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一泊してゆらゆら揺られること4時間。ようやく私たちは王都の伯爵邸に着いた。そこはとても大きくて、孤児院や教会ともまるで違っていた。

「おい、何さっきからうち見上げてんだライザ?」

「だって、あまりに大きい屋敷なんです」

「そういえば、領地の邸はあの人がくつろげないからと小さめのものにして、前の邸はお義父様に使っていただいてましたわね。これでも王都の伯爵家としては小さい方ですわ。子爵家よりわずかに大きい位です」

「そうなんですね…。やっぱり貴族の方ってお金持ちなんですね」

いわゆる前世の旧家で商売をしているところという形なのだろうか、それとも財閥?よくわからないけどすごいんだなぁとしみじみと思う。テレビやネット以外で見たこともない。大きさでいえば学校だってそうだけど。飾りとかはないしなあ。校長室とかにはあるのかもしれないけど、入れるようなことはしてないし。勿論悪いこともね。

「あらあら、そんなことでどうするのライザ。あなたは今日から私の家の遠縁の人間ですよ。爵位はないけれど代々使用人として働いているという設定忘れないでね」

「はい!こんなお邸に住めるなんて夢のようです。ところで邸にいるうちはどうすればいいですか?水汲みとかでも料理とかでも魔法使えばできますけど…」

「お前なぁ。ここには使用人として来てないんだぞ。ちゃんと魔法の勉強に来てるんだから、必要ないだろ」

「でも…」

「急に生活が変わるから不安なのね。あまり、よくはないけれど少しなら大丈夫なように言っておくわ。ただし、他人の仕事を取りすぎないように!」

そう言っていたずらっぽく微笑むニケ様はとても美しかった。

「お到着お待ちしておりました、奥様」

代表で執事の人が挨拶をすると、それにこたえるように奥の使用人たちが一斉に頭を下げる。ふお~こんなのドラマとかでした見たことないよ~。今までも領主様の邸にはお邪魔していたけれど、そんなに装飾も多くない部屋ばかりで、使用人の方もお手伝いさんみたいな感覚で接してくれていたので、こういうのは初めてだった。

「お坊ちゃまもお久しぶりでございます」

「坊ちゃんはやめろって…」

「それと、その方が…」

「そうよ。紹介するわね。今日から私たちと一緒に住むライザよ。この子の面倒も見てあげてね。それと、私の遠縁になって入るけれど昨日までは孤児院にいたから簡単なマナーを教えてあげて。後はあなたに言っておけばいいかしら?」

「はい、承りますのでこちらに…」

そういうと、ニケ様は執事の方遠くに行ってしまった。残された私とヴェイン様には別々の使用人の方がついてそれぞれ案内してくれる。というか別々に人付くんだ…、改めてすごいというか王都って怖い!

「それではライザ様のお部屋はこちらです」

案内された部屋はみんなで寝ていた部屋と同じぐらいだった。10畳以上はあるなぁ。

「こ、こんなに広いんですか?もう少し狭い部屋ありませんか?」

「こちら以外では窺っておりませんので…」

確かにこの人が部屋を決めたわけではないんだろう。困らせてはいけないし後でニケ様に相談しよう。

「わかりました。じゃあ、ちょっとみてみます」

それではと部屋に逃げ込もうとしたが、つかまった。

「ライザお嬢様。今日よりは伯爵家に魔法の才を認められ、遠縁の家より引き取られたとなっておりますので、こういったことは私たちにお任せください」

そういうとメイドさんはドアを開け、私を案内する。部屋にはすでに机やいすなどが用意されていた。

「こ、こちらは…」

「ライザお嬢様のために用意させていただきましたものです。服もこちらに、ドレスもありますよ。お着替えなさいますか?」

とんでもない!着たら洗わないといけなくなるじゃない。こんな生地の洗い方なんて知らないし、もったいないよ。

「いいい、いいです。それより、本当にここを一人で?」

「はい、ライザお嬢様用の部屋ですので」

にべもなく言い返された。
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