88 / 108
6
十一話
しおりを挟む
「生きてたか。やはり、ただの兵隊では無理だという事ですね」
苦渋に頭を抱えながらもヤイトは、サラとの間合いを取る。
そして、サラに向かって先程と同じ術が撃たれるが、術は軽々と掴まれて撃った本人に返した。
「力の差は歴然だというのに、無駄に消費するのは些か軽率な行動ですよ」
「いつだってコチラは本気なのですが。やはり原型は違いますね」
周りにいたヤイトの部下達が命令せずとも各々武器を構え始め、完全に対立する形となった。
一戦触発、誰かが動けば戦いの合図。
「私は今から無茶を言います。イナミさん、ベアリンを連れてここから離れてください」
こちらを見る事はなくサラが答え、足を開くサラは副団長の方に向かって走り出した。
イナミは無言で頷き、ベアリンの上腕を持っては無理矢理立ち上がらせた。「うぐっ」とベアリンは血が流れる片足を詰まらせながらも、建物の奥へとイナミと共に進み始めた。
騎士団と戦うサラ。数人相手でも引けを取らず、攻撃をかわしながら、武器を奪っては弾き飛ばしていく。
「そこの二人も逃さないでください」
ヤイト副団長が指示するとサラのから抜け出した騎士が一直線に飛んでくる。
「レオンハルト、頼むっ」
「分かってます」
剣を拾いレオンハルトが向かってくる騎士と対峙した。
「後少しだけ頑張ってください」
「……っ」
ベアリンは進みながらも自身に治癒を行う。術で傷をついた怪我が治りにいくのか。術に苦戦しているのを見かねて、イナミは精霊に治癒を頼む。
「精霊頼む。彼を治してくれ」
しかし、出てきたのは傷を治す白い方ではなく、黒い精霊が飛び出すように出てきた。イナミとベアリンの間を黒い精霊は浮遊し、二人は驚きと疑問で目を点にした。
その考えはすぐに吹き飛び。目の前にいたはずの、精霊は空に吹き飛んだ。
ーーー何が起きたのか、分からない状況。
次が来る。そんな予感がして、イナミはベアリンを押し退けた。
お互いにゆっくりと倒れていくのが見え、イナミに向かって小さな渦状のようなものが生成されていく。
星空を見ているようだ。キラキラと光る渦の中には空気なようなものを含み、そして中のものを吐き出すように一気に破裂する。
避けられないと気がつき、目を瞑るイナミ。
「よ……よかった。次は助けられた」
暗闇の中、頬が雫で濡れる。ゆっくりと瞼を開けると目の前にいるのはサラだった。腕をついてはイナミに覆い被さる。
「何でっ、俺を庇って」
「貴方が狙いだった、私達じゃない……だから……」
体の半分は吸い込まれたように無く、サラはどうにか体制を保っていた腕を崩し倒れ。落ちてくる頭をイナミは腕の中で囲うように支えた。
「ベアリンさんっ! 治癒を」
ずっと横で呆然と立っていたベアリンにイナミは投げかけて、ベアリンは気がつきこちらに駆け寄ってくる。
力が抜けたサラの手を握る。
「すまない、本当にすまない、サラ」
「貴方が……謝らないで……いつかはこうなる筈だったの」
「……すまない……そうだな。最初から間違いだったのかもしれない」
「はい……沢山間違えて……ベアリン……この気持ちは唯一だといいな」
ベアリンは涙を溜めた瞳でサラの手をより強く繋ぐ。
謝るばかりで一向に治癒術を唱える事はなく、イナミは茫然と二人を見つめていた。
そして、ベアリンはその視線に気づかないわけもなく、大きく息を吸い込むと改めてイナミと向き合い。
「彼女はそのものが魔法石なんだ。もう、治すことは不可能だ」
「えっ……」
宝石のようだった彼女の瞳は時間につれて輝きを失う。
腕の中で動かなくなっていく人形。イナミの頭の中は同じ会話が反響するが、全く意味が理解できなかった。
「治せないって、どういうことですか」
ベアリンは無言で頭を横に振る。
そうこうしている内に建物の奥から沢山の足音が聞こえてきた。剣も鳴らして。
「っ、やっときた」
レオンハルトは対峙している騎士を押し除けては、騒がしい方に顔を向けた。
「本当に……遅いですよ」
「仕方ないだろ。こっちも色々と邪魔されたんだ。これでも早く来た方だ」
現れたのは帝都の蒼い制服を着た騎士達。
尖った赤髪を揺らし、騎士達の先頭にいるのはアルバンだった。
「アルバンか」
「私達が来たからにはご安心してください。極悪人の身柄はしっかりと確保します。ですから騎士団ヤイト副団長、一度剣を納めてくれるか」
アルバンは、ヤイト副団長と向き合った。
「貴方も帝都を脱走した身。話を聞くとでも」
