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本編
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バサッバサッ
空を飛びながら村へと向かう途中でカリンが話しかけてくる。
「みんなは魔法で飛んでるみたいだけど、どんな感じなの?」
「そうね。羽ばたいているというより泳いでる感じに近いかな?」
「そうだな。浮くことが先でその後に行きたい方向へ進む。自由にはばたくという感じではないな」
「残念だなぁ。せっかくこの大空を翔る感じが共有できると思ったのに…」
「まあ、飛べるというだけでもなかなか体験できないしね。王都でも飛行体験の店は許可もいるし大変だから」
「そんなのあるなんて気が付かなかったよ~」
「風の魔法使い自体は数がいないわけじゃないし、そこまでみんな興味がないのかもね」
「というより金額だな。安全面もあるし、国からの許可及び税金でそれなりにする。確か…うちの宿なら5泊はできるだろう」
「…それは何というか、夢も希望もないわね」
みんなが空を飛ぶことについて話をしている。彼女たちの街では飛ぶだけでも大変みたいだ。
「みんなそろそろ村につくよ。目立つといけないから下の方を飛んでね。」
「ならすまないが、我々はそこの空き地からは徒歩で移動しよう」
「わかった。エミリーはどうするの?」
「自分じゃ飛べないし面白いからそのまま飛んでいく~」
「じゃあ、私たちはここで降りて向かいましょう」
そういうとティアたちは次々と空き地に降りて歩き出した。
「フォルトはなんだかうれしそうだね」
「ああ、空を飛んでみてわかったが、やはり慣れないなと。地に足がつかないのは私には向いてないらしい」
「フォルトにも苦手なものがあったのね」
みんな楽しそうに歩いてついてくる。やっぱりなんだかんだでさっきの戦いの後でほっとしているみたいだ。
それから少しして村の入り口が見えてきた。
「ここがわたしたちハーピーが住む村だよ」
「ここがそうなのね。見た感じ大きな建物とかは少なそうね」
「やっぱり建物が大きいと外から目立つし、手もこんなだからあんまり複雑なものを作るのは難しいの」
「そうなんだね。ちなみにこの村は名前とかはないの?」
「名まえ?特にないかなぁ。ハーピーの他の村って知らないし、必要ないのかも」
「人間みたいに遠方と交流したりしなければ、不便もないという事なのか」
入り口に着いたので改めてみんながそろうのを待つ。エミリーはその間に降ろしてあげた。
「カリンただいま帰りました~」
いつものように村の入り口を乗り越えて入っていく。それに続いてみんなもついてくる。
「それでこれからどこへ行くの?」
「う~ん。一旦は長老様のところかな。正面の奥の林の中だよ」
「あと、結構見られてるんだけど大丈夫なのか?」
「あっ、そうだね。」
周りを見渡してみるとみんながこっちを向いていた。かなり警戒しているようにも見える。わたしも最初はみんなのこともよくわからなかったし、助けてもらわなかったら村にも連れてこなかったしなあ。とりあえず、面倒なことになっても厄介だし…。
「みんなただいま~。この人たちはカリンを飛竜から守ってくれた勇者様なんだ。これから長老様にあってくるから心配しないでね~」
「お、おいカリン。それは本当か?飛竜に出会ったって?」
「え、あ~…あはは。長老に報告に行ってきます!」
ビシッと言ってそそくさと退散する。どうせ長老にも説教されるんだろうしこんなところで足止めはいやだ。
「ほらみんなついてきて~」
「あ、ああ」
「勇者って…」
「説明は長老様からしてもらうから早く早く」
奥まったところを抜け、林から少し進み長老の家に着いた。コンコンと壁を叩く。人間だったらドアなんだろうけどノブを回せないから、こういう形だ。
「誰かな?」
「カリンです。お話したいことがあってきました」
「先日言っていた森行きなら許可は出せんぞ。最近は飛竜どもがウロウロしておるからの、せめて大人数人がかりで行かないとのう」
「その件ですけど…」
「カリン。先に用件を離してみたら?」
「おや、他に誰かいるのか。あまり聞き覚えのない声じゃが」
「はい、実は今日勝手に森へ行ってしまったんです。そこで飛竜からここにいる方に助けてもらいました」
「なんと無茶を…。そういうことなら話を聞こう。入ってもらいなさい」
