早いものはなぁに？

お金持ちの人達

「アリとキリギリスの話を知ってる？夏の間ずっと働いてたアリと、ずっと遊んでたキリギリスの話だよね。じゃあさ、アリの中にも働き者と怠け者がいるのは知ってる？」

ある幼稚園で、空くんは先生にそう聞きました。
先生は答えます。
「知らなかったなぁ。空くんは物知りだね。」
空くんはまた先生に聞きます。
「不思議だよねぇ？怠け者なのにご飯をいっぱい食べれるなんてさ。」
先生も頷きます。
「不思議だねぇ。」

先生は空くんに言います。
「空くんは怠け者になっちゃダメよ。」
「うん。僕、怠け者にならないよ。お金持ちになりたいんだ。」


しばらく考えて、空くんは先生に聞きました。
「ねぇ先生？先生って儲かる？」
先生は苦笑します。
「あはは…。儲からないなぁ。大変だけどね。」


空くんはまた考えます。

そんな空くんに先生は言いました。
「空くん。この世でね、楽な仕事なんてないんだよ？」
空くんは言いました。
「それじゃあママは一番辛いお仕事だね。」
「どうして？」
「毎日毎日忙しいって働いて、でもお給料出ないんだよ？こんなに辛い事ないよ。」

先生は優しく言いました。
「そうね、ママも大変。でもね、貧乏じゃないのよ？」
「どうして？」
「ママのお給料は空くんの笑顔。空くんが毎日楽しいって笑って、空くんが毎日幸せって笑って、それが一番のお給料なんだよ。」

空くんは言いました。
「そっかぁ。ママが一番のお金持ちかぁ。じゃあ僕は男の子だからお金持ちになれないね。」
「空くんはね、パパになればいいんだよ。パパも同じお給料もらってるのよ。」
「でもママにはかなわないね。」
「そうだねぇ。やっぱりママが一番のお金持ちかな？」


空くんはちょっとガッカリしましたが、また考えます。

そして先生にこう言いました。
「先生は？先生は僕達の笑顔、お給料じゃない？」
先生も笑って答えます。
「そうね。先生もみんなの笑顔がお給料。先生もお金持ちだね。」

先生は思います。
「この仕事も、悪くないかもね…。」


「さぁ！空くん！お外に行っていっぱい遊びましょう！ママもパパも、先生もお金持ち。空くんもお金持ちになれるよ。」

空くんはパァッと笑顔になって、先生とお友達のみんなと遊びました。


～完～