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2話:総額3800万ピラールの魔物
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馬 券 ◯+q55,000,000
借金返済総額◯-q3,000,000
奴隷購入◯-q35,000,000
奴隷紋料◯-q1,000,000
仲介料 ◯-q3,000,000
残 高 ◯ q13,000,000
■
「総額、3800万ピラールか……。」
高けぇ、買い物しちまったな。
5,500万ピラールあった金も、あっという間に残り1,300万ピラール。
俺って、馬鹿。
いや、でも、どうせいつかは尽きる金だ。
それに今、眼前にいるこの青年を見て、俺はとても満足している。競り落として良かった。こんな美形、中々お目にかかれない。ましてや自分なんかの物になんて、タダじゃ絶対にならん。ああ、綺麗だな…。コイツにならいつか殺されても文句ねぇ。
「保証はありません。返品するには料金が掛かりますよ。」
首と手首、足首にまで弱体化をさせる鉄の鎖が着けられている。良く見たらあっちこっち、痣だらけ。無理やり外そうとしたのだろうか、手首や足首は擦り切れたような傷がある。おいおい、ボロボロじゃねぇか。すぐには使えないな…(色んな意味で)
しばらく二人分金が掛かると見た。
まぁ、いいや。
なんか不思議とコイツが欲しくてたまらないんだよなぁ。
俺は、サラサラと契約書にサインをする。それから指先を少し切って、奴隷と自分の血を特殊な紙に染み込ませた。この紙によって奴隷の所有権が与えられる。主従関係を解消するには、主が紙を燃やすしか無い。
「これで奴隷紋が使えます。奴隷紋を破棄する場合は個人でやって下さい。こちらは、一切の責任を負いませんので。とりあえず使い方だけ教えます。」
「おう。」
というか、コイツやけに静かだな。買われちまって、落ち込んでるとか?いや、そういうんじゃないか。ずっと、俯いている。綺麗に見えた銀髪も心なしかくすんでいる。遠くて見えなかった。だが、紫色の瞳は宝石のよう。色白い肌、高い鼻、整った顔立ち、細すぎるくらいスラリとした手足。ツンっとした耳に白く長い先の尖った尻尾。儚げで、どこか危うい雰囲気は何とも言えない色気を纏っている。あまりに魔性的。見てるとクラクラするガキだ。
「では、指を鳴らすことはできますか?」
ぼんやりしていると、眼鏡がそう聞いてくる。
指を鳴らすって、あれかパチンってやつ?
小さいときに流行ったんだよなぁ。
最近は、やってないから出来るだろうか?
俺は中指と親指をくっつけて、勢い良く滑らせた。
パチンッ!
俺は、中々、いい音が鳴ってちょっと満足げに顔を上げる。
すると、同時にバチバチと眩しい光が魔族の奴隷の首を走った。
「ぅぁ゙ああッ!!」
突然の出来事に俺は、奴隷の側に走り寄った。
首を押さえて悶えている。
「えっ…? ぁ、わ、大丈夫か?」
首元にはミミズ腫れのような傷が出来ていた。
「使い方は以上。これで契約は完了です。奴隷紋はあなたの付属になりました。枷を外します。」
そう言われ、先程下ろした代金(少し足りなかった)を現金で渡す。引き換えに、魔物がドンっと押されて渡された。それは、力無くヨレヨレと俺の胸に転がってきた。
「おっと…。おい、客に売った商品を雑に扱うな!」
すると、腐れ眼鏡がまた鼻で笑った。
「ふっ、厄介払いできて良かったですよ。」
クソッ、腐れ眼鏡!俺を馬鹿にしやがって。
「こんな所、二度と来るか!」
「来たくても来れないでしょーね?」
俺はムッとしながらも、それ以上何も言わなかった。腐れ眼鏡に背を向けて、買った魔物の首に布を巻く。奴隷紋が見えたらマズイからな。ソイツの腕を掴んで来た道を戻って、店の外に出た。
しかし、歩くのが遅ぇなコイツ。
「なぁ、こんなんじゃ日が暮れるぞ。」
「………。」
何も、言わねぇし。
さっきの仕置が強すぎたか?
「なぁ、返事くらいしろ…」
何がどうしたか、魔物がヘナヘナと地面に倒れ込んだ。
「あ? おい、大丈夫か? どうした?」
声を掛け、身体を揺する。
すると、魔物は苦しそうに眉を寄せた。
顔が赤い、それに掴んでいた腕も心なしか熱かった。
まさかと思って、額に触れる。
「……ッ、は……はぁ……っ」
「ヤバいな、すごい熱だ。あの腐れ眼鏡…!」
こんななるまで、放っておくかよ。
俺だって、栄養不足なのに!
俺は非力な身体でソイツを担ぎ上げ、必死にボロい家まで歩いた。
幸いにも、コイツは俺より華奢。
図体ばっかりデカくて骨と皮みたいな俺でも、案外力があるのだと知った。
「高い奴隷にベッドまで返上か…。これじゃあ、お前の方が偉いじゃねぇか。」
魔物の看病なんて分からん。
魔族だから病院になんて連れて行けない。
とりあえず、人間と同じように布を濡らして体を冷やす。
俺だって食ったことのないような出店の豪華なスープを、買ったばかりの奴隷に食わせてやろうと買ってきた。と言っても、じゃがいもと人参と玉ねぎのミルク煮だが。もちろん、俺も頂く。
ふーふー、ずずずっ…、ごくんっ。
「はふぅ…、うめぇ~。こんなうめぇの久々…ぅっ、ぐすっ。」
なんか、美味すぎて涙でてきた。うわー、俺初めて生きてる感じする。あったかくて、味がする、胃袋が満たされる…。
はっ、魔物のこと一瞬忘れてた! 俺は、潤った目元をゴシゴシと拭ってスープを手に取る。
「ほら、お前も食え。」
動かないので、スプーンで掬ってやるが、魔物は口を開けない。
「死ぬなよ。お前、高いんだからな。しっかり働いて貰わないと困る。」
俺は、魔物の口に無理矢理にスープを突っ込んだ。
「んっ、ぐ……、コクッ…」
「どうだ?美味いか?美味いだろ?」
そう聞くと魔物は、ふいっと顔を背けた。
「まぁ、食えよ。」
コイツは、なるべく甘やかして手懐ける。
そんで、従順になってもらう予定だ!
結局、スープを飲み干して眠りについた俺の魔物。
綺麗な髪を撫でると、その小さな頭は手の中にすっぽりと収まった。
眠る顔は、幼い。こいつ、いくつなんだろうな。
「早く懐いてくれよ~。」
こいつの熱が下がったら、俺とコイツの服を買って。
家を探そう、この家は男二人には狭すぎるからな。
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