4 / 11
2日目
しおりを挟む
「…下、殿下!」
「ん、んぅ?」
声がする。俺は昨日夜遅くまで魔法関連の本を読んで疲れているんだ。起こさないで欲しい。
「起きてくださいませ、アーダン殿下!」
「なんだもう少し寝かせてくれ」
「いけません!もう一日も猶予がないのです」
「だがな、エディン。昨日はあまり寝てなくて寝不足でな…って、エディン!」
「はい、殿下」
「殿下ではない。未婚の女性が男の部屋に入ってくるとは…」
「殿下とは婚約者ですよ。それに、いつものことですわ」
そう言えばそうか。とりあえずは学園に行く準備だ。
「そういえば今日の補修は数学だったな」
「はい。苦手な教科ですが頑張ってくださいませ!」
「うむ。今日も付いて来てくれるんだろう?」
「当たり前です。殿下はもう一日も無駄に出来ないのですよ。それに、まだお体が心配です。学園まで連れ出しておいてなんですが、無事卒業出来たら休息をとってくださいね」
「そうだな。じゃあ、その時はご褒美にエディンと一緒に出掛けるか!」
「で、殿下!からかわないでくださいませ」
からかったつもりはないんだが…。時間も迫っているので着替えて学園に向かう。
「今日は時間もかかると思いますが頑張りましょうね」
「ああ、まあ、そうだな」
実は昨日のうちに教科書は開いている。魔法のお陰か科学系の発展は遅く、今の俺の知識でも出来ることは確認した。後はどうやってひらめきを得た!という感じを出すかだな。天才と思われても、そもそも数学は苦手な方でその先を期待されても困るしな。かと言ってこれまでサボっていたなんて、エディンが聞いたら激怒するだろう。
「流石にそれはなぁ…」
「殿下、何かおっしゃいましたか?」
「いや」
エディンのシアル家は王国でも有数の名家だ。そんなエディンにはこれ以上負担をかけたくはない。これまでも婚約者として何をやっているのかと、非難を浴びて来ただろうからな。
「さあ、授業ですよ。頑張りましょう」
「では、授業を始めますぞ」
昨日と同様、授業が始まる。だが、昨日は最初の魔法講義はさっぱりだったし、歴史も大変だったが今日の範囲は楽勝だ。というかただの四則演算だが…。
「ど、どうしました殿下?もしやもう限界ですか?」
「い、いや。どうも、この前から頭の調子が良くてな。これぐらいなら何とか解けそうだ」
それからは苦痛の時間だった。足し算引き算に始まり、たかが掛け算の問題に正解するだけでエディンが褒めてくれるのだ。
「エ、エディン。あまり褒めないでくれ。この程度は常識だろう?」
「ですが、殿下にとっては目覚ましい一歩です!私、感動いたしました。何か希望があればかなえて差し上げたいぐらいですわ!」
「そ、そうか。まだ午前中で午後もあるんだが…では、名前で呼んでくれないか。婚約者だが滅多に名前で呼んでくれないだろう?」
「そ、それは…」
「貴族として言ったことは守らないと」
「…分かりました。ア、アーダン様」
うむ、改めてこんな綺麗な婚約者に名前を呼ばれるなんて、いい身分だ。
「ん、んぅ?」
声がする。俺は昨日夜遅くまで魔法関連の本を読んで疲れているんだ。起こさないで欲しい。
「起きてくださいませ、アーダン殿下!」
「なんだもう少し寝かせてくれ」
「いけません!もう一日も猶予がないのです」
「だがな、エディン。昨日はあまり寝てなくて寝不足でな…って、エディン!」
「はい、殿下」
「殿下ではない。未婚の女性が男の部屋に入ってくるとは…」
「殿下とは婚約者ですよ。それに、いつものことですわ」
そう言えばそうか。とりあえずは学園に行く準備だ。
「そういえば今日の補修は数学だったな」
「はい。苦手な教科ですが頑張ってくださいませ!」
「うむ。今日も付いて来てくれるんだろう?」
「当たり前です。殿下はもう一日も無駄に出来ないのですよ。それに、まだお体が心配です。学園まで連れ出しておいてなんですが、無事卒業出来たら休息をとってくださいね」
「そうだな。じゃあ、その時はご褒美にエディンと一緒に出掛けるか!」
「で、殿下!からかわないでくださいませ」
からかったつもりはないんだが…。時間も迫っているので着替えて学園に向かう。
「今日は時間もかかると思いますが頑張りましょうね」
「ああ、まあ、そうだな」
実は昨日のうちに教科書は開いている。魔法のお陰か科学系の発展は遅く、今の俺の知識でも出来ることは確認した。後はどうやってひらめきを得た!という感じを出すかだな。天才と思われても、そもそも数学は苦手な方でその先を期待されても困るしな。かと言ってこれまでサボっていたなんて、エディンが聞いたら激怒するだろう。
「流石にそれはなぁ…」
「殿下、何かおっしゃいましたか?」
「いや」
エディンのシアル家は王国でも有数の名家だ。そんなエディンにはこれ以上負担をかけたくはない。これまでも婚約者として何をやっているのかと、非難を浴びて来ただろうからな。
「さあ、授業ですよ。頑張りましょう」