「おいおい、副団長様。まだ俺は罪人になっていない筈だぜ。決まるのは評議会が終わってからだろ、副団長様あろうモノが忘れてないよな」
ヤイト副団長は一度舌打ちをし「やめろ」と指示をすると部下達はピタリと動き静止させて剣を納めた。
「だとしても、貴方はその罪人達と共謀していた事は分かっています。罪人をそちらに渡す事はできません」
「そうか、そうか。共謀していたという物が、事実があるんだな。それを是非とも見せてほしい。で? いつもの書類はどうした、正式な手続きがある筈だろ」
腕を組んだまま立っているだけで、返す言葉はない。ここにいる騎士なら知っている。
騎士団団長を逮捕できるのは、評議会が終わり正式に手続きが行われるまで捕まえる事は出来ない。
「さて、この状況。罪人は捕まえているのに、話を聞き入れず、暴れようとしているのは、どっちになるんだろうな。騎士団あろうものが、わざと町で破壊行動をする。騎士団としての違反になるが、どう思いますか。貴方の意見が聞きたい」
「ハァ……面倒な人」
「そんな冷たい事言うなよ。お互い様だろ」
「皆さん、撤収しますよ。やるべき事はもう終えましたから」
呆れたように肩を上げヤイトが踵を返すと、ヤイトの部下達は煙のように姿を消した。
「ヤイト、じゃあな」
アルバンが調子良く手を振ると、ヤイトは振り返る事はなく背中を見せながら手を振り返しては夜の中に溶け込んだ。
苦渋に頭を抱えながらもヤイトは、サラとの間合いを取る。
そして、サラに向かって先程と同じ術が撃たれるが、術は軽々と掴まれて撃った本人に返した。
「力の差は歴然だというのに、無駄に消費するのは些か軽率な行動ですよ」
「いつだってコチラは本気なのですが。やはり原型は違いますね」
周りにいたヤイトの部下達が命令せずとも各々武器を構え始め、完全に対立する形となった。
一戦触発、誰かが動けば戦いの合図。
「私は今から無茶を言います。イナミさん、ベアリンを連れてここから離れてください」
こちらを見る事はなくサラが答え、足を開くサラは副団長の方に向かって走り出した。
イナミは無言で頷き、ベアリンの上腕を持っては無理矢理立ち上がらせた。「うぐっ」とベアリンは血が流れる片足を詰まらせながらも、建物の奥へとイナミと共に進み始めた。
騎士団と戦うサラ。数人相手でも引けを取らず、攻撃をかわしながら、武器を奪っては弾き飛ばしていく。
「そこの二人も逃さないでください」
ヤイト副団長が指示するとサラのから抜け出した騎士が一直線に飛んでくる。
「レオンハルト、頼むっ」
「分かってます」
剣を拾いレオンハルトが向かってくる騎士と対峙した。
「後少しだけ頑張ってください」
「……っ」
ベアリンは進みながらも自身に治癒を行う。術で傷をついた怪我が治りにいくのか。術に苦戦しているのを見かねて、イナミは精霊に治癒を頼む。
「精霊頼む。彼を治してくれ」
しかし、出てきたのは傷を治す白い方ではなく、黒い精霊が飛び出すように出てきた。イナミとベアリンの間を黒い精霊は浮遊し、二人は驚きと疑問で目を点にした。
その考えはすぐに吹き飛び。目の前にいたはずの、精霊は空に吹き飛んだ。
ーーー何が起きたのか、分からない状況。
次が来る。そんな予感がして、イナミはベアリンを押し退けた。
お互いにゆっくりと倒れていくのが見え、イナミに向かって小さな渦状のようなものが生成されていく。
星空を見ているようだ。キラキラと光る渦の中には空気なようなものを含み、そして中のものを吐き出すように一気に破裂する。
避けられないと気がつき、目を瞑るイナミ。
「よ……よかった。次は助けられた」
暗闇の中、頬が雫で濡れる。ゆっくりと瞼を開けると目の前にいるのはサラだった。腕をついてはイナミに覆い被さる。
「何でっ、俺を庇って」
「貴方が狙いだった、私達じゃない……だから……」
体の半分は吸い込まれたように無く、サラはどうにか体制を保っていた腕を崩し倒れ。落ちてくる頭をイナミは腕の中で囲うように支えた。
「ベアリンさんっ! 治癒を」
ずっと横で呆然と立っていたベアリンにイナミは投げかけて、ベアリンは気がつきこちらに駆け寄ってくる。
力が抜けたサラの手を握る。
「すまない、本当にすまない、サラ」
「貴方が……謝らないで……いつかはこうなる筈だったの」
「……すまない……そうだな。最初から間違いだったのかもしれない」
「はい……沢山間違えて……ベアリン……この気持ちは唯一だといいな」
ベアリンは涙を溜めた瞳でサラの手をより強く繋ぐ。
謝るばかりで一向に治癒術を唱える事はなく、イナミは茫然と二人を見つめていた。
そして、ベアリンはその視線に気づかないわけもなく、大きく息を吸い込むと改めてイナミと向き合い。
「彼女はそのものが魔法石なんだ。もう、治すことは不可能だ」
「えっ……」
宝石のようだった彼女の瞳は時間につれて輝きを失う。
腕の中で動かなくなっていく人形。イナミの頭の中は同じ会話が反響するが、全く意味が理解できなかった。
「治せないって、どういうことですか」
ベアリンは無言で頭を横に振る。
そうこうしている内に建物の奥から沢山の足音が聞こえてきた。剣も鳴らして。
「っ、やっときた」
レオンハルトは対峙している騎士を押し除けては、騒がしい方に顔を向けた。
「本当に……遅いですよ」
「仕方ないだろ。こっちも色々と邪魔されたんだ。これでも早く来た方だ」
現れたのは帝都の蒼い制服を着た騎士達。
尖った赤髪を揺らし、騎士達の先頭にいるのはアルバンだった。
「アルバンか」
「私達が来たからにはご安心してください。極悪人の身柄はしっかりと確保します。ですから騎士団ヤイト副団長、一度剣を納めてくれるか」
アルバンは、ヤイト副団長と向き合った。
「貴方も帝都を脱走した身。話を聞くとでも」
「おいおい、副団長様。まだ俺は罪人になっていない筈だぜ。決まるのは評議会が終わってからだろ、副団長様あろうモノが忘れてないよな」
ヤイト副団長は一度舌打ちをし「やめろ」と指示をすると部下達はピタリと動き静止させて剣を納めた。
「だとしても、貴方はその罪人達と共謀していた事は分かっています。罪人をそちらに渡す事はできません」
「そうか、そうか。共謀していたという物が、事実があるんだな。それを是非とも見せてほしい。で? いつもの書類はどうした、正式な手続きがある筈だろ」
腕を組んだまま立っているだけで、返す言葉はない。ここにいる騎士なら知っている。
騎士団団長を逮捕できるのは、評議会が終わり正式に手続きが行われるまで捕まえる事は出来ない。
「さて、この状況。罪人は捕まえているのに、話を聞き入れず、暴れようとしているのは、どっちになるんだろうな。騎士団あろうものが、わざと町で破壊行動をする。騎士団としての違反になるが、どう思いますか。貴方の意見が聞きたい」
「ハァ……面倒な人」
「そんな冷たい事言うなよ。お互い様だろ」
「皆さん、撤収しますよ。やるべき事はもう終えましたから」
呆れたように肩を上げヤイトが踵を返すと、ヤイトの部下達は煙のように姿を消した。
「ヤイト、じゃあな」
アルバンが調子良く手を振ると、ヤイトは振り返る事はなく背中を見せながら手を振り返しては夜の中に溶け込んだ。
32
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
塔の魔術師と騎士の献身
倉くらの
BL
かつて勇者の一行として魔王討伐を果たした魔術師のエーティアは、その時の後遺症で魔力欠乏症に陥っていた。
そこへ世話人兼護衛役として派遣されてきたのは、国の第三王子であり騎士でもあるフレンという男だった。
男の説明では性交による魔力供給が必要なのだという。
それを聞いたエーティアは怒り、最後の魔力を使って攻撃するがすでに魔力のほとんどを消失していたためフレンにダメージを与えることはできなかった。
悔しさと息苦しさから涙して「こんなみじめな姿で生きていたくない」と思うエーティアだったが、「あなたを助けたい」とフレンによってやさしく抱き寄せられる。
献身的に尽くす元騎士と、能力の高さ故にチヤホヤされて生きてきたため無自覚でやや高慢気味の魔術師の話。
愛するあまりいつも抱っこしていたい攻め&体がしんどくて楽だから抱っこされて運ばれたい受け。
一人称。
完結しました!
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
抱かれたい男1位と同居しています
オトバタケ
BL
猫科の動物から進化した獣人が暮らす国。そこは、耳と尾の色で人の価値の決まる世界。
十年前、とある事件に巻き込まれた最下位種の苦労人、ダイは、ひょんなことから抱かれたい男1位の人気モデルである最上位種のユーリと同居をはじめた。
抱かれたい男1位と同居して穏やかな日々を過ごせるわけもなく、十年前の事件の真相も知ることになり……
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる