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序章
10 しばしお別れ
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あたしが戻ったとき、先にこちらへ来ていたあのご主人は、ちょうどライターを回収されて記憶も消され、あっという間に帰還させられているところだった。
ちょっと扱いが雑すぎるんじゃないかしら? ご主人「え?」と「は?」しか喋ってなかったわよ。
それにしても残念だわ……。そんなにお話できなかったばかりか、お名前だって聞けてなかったのに。
けど、どこの町かは神様達に聞けばわかるはずよね。もし再びあの町に行くことがあったなら、その時また寄らせてもらいましょう。
あたしのことは覚えてないでしょうけど、あたしは忘れないわ。待っててねオジサマ!
「やぁお疲れ様。大成功だね」
「お疲れどころじゃないわよもう! 取り残されてびっくりしたじゃない!?」
「こっちも驚きだよ。まさかこんな転移方法があるなんてね」
ショタ神様はとっても嬉しそうにしてるけどあたしはそれどころじゃなかったわよ!
目の前から人がいなくなるなんて割と衝撃映像よ? 一瞬頭が回らなかったけど、あれはなかなかゾッとしたわ。
だって今の今まで目の前にいてお話して、しかも触れてさえいた相手が消えちゃうのよ!?
テレビや映画ならともかく、普通に生きてたらまず経験するはずのないことだもの。
ちょっと、いえかなり肝が冷えたわ。
「まぁ落ち着きなさいな。ほらまだお茶もあるみたいだから、一緒にいただきましょ?」
「……わかったわ」
何故かあたしと同じ髪型にチェンジしていた美の女神様に宥められて、あたし達はまたガゼボへと入った。
あら、サラマンダーちゃん寝ちゃってるわ。可愛いわねぇ。
「じゃあ改めて、使ってみてどんな感じだったかい?」
「ったく人の気も知らないでもう……」
「今後の為でもある。気付いたことがあるならば教えてくれぬか」
「ええそうね、多分だけど発動条件は蓋の音だけじゃなくて、フリントを回すことも必要みたいなの」
相変わらずの変り身で鍛冶神様へお答えしたら、ショタ神様は苦笑いしてるし美の女神様はゲラゲラ笑ってた。
ねぇちょっと。あんた美を司る女神様なんでしょう? いいのその顔。ひどいわよ?
「レイ、具体的にはどのように使用した?」
「ええっと。カウントダウンで一緒に蓋を鳴らしたじゃない? でもその時は何も起こらなかったのよ」
「ほう」
「その後あたしの手から離れちゃって、ご主人だけが持ってる状態でフリントを回したのよ。そしたら目の前から消えちゃって」
「なるほど……鍛冶の、ちょっとそれを見せてくれるかい」
「はい」
「ちょっ……!」
先ほどご主人が持っていたライターを受け取ると、ショタ神様は迷いなく蓋をピィンと鳴らし、フリントを回した。
一瞬さっきの光景が蘇ってビクッとしたけど、特に何も起きなくて力抜けちゃった。
まぁそりゃそうよね。ふたつ一緒に鳴らさないとダメなんだろうし、そもそもここに繋がってるんだもの。ここで操作したって何も起きようがないんだわ。
「ふぅん……これはなかなか面白いね」
「何か分かったの?」
「これは蓋を開くことで神力が解放され、神域、というよりは鍛冶のの近くへと繋がりができるようだ」
「俺に、ですか」
「そうだよ。元々が君の神力が込められた物だからね。さらに同時に使用することで共鳴し合って、より繋がりが密になる。そこへこのフリントとやらを回すと大元の君へと引き寄せられるのさ」
そんなトンでも現象アリなのぉ?
……まぁ、あるからあたしもここにいるんでしょうけど。
別の銀河からでさえ一瞬で来れちゃうなんてどんだけ神力って凄いの!?
唖然とするあたしをよそに、神様方はしげしげと興味深げにライターを矯めつ眇めつしている。
「ねーぇ、そもそもこれって何に使う物なの?」
「え、とね、これはライターっていって、手軽に火をつけられる物なのよ」
「ふぅん?」
「どういう仕組みなんだい?」
「蓋を開けると燃料が出てきて、この横の部分を回すと火花が散って火が点くの」
「あぁ、そうか……わかった。魔法の発動に似てるんだ」
「魔法!?」
なにを言い出すのかしらこのショタは。
地球に魔法なんかないって言っ……ショタ神様には言ってなかったかしらね?
