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1話 有田悠馬
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盲目的に蓮に恋をしている銀二郎だが、ひとつだけ蓮から与えられることを拒んでいる行為がある。
それは“キス”だ。
初めてのキスだけは、ちゃんと想いの通じ合った人の為にとっておきたい・・・。そう思うのは些か女々しい感じがするかもしれないが、真面目すぎる銀二郎にとって受け入れがたいこの不純な関係のためには必要な贖いであり、のめり込まないよう一線を引くための枷。そして何よりも未来の恋人を想うこと、それが銀二郎にとっての救いだった。だから、銀二郎は蓮とセックスをしてもキスはしたことが無い。いつも、それとなく拒んでいる。互いを想い合うような新しい恋を銀二郎は夢見ていた。蓮も銀二郎がしたがらないので、キスをしない。他のセフレにも「キス無し」というタイプが稀にいるので蓮自身大して気にしてはいないのだ。
大学に戻り、銀二郎は次の講義を受ける。下着は汚してしまったので、コンビニで購入し、学校のトイレで履き替えた。最近のコンビニの品揃えに感心する。重だるい腰で椅子に座る、どうやら教授がまだ来ていないようで授業は始まっていない。ザワザワとした聞き取れない声たちが雑音として耳を掠める。
「・・・はぁ。」
「ため息なんか吐いて、どうした?」
「あー、悠馬くんだ。」
背後から声が聞こえ、振り返り視線ををやると、ガタイのいいイケメンが訝しげに銀二郎を覗き込んでいた。眉間の皺のせいで顔が怖いが、一応心配をしているのだろう。
「悠馬くんだー、じゃねーよ。ぼーとしやがって。」
「ぼーとしてた?」
「してた。大丈夫か、だるいの?」
有田悠馬、銀二郎と同じ法学部に通う高校からの親友だ。悠馬は、銀二郎より背の高い珍しい人間。短髪黒髪高身長、の三点セットは銀二郎と同じ、ついでに運動好きで趣味はバスケ。この二人に違いを見出だすのなら性格ぐらいと言えるほど、どことなく似ており、まるで兄弟のようだ。
「うーん、ちょっと腰が重くて。」
「腰が重いって、まさか生理か?」
「ち、違うっ!」
「ははっ、ギンジ、顔真っ赤っ!」
悠馬は、こうやって銀二郎をからかうのが趣味らしい。いつからか癖になってしまった赤面症が発症して、銀二郎はパタパタと熱くなる頬をノートで扇いだ。
「もう︙! そんな冗談言ってると女の子に嫌われちゃうよ!」
銀二郎は悠馬を睨み、頬を膨らませた。最も、彼の怒りの表情に迫力はない。その様子にははっ、と笑う悠馬が急にやさしいトーンで銀二郎の目元を擦った。
「ギンジ、もしかして泣いた?」
「・・・ッ!? な、泣いてない、よ。」
バレてる︙!
蓮に与えられた快楽で生理的な涙が何度も溢れた、そのせいで瞼が腫れているのだろう。悠馬の勘の良さには時々驚く、正直ちょっと怖いくらい。痒くて、擦ったのだと銀二郎は簡単な言い訳をした。
「そ︙? ならいいけど。」
途端にあ、と悠馬が声を出す。視線の先には先程まで同じホテルにいた金髪の青年。彼は可愛らしい女の子たちに囲まれながらニコニコと笑顔で楽しげに話している。
「ギンジの大好きな蓮くんじゃん。」
二人の関係がバレないよう、蓮と銀二郎はホテルの行き来する時間帯をずらしているが講義ばかりはズラせない。たとえ講義が同じでも、蓮と銀二郎が会話を交わすことはない。以前までは講義が同じという理由で蓮を見れるだけで嬉しくて︙、それがいつの間にか悠馬にバレていた。
悠馬曰く、銀二郎は感情がただ漏れ。
そんなこと、ないと思うんだけどな。
「うわー、ギンジにしっぽが見える。」
犬みたいだと、真顔で言われた。
「そんなに好きなら、話しかければ?」
なんて、悠馬は意気地無しな親友の背中を押してみる。そう、さすがの悠馬でもこの関係を知らないし気づいていない。銀二郎と蓮の関係は“バレたら終わり”そういう暗黙の了解がある。
「い、いいんだ。見ているだけで」
「あんな男の何が良いんだか、、、」
ため息混じりに悠馬が呟く。良いところばっかりだよ、と銀二郎は心の中で言い返した。カッコ良くて、やさしくて、僕は蓮くんが大好きなんだ。
▽有田悠馬
いつも、ぼんやりとした友人なのに彼を見る目は熱がこもっている。
きっと、誰が見てもわかる。
淡い恋の色。
惚れられている本人ですら、簡単に気が付いてしまうだろう。ましてやモテる男が、この熱っぽい視線に気が付かないはずがない。
いつか、このぼーとした友人が何か悪いことに引きずり込まれたりするんじゃないか、と俺はいつもヒヤヒヤしている。
それでも、恋をしているギンジは楽しそうで口を出すのも良くないかと、俺はただ見守っている。
それは“キス”だ。
初めてのキスだけは、ちゃんと想いの通じ合った人の為にとっておきたい・・・。そう思うのは些か女々しい感じがするかもしれないが、真面目すぎる銀二郎にとって受け入れがたいこの不純な関係のためには必要な贖いであり、のめり込まないよう一線を引くための枷。そして何よりも未来の恋人を想うこと、それが銀二郎にとっての救いだった。だから、銀二郎は蓮とセックスをしてもキスはしたことが無い。いつも、それとなく拒んでいる。互いを想い合うような新しい恋を銀二郎は夢見ていた。蓮も銀二郎がしたがらないので、キスをしない。他のセフレにも「キス無し」というタイプが稀にいるので蓮自身大して気にしてはいないのだ。
大学に戻り、銀二郎は次の講義を受ける。下着は汚してしまったので、コンビニで購入し、学校のトイレで履き替えた。最近のコンビニの品揃えに感心する。重だるい腰で椅子に座る、どうやら教授がまだ来ていないようで授業は始まっていない。ザワザワとした聞き取れない声たちが雑音として耳を掠める。
「・・・はぁ。」
「ため息なんか吐いて、どうした?」
「あー、悠馬くんだ。」
背後から声が聞こえ、振り返り視線ををやると、ガタイのいいイケメンが訝しげに銀二郎を覗き込んでいた。眉間の皺のせいで顔が怖いが、一応心配をしているのだろう。
「悠馬くんだー、じゃねーよ。ぼーとしやがって。」
「ぼーとしてた?」
「してた。大丈夫か、だるいの?」
有田悠馬、銀二郎と同じ法学部に通う高校からの親友だ。悠馬は、銀二郎より背の高い珍しい人間。短髪黒髪高身長、の三点セットは銀二郎と同じ、ついでに運動好きで趣味はバスケ。この二人に違いを見出だすのなら性格ぐらいと言えるほど、どことなく似ており、まるで兄弟のようだ。
「うーん、ちょっと腰が重くて。」
「腰が重いって、まさか生理か?」
「ち、違うっ!」
「ははっ、ギンジ、顔真っ赤っ!」
悠馬は、こうやって銀二郎をからかうのが趣味らしい。いつからか癖になってしまった赤面症が発症して、銀二郎はパタパタと熱くなる頬をノートで扇いだ。
「もう︙! そんな冗談言ってると女の子に嫌われちゃうよ!」
銀二郎は悠馬を睨み、頬を膨らませた。最も、彼の怒りの表情に迫力はない。その様子にははっ、と笑う悠馬が急にやさしいトーンで銀二郎の目元を擦った。
「ギンジ、もしかして泣いた?」
「・・・ッ!? な、泣いてない、よ。」
バレてる︙!
蓮に与えられた快楽で生理的な涙が何度も溢れた、そのせいで瞼が腫れているのだろう。悠馬の勘の良さには時々驚く、正直ちょっと怖いくらい。痒くて、擦ったのだと銀二郎は簡単な言い訳をした。
「そ︙? ならいいけど。」
途端にあ、と悠馬が声を出す。視線の先には先程まで同じホテルにいた金髪の青年。彼は可愛らしい女の子たちに囲まれながらニコニコと笑顔で楽しげに話している。
「ギンジの大好きな蓮くんじゃん。」
二人の関係がバレないよう、蓮と銀二郎はホテルの行き来する時間帯をずらしているが講義ばかりはズラせない。たとえ講義が同じでも、蓮と銀二郎が会話を交わすことはない。以前までは講義が同じという理由で蓮を見れるだけで嬉しくて︙、それがいつの間にか悠馬にバレていた。
悠馬曰く、銀二郎は感情がただ漏れ。
そんなこと、ないと思うんだけどな。
「うわー、ギンジにしっぽが見える。」
犬みたいだと、真顔で言われた。
「そんなに好きなら、話しかければ?」
なんて、悠馬は意気地無しな親友の背中を押してみる。そう、さすがの悠馬でもこの関係を知らないし気づいていない。銀二郎と蓮の関係は“バレたら終わり”そういう暗黙の了解がある。
「い、いいんだ。見ているだけで」
「あんな男の何が良いんだか、、、」
ため息混じりに悠馬が呟く。良いところばっかりだよ、と銀二郎は心の中で言い返した。カッコ良くて、やさしくて、僕は蓮くんが大好きなんだ。
▽有田悠馬
いつも、ぼんやりとした友人なのに彼を見る目は熱がこもっている。
きっと、誰が見てもわかる。
淡い恋の色。
惚れられている本人ですら、簡単に気が付いてしまうだろう。ましてやモテる男が、この熱っぽい視線に気が付かないはずがない。
いつか、このぼーとした友人が何か悪いことに引きずり込まれたりするんじゃないか、と俺はいつもヒヤヒヤしている。
それでも、恋をしているギンジは楽しそうで口を出すのも良くないかと、俺はただ見守っている。
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