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第一章 夢の世界で俺は自由に生きる!!

ハーフな彼女

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 ブルードラゴンを倒した健太郎けんたろうとミラルダは互いの無事を祝い、倒れたドラゴンから肉や素材を剥ぐ事にした。
 その際、服を取りに湖畔に戻ったミラルダは、自分が帽子を被っていない事に今更ながら気付いた。
 先程は健太郎が溺れたと思い慌てていた。更にドラゴンが現れた事で完全に失念していたのだ。

「あッ!? み……見たよね?」

 ミラルダは慌てて自分の頭に手をやり耳を隠すと、上目遣いで健太郎を見る。

 ん? なんだい、その可愛い仕草は?

 そんな事を心の中で呟き、思わず微笑む。カシャンと音がして再び現れた口にミラルダは苦笑を浮かべた。

「……はぁ……あんたに隠してもしょうが無かったみたいだね…………あたしさ、獣人と人間のハーフなんだ」
「コホー?」

 獣人と人間のハーフ……そういうのもあるのか……んで、それがどうしたんだ?

 首を捻った健太郎にミラルダは恐る恐る尋ねる。

「そのさ…………あんたはあたしが気持ち悪くないのかい?」
「コホーッ?」

 健太郎は更に首を捻りつつ、どこが気持ち悪いのよく分からないと首を縦に振り、肩を竦め両手を上げる。

「そうかい……あんたはここが何なのかも知らなかったもんね……実はさ、この国は獣人の国と折り合いが悪くてね。だからハーフのあたしも嫌われ者なのさ……獣人でも人でもないってね……それでいつも帽子で耳を隠してたんだよ」

「コホー」

 そうか、ミラルダも苦労しているんだな。俺もホームレスになってからは、街を歩いているだけで色んな目を向けられたもんだ……。

 露骨に顔を顰める者、憐れむ様な目を向ける者、本当に色んな視線を向けられたが、そのどれもが一般人を見る物とは違っていた様に思う。
 そんな事を思い出した健太郎は自分でも意識せず、ミラルダの頭を撫で、そのとんがった耳を優しく触っていた。

「ちょっ、ちょっと、くすぐったいよ!」
「コッ、コホーッ!」

 わっ、悪い! でもフワフワして気持ちのいい手触りだった。
 謝罪しつつ慌てて耳から手を離す。

「フフッ、あんたは本当に平気なんだねぇ……」

 そう言うとミラルダは嬉しそうに笑って、耳をピョコピョコと動かした。

「さて、それじゃあ、竜から色々剥ぎ取ろうか! 竜の素材なんてめったに市場に出ないから、きっといい稼ぎになるよ!」
「コホーッ!!」

 健太郎はいい稼ぎになると聞いて満面の笑みを心の中で浮かべ、実際に牙の生えた口を見せるとグッと親指を立てた右手を突き出した。


■◇■◇■◇■


「ふぅー。こんなに肉を食べたのは久しぶりだよ。ところでミシマ、あんた本当に食べなくていいのかい?」

 焚火で炙ったドラゴンの肉をたらふく食べたミラルダは、腹を摩りながら健太郎に問い掛ける。
 ミラルダが食っていた肉は軽く塩を振っただけだったが、程よく乗った油が焚火に照らされてテラテラと光っており、非常に美味そうだった。
 しかし、健太郎の中に食べたいという欲求は全く湧いてこなかった。

「コホー」

 なんか食欲ないし、いらないよ。まぁ、どうせ夢の中で食べても起きた時、哀しくなるだけだしな。

 そんな事を考えつつ首を振った健太郎を見て、

「そうかい、ドラゴンの肉なんて、そうそう食べれるもんじゃないんだけどねぇ……まぁ、あんたゴーレムだしねぇ」

 と呟きながらミラルダは残った肉を鞄に詰めた。
 彼女の鞄は魔法の鞄らしく、健太郎が剥ぎ取った鱗や大剣を使い解体した肉を次々と鞄に収納していた。

 ミラルダは最初、健太郎の事をドラ○もんと名付けようとしたが、どちらかというと彼女の方がドラ○もんではなかろうか。ケモ耳だし。

「ヨシッと、それじゃあ上を目指すとしようか?」
「コホー」

 ポンポンと肉を収めた鞄を叩き、顔を上げたミラルダに健太郎は頷きを返し親指を立てた。

 その後、地上を目指した探索は順調に進んだ。
 それというのもこの自然洞窟の様なダンジョンは階層が深い程、強力なモンスターが徘徊しているらしく、恐らくその最下層にいた二人にとって、上層階を目指す事は段々と低くなるハードルを飛ぶような物だったからだ。

 それに加え、敵を倒す事で強くなったのは健太郎だけではなく、ミラルダも光の粒子を吸う事で強くなっていた様だった。
 彼女はブルードラゴンが立ち昇らせた粒子も吸ったらしく、かなり地力が増したようで一つ上の階層でも問題無く立ち回っていた。

 健太郎的には強くなっても体が光ったりしないミラルダを少し羨ましいと感じていた。アレってオフに出来ないのだろうか……。

 そんなこんなでミラルダに世界の事を教わりつつ探索を続けた。
 その間に、この世界には人間の国以外にも先も話題に出た獣人の国、強い魔力を持った魔人の国、竜の特徴を持った人種、竜人の国等、様々な種族が暮らしているそうだ。

 中には健太郎の好きなエルフの国もあるそうで、やっぱりそういうのもあるんだぁ、えへへと心の中で笑った彼をミラルダがジト目で睨むといった場面もあったりした。

そんなこんなで数日後、二人は太陽の輝きの下、眩しそうに空を見上げていた。



「んーッ! やっぱりお天道様ってのは良いもんだね! そう思わないかい、ミシマ?」
「コホー」

「じゃあ、後は街へ向かうだけだね……その……ミシマも一緒に来る……よね?」

 口を尖らせ少し照れたように言ったミラルダに、健太郎は金色の歯をキラリと光らせて笑い、親指を立てた左手をグイッと突き出した。
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