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12話 おうじさま
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「気持ち悪ィんだけど、オッサン」
「・・・蓮くん」
引き上げられた、仲田の腕。困惑する客たち、仲田もまた、何故バレたのかと驚きながら静かになる。
「もう、6時過ぎたし。こんなんで、待たせんな」
蓮は素っ気なく、銀二郎に言った。急な静寂と、蓮の声に気が付いた高木がすぐに駆けつける。
「ど、どういたしましたか?」
掴んだ腕を離すよう蓮を宥めると、得意の営業スマイルで仲田に声を掛けた。
「知らないよ、この子が急に掴みかかっていたんだ!」
「あ?」蓮の声に苛立ちが現れる。
「ギンチャン、どうしたのか・・・教えてくれないかな?」
怒りで興奮している二人に聞いても仕方がないと判断した高木は、銀二郎に問う。しかし、青年は俯いてしまった。口許や手に生クリームが付いている。捕らえられた腕を見た瞬間から、大方の検討は付いている。
「大丈夫、正直に言って良い。誰も困ったりしないし、怒らないから」
エプロンにぶら下げていた、手拭いで生クリームを拭きながら、高木は銀二郎に声をかけた。
「あ、、脚を、、」
「ぎんじろうくん!!」途端に仲田が叫ぶよう怒鳴った。肩をビクリと跳ねさせた銀二郎は、また黙ってしまう。
唇が強く噛みしめられる。
「さ、触ったんです。その人が、銀二郎くんの脚を撫でるように...私、見てました。そしたら、金髪の彼が止めに入ったんです。」
常連の女性客が、小さく声を出す。触られているのを見て、すぐに行動できなかった自分を恥じた、と同時に蓮が自分の気持ちを代弁してくれたような気がした。
「そうでしたか・・・ありがとうございます」
事の後に高木は、彼女に感謝しランチコーヒーのチケットを渡した。
「仲田さん」
「なんだ!そんな女の言葉を信じるのか?俺がこの店にどれだけ金を払ってやったと思ってる!!」
血相を変えて怒鳴る仲田を席から立たせて、ドアの外に追いやると、高木は言った。
「本日分のお支払は結構です。もう、この店には来ないで下さい、出禁です。銀二郎くんへの接触も控えてください。今まで、ありがとうございました」
ピシャリとドアを閉めた高木は、スッキリした気持ちになった。
「潰してやるからな!こんな店!!」と仲田は叫んで、帰って行った。
▽
「ごめんなさい、ご迷惑をお掛けしました・・・」銀二郎は、二人や客に頭を深々と下げた。そんな、彼の頭に大きな手が乗せられた。
「ギンチャンが謝ることじゃないよ。謝るなら俺の方だ、店長なのに守ってあげられなかった。ギンチャンに怖い思いさせて...ごめんね。」
ふるふると頭を横に振り、ありがとうございます、と呟く。優しい手が頭を撫でる。
「6時も過ぎちゃったね。今日はもう上がって、オトモダチと遊びに行っておいで。バイトできれば辞めないでっ!また、ウサギチャンモカ作るから、今度はネコチャンも練習しとくから!!」
そんな言葉に、銀二郎は顔をあげ「じゃあ、クマさんもお願いします」と笑った。
▽
カフェから出た二人は、宛もなく夜道を歩いた。
「蓮くん、助けてくれてありがとう」
「別に、待たされんのが嫌だっただけ」
「ふふ...そっか」
やっぱり、蓮くんは優しい。今日だって、助けてくれた彼は、まるで王子様みたいだった。
不意に、頭に向かって下から片手が伸びてくる。蓮の手が、ふわりと銀二郎の髪を撫でた。その瞬間、時が止まったように全ての音や風景が遮断された。
瞳に写るのは、自分の大好きな王子様だけ。
「唇、腫れてんぞ。あんま、我慢すんな」
「えっ」
耐えていた涙が頬を伝う。自分も最近、悠馬に聞いて知った、唇を噛みしめる癖。
