妹を想いながら転生したら

弓立歩

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本編

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最初は村の近隣の森の一部の木を伐採しようと思ったのだが、変に空から見て穴が開く危険もあるし、ハーピーたちも王都からくるときの森から運んでいるとのことでそれに倣うようにした。木の運搬に関しては一部魔法を使うことにした。

「それにしても木を切るようになるとはな」

「畑も耕すし、今度は木こりにもなるし、いよいよ冒険者というより森の何でも屋だな」

「今度からはたまに店も開くしね」

「最近思うんだけど、学校行ってた頃にはまるで思わなかったことばっかりだよ~」

「まあ、僕らは学校は出てないけど、さすがに木こりの真似なんてしたことはないなあ」

「キルドはなかったのか?私はある」

「何でまた?」

「まだまだ駆け出しだったころ、木材の森からの運搬の依頼を受けたが、いざ行ってみると体を壊してしまっていてな。依頼未達成になるのを避けたかったから代わりにしたんだ」

「フォルトって結構いろんな依頼受けてるわよね。これだけは受けないなんて依頼はあるの?」

「どうだろうな。無いと言いたいところだが、呼び込みとかは無理だろうな」

「あ~、見た目大男だしね。でも、店によっては逆に女性が集まってくるかもよ」

「そういうのも苦手なんだ。程ほどでいい」

苦手とは言いつつも、そこは悪い気はしないのであろう。強くは否定をしないフォルトだった。雑談をしながらだとあっという間についてしまう。

「とりあえず森の入り口についた訳だが、奥の方だったか?」

「ええ、前にミゾジカを取った方へ向かっていけば分かるといっていたわ」

カリンに聞いた場所を思い出してカークスに伝える。少し降りていくとすぐにその場所と分かるところに着いた。他の場所とは違い土がめくれているところがある。おそらくここに元は木が植わっていたのであろう。

「このあたりのようね。じゃあ、カークスお願い」

「ああ」

カークスが土魔法を使って近くの木の根元から土を掘り返す。掘り返されたため木はバランスを崩して私たちと反対側に倒れていく。

「これなら、僕ら要らないんじゃない?」

「まあ、この後頼ることになるから」

その後もカークスは3本木を倒していった。

「これぐらいあればスペアを含めても足りるだろう」

「ありがとうカークス。じゃあ、次はエミリーお願いね」

「は~い」

エミリーが木に付いている土を、水魔法で洗い流していく。1本、2本と手際よく木が綺麗になっていく。

「じゃあ、最後は私ね。みんなちょっと離れてて」

エミリーが次の木に移ったところで、私は洗われた木に風の魔法を放つ。鋭利な風が木の枝を切り落としていく。少しは使うこともあるだろうから持つのに不要な分だけにする。
そうやってすべての枝を幾分か落としたらいよいよ今日のメインイベントだ。

「これで、準備の方は終わったわね。それじゃあ打ち合わせ通りお願い」

そういうと倒れた木の真ん中ぐらいを持ち上げて、まずはキルドが肩に担ぐ。

「うわ、重っ!早くしてティア」

「はいはい」

私はキルドが担いでいる木に風の魔法をかける。以前の帰り道にバッグに対してかけて、重量を軽くしていた魔法の応用だ。

「どう、これぐらいなら持てそう?」

「う~ん、なんとか行けるかな?」

「じゃあ、第1号お願いね」

「はいよ」

キルドが担いだ木を村まで運んでいく。丸太1本を一人で担ぐ姿は見ている分にはとても痛々しい。

「じゃあ、次は俺か」

「そうね、カークスも頑張ってね」

そして、順番にカークス、フォルトと魔法をかけて次々に運んでいく。

「ねえ、ティア。わたしもやらなくちゃだめ?」

「だ~め。私たちだけ2人で1本なんだから頑張りなさい。それに、残していっても無駄になるでしょ」

「う~、分かった」

渋々ながらも納得したエミリーは私と一緒に中央からやや離れたところに肩を置く。私が後ろでエミリーが前だ。

「それじゃあ行くわよ。それっ!」

私は再度魔法を使って木を持ち上げる。それを確認しながらエミリーも前の方を持ち上げる。

「うわ~、ちょっと重いけど本当に木を持ってるよ。なんだか力持ちになったみたい」

「ふふっ、そうね。じゃあ、みんなに置いていかれないように行きましょう」

実際は置いていかれるというよりも、万が一途中で魔法が切れた時にけがをしないようになのだが。いくら力がないといっても、魔法を付与している以上そこまで重いわけではない。さらにみんなと違って、重心も分散させているのでかなり条件としては有利だ。