「私たちが使う魔法言語を編むようなものではなくて、こちらの世界の住人が使う類いの魔法だけどね」
「あぁなるほどねぇ」
「それは興味深いですな」
いやいや待って。あんた達だけでわかり合ってないであたしにもちゃんと説明してくれないかしら!?
「セヘルシアと、あとひとつアトミスというんだけど、ここの人々が使う魔法は『魔素』を燃料に、『呪文』と『魔力』を使って発動させるんだ」
魔素、魔力、呪文……。いよいよもってお伽噺みたいな話になってきたわね。
それで、何がどう似てるのよ?
「そうだね、じゃあこのライターと同じく火をつける魔法で例えてみよう」
よく見ててね。と言って、ショタ神様はあたしの前に人差し指を差し出した。
するとその指先の周りに、アイスティーにガムシロを入れたときみたいな揺らめきが見えたのよ!
なにこれ気持ち悪っ!!
「まずは自分の魔力を集中し、周囲の魔素に働きかける。これは燃料の準備」
「……このゆらゆらしてるのが魔素?」
「ここは神域だから厳密に言えば違うんだけど、まぁ似たようなものかな」
「へぇぇ……」
普通は見えないものらしいんだけど、今はあたしにわかるよう可視化してくれてるんですって。
ありがたいし凄いよくわかるんだけど、なんだか気持ち悪いのよねぇ……ヌルヌル動いてて。
「そして呪文を唱え自分の魔力を放出し、魔素に変化を齎す。これはそのライターでいうところの火花を出して点火する行為だね」
「そういう仕組みなのね」
「全ての魔法がそうではないんだけど、元素系の魔法はほぼこのやり方だ。じゃあいくよ? 『火』」
そう唱えられた呪文と共に、ショタ神様の指先にポッと小さな火が現れた。
ありえない現象を目の当たりにすると人間咄嗟には反応できないわよね?
絶句しつつガン見してたら火はスッと消されちゃった。
「発動の仕組みはこんな感じ。ね、似てるだろう?」
「えぇ……そうね」
「このライターに込められているのは魔力ではなく神力だからね、それで神域への転移なんてことが成せたんだろう」
ほんと何回でも言っちゃうけど神様って凄いのね!?
ていうか鍛冶神様!! こんなものなくしちゃダメじゃない!?
「そのおかげで君という人材に巡り会えたんだ。確かに管理不行き届きだったけど、こちらとしては結果オーライかな」
「そういうこと言っちゃうの!?」
神様のくせに考え方アレじゃない!?
やっぱり本当に碌でもないわねこいつ!!
「さて、じゃあそろそろ君を帰還させてあげようか」
あの後もしばらく色々お話をして、それからショタ神様が待ちに待ったお言葉をくれた。
はあぁやっと帰れるのね!!
なんかもうめちゃくちゃ疲れたわ……もう何日もここにいるような気がするけど、多分一日も経ってないわよね。
「どれくらい時間経ってるのかしら……今日もお店あるのに」
「なにか用事かい?」
「仕事よ。色々準備もあるし、なにより家に帰ってゆっくり寝たいわ」
今日一日だけは休んじゃおうかしら、なんて思っていたら、ショタ神様がうーんと唸ったあと「まぁいいか」とあたしに向き直った。
なにがいいのよ?
「今回だけ特別に、レイがこちらへ来た時点に戻してあげるよ」
「えっ!! ほんと!? そんなこと出来るの!?」
「こちらへ来てしまったのは不可抗力だし、これから色々我々のために動いてもらう大事な協力者だからね。過ぎた干渉はまた境界の弛みを拡げてしまうかもしれないし、そう何度も出来ないから今回だけね」
だから今後こちらへ来るときはちゃんと時間を作ってからおいでね、なんてさらっと無茶言いやがったわ。
どれだけ扱き使う気よ!
「レイ、次来るときまでに私があんたの装備用意しておいてあげるからね」
「やーん美の女神様いいのぉ!? 嬉しい、ありがとう!」
「いや、しかし防御の付与をだな。俺が創らねば」
「お黙り! それなら私がデザインするからその通りに創りなさいな」
「わ、わかった……しかしお主に鎧の意匠など」
「だーいじょうぶよ! 見た目だけじゃなく機能性も装着感も完璧なものにするのよ! あんたが!」
「……そうか」
なに漫才してるのかしらね?
鍛冶神様めっちゃ及び腰じゃないの。美の女神様つよいわぁ。
「そうだレイ、私からはこれを贈ろう」
「え? なぁにこれ?」
ショタ神様から手渡されたのは、オパールみたいな美しい遊色がある、つるんとした雫型の石がついたネックレス。
手のひらで転がすと虹のような色彩がキラキラ移り変わって、とても素敵。
「君を守ってくれるよ」
「あ……ありがとうございます」
ちょいちょい神様オーラ出して圧倒してくるのなんなのよもう。
体が勝手に跪きそうになるからやめてくれないかしらね?
「向こうに戻っても、常に身に着けていてくれるかい?」
「え、なんでよ」
「お互い遠い遠い別の銀河にいるんだ。君を守り、君との繋がりを確かにするためのものなんだよ」
ふぅん、そういうものなのね。
神様本人からの頂き物だし、御守り効果は確かに凄そうね。
「レイ、落ち着いたら声を飛ばしてくれるか? 恐らく問題ないとは思うが、あちらにいても念話が通じるか確認したいのでな」
「えぇわかったわ。帰ったら真っ先に報告するわね!」
「急がずとも良いぞ?」
「いいのよ、あたしがしたいの」
「そうか。なら待っている」
あぁ~ん最後にとびっきりのスマイルいただいちゃったわぁ~!!
こんなご褒美いただけるならいくらでも頑張っちゃうんだから!
またお会いできる日を楽しみにしてるわね。
「さぁレイ、こちらへおいで」
「はぁい」
ガゼボの外、麗らかな春の草原へと導かれて、あたしはショタ神様に手を取られた。
だからショタは……。いや、帰してもらうんだものね。今は言わないでおいてあげましょ。
「レイ、またね!」
「本当に色々感謝する。また会おう、レイ」
「えぇ、またね神様がた! なんだかんだ楽しかったわ」
「ふふふ。じゃあねレイ。これからもよろしく」
「お手柔らかに頼むわね……」
そしてショタ神様の魔法言語が詩のように響き、あたしはようやく「アネモネ」へと帰ってこれた。
ちょっと扱いが雑すぎるんじゃないかしら? ご主人「え?」と「は?」しか喋ってなかったわよ。
それにしても残念だわ……。そんなにお話できなかったばかりか、お名前だって聞けてなかったのに。
けど、どこの町かは神様達に聞けばわかるはずよね。もし再びあの町に行くことがあったなら、その時また寄らせてもらいましょう。
あたしのことは覚えてないでしょうけど、あたしは忘れないわ。待っててねオジサマ!
「やぁお疲れ様。大成功だね」
「お疲れどころじゃないわよもう! 取り残されてびっくりしたじゃない!?」
「こっちも驚きだよ。まさかこんな転移方法があるなんてね」
ショタ神様はとっても嬉しそうにしてるけどあたしはそれどころじゃなかったわよ!
目の前から人がいなくなるなんて割と衝撃映像よ? 一瞬頭が回らなかったけど、あれはなかなかゾッとしたわ。
だって今の今まで目の前にいてお話して、しかも触れてさえいた相手が消えちゃうのよ!?
テレビや映画ならともかく、普通に生きてたらまず経験するはずのないことだもの。
ちょっと、いえかなり肝が冷えたわ。
「まぁ落ち着きなさいな。ほらまだお茶もあるみたいだから、一緒にいただきましょ?」
「……わかったわ」
何故かあたしと同じ髪型にチェンジしていた美の女神様に宥められて、あたし達はまたガゼボへと入った。
あら、サラマンダーちゃん寝ちゃってるわ。可愛いわねぇ。
「じゃあ改めて、使ってみてどんな感じだったかい?」
「ったく人の気も知らないでもう……」
「今後の為でもある。気付いたことがあるならば教えてくれぬか」
「ええそうね、多分だけど発動条件は蓋の音だけじゃなくて、フリントを回すことも必要みたいなの」
相変わらずの変り身で鍛冶神様へお答えしたら、ショタ神様は苦笑いしてるし美の女神様はゲラゲラ笑ってた。
ねぇちょっと。あんた美を司る女神様なんでしょう? いいのその顔。ひどいわよ?
