嫌われ者のアーヤくん

ひまじん

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嫌われ者のアーヤくん

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ある日、一人の男の赤ちゃんが生まれました。
お母さんは赤ちゃんにアーヤくんという名前をつけました。

アーヤくんはすくすく育って幼稚園に行くようになりました。
お母さんもいっぱいいっぱいアーヤくんを愛していました。

幼稚園ではお友達がいっぱいです。
毎日いっぱい遊んでアーヤくんは幸せでした。
お母さんからも愛されて幸せでした。


でも!アーヤくんが小学生になった頃、だんだんおかしくなっていきます。

お友達は遊んでくれます。
でも先生がアーヤくんを怒って見ています。

「なんだろう?僕、何もしてないのに。」

先生は笑っています。
でも、笑っているのに顔は怒ったかのように真っ赤です。

アーヤくんはわけがわからないままでした。


アーヤくんは小学生から中学生になりました。
お友達の数が減りましたが、アーヤくんは残ったお友達と遊びました。

お友達との間でゲームが流行りはじめ、アーヤくんもいっぱいゲームで遊びました。お友達とゲームの話をいっぱいして
「あそこはこうやるんだよ。
    ここはこうすればいいよ。」
と教え合いました。

アーヤくんは幸せでした。
でも、お友達は一人、また一人と離れていきました。


アーヤくんが高校生になった頃、アーヤくんのお友達の数は片手で数えられる程になってしまいました。

幼い頃に比べ、本をいっぱい読むようになりました。
一人でゲームをする事が増えました。

そしてとうとうアーヤくんにはお友達がいなくなってしまいました。

「何がいけないんだろう?」
アーヤくんは考えました。
考えてみると、思い当たる所がいくつもあります。

あの時も、
この時も、
その時も、
みんな顔は笑っているのに、どこか怒っているようにも見えたのです。

アーヤくんはようやく気づきました。
自分が生まれつきの嫌われ者だった事に。

アーヤくんは急に寂しくなっていきました。
「どうすればいいんだろう?仲直り?
    きっとダメだな…。
    だって僕は嫌われ者だから…。」


アーヤくんがすっかり気落ちしている時、ふとハサミが目に入りました。

アーヤくんは幸せだった頃を思い出し、幸せな気持ちをチョッキンチョッキン切り取っていきました。

お友達と遊んだ思い出を思いチョッキン。
ゲームの話で盛り上がった思い出を思いチョッキン。
ゲームで楽しかった思い出を思いチョッキン。

また、アーヤくんは恋をした事があります。その思い出を思いチョッキン。

アーヤくんの周りには幸せがいっぱいです。

そのうちの一つを手にして、アーヤくんは落ち込んで元気のない人にさわらせました。

すると落ち込んでいた人はみるみる元気になり、幸せそうな顔になりました。

「ありがとう!ありがとう、アーヤくん!」

アーヤくんは嬉しくてたまらなくなり、両手いっぱいに幸せを抱えて町を歩きました。

一人、また一人と幸せな人が増えていき、その笑顔を見れてアーヤくんも幸せになって、周りの人も幸せ、アーヤくんも幸せになりました。
アーヤくんの幸せな思い出は尽きる事がありません。

嫌われ者のアーヤくんは
もう嫌われ者ではなくなりました。


そんなある日、一人の男がアーヤくんに言いました。
「僕は大好きだった女性を亡くして
    しまったんだ。君、幸せをくれる
    そうだけど、この悲しい気持ちを
    幸せに変えてくれないか?」

アーヤくんも人を好きになった事があります。
男の気持ちも十分にわかるアーヤくんは、両手いっぱいの幸せを男に全部あげました。

すると、男は最初こそ幸せな顔をしたものの、
だんだん暗くなり、ついにまた元気をなくしてしまいました。
男は言います。
「思い出したのは女性との楽しい思い出。だけど思い出が楽しければ楽しい程、思い出が幸せであればある程、今はもういない女性の事が、
重く重くのしかかってくるんだ。どうやら君でもダメらしいね…。」

男は去っていきました。

もう嫌われ者ではないアーヤくんは思います。
「そっか…。僕の幸せにさわっても不幸な人はいるんだ。世の中には、幸せな人と不幸な人がいる。
当たり前なんだ…。
それなのに僕は辛くても、悲しくても幸せ、幸せ、と笑っていて…。
あはは…。どうりで嫌われるわけだ。
不幸な人は他人の幸せが妬ましいから、みんな僕の幸せが妬ましかったんだ…。」

自分が嫌われた理由を知ったアーヤくんは、また幸せだった時を思い出し、チョッキン。

その幸せに自分でさわってみて、しみじみと、幸せのありがたみをかみしめるのでした。


~完~
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みんなの感想(1件)

未来ミキ
2022.06.05 未来ミキ

素敵なお話ですね☺️

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