「あっ、フォルトがちょっと見えてきたね」

数分進むと、ようやくフォルトの背中が見えてきた。そこまで離れていないと思っていたが、少しでも早く運びたいという気持ちからかなかなか差が縮まらなかったのだ。

「やっほ~フォルト」

「エミリーとティアか。割と速いペースだと思っていたが、もう追いつかれるとはな」

「焦ったわよ。そんなに遅れて出発したわけでもないのに、なかなか縮まらないんだもの」

「すまないな。これでもなかなか重くて、できるだけ早く運びたいんだ」

「気持ちわかるよ~。わたしたちは2人だけどそれでも結構重たいもんね」

「そうね。もう少し強めにかけられるけどどうする?」

「申し訳ないが頼む。カークスとキルドにもかけてやってくれ」

「追いつけたらそうするわ」

そう言いながら私はフォルトの木に掛けている魔法の効果を強める。同様の魔法を追いついたカークスとキルドにも掛けてあげた。

「助かった~。いや~、ティアが女神に見えるよ」

「確かにこれは助かるな。上りの角度が結構急だから、思っていた以上に疲れる」

「分かっちゃいたけど、ほんとに上りだけだからね。少しぐらい平地があってもいいんだけどね。」

「渓谷の山側はどうしてもこうなるわね。でも、もう少しで村に着くから」

そう言いながら私たちは村へと進んでいく。それから10分ほどしてようやく村の入り口に到着した。

「とうちゃ~く」

「こら、エミリー。まだ、入り口に着いただけでしょ。門番の人にまで迷惑かけないの」

「は~い。ごめんなさ~い」

「いえ、いいんですよ。そういえばこの前のお土産ありがとうございます。わざわざ届けてもらって」

「こちらこそ。村に出入りするときいつも立たれているのに今まで何もせずで」

「それがですね。ティアさんたちに土産をもらったと言ったら、次の日からみんなもちらほら届けてくれるようになりまして。結構、助かってます」

「それならよかったです。なかなか持ち場も離れられないでしょうし、話し相手もできたんじゃないです?」

「そうなんですよ。なんだかんだで村にいるけど、子供たちとかともほとんどしゃべることもなかったので」

「また、今度持ってきますね。じゃあ」

門番さんと別れて、私たちは小屋を目指して歩き出す。見た目にはかなり豪快な絵になっているので、なるべくみんなには見つからないように通り過ぎたい。ただでさえ変に担がれているのに、これ以上噂が増えるのはよろしくない。