長老に促され、私・ティア・カークス・エミリー・フォルト・キルドの順番に入っていく。キルドは周りを気にしながら入っているようだ。
「ほう、人間ですか。久方ぶりに見ましたね。それでこの人たちとは?」
「はい。森に行く途中、飛竜の子供2体に追いかけられていたのですが、このティアさんとその仲間の皆さんに助けてもらったのです」
「飛竜2体に…。してその飛竜は?」
「この方たちに倒してもらいました」
「なんと!それはカリンを救っていただきありがとうございます」
「いえ、私たちも偶々通りかかっただけですので」
「わたしの悲鳴を聞いて、ティアが慌てて駆けつけてくれたんだよ」
「でも、それはどこかの人間のパーティーと思ったから…」
「確かにそうでしょうな。しかし、結果を見れば助けていただいたことには変わりありません。話は聞いていると思いますが、今この村も飛竜どもによって、多大な損害を受けております。大したことはできませんがお礼をさせていただきたい」
「その件でしたら、1つお願いがあります。ここに来るまでに倒した飛竜のうろこや肉を置いてきているのです。
この状況下でご迷惑をおかけすると思いますが、そちらをこの村で一時的に預かってもらえないでしょうか?」
「俺たち…私たちはこの後も飛竜の動向の調査を続けるので、拠点が欲しいのです」
「そういうことでしたら、こちらも歓迎いたします。わが村では残念ながら飛竜には対抗できませんので、
子供といえど飛竜を倒したあなた方を歓迎します。」
「ありがとうございます。」
「それと、無理に口調は改めなくても結構です。あなた方は恩人ですから。早速そちらの件は手配しましょう」
長老が翼を上げると奥にいたハーピーの1人が近づいてくる。
「では、私が荷物の場所を窺います」
「じゃあ、僕とフォルトで対応しよう」
「でも、場所は?わたしも加わろうか?」
「カリンちゃんは長老様とお話があるでしょ。飛びながらここまでの大体の地理は覚えたから。置いた場所はフォルトのが詳しいから2人で話はするよ」
「相変わらずキルドのマッピングはすごいね」
「ああ見えて抜け目ないわよね」
エミリーとティアがしきりに感心している。確かに初めての場所で飛びながら覚えられるなんてすごいなあ。わたしは飛び回ってようやく覚えたのに。
「では、こちらはこちらで話を続けますか」
「続けてくれ」
「先ほど、飛竜の動向を調査していると言われていましたが、人間側で何か問題でもあるのですかな?」
「こちら側でも飛竜の異常な発見報告がされている状況だ。このままでは王都の方へやってこないとも限らない」
「そこで、幼体の飛竜の討伐とその飛竜の生息数やうろこや肉を持ち帰り、原因を探ろうとしているんです」
「ふむ、人間の側でも問題になっているのですな。こちらではさらにひどくなっております」
長老が一呼吸おいて再度話しかける。
「飛竜どもは元々この渓谷には数頭ほどいたのですが、昨年から急に増えたのです」
「急に?子供でも大量に生まれたとかですか?」
「いや、言葉通り急に増えました。ここの飛竜は数も少ない為か比較的おとなしく、それほど以前は被害も出なかったのです。それがあるときどこからか成体の飛竜とその子供がやってきて、そこから今のような状態で…」
「お空を飛んでると襲われるし、獲物だって減ってきてて大変なの」
「村では何か対応を取ったのか?」
「当初は数頭増えただけと思っておったのです。その為、村の中でも戦いに慣れたものを数名選び警戒に当たっていたのですが…」
「そのうちの何人かは飛竜に襲われて死んじゃったの…」
わたしはその時のことを思い出してうつむいて言った。長老もあの時の事を思い出しているのかつらそうな顔をしてる。
「そうだったの。ごめんなさいカリン。つらいことを聞いてしまったわね」
「いいの。わたしもそうなるところだったのをティアに助けてもらったし」
「以来、村の方針として飛竜たちが比較的活動しない時間帯を選んで生活しております。食事も木の実などで済ましております。」
「それで、この村は安全なのか?」
「しばらくは大丈夫でしょう。まだ、林の実りがありますし。ただ…」
「ただ?」
「この村の場所が見つからないという事が前提なのです」
「それは大問題だな。対策は何かないのか?」
「戦ったあなた方ならお分かりかと思いますが、あ奴らには我々の攻撃は効きません。全てあのうろこに弾かれてしまうのです。せめてあのうろこを破るような方法があればよいのですが…」
「長老。それならうろこの隙間を狙っていけばできるって!」
「うろこの隙間を?しかし、それだけの技量を持ったものは…」
「確かにそうだな。あれだけの巨体でありながら素早く飛び回る中、うろこの隙間を狙って攻撃するのは危険すぎる」
「じゃあ、どうやったら…」
「そこは危険でもやるしかないだろう。俺たちも今回は出会えば倒すつもりではいるが、成体と好き好んで戦う訳じゃない。依頼の内容はあと1体の幼体飛竜の討伐で一応完了だ。それに、終わればここを去るわけだ。その後もこの村で住むなら避けては通れないだろう」
「そんな…」
「ちょっとカークス、そこまで急に言わなくても…」
「だが、いずれは対応しなければならない問題だ。ここに住む以上あの飛竜が居続けるわけだからな」
「確かにそうですな。だが村を捨ててどこへ行くというのか。我らはずっとここで暮らしてきました。この期に及んでここを捨てるなど…」
「すてる…。ひょっとして」
「どうしたのエミリー?」
「飛竜たちは元いたところを捨ててきたんじゃないかな~」
「あの飛竜がか?そんなことがあり得るのか」
「ふむ、確かにこれまでこの地に飛竜が外からやってくることはありませんでしたし、可能性はありますな」
「問題はそれが正しいとして何が原因かだな。単純に食料だけなら満足して出ていくかもしれん」
「そうじゃなかったら困るわね。現状移動してきた理由もわからないんじゃ」
「お前が不安にさせてどうする」
「あっ、ごめんなさい」
「ううん、飛竜たちは出ていくかわかんないんだし、わたしは戦うよ!」
「また無茶を。今回も勝手に飛び出した挙句、助けてもらったのだろう?」
「うっ、それは…でもこのままじゃみんなやられちゃうよ」
「そうね。…何か手段があればいいのだけど」
「いっそのこと剣や槍でも持って戦うか?その手でも掴むことはできるだろう」
「またそんな無茶言って」
「それ、それだよ!」
そうだ!掴むことなら私にもできるかもしれない。そう思っていると後ろから声をかけられる。
「盛り上がっているとこすまないね。飛竜の場所を案内してくるよ」
「気を付けてね。飛竜に遭ったらすぐ逃げるのよ」
「分かってるよ」
「じゃあ、風魔法掛けるわね。風よ、かの者たちに翼の加護を」
「ありがとう。じゃあ皆行ってくるね」
「いってらっしゃい。キルド、フォルト」
ティアたちが2人を送り出すとキニ―さんも一緒についていった。キニ―さんは長老に仕えている人だ。戦いとかもできるって聞いているけど、わたしは見たことないのでよくわからない。
「じゃあ、話は後でまたしましょう。今日はカリンも疲れたでしょう?」
「うん、本当にありがとねティア!」
「で、俺たちはどこで寝泊まりすればいいんだ。見た感じだと家のようなものはあるようだが…」
「それならばこの家の横にある小屋がよいでしょう、多少狭いかもしれませんが以前に住んでいた人間の家です」
「人がここに住んでいたの?」
「ええ、10年程前ですが1人住まれていたのです。」
「それで、みんな人の言葉がわかるのね。」
「その時、小さかった子とかが殆どだけどね。だから、大人たちはあんまりわからないよ」
「じゃあ、あなた達の中ではどうやって話してるの?」
「んと、それまでは話すってより鳴き声?そんな感じで伝え合ってたの。でも、長老たちが便利だからって私たちぐらいの子はみんなしゃべれるよ」
「その人は何でここに来たんだろうね~」
「詩を書くのに来たって言ってた。詩人?っていう人なんだって」
「ずいぶん変わった詩人だな。当時は飛竜が少なかったとはいえ危険だろうに」
「でもすっごく強くて、ここら辺を荒らしまわってたオークたちを退治したんだって」
「まあ、旅をするにも多少の腕は必要だけどすごいわね」
「しかし、住処が無いとの事でしてな。当時オークどもはこの村付近にも現れておりましたので、助かりまして村に案内したのです」
「それで、警戒はされてたけど村に難なく入れたし、カリンも人に警戒しなかったのね」
「全くしないわけじゃないけどね。たまに冒険者たちと戦うこともあるし…」
「ここまで来るとは何の目的だろうな。なにかあるわけでもあるまいに」
そういうと難しい顔をした長老がカークスに耳元でささやく。
「という事でしてな」
「噂は聞いたことがあったが本当だったのか」
「何の話~」
「いや、何でもない。その詩人は今はいないのか?」
「数か月ほどいたのですが、またふらっと出ていかれました。その時に本を置いていかれてそれで言葉を教えているのです」
「他に何かおいていったものとかはないの?」
「…ん~とね!笛!笛を置いていったよ」
「笛ね。懐かしいわね…」
「ティア、笛吹けるの?」
「ちょっとだけね。うちは雑貨店をしてるでしょう?そこの売り物に笛があったのよ。」
「売り物で練習してたの?」
「違うわ。母さんが「店の子供が楽しく笛を吹いてたら目に留まって口コミで広がるかもしれないでしょう」って」
「結構、現金な理由だね…」
「でも、笛を吹くこと自体は好きだったわよ?あんまり触らなくなったから自信はないけどね」
「ティア、じゃあカリンに聞かせて!もう一度聞いてみたかったの」
「分かったわ、でも音の出るものだしちゃんと長老様に許可を取るのよ」
言われたことをきっちり守らないとだめとくぎを刺されてしまった。長老に目を向けると―。
「この件が落ち着いたらよい。他のものの中にも聞きたいものがおるじゃろう」
「やった。じゃあティア約束ね!」
「ええ、それまでに指の動きだけでも思い出しておくわ」
一旦、荷物を詩人さんの使っていた小屋に置くという事で3人は家を出ていった。
「カリンよ」
「はい」
長老から話しかけられた。なんだろう?
「今回のことは十分反省しなさい。勝手に出て行って亡くなったらお前の両親にも申し訳が立たん」
「気を付けます」
「だが、あの者たちを連れてきてくれてありがとう。この村にも希望が見いだせそうじゃ」
「はい!わたしもあの人たちに会えてよかったです。そしてやっぱりわたしはこの村を捨てられません」
「そうか…。言っても聞かぬのなら仕方ない。だが、気を付けるのだぞ」
「ありがとう、長老様」
わたしも長老様の家を出て行ってみんなを改めて迎える準備をする。村の人たちにはちゃんと説明しないといけないし。そしてお願いしてみよう。わたしがこの村を守れるように…。
空を飛びながら村へと向かう途中でカリンが話しかけてくる。
「みんなは魔法で飛んでるみたいだけど、どんな感じなの?」
「そうね。羽ばたいているというより泳いでる感じに近いかな?」
「そうだな。浮くことが先でその後に行きたい方向へ進む。自由にはばたくという感じではないな」
「残念だなぁ。せっかくこの大空を翔る感じが共有できると思ったのに…」
「まあ、飛べるというだけでもなかなか体験できないしね。王都でも飛行体験の店は許可もいるし大変だから」
「そんなのあるなんて気が付かなかったよ~」
「風の魔法使い自体は数がいないわけじゃないし、そこまでみんな興味がないのかもね」
「というより金額だな。安全面もあるし、国からの許可及び税金でそれなりにする。確か…うちの宿なら5泊はできるだろう」
「…それは何というか、夢も希望もないわね」
みんなが空を飛ぶことについて話をしている。彼女たちの街では飛ぶだけでも大変みたいだ。
「みんなそろそろ村につくよ。目立つといけないから下の方を飛んでね。」
「ならすまないが、我々はそこの空き地からは徒歩で移動しよう」
「わかった。エミリーはどうするの?」
「自分じゃ飛べないし面白いからそのまま飛んでいく~」
「じゃあ、私たちはここで降りて向かいましょう」
そういうとティアたちは次々と空き地に降りて歩き出した。
「フォルトはなんだかうれしそうだね」
「ああ、空を飛んでみてわかったが、やはり慣れないなと。地に足がつかないのは私には向いてないらしい」
「フォルトにも苦手なものがあったのね」
みんな楽しそうに歩いてついてくる。やっぱりなんだかんだでさっきの戦いの後でほっとしているみたいだ。
それから少しして村の入り口が見えてきた。
「ここがわたしたちハーピーが住む村だよ」
「ここがそうなのね。見た感じ大きな建物とかは少なそうね」
「やっぱり建物が大きいと外から目立つし、手もこんなだからあんまり複雑なものを作るのは難しいの」
「そうなんだね。ちなみにこの村は名前とかはないの?」
「名まえ?特にないかなぁ。ハーピーの他の村って知らないし、必要ないのかも」
「人間みたいに遠方と交流したりしなければ、不便もないという事なのか」
入り口に着いたので改めてみんながそろうのを待つ。エミリーはその間に降ろしてあげた。
「カリンただいま帰りました~」
いつものように村の入り口を乗り越えて入っていく。それに続いてみんなもついてくる。
「それでこれからどこへ行くの?」
「う~ん。一旦は長老様のところかな。正面の奥の林の中だよ」
「あと、結構見られてるんだけど大丈夫なのか?」
「あっ、そうだね。」
周りを見渡してみるとみんながこっちを向いていた。かなり警戒しているようにも見える。わたしも最初はみんなのこともよくわからなかったし、助けてもらわなかったら村にも連れてこなかったしなあ。とりあえず、面倒なことになっても厄介だし…。
「みんなただいま~。この人たちはカリンを飛竜から守ってくれた勇者様なんだ。これから長老様にあってくるから心配しないでね~」
「お、おいカリン。それは本当か?飛竜に出会ったって?」
「え、あ~…あはは。長老に報告に行ってきます!」
ビシッと言ってそそくさと退散する。どうせ長老にも説教されるんだろうしこんなところで足止めはいやだ。
「ほらみんなついてきて~」
「あ、ああ」
「勇者って…」
「説明は長老様からしてもらうから早く早く」
奥まったところを抜け、林から少し進み長老の家に着いた。コンコンと壁を叩く。人間だったらドアなんだろうけどノブを回せないから、こういう形だ。
「誰かな?」
「カリンです。お話したいことがあってきました」
「先日言っていた森行きなら許可は出せんぞ。最近は飛竜どもがウロウロしておるからの、せめて大人数人がかりで行かないとのう」
「その件ですけど…」
「カリン。先に用件を離してみたら?」
「おや、他に誰かいるのか。あまり聞き覚えのない声じゃが」
「はい、実は今日勝手に森へ行ってしまったんです。そこで飛竜からここにいる方に助けてもらいました」
「なんと無茶を…。そういうことなら話を聞こう。入ってもらいなさい」
長老に促され、私・ティア・カークス・エミリー・フォルト・キルドの順番に入っていく。キルドは周りを気にしながら入っているようだ。
「ほう、人間ですか。久方ぶりに見ましたね。それでこの人たちとは?」
「はい。森に行く途中、飛竜の子供2体に追いかけられていたのですが、このティアさんとその仲間の皆さんに助けてもらったのです」
「飛竜2体に…。してその飛竜は?」
「この方たちに倒してもらいました」
「なんと!それはカリンを救っていただきありがとうございます」
「いえ、私たちも偶々通りかかっただけですので」
「わたしの悲鳴を聞いて、ティアが慌てて駆けつけてくれたんだよ」
「でも、それはどこかの人間のパーティーと思ったから…」
「確かにそうでしょうな。しかし、結果を見れば助けていただいたことには変わりありません。話は聞いていると思いますが、今この村も飛竜どもによって、多大な損害を受けております。大したことはできませんがお礼をさせていただきたい」
「その件でしたら、1つお願いがあります。ここに来るまでに倒した飛竜のうろこや肉を置いてきているのです。
この状況下でご迷惑をおかけすると思いますが、そちらをこの村で一時的に預かってもらえないでしょうか?」
「俺たち…私たちはこの後も飛竜の動向の調査を続けるので、拠点が欲しいのです」
「そういうことでしたら、こちらも歓迎いたします。わが村では残念ながら飛竜には対抗できませんので、
子供といえど飛竜を倒したあなた方を歓迎します。」
「ありがとうございます。」
「それと、無理に口調は改めなくても結構です。あなた方は恩人ですから。早速そちらの件は手配しましょう」
長老が翼を上げると奥にいたハーピーの1人が近づいてくる。
「では、私が荷物の場所を窺います」
「じゃあ、僕とフォルトで対応しよう」
「でも、場所は?わたしも加わろうか?」
「カリンちゃんは長老様とお話があるでしょ。飛びながらここまでの大体の地理は覚えたから。置いた場所はフォルトのが詳しいから2人で話はするよ」
「相変わらずキルドのマッピングはすごいね」
「ああ見えて抜け目ないわよね」
エミリーとティアがしきりに感心している。確かに初めての場所で飛びながら覚えられるなんてすごいなあ。わたしは飛び回ってようやく覚えたのに。
「では、こちらはこちらで話を続けますか」
「続けてくれ」
「先ほど、飛竜の動向を調査していると言われていましたが、人間側で何か問題でもあるのですかな?」
「こちら側でも飛竜の異常な発見報告がされている状況だ。このままでは王都の方へやってこないとも限らない」
「そこで、幼体の飛竜の討伐とその飛竜の生息数やうろこや肉を持ち帰り、原因を探ろうとしているんです」
「ふむ、人間の側でも問題になっているのですな。こちらではさらにひどくなっております」
長老が一呼吸おいて再度話しかける。
「飛竜どもは元々この渓谷には数頭ほどいたのですが、昨年から急に増えたのです」
「急に?子供でも大量に生まれたとかですか?」
「いや、言葉通り急に増えました。ここの飛竜は数も少ない為か比較的おとなしく、それほど以前は被害も出なかったのです。それがあるときどこからか成体の飛竜とその子供がやってきて、そこから今のような状態で…」
「お空を飛んでると襲われるし、獲物だって減ってきてて大変なの」
「村では何か対応を取ったのか?」
「当初は数頭増えただけと思っておったのです。その為、村の中でも戦いに慣れたものを数名選び警戒に当たっていたのですが…」
「そのうちの何人かは飛竜に襲われて死んじゃったの…」
わたしはその時のことを思い出してうつむいて言った。長老もあの時の事を思い出しているのかつらそうな顔をしてる。
「そうだったの。ごめんなさいカリン。つらいことを聞いてしまったわね」
「いいの。わたしもそうなるところだったのをティアに助けてもらったし」
「以来、村の方針として飛竜たちが比較的活動しない時間帯を選んで生活しております。食事も木の実などで済ましております。」
「それで、この村は安全なのか?」
「しばらくは大丈夫でしょう。まだ、林の実りがありますし。ただ…」
「ただ?」
「この村の場所が見つからないという事が前提なのです」
「それは大問題だな。対策は何かないのか?」
「戦ったあなた方ならお分かりかと思いますが、あ奴らには我々の攻撃は効きません。全てあのうろこに弾かれてしまうのです。せめてあのうろこを破るような方法があればよいのですが…」
「長老。それならうろこの隙間を狙っていけばできるって!」
「うろこの隙間を?しかし、それだけの技量を持ったものは…」
「確かにそうだな。あれだけの巨体でありながら素早く飛び回る中、うろこの隙間を狙って攻撃するのは危険すぎる」
「じゃあ、どうやったら…」
「そこは危険でもやるしかないだろう。俺たちも今回は出会えば倒すつもりではいるが、成体と好き好んで戦う訳じゃない。依頼の内容はあと1体の幼体飛竜の討伐で一応完了だ。それに、終わればここを去るわけだ。その後もこの村で住むなら避けては通れないだろう」
「そんな…」
「ちょっとカークス、そこまで急に言わなくても…」
「だが、いずれは対応しなければならない問題だ。ここに住む以上あの飛竜が居続けるわけだからな」
「確かにそうですな。だが村を捨ててどこへ行くというのか。我らはずっとここで暮らしてきました。この期に及んでここを捨てるなど…」
「すてる…。ひょっとして」
「どうしたのエミリー?」
「飛竜たちは元いたところを捨ててきたんじゃないかな~」
「あの飛竜がか?そんなことがあり得るのか」
「ふむ、確かにこれまでこの地に飛竜が外からやってくることはありませんでしたし、可能性はありますな」
「問題はそれが正しいとして何が原因かだな。単純に食料だけなら満足して出ていくかもしれん」
「そうじゃなかったら困るわね。現状移動してきた理由もわからないんじゃ」
「お前が不安にさせてどうする」
「あっ、ごめんなさい」
「ううん、飛竜たちは出ていくかわかんないんだし、わたしは戦うよ!」
「また無茶を。今回も勝手に飛び出した挙句、助けてもらったのだろう?」
「うっ、それは…でもこのままじゃみんなやられちゃうよ」
「そうね。…何か手段があればいいのだけど」
「いっそのこと剣や槍でも持って戦うか?その手でも掴むことはできるだろう」
「またそんな無茶言って」
「それ、それだよ!」
そうだ!掴むことなら私にもできるかもしれない。そう思っていると後ろから声をかけられる。
「盛り上がっているとこすまないね。飛竜の場所を案内してくるよ」
「気を付けてね。飛竜に遭ったらすぐ逃げるのよ」
「分かってるよ」
「じゃあ、風魔法掛けるわね。風よ、かの者たちに翼の加護を」
「ありがとう。じゃあ皆行ってくるね」
「いってらっしゃい。キルド、フォルト」
ティアたちが2人を送り出すとキニ―さんも一緒についていった。キニ―さんは長老に仕えている人だ。戦いとかもできるって聞いているけど、わたしは見たことないのでよくわからない。
「じゃあ、話は後でまたしましょう。今日はカリンも疲れたでしょう?」
「うん、本当にありがとねティア!」
「で、俺たちはどこで寝泊まりすればいいんだ。見た感じだと家のようなものはあるようだが…」
「それならばこの家の横にある小屋がよいでしょう、多少狭いかもしれませんが以前に住んでいた人間の家です」
「人がここに住んでいたの?」
「ええ、10年程前ですが1人住まれていたのです。」
「それで、みんな人の言葉がわかるのね。」
「その時、小さかった子とかが殆どだけどね。だから、大人たちはあんまりわからないよ」
「じゃあ、あなた達の中ではどうやって話してるの?」
「んと、それまでは話すってより鳴き声?そんな感じで伝え合ってたの。でも、長老たちが便利だからって私たちぐらいの子はみんなしゃべれるよ」
「その人は何でここに来たんだろうね~」
「詩を書くのに来たって言ってた。詩人?っていう人なんだって」
「ずいぶん変わった詩人だな。当時は飛竜が少なかったとはいえ危険だろうに」
「でもすっごく強くて、ここら辺を荒らしまわってたオークたちを退治したんだって」
「まあ、旅をするにも多少の腕は必要だけどすごいわね」
「しかし、住処が無いとの事でしてな。当時オークどもはこの村付近にも現れておりましたので、助かりまして村に案内したのです」
「それで、警戒はされてたけど村に難なく入れたし、カリンも人に警戒しなかったのね」
「全くしないわけじゃないけどね。たまに冒険者たちと戦うこともあるし…」
「ここまで来るとは何の目的だろうな。なにかあるわけでもあるまいに」
そういうと難しい顔をした長老がカークスに耳元でささやく。
「という事でしてな」
「噂は聞いたことがあったが本当だったのか」
「何の話~」
「いや、何でもない。その詩人は今はいないのか?」
「数か月ほどいたのですが、またふらっと出ていかれました。その時に本を置いていかれてそれで言葉を教えているのです」
「他に何かおいていったものとかはないの?」
「…ん~とね!笛!笛を置いていったよ」
「笛ね。懐かしいわね…」
「ティア、笛吹けるの?」
「ちょっとだけね。うちは雑貨店をしてるでしょう?そこの売り物に笛があったのよ。」
「売り物で練習してたの?」
「違うわ。母さんが「店の子供が楽しく笛を吹いてたら目に留まって口コミで広がるかもしれないでしょう」って」
「結構、現金な理由だね…」
「でも、笛を吹くこと自体は好きだったわよ?あんまり触らなくなったから自信はないけどね」
「ティア、じゃあカリンに聞かせて!もう一度聞いてみたかったの」
「分かったわ、でも音の出るものだしちゃんと長老様に許可を取るのよ」
言われたことをきっちり守らないとだめとくぎを刺されてしまった。長老に目を向けると―。
「この件が落ち着いたらよい。他のものの中にも聞きたいものがおるじゃろう」
「やった。じゃあティア約束ね!」
「ええ、それまでに指の動きだけでも思い出しておくわ」
一旦、荷物を詩人さんの使っていた小屋に置くという事で3人は家を出ていった。
「カリンよ」
「はい」
長老から話しかけられた。なんだろう?
「今回のことは十分反省しなさい。勝手に出て行って亡くなったらお前の両親にも申し訳が立たん」
「気を付けます」
「だが、あの者たちを連れてきてくれてありがとう。この村にも希望が見いだせそうじゃ」
「はい!わたしもあの人たちに会えてよかったです。そしてやっぱりわたしはこの村を捨てられません」
「そうか…。言っても聞かぬのなら仕方ない。だが、気を付けるのだぞ」
「ありがとう、長老様」
わたしも長老様の家を出て行ってみんなを改めて迎える準備をする。村の人たちにはちゃんと説明しないといけないし。そしてお願いしてみよう。わたしがこの村を守れるように…。
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弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
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王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。
アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。
※諸事情によりしばらく連載休止致します。
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