王様は知らない

イケのタコ

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昼休みにある教室の前に俺は居た。

「おーい勝山いるか。依頼は進んでいるか」

写真部と書かれた教室の扉を開ける。横に関係者以外厳禁、用事があるものアポ求むと書いってあったが無視。
開けると長い机が一個に写真がばら撒かれ、そしメガネのかけた人、横幅が広い人、細長い人、つんつん頭の勝山、血色が悪い人たちが座っていた。
カメラ君がいっぱいる。
扉を開けた途端のカメラ君の顔は引きつり俺を指した。周りは驚きの表情を見せる。

「お前は人の話聞いてた! 朝に言ったこと無視して昼に即刻くる奴なんてなかなかいないよ。まだ依頼されて数時間だぞ。進むわけないだろ。馬鹿だろ!」
「催促なんてしたくないけど。あれからもっと複雑になったんだよ」

許可なく真ん中の空いている席に俺は座り、写真をみると数字が書いた紙が写真に置いてある。
値段をつけているのだろうか。

「勝ってに座るな! お前の事情なんか知るかよ。
俺の言ったことを覚えてる? 目立つから直接はやめてくれと言っただろ。なんのために穏便に進めてると思ってるんだーーー、てかなんで俺の部活知ってんだよ。」
「女の子が教えてくれた。いろいろ話してくれたよ。暗いとか、マジきもいとか。カメラオタク。」
「あの口軽、リア充集団め。火あぶりにしてやろうか。お前は俺の悪口を軽く流すのやめろよ!普通に傷つく。」

怒りを露わにするカメラくんに、周りはまあまあと宥め汽車が停車するみたいに一旦は落ち着いた。

「で急な用事はなんだ。」
「昼ごはん一緒に食べない。てかもう食べ終わった?」

俺の言ったことにみんなにポカーンとしている。するとメガネの人が
「いや、まだ食べてないです。なんなら一緒に、」
「おい」

優しいメガネの人の発言を阻止しようカメラ君が挟む。しかしメガネ君は、小声で

「王様以外、いっつも一人なんですよ。可哀想ですよ。ここは我々が暖かく迎えようではないですか。」
「でもアイツは厄病神みたいなもんだぞ。」

おい誰が厄病神だ。内緒に話していることがまる聞こえであるがこいつら大丈夫か。
でもメガネくんの言う通り、俺は王様に昼飯に誘われたりしないとボッチである 。
今日は王様は友達と食べているらしい。
まったく困ったことに俺の環境は変わったというのにアイツの環境は変わらないって、殺意湧いてくるよね。

「勝山部長、俺からもお願いしたいです。あちらも勇気もって昼に誘ってくれている。それを無下には出来ないですよ。」
「何かあっても、僕たちで解決しましょう。みんながいますし大丈夫です。」

残りの、デ………ポッチャリな人と細長い人が更に援護してくれる。

「お前ら………そうだな。俺らにはあの人なんか負けないに結束がある。よし弟切を誘う。」

4人は手を握り合い、カメラ部はまた強く絆が結ばれた。
俺は一体なにを見せられているのか。
よく分からない話し合いの結果、昼飯を食べることになった。
みんなそれぞれの昼ごはんを持参。俺は変わらずコンビニの新商品パクチーおにぎり。
俺が袋から取り出した物を、カメラくんが二度見し『うわー』と引く声が聞こえそうな渋い顔をしていた。

「弟切さんは何かご趣味とかあるんですか。別になかったら、なかったらいいんですが」

少し怯えるメガネくんが敬語で質問をしてくれるが、俺は一年上とかではないこのメガネと同じ年である。
さっきから部室の空気が微妙に張り詰めている。
カメラ君を睨むと、吹けない口笛で吹き視線を避けるように反対方向を向く。なるほど、いらないことを言ったな。

「趣味か。なんかオススメとかある。」
「オススメですか。言っていいですか。」

消極だったメガネくんは急立ち上がって、人が変わって様に趣味を熱く語り出した。アニメ調の美少女が描かれた表紙の本を取り出し。


「この漫画マジカル桃子ちゃんです。一見、表紙は可愛らしいので話はほのぼのと思ったでしょ。しかし違うんです。熱き友情、勝利、新たな敵。
また主人公がカッコよくて………」

彼の話はまだまだ続くのであるが、量が多すぎ処理しきれないので、割愛と要約する。
「弟切さん、男キャラと似てるんで一緒に写真撮ってください」
である。
だから、一番最初に援護してくれたのね。
なんだか恥ずかしいが、恩もあるので一緒に写真を撮ることにした。すると、カメラくん以外の二人もなぜか撮りたいと言い出し撮ることになった。
アイドルの撮影会かよ。
ホッと、したのかポッチャリがポロリと

「部長が大魔王様とか言うから緊張したぁー。」
「あっこら、それは言うな!」

カメラ君もう遅い。本当に部員の人達は純粋な人たちである。

「かつやま君はお話は好きだよな。あとで相談しようぜ。」
「またまた弟切さん。御冗談が過ぎます。」

カメラ君との相談はまた失言したら頭を殴ると忠告をして終わった。

ナカヨク昼飯を食べ終わると、部員たちは部活動を始める。
体育館に行ったり、庭に行ったり、依頼された人、有名人を写しに行く仕事。皆口を揃えて仕事というが、どう聞いても陰湿なストーカーにしか聞こえない。
カメラ君は写真を売りをするというので、暇な俺はついて行くことにした。教室に戻っても一人は寂しいものである。
当たり前だが後をついてくる俺を邪険に扱うカメラ君。


「なんでついてくる。」
「暇だから。」
「暇って、邪魔なんだけど。そんなんだから弟切、一人も友達いないんだよ。あっ。」

廊下に何かを叩く音が響いた。さて、気にせず情報を集めに専念しよう。

「本当に殴りやがった。」
頭を押さえて何か言っているが聞こえない。

「まず、どこに行くんだ。」

カメラ君は押さえていた手を退けて気を取り直すと携帯を取り出した。

「そうだな。最初に体育館の裏に行って渡して情報交換もする。けどついてくるなよ、あんまり顔を見られたくない奴が多いんだから………」

言葉が途切れたと思えば。カメラ君は俺の顔を見ずに真面目な顔で窓から運動場の方を一直線で睨む。

「ちょと待って、バスケ部の直哉だ。」

確かに運動場で体操服を着た数人がサッカーをしているのは確認できるが、誰が誰かは判別は出来ない。
カメラくんは早速靴に履き替えて外に出ようとするので、

「おい勝山。写真渡しに行くのはいいのかよ。」
「大丈夫、まだ時間あるから。それよりあれが体操服姿でサッカーとかレアすぎる。撮らないと損だ。」

また独り言を話し始めカメラを持ち直し、俺を置いていくほど彼は仕事熱心な様だ。
外に出た俺たちは一本の大木を陰にし、隠れながら運動場の先を見つめる。

「なんで隠れて撮るの」

すると、さも当たり前のようにカメラ君は
「堂々撮ってたら変態だろ。」

この格好も端から見れば十分変態になるのではないかと思う。

「そんなに珍しいことなのか。」

普通にサッカーしてる高校生たちを撮ってどうなるのか。

「珍しいも何も。あの人3年だから後輩からの価値が上がってるんだ。試合でもなく遊んでるいる所がポイントだ。しかも王様とも仲がいいからツーショットとかあるかもしないし。マーク人物だ。」

相変わらず聞き取りにくいほど早口なカメラ君。うん、今なんて言った。

「ツーショットあるかもな。撮れれば金もかなり入るしな。」
「そうなんだよ弟切、よく分かってきた。」

カメラ君、それ弟切じゃない。
そーと、振り返ると不機嫌と顔に書いた人、王様が腕を組んで立っていた。全身ジャージ姿。

「あれ弟切そんなに声低かった?」

やっと違和感に気づいたカメラ君が振り返り。そして、指をフルフルと指しては叫び、そうだったので俺は手で彼の口を塞いだ。

「先輩なんでここにいるですか。」

身質鬼没な王様を問いただすと鼻で笑う。

「ふん。こっちのセリフだ。俺は単に次の授業が体育なだけだ。」

それでも後ろはやめよう。深呼吸して落ち着いたのかカメラ君が俺の手を引き剥がして挨拶を始めた。

「帝先輩、お久しぶりです。お世話ってます。ご機嫌うるわしくてよかったです。」

まだ緊張が取れてないのか、片言で喋り方がおかしい。お久しぶりってことはこの二人は会ったことあるんだ。

へぇー。

「なぁ勝山、一つだけ聞いていいか。」
「なんだ。先輩の前だぞ。」
「もしかして、俺のこと売ったのお前か。」

肩をじわりと掴むと勝山は目を瞑りゆっくり一呼吸をし、手に持った携帯で時計を見る。

「すいません。御二方もう時間ですのでお暇させてもらいますね。」

そして、スタートダッシュをする。俺も捕まえようと走ろうとしたが、王様に首根っこを掴まれた。

「勝山覚えとけよ!」

遠くまで行ってしまった勝山は平謝りで一言。
「すまん!」

おかしいと思っていた。
裏庭で名前も教えてないのに一回会っただけの奴の、クラスに次の日に来れるわけないし、教えてない電話番号から着信できるわけがない。

「先輩もう逃げないので離してもらえません。」

そう言うと、珍しく素直に先輩は手を離したと思えば、次は腕を掴まれた。引かれてどこかに連れて行かれる。

「あの先輩。どこに行くですか。」
「………」

聞いても無言でドンドン進んでいくだけ。
外にはまだ人がいて、注目の的である。また変な噂が流れるだろうなと考えて絶望する。
それにしても前を歩く彼は不機嫌オーラがいつもより増している気がした。
    
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