「あ~、ティアねえちゃんだ。なにしてるの?」

「ちょっと小屋の修理をね」

「へ~。おねえちゃんたちって力持ちなんだね!」

「ち、違うの。これは魔法を使ってるからよ。こんな重たいもの普通は持ち上げられないわ」

「…ほんとかな。まあいいや、ばいばい!」

「みんなには言わないでね…って言っちゃわね。大丈夫かしら」

変な風に話を広められないかとても心配だ。まあ、今は心配してもどうしようもないので小屋の方へと向かう。

「ふい~。ようやく終わった~」

「お疲れ様エミリー」

「ティアもお疲れ~」

私たちが運び終えて、その場にへたっているとカークスやフォルトが次々とやってくる。

「あら、キルドは?」

「あいつは最初に運び出したからな。重たいのを一番長い間持ってたから、もう少しかかりそうだ」

「そういえば出発したの一番最初だったわね」

「それも、早く終わらせたいと最初に急いで運んだそうだ」

「それはご愁傷様。もっと早くに追いついていればよかったわね」

「ある意味自業自得だ。しかし、魔法を掛け直してくれてくれて助かったよ。ありがとうティア」

「私のせいでもあるからね。手伝ってもらえてこちらこそよ」

「とりあえず、作業の前に休まないとな」

「そうね。そのまま座っていて。キッチンから飲み物取ってくるわ」

私は小屋に入って飲み物を取ってくる。すると奥の方からキルドの姿が見えた。

「キルド。早く来なさい。飲み物が待ってるわよ!」

「は~。分かったよ~!」

投げやりながらも返事を返して、一歩一歩進んでくる。そしてようやくキルドも木を運び終えた。

「あ~、つっかれた~。ティア飲み物頂戴」

「はい、どうぞ」

あまり冷えたものも体に悪いけれど、すっきりしたいだろうから冷やしておいたものを渡す。

「ん~、冷えてておいしい!ありがとティア」

「こっちこそごめんなさい。あんなに疲れるとは思わなくて」

結構魔法を使えば行けるんじゃないかと、みんなで言い合ったけどそこは木自体の重さが想定以上だったと言わざるを得ない。

「まあ、持てないぐらいじゃなくてよかったよ。すぐに作業始めるの?」

「流石に無理でしょ?少し休憩してからね」

「じゃあ遠慮なく」

キルドは言うが早いがすぐに横になって休憩に入る。この切り替えの早さは見習いたいものだ。私もみんなのグラスを片付けてから休憩する。20分ほど休憩したところで作業を再開する。

「じゃあ、とりあえず枝とか全部落としちゃうわね」

まず、木の先端を落として左右にいすを並べて、その上に木を置く。そこへ風の魔法で枝を残らず落としていく。1本終わるごとに次の木を用意しては同様の作業を繰り返す。落とした枝はキルドがまとめてくれ、木の方はフォルトが皮をはがす作業を行っている。カークスとエミリーはさらにその木をどのぐらいの厚さ・長さに切るか線を引いていく。

「こっちはいったん終わったわ。キルド、枝を運ぶの手伝うわね」

「ありがとうティア。そこの分をお願い」

先日完成したばかりの物置に枝を立てかけて乾燥させる。さすがに魔法ばかりを使っていられないので、ここは自然乾燥だ。それが終わると、2人でフォルトの皮をはがす作業を手伝う。はがすことはコツがいるので主にフォルトが担当しているが、はがし残しやはがし終えた皮を集めるのを2人で手分けする。

「ここも終わりだな。キルド、ティア手伝いありがとう」

「どういたしまして」

「カークスたちはどんな感じかしら?」

時たまうんうんと唸っていた、カークスとエミリーのチームの作業を確認する。今は2本目の木に線を引く途中のようだ。

「順調、なのかな」

「まあ、線を見るところ大きく外れていないようだし、こっちは残りの分をしてしまおう」

フォルトの言葉に従って、私たち3人も木に線を引く作業に移る。木が丸い為、なかなか思うように線を引くのも難しいなと思っていたが、3人で協力し合ってなんとか終了した。

「できた~!」

終わったと思って、エミリーたちの方を見るとちょうど向こうも終わったようで、エミリーが歓声を上げている。

「どれどれ~」

キルドが線を綺麗に引けているか確認しに行く。くるくる木を回しながら見ていたが、すぐにオーケーのサインが出る。

「なら、これで後は木を切る作業だけね」

「でも、どうするの?斧とかないよ」

「風の魔法使うしかないわね。そんなに時間はかからないと思うから今のうちにカリンを呼んできてくれる?」

「いいけど、ティア大丈夫?朝からずっと魔法使いっぱなしだけど」

「このくらい大丈夫よ。それに風魔法は私の得意分野なんだし、斧だってないでしょ?」

「…それならカリンたちに手伝ってもらったらどうだ。いい練習にもなるだろう?」

「そんな。迷惑よ」

「だが、エミリーの言う通り、朝から魔法を使い詰めだろう。少しは休むことも大事だぞ」

みんなから視線で無理するなといわれる。ここまで心配されたら仕方ないか。カリンたちもいい練習になると思おう。

「分かったわよ。じゃあ、カリンのところに行ってくるわ」

私はエミリーと一緒にカリンのところへと向かっていった。
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