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ザガルバ編

91.フラグガンガン立てまくるよ

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「アサルトドラゴン、だって……!? 店長、それマジかよ!?」

 受付で依頼を受領した後パーティーメンバーの元に戻った俺は、全員に今回の依頼の危険性を説明した。エリナさんは、そういうものかと言わんばかりに納得した表情で頷いていたけど、サラさんは流石に驚いたみたいだな……しょうがないか。

「ええ、ただあくまで下手をすると、という段階ですが。いずれにしても結構に凶暴な肉食ドラゴンがいるのは間違いなさそうですね。最低でもロックドラゴン、とも言ってましたけど」
「ロックドラゴン……防御がやたら硬い草食ドラゴンか。ネストドラゴンと違って拠点が岩山ってだけで一定してねえ上に、誤って攻撃したら草食とは思えねえほどの獰猛さを見せるから全く油断ならねえとか言う話だったな……」
「僕はそのロックドラゴンというのは知らないんだけど……硬いってどれくらい硬いものなの?」
「一度籠れば火も水も氷も電撃も通さず、通常の鉄製の剣では鱗に傷をつけることも出来ねえほどとは聞いているな。だからこそ、ロックドラゴンに遭遇したら触らず構わず静かに離れる、が唯一の対策とも言われてるわけだ」

 そこでサラさんは一旦言葉を切り、ため息を吐くとじろりと俺を見て言う。

「まったく……とんでもねえ依頼を引いてくれたもんだな店長。正直こいつはアタシたちの手に負えるような依頼じゃねえよ?」

 うん、確かにそれはそうなんだよね。今サラさんが言ったような特徴を持っているドラゴンは、普通に考えれば冒険者が相手にするような代物じゃない。下手をするとアサルトドラゴンという、ロックドラゴンよりは柔らかいものの対峙すれば一瞬でやられそうなものを相手にしなければならない可能性がある。
 ……もっとも、それはあくまで可能性だ。今回の依頼を考えても、ドラゴン討伐とはひと言も書かれてはいない。俺が受けたのはあくまで鳥類の調査だ。
 それを考えると、少なくとも俺たちだけのことを考えればそこまで絶望するような状況ではないようにも思える。……めったなことは言えないけど。

「でもサラ、今回旦那さんが受けた依頼は別にドラゴン討伐じゃないんだろ? だったらそういうドラゴンにかち合うと決まったわけじゃないんじゃ……」
「そりゃそうだけどよ……」

 いや、そのセリフはマジでやめてマルタさん。そういうのフラグっていうの。俺は本気でドラゴンを相手にしたくないんだから……

「そ、それは、ともかく、どんな、依頼、なんですか?」
「ああ、クララさん。それを今から説明しますよ」

 そう、何はともあれそこを伝えない事にはどうしようもない。サラさんたちにも、詳細を聞いてから判断してほしいところだからな。依頼についてくるにしてもそうでないにしても、まずはそこからだ。

「取り敢えずドラゴンの件に関しては置いておくとして、今回受けたのは現場付近の鳥類の捕獲ですね。なので作業する場所は昨日と同じ場所になります」
「昨日と同じ場所、って、掘った場所ごとに鳥を捕獲するということかい?」
「はい、標本採取した場所付近に飛んでいる鳥を1羽ずつ、採取した場所ごとに捕獲するようにとのことです。
 そして、出来れば同種の雄雌が揃っていればなおいいと」

 言いつつ、俺は皆に依頼内容をメモした紙を見せる。



 依頼内容:調査用鳥類の捕獲
 詳細:先の鉱物採取・調査依頼に基づき、ドラゴン出現時に特異的に出現する空中の浮遊物が存在するかどうか、ウルバスク=スヴェスダ間の国境地帯に生息する鳥類を捕獲してもらいたい。もし浮遊物が存在していた場合、体内にそれらを取り込んだ可能性が高いためである。ドラゴンに遭遇した場合、安全確保に努めてもらいたい。
 所要平均等級:4
 人数:3人以上5人以下
 報酬:基本報酬20000クン、鳥類標本20000クン
 手付金:3000クン



 ……報酬と手付金が全く同じなのはともかく、今回は所要平均等級も人数も若干の余裕がある。これなら前回参加出来なかったマルタさんも今回は大丈夫だろう。……それを悟った当の本人が嬉しそうな顔をしているのは、これまでのことを考えれば当然の話か。
 それはそれとして。

「問題なのはこの鳥類っていう点ですね……」
「んあ、店長? それがどうかしたのか?」
「いえ、昨日俺たちこの場所に行ったじゃないですか。その時にそこまで空を飛んでいる鳥らしき生き物が見当たらなかったような気がするんですよね……」

 それどころか、多くの地点でだだっ広すぎて生き物そのものがほとんど見当たらなかったような気がするんだよね……森とかその辺だったら、確か鳥の鳴き声みたいなのが聞こえてきた気がしたから問題ないと思うけど。
 ああでも、それでもあの森林だったら結構障害物が多いから隠れるところなんか幾らでもあるか……やっぱり面倒だな。
 なんて俺が思っているのとは対照的に、サラさんもマルタさんもそこまで深刻に受け止めていない様子だった。

「そうかあ? 鳥なんてそこら辺を適当に探せばいくらでもいるだろ。種類が指定されているわけでもねえし……なあマルタ」
「そうだね、僕は昨日は同行していないからよくは分からないけど……鳥を探すのはそんなに難しい話じゃないはずだよ」

 いや。いやいやいや。
 だから昨日はそんなに鳥自体見なかったんだっての。いないものを捕まえようってのはどう考えても無理だろ……

「あ、あの、私は、結構、難しい、依頼だと、思います……店長さんも、言っていた通り、あまり、鳥は、見ませんでした、から」
「クララさんもやっぱりそう思いました?」
「は、はい。なんか、殺風景、だなって」

 そこまで見てたか……確かにあの土地って、人は住んでいるんだけど生き物の気配があまりしなかったんだよね。周りを見渡す限り岩山だらけっていうのも影響したのかもしれないけど、それにしても、である。

「それどころか四足歩行の動物や魔物なんかもほとんどいなかったものね。ねえトーゴさん、それってもしかしてドラゴンの分泌物とかいうものの仕業だったりって推測出来ないかしら?」
「推測は出来るかもしれない……けど、憶測では物は言えないよエリナさん。第一そういうのを寄せ付けない分泌物っていうのはどんなものなのか、まあ存在すればだけど、それでも分からないわけじゃない」
「……それもそうね」

 肉食ならそれに群がる獲物を仕留めるためにあえて誘うような分泌物を出すだろうし、草食動物でも縄張り意識が特別強ければ他の動物なんかが寄りつかないような分泌物を出すだろう。それは、動物としての本能でもあるわけだ。
 しかしもし、もしだけど、エリナさんの言う通りだったりすると、それは縄張り意識の強いドラゴンが分泌しているということになるわけで――

「……店長? どうしたんだよ、いきなり黙り込んで」
「いえね、もしかしたらドラゴンって案外近いところにいるんじゃないかって予感が凄いするんですよ。だとすると、相当気を引き締めて逃げる準備もガッツリしないといけないかなって……」
「うーん……僕は心配し過ぎだと思うけどな」
「そうそう、大体店長も見ただろ? いくらクララの言う通り周囲が不気味だったとしてだ、アタシたちは特に問題なく依頼達成出来たじゃねえか。
 今回だって特別問題視する必要もねえと思うぜ? ……まあ、注意すべきっていうのは同意だけどよ」
「うーん……」

 ……何だろう。さっきからサラさんとマルタさんのセリフを聞いてると、どう考えてもフラグって発言ばっかり飛び出してるような気がするんだけど……?



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フラグ云々っていうより危機管理がry
とは言えそれだけドラゴンに襲われるっていう事態が非現実的って事でもあるんですが。

次回更新は06/06の予定です!
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