「では、授業を始めますぞ」
昨日と同様、授業が始まる。だが、昨日は最初の魔法講義はさっぱりだったし、歴史も大変だったが今日の範囲は楽勝だ。というかただの四則演算だが…。
「ど、どうしました殿下?もしやもう限界ですか?」
「い、いや。どうも、この前から頭の調子が良くてな。これぐらいなら何とか解けそうだ」
それからは苦痛の時間だった。足し算引き算に始まり、たかが掛け算の問題に正解するだけでエディンが褒めてくれるのだ。
「エ、エディン。あまり褒めないでくれ。この程度は常識だろう?」
「ですが、殿下にとっては目覚ましい一歩です!私、感動いたしました。何か希望があればかなえて差し上げたいぐらいですわ!」
「そ、そうか。まだ午前中で午後もあるんだが…では、名前で呼んでくれないか。婚約者だが滅多に名前で呼んでくれないだろう?」
「そ、それは…」
「貴族として言ったことは守らないと」
「…分かりました。ア、アーダン様」
うむ、改めてこんな綺麗な婚約者に名前を呼ばれるなんて、いい身分だ。
2
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません
下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。
旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。
ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも?
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
新しい街で 〜婚約破棄され実家も追い出されました〜
にーなにな
恋愛
【親愛なるソフィアへ 俺との婚約をなかったことにしてほしい。】
騎士であるジョセフと婚約していたソフィアは、いつか彼と結婚することを疑うこともなかった。しかし、ある日突然、手紙で一方的に婚約破棄を告げられた。理由もなく婚約を解消されたことにソフィアは深く傷つき、立ち直ることができなかった。さらに、親から「もうこの家には置いておけない」と言われ……
最悪なお見合いと、執念の再会
当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。
しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。
それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。
相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。
最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。
女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
魔女っ子令嬢はこの度カボチャと契約恋愛をする事になりました!〜お兄様とイケメンに溺愛されて大変です〜
蓮恭
恋愛
魔女に憧れて呪いや魔術の研究をするのが趣味の伯爵令嬢マリー。
両親は早くに亡くなり、領地経営は兄のフランクが行っている。
二人っきりの兄と妹は仲良く暮らしていた。
しかし度数の合わない瓶底レンズの眼鏡をかけないと人付き合いもまともに行えないようなフランクはとても頼りなく、そしてとんでもなくヘタレなのだった。
そんなトラブルメーカーの兄のことをいつも優しくフォローするマリーが、ある日兄の起こしたトラブルによって不本意ながらも『契約恋愛』をすることとなる。
お相手はカボチャ頭の異国の人間⁉︎
異国の大きな貿易会社の会長だというリュウ・シエンは、フランクの不注意による呪いでカボチャ頭になってしまったのだった。
呪いを解くためには『愛し、愛される者からの口づけ』が必要で……
当然だがカボチャ頭では世間に出られないとリュウ・シエンは言う。
そこで、伯爵家の屋敷に滞在することになったリュウ・シエンとマリーは、お互いの目的の為に呪いを解こうと何とか愛し合う努力をすることになる。
しかし、何かよからぬ企みからマリーに婚約の申し込みに来る大嫌いな幼馴染の令息。
そして、その令息を狙う悪役令嬢の意地悪にマリーは振り回される。
マリーは幸せになれるのか?
そしてリュウ・シエンはカボチャ頭から脱却できるのか?
溺愛、ジレジレ、きゅんきゅんな恋愛と、悪役令嬢とザマア要素もちょっぴりある作者の好きを詰め込んだ欲張りなお話です( ・∇・)
◇◇◇
某ハロウィン企画の為に書いた短編です。
ハロウィンらしく楽しいラブコメになる予定ですので、どうか温かい目でお付き合いくださいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる