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第零章

壱話 どうしたものか

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文永十一年 ー筥崎宮ー

博多から少し離れた筥崎宮には馬や鎧武者でひしめき合っている。萌葱(緑色)や緋色などの色鮮やかで煌びやかな大鎧や兜を被った武士たちや腹当や腹巻している郎党が大勢待ち構えている。ここにいる武士の大半は総大将少弐景資しょうに かげすけの手勢である。まだ総大将は来ていないようだ。
そんな煌びやかな大勢に押し出されるように鳥居の隅に五人組がいた。腹当をしている郎党四人と兜を脱いで座りながらあくびをしている萌葱色の大鎧を着た武士だ。

この呑気にあくびをしている武士が「国崎 季長くにさき すえなが」である。
季長は羨ましそうに総大将の手勢を眺めていた。
総大将の武士も郎党も身なりが綺麗だなぁ
それに比べて我が手勢は・・・・
季長は自分の手勢に目を向ける。
季長の手勢は薙刀が二人、馬引きが一人で旗持ちが一人、身なりは薄汚れた袖衣を着て随分年月が経っているのか少しボロボロの腹当をしている。自身の鎧も年季の入って味のある大鎧と兜をしているが総大将の手勢五百余騎に比べればみすぼらしいものだ。
季長はため息をつく。
こちらを見ていたのを気づき旗持ちの郎党が駆け寄る。
「旦那!ため息ついてる暇があるんでしたら手柄を立てる算段立ててくだせぇ!手柄立てれなかったら、
安芸国(現在の広島)からここまで来た甲斐がないですぜ!」
鼻息を荒げながら言ってくる。
確かにそうだと思った。
安芸国にある季長の所領は父泰長やすながから自身に分け与えられたものでした。しかし、代々に渡って所領を分け与えていたため、小さい屋敷が建てれるのかというほど土地の広さでした。
これではやっていけぬ、どうしたものかと悩んでいる最中、「元」という国との戦である。この戦で手柄を挙げれば所領が増えると期待して父から費用を借りてまでして昔から付き合いがあった三郎を連れて筥崎宮までやって来たのでした。
「だけどよぉ三郎、俺の手勢を見ろよ。
俺を入れて五人だぞ?これでどう手柄をたてよと?」
季長何かを言おうとする三郎に続けて言う。
「あと、十人以上集めるといったのは誰だ、三郎だよなぁ?どうなってるんだ!」
溜まっていた不満をさぶろうにぶつける。
「あちこちの村に行って誘ったが自分たちにとって得がないと断られましたよ、それでも三人集められたんだから感謝してほしいものですね!」
今までの鬱憤をはらさんばかり三郎に季長は黙り込む。
すると向こうから歓声と雄叫びが挙がる。
どうやら総大将少弐景資が着いたようだ。

さぁて、どうしたものか。大きな手柄を挙げれるもの・・・・

うーむと悩んでいると季長の頭にある手柄を思いついた。
「よし!でいくぞ、三郎!」
ニヤリと三郎に笑う。
長年季長を見ている三郎はまたろくでもないことを思いついたのだろうと察し、かおを引き攣らせる。


                続く




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