「レイ、具体的にはどのように使用した?」
「ええっと。カウントダウンで一緒に蓋を鳴らしたじゃない? でもその時は何も起こらなかったのよ」
「ほう」
「その後あたしの手から離れちゃって、ご主人だけが持ってる状態でフリントを回したのよ。そしたら目の前から消えちゃって」
「なるほど……鍛冶の、ちょっとそれを見せてくれるかい」
「はい」
「ちょっ……!」
先ほどご主人が持っていたライターを受け取ると、ショタ神様は迷いなく蓋をピィンと鳴らし、フリントを回した。
一瞬さっきの光景が蘇ってビクッとしたけど、特に何も起きなくて力抜けちゃった。
まぁそりゃそうよね。ふたつ一緒に鳴らさないとダメなんだろうし、そもそもここに繋がってるんだもの。ここで操作したって何も起きようがないんだわ。
「ふぅん……これはなかなか面白いね」
「何か分かったの?」
「これは蓋を開くことで神力が解放され、神域、というよりは鍛冶のの近くへと繋がりができるようだ」
「俺に、ですか」
「そうだよ。元々が君の神力が込められた物だからね。さらに同時に使用することで共鳴し合って、より繋がりが密になる。そこへこのフリントとやらを回すと大元の君へと引き寄せられるのさ」
そんなトンでも現象アリなのぉ?
……まぁ、あるからあたしもここにいるんでしょうけど。
別の銀河からでさえ一瞬で来れちゃうなんてどんだけ神力って凄いの!?
唖然とするあたしをよそに、神様方はしげしげと興味深げにライターを矯めつ眇めつしている。
「ねーぇ、そもそもこれって何に使う物なの?」
「え、とね、これはライターっていって、手軽に火をつけられる物なのよ」
「ふぅん?」
「どういう仕組みなんだい?」
「蓋を開けると燃料が出てきて、この横の部分を回すと火花が散って火が点くの」
「あぁ、そうか……わかった。魔法の発動に似てるんだ」
「魔法!?」
なにを言い出すのかしらこのショタは。
地球に魔法なんかないって言っ……ショタ神様には言ってなかったかしらね?
「私たちが使う魔法言語を編むようなものではなくて、こちらの世界の住人が使う類いの魔法だけどね」
「あぁなるほどねぇ」
「それは興味深いですな」
いやいや待って。あんた達だけでわかり合ってないであたしにもちゃんと説明してくれないかしら!?
「セヘルシアと、あとひとつアトミスというんだけど、ここの人々が使う魔法は『魔素』を燃料に、『呪文』と『魔力』を使って発動させるんだ」
魔素、魔力、呪文……。いよいよもってお伽噺みたいな話になってきたわね。
それで、何がどう似てるのよ?
「そうだね、じゃあこのライターと同じく火をつける魔法で例えてみよう」
よく見ててね。と言って、ショタ神様はあたしの前に人差し指を差し出した。
するとその指先の周りに、アイスティーにガムシロを入れたときみたいな揺らめきが見えたのよ!
なにこれ気持ち悪っ!!
「まずは自分の魔力を集中し、周囲の魔素に働きかける。これは燃料の準備」
「……このゆらゆらしてるのが魔素?」
「ここは神域だから厳密に言えば違うんだけど、まぁ似たようなものかな」
「へぇぇ……」
普通は見えないものらしいんだけど、今はあたしにわかるよう可視化してくれてるんですって。
ありがたいし凄いよくわかるんだけど、なんだか気持ち悪いのよねぇ……ヌルヌル動いてて。
「そして呪文を唱え自分の魔力を放出し、魔素に変化を齎す。これはそのライターでいうところの火花を出して点火する行為だね」
「そういう仕組みなのね」
「全ての魔法がそうではないんだけど、元素系の魔法はほぼこのやり方だ。じゃあいくよ? 『火』」
そう唱えられた呪文と共に、ショタ神様の指先にポッと小さな火が現れた。
ありえない現象を目の当たりにすると人間咄嗟には反応できないわよね?
絶句しつつガン見してたら火はスッと消されちゃった。
「発動の仕組みはこんな感じ。ね、似てるだろう?」
「えぇ……そうね」
「このライターに込められているのは魔力ではなく神力だからね、それで神域への転移なんてことが成せたんだろう」
ほんと何回でも言っちゃうけど神様って凄いのね!?
ていうか鍛冶神様!! こんなものなくしちゃダメじゃない!?
「そのおかげで君という人材に巡り会えたんだ。確かに管理不行き届きだったけど、こちらとしては結果オーライかな」
「そういうこと言っちゃうの!?」
神様のくせに考え方アレじゃない!?
やっぱり本当に碌でもないわねこいつ!!
「さて、じゃあそろそろ君を帰還させてあげようか」
あの後もしばらく色々お話をして、それからショタ神様が待ちに待ったお言葉をくれた。
はあぁやっと帰れるのね!!
なんかもうめちゃくちゃ疲れたわ……もう何日もここにいるような気がするけど、多分一日も経ってないわよね。
「どれくらい時間経ってるのかしら……今日もお店あるのに」
「なにか用事かい?」
「仕事よ。色々準備もあるし、なにより家に帰ってゆっくり寝たいわ」
今日一日だけは休んじゃおうかしら、なんて思っていたら、ショタ神様がうーんと唸ったあと「まぁいいか」とあたしに向き直った。
なにがいいのよ?
「今回だけ特別に、レイがこちらへ来た時点に戻してあげるよ」
「えっ!! ほんと!? そんなこと出来るの!?」
「こちらへ来てしまったのは不可抗力だし、これから色々我々のために動いてもらう大事な協力者だからね。過ぎた干渉はまた境界の弛みを拡げてしまうかもしれないし、そう何度も出来ないから今回だけね」
だから今後こちらへ来るときはちゃんと時間を作ってからおいでね、なんてさらっと無茶言いやがったわ。
どれだけ扱き使う気よ!
「レイ、次来るときまでに私があんたの装備用意しておいてあげるからね」
「やーん美の女神様いいのぉ!? 嬉しい、ありがとう!」
「いや、しかし防御の付与をだな。俺が創らねば」
「お黙り! それなら私がデザインするからその通りに創りなさいな」
「わ、わかった……しかしお主に鎧の意匠など」
「だーいじょうぶよ! 見た目だけじゃなく機能性も装着感も完璧なものにするのよ! あんたが!」
「……そうか」
なに漫才してるのかしらね?
鍛冶神様めっちゃ及び腰じゃないの。美の女神様つよいわぁ。
「そうだレイ、私からはこれを贈ろう」
「え? なぁにこれ?」
ショタ神様から手渡されたのは、オパールみたいな美しい遊色がある、つるんとした雫型の石がついたネックレス。
手のひらで転がすと虹のような色彩がキラキラ移り変わって、とても素敵。
「君を守ってくれるよ」
「あ……ありがとうございます」
ちょいちょい神様オーラ出して圧倒してくるのなんなのよもう。
体が勝手に跪きそうになるからやめてくれないかしらね?
「向こうに戻っても、常に身に着けていてくれるかい?」
「え、なんでよ」
「お互い遠い遠い別の銀河にいるんだ。君を守り、君との繋がりを確かにするためのものなんだよ」
ふぅん、そういうものなのね。
神様本人からの頂き物だし、御守り効果は確かに凄そうね。
「レイ、落ち着いたら声を飛ばしてくれるか? 恐らく問題ないとは思うが、あちらにいても念話が通じるか確認したいのでな」
「えぇわかったわ。帰ったら真っ先に報告するわね!」
「急がずとも良いぞ?」
「いいのよ、あたしがしたいの」
「そうか。なら待っている」
あぁ~ん最後にとびっきりのスマイルいただいちゃったわぁ~!!
こんなご褒美いただけるならいくらでも頑張っちゃうんだから!
またお会いできる日を楽しみにしてるわね。
「さぁレイ、こちらへおいで」
「はぁい」
ガゼボの外、麗らかな春の草原へと導かれて、あたしはショタ神様に手を取られた。
だからショタは……。いや、帰してもらうんだものね。今は言わないでおいてあげましょ。
「レイ、またね!」
「本当に色々感謝する。また会おう、レイ」
「えぇ、またね神様がた! なんだかんだ楽しかったわ」
「ふふふ。じゃあねレイ。これからもよろしく」
「お手柔らかに頼むわね……」
そしてショタ神様の魔法言語が詩のように響き、あたしはようやく「アネモネ」へと帰ってこれた。
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