ならば、受け止めるにせよ今から何か考えておかないとな。再び歓声が上がる。どうやら2回戦が始まったようだ。第2騎士団副隊長も隊長のガイザル殿と同じく剛剣を使う。しかし、体格的には一回り以上小さくどちらかというと騎士団長殿に似ている。とはいえさすがに相手の警備隊員では実力不足のようだ。剣をかわしそのまま剣を弾かれる。そして、がっくりと警備隊員がうなだれる。
「そこまで!」
審判員が勝負の終わりを宣言して、2回戦は終了した。
「いよいよだな、ガーランド」
「そうですね」
「頑張ってくださいよ先輩!」
「女にいいとこ見せろよ」
「できる限りのことはする」
そう言って俺は試合場へと足を向けた。そして、両者の姿が見えると歓声が沸く。みんながどれだけこの騎士団戦に期待しているかが分かる。その分は楽しませないとな。そう思って相手を見る。
「よろしくな。ガーランドだったか?」
「はい、胸を借りるつもりで戦います」
第4騎士団団長ゼノ。補給メインの第4騎士団に置いて、最も腕が立つといわれる方だ。剣だけでなく補給作戦などの立案も得意で、将来はどこかの領に婿入りするのではないかともうわさされている。
「両者礼…始め!」
審判の合図とともに試合が開始される。俺はもちろん剣を使う。相手のゼノ隊長はどうやら剣と短剣らしい。2刀流という程でもない短剣をどのように使うかを気にかけないとな。
「行くぞっ!」
ゼノが一気に間を詰めてくる。それを簡単に剣でかわす。あまりの大ぶりだったが左半身の動きが妙だったのですぐに剣を引き、短剣に備える。
「…ほう、初出場といっていたがなかなか頭が回るようだな」
「お褒めに頂き光栄です」
「隊長ーさっさと倒してください!」
「ゼノ様ー」
普段からパレードでも顔を見せるゼノの人気はかなりあるようだ。
「人気者ですね」
「騎士には不要だ。いくぞ!」
再度、ゼノが切り込んでくる。先ほどよりはるかに鋭い。しかし、防げる範囲だと慌てず対処する。短剣があるうちはあえて手を出さず隙を見る。そうして優位を示せばいい。
「はっ!」
「せぇい!」
何度も剣が交差するがお互い決定打にはなりえない。第4騎士団の団員たちも俺の腕がそこそこ立つようだと分かったのだろう。真剣な表情で見るものも出だした。
「なかなかどうして、やるものだな」
「それはお互い様です」
「ほざくなよ!」
一瞬今までより鋭い切降ろしが俺を襲う。ここだっ!剣を動かす。反撃に出るのではなく、迎撃するために―。
降ろされた剣を最小限の動きでかわすと、次に来るであろう短剣での一撃に備える。予想通り、片手で剣を持ったゼノは左手で短剣を突き出してくる。そこに合わせるように剣の腹を向ける。
ギィン
金属同士が鈍くぶつかる音を立てた。
「いけたと思ったんだがな…」
「こっちもあれで短剣を落とすと思ったんですが」
「気に入らんな」
それ以降も決め手に欠いた戦いとなる。まあ、ここまですれば面目もたったかな。そう思っているとふいに声がした。
「旦那様、頑張って、勝ってください!!」
一瞬目を向けると、そこにはかわいい婚約者、ティアナの顔があった。
「あれが、猛将の剣か…」
「どうしたガーランド?ビビったのか?」
「いえ、ガイザル殿の本気の一撃はどれぐらい重いのかなと」
純粋な興味だった。ギルバート殿は類まれな技量を誇るものの、あれほどの一撃は放てないだろう。一撃の重さといえば彼こそが王国ではNo1だろう。
「相変わらずおかしな奴だな。俺なら絶対受けたくないね」
そう話をしている間にも2回戦の為、警備隊員が試合場へと向かう。入れ替わりに1回戦の敗者がここへと来る。
「どうだった?」
「だめだ、あれは重すぎる。力じゃ全くかなわん」
そういう彼も、体格には自信があり、隊でも力がある方だ。ならば、受け止めるにせよ今から何か考えておかないとな。再び歓声が上がる。どうやら2回戦が始まったようだ。第2騎士団副隊長も隊長のガイザル殿と同じく剛剣を使う。しかし、体格的には一回り以上小さくどちらかというと騎士団長殿に似ている。とはいえさすがに相手の警備隊員では実力不足のようだ。剣をかわしそのまま剣を弾かれる。そして、がっくりと警備隊員がうなだれる。
「そこまで!」
審判員が勝負の終わりを宣言して、2回戦は終了した。
「いよいよだな、ガーランド」
「そうですね」
「頑張ってくださいよ先輩!」
「女にいいとこ見せろよ」
「できる限りのことはする」
そう言って俺は試合場へと足を向けた。そして、両者の姿が見えると歓声が沸く。みんながどれだけこの騎士団戦に期待しているかが分かる。その分は楽しませないとな。そう思って相手を見る。
「よろしくな。ガーランドだったか?」
「はい、胸を借りるつもりで戦います」
第4騎士団団長ゼノ。補給メインの第4騎士団に置いて、最も腕が立つといわれる方だ。剣だけでなく補給作戦などの立案も得意で、将来はどこかの領に婿入りするのではないかともうわさされている。
「両者礼…始め!」
審判の合図とともに試合が開始される。俺はもちろん剣を使う。相手のゼノ隊長はどうやら剣と短剣らしい。2刀流という程でもない短剣をどのように使うかを気にかけないとな。
「行くぞっ!」
ゼノが一気に間を詰めてくる。それを簡単に剣でかわす。あまりの大ぶりだったが左半身の動きが妙だったのですぐに剣を引き、短剣に備える。
「…ほう、初出場といっていたがなかなか頭が回るようだな」
「お褒めに頂き光栄です」
「隊長ーさっさと倒してください!」
「ゼノ様ー」
普段からパレードでも顔を見せるゼノの人気はかなりあるようだ。
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「騎士には不要だ。いくぞ!」
再度、ゼノが切り込んでくる。先ほどよりはるかに鋭い。しかし、防げる範囲だと慌てず対処する。短剣があるうちはあえて手を出さず隙を見る。そうして優位を示せばいい。
「はっ!」
「せぇい!」
何度も剣が交差するがお互い決定打にはなりえない。第4騎士団の団員たちも俺の腕がそこそこ立つようだと分かったのだろう。真剣な表情で見るものも出だした。
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「それはお互い様です」
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ギィン
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「いけたと思ったんだがな…」
「こっちもあれで短剣を落とすと思ったんですが」
「気に入らんな」
それ以降も決め手に欠いた戦いとなる。まあ、ここまですれば面目もたったかな。そう思っているとふいに声がした。
「旦那様、頑張って、勝ってください!!」
一瞬目を向けると、そこにはかわいい婚約者、ティアナの顔があった。
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