彼が自分の些細な癖に気が付いてくれたことが嬉しいのと、怖かった気持ちにやっと素直になれたのとで、涙が溢れてしまった。
「・・・蓮くん」
引き上げられた、仲田の腕。困惑する客たち、仲田もまた、何故バレたのかと驚きながら静かになる。
「もう、6時過ぎたし。こんなんで、待たせんな」
蓮は素っ気なく、銀二郎に言った。急な静寂と、蓮の声に気が付いた高木がすぐに駆けつける。
「ど、どういたしましたか?」
掴んだ腕を離すよう蓮を宥めると、得意の営業スマイルで仲田に声を掛けた。
「知らないよ、この子が急に掴みかかっていたんだ!」
「あ?」蓮の声に苛立ちが現れる。
「ギンチャン、どうしたのか・・・教えてくれないかな?」
怒りで興奮している二人に聞いても仕方がないと判断した高木は、銀二郎に問う。しかし、青年は俯いてしまった。口許や手に生クリームが付いている。捕らえられた腕を見た瞬間から、大方の検討は付いている。
「大丈夫、正直に言って良い。誰も困ったりしないし、怒らないから」
エプロンにぶら下げていた、手拭いで生クリームを拭きながら、高木は銀二郎に声をかけた。
「あ、、脚を、、」
「ぎんじろうくん!!」途端に仲田が叫ぶよう怒鳴った。肩をビクリと跳ねさせた銀二郎は、また黙ってしまう。
唇が強く噛みしめられる。
「さ、触ったんです。その人が、銀二郎くんの脚を撫でるように...私、見てました。そしたら、金髪の彼が止めに入ったんです。」
常連の女性客が、小さく声を出す。触られているのを見て、すぐに行動できなかった自分を恥じた、と同時に蓮が自分の気持ちを代弁してくれたような気がした。
「そうでしたか・・・ありがとうございます」
事の後に高木は、彼女に感謝しランチコーヒーのチケットを渡した。
「仲田さん」
「なんだ!そんな女の言葉を信じるのか?俺がこの店にどれだけ金を払ってやったと思ってる!!」
血相を変えて怒鳴る仲田を席から立たせて、ドアの外に追いやると、高木は言った。
「本日分のお支払は結構です。もう、この店には来ないで下さい、出禁です。銀二郎くんへの接触も控えてください。今まで、ありがとうございました」
ピシャリとドアを閉めた高木は、スッキリした気持ちになった。
「潰してやるからな!こんな店!!」と仲田は叫んで、帰って行った。
▽
「ごめんなさい、ご迷惑をお掛けしました・・・」銀二郎は、二人や客に頭を深々と下げた。そんな、彼の頭に大きな手が乗せられた。
「ギンチャンが謝ることじゃないよ。謝るなら俺の方だ、店長なのに守ってあげられなかった。ギンチャンに怖い思いさせて...ごめんね。」
ふるふると頭を横に振り、ありがとうございます、と呟く。優しい手が頭を撫でる。
「6時も過ぎちゃったね。今日はもう上がって、オトモダチと遊びに行っておいで。バイトできれば辞めないでっ!また、ウサギチャンモカ作るから、今度はネコチャンも練習しとくから!!」
そんな言葉に、銀二郎は顔をあげ「じゃあ、クマさんもお願いします」と笑った。
▽
カフェから出た二人は、宛もなく夜道を歩いた。
「蓮くん、助けてくれてありがとう」
「別に、待たされんのが嫌だっただけ」
「ふふ...そっか」
やっぱり、蓮くんは優しい。今日だって、助けてくれた彼は、まるで王子様みたいだった。
不意に、頭に向かって下から片手が伸びてくる。蓮の手が、ふわりと銀二郎の髪を撫でた。その瞬間、時が止まったように全ての音や風景が遮断された。
瞳に写るのは、自分の大好きな王子様だけ。
「唇、腫れてんぞ。あんま、我慢すんな」
「えっ」
耐えていた涙が頬を伝う。自分も最近、悠馬に聞いて知った、唇を噛みしめる癖。
彼が自分の些細な癖に気が付いてくれたことが嬉しいのと、怖かった気持ちにやっと素直になれたのとで、涙が溢れてしまった。
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