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其れは連なる環の如く

流血の都へ 8

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 さすがに観念せざるを得ない状況ではあったが、それでも曹操も曹洪も剣を手放さずに漆黒の騎馬隊を迎え撃つ。

 しかし、曹洪は徒歩、曹操は騎乗していると言っても足を負傷している為に踏ん張る事が出来ない。

 万に一つの勝機も無い中だった為、逆に曹操は冷静に漆黒の騎馬隊を観察する事が出来た。

 夜の闇に紛れる漆黒の姿なので詳細を知る事は出来ないが、十分な練兵と規律や統率の取れた部隊であり、精鋭である事がわかる。

 これほどの騎馬兵が一騎でも十分だというのに、五十騎ほどの編成となっているので今から全力で逃げても逃げ切れる相手ではない。

 が、その漆黒の騎馬隊は曹操達が攻撃範囲に入る直前に散開して曹操達を素通りして追手の灯りの方へ走っていく。

「孟徳兄と、子廉兄ですか! 無事だったんですね!」

 漆黒の騎馬隊の隊長と思われる人物がやってきて、曹操に向かって言う。

「……子和しわですか! と言う事は虎豹騎こひょうきですか」

「そうです。虎豹騎を率いてきました。どうですか、子廉兄。これを値千金って言うんじゃないですか?」

 漆黒の騎馬隊を率いてきた武将は、曹操の従兄弟である曹仁の弟、曹純そうじゅん子和だった。

「調子に乗るな、子和。せいぜい二十金くらいだ」

「厳しいなぁ。ところでウチの兄貴はいないんですか?」

子孝しこうなら、他のところで戦っているはずだ。それより子和、孟徳を頼む」

「もちろん、そのつもりです。子廉兄はどうします? 値千金を認めてくれれば、子廉さんも一緒に逃げれますよ?」

「ふざけるな、子和。俺にそんな価値があるか。せいぜい五十金だ」

「自分を値切りの対象にするのも珍しいですね」

 曹純は笑いながら言う。

「子和、私も五十金払いますから、百金で手を打って下さい」

 曹操が言うと、曹純も笑って頷く。

「孟徳兄が言うなら、それで手を打ちます。子廉兄、ケチらないで下さいよ?」

「分かったよ! ただし、生きて帰れればの話だ! 大体虎豹騎は三百くらいいただろう? 何で五十騎くらいしかいないんだ」

 曹洪は虎豹騎の一騎に乗せられながら、曹純に向かって言う。

「いやぁ、どこにいるか分からない孟徳兄達を探すのに全員一丸となって行動ではさすがに効率が悪いでしょ? 最低限戦える数の班で行動してましたから」

「的確ですね」

 曹操が言うと、曹純は誇らしそうに胸を張る。

「でしょ? ほら、子廉兄、これが値千金って……」

「うるせぇよ。ぶっ飛ばすぞ。まだ敵軍の真っただ中なんだからな」

 曹洪が言うように、ここは現在董卓軍に包囲されつつある。

 曹純の率いる虎豹騎は、曹操や曹洪、曹仁といった曹家が私財によって集めた兵の中でも選りすぐりの者を集めた、精鋭の中の精鋭として練兵しているところだった。

 それだけに、個々の能力でいえば勇猛果敢な董卓の西涼兵と比べても明らかに虎豹騎の方が上と言えるが、今回に限っては数が違い過ぎる。

 同数であれば虎豹騎の圧勝だが、わずか五十騎で董卓軍数万と戦えるほどの非常識軍団という訳ではない。

「もちろん、ここからは全力で逃げますよ。ちょっとした仕掛けもありますから、そこまで逃げ切れば何とかなるはずです」

 曹純はそういうと、後ろに曹操を乗せて反転して走り出す。

 五十騎で救出に来た虎豹騎だったが、三十は追手を食い止める為に戦い、残りの二十の内の五騎は他の班への伝令に走ったので、曹操を守る虎豹騎は隊長の曹純を含めても十五騎しかいない。

 これでは捜索隊に見つけられた場合には、一戦出来るかどうかの数である。

 智将である曹仁の弟、曹純もその事は十分理解しているらしく、脇目を振らずに逃げていく。

 もはや正体を隠そうとせず、灯りを持って夜道を疾走する虎豹騎だったが、董卓軍の追撃軍に見つかっても振り切って走る。

 虎豹騎を見つけた董卓軍は、疾走している虎豹騎が曹操と共に逃げているのではなく、逃げている曹操を追っていると勘違いしているようだったが、その誤解も長い目で見ると非常にまずい。

 董卓軍の追跡隊は歩兵が多かった上に、騎馬も戦闘続きで疲れている様子が見て取れる。

 本来であれば虎豹騎が逃げ切れる状況なのだが、董卓軍が曹操という大魚を逃がさない為にも先回りして包囲を展開していく事は十分過ぎるほどに考えられる、むしろ当然打つべき一手であった。

 理想で言えば、連合軍と合流するのが最も良いのだが、それは董卓軍も当然予想して警戒している事は曹操も分かる。

 ここは虎豹騎が来た道をそのまま引き返す事が、逃げ延びられそうな可能性が高い。

 曹純もそこは分かっているらしく、連合軍の陣や洛陽を目指さず曹操達の地元である陳留に向かっているらしい。

 しかし、そこには問題もあった。

 そこまで大きなものでは無いが川があり、渡河の必要があるのだ。

 董卓軍の追撃が目と鼻の先まで迫っている中での渡河は、とても成功する見込みのない自殺行為でもある。

「子和、どうするつもりだ」

 曹操は曹純にすべて委ねていたが、曹洪はそうでもなかったらしく詰め寄るように尋ねる。

「まあ、秘策と言うか何と言うか。一応俺も指示を受けて動いてるんで、そこに行ってみない事には説明のしようがないってのが正直なところなんですよ」

 命綱である曹純が、笑顔でとてつもなく頼りない事を言い出す。

「おま……! それで良いと思ってんのか? 子和、てめえ!」

「まあまあ、そんな熱くならないで下さいよ」

 この状況の中でも曹純は余裕のある受け答えをしているので、指示を出した人間とその秘策とやらに絶対の信頼を置いている事がわかる。

 だが、幼少の頃から武将として堂々としていた曹仁と違って、おっとりした性格で緊張感の無さを身にまとっていた曹純なので、本当にどうしようもない時にはこれくらい割り切れる人物でもあった。

 夜が明けてくると、夜の闇に紛れていた漆黒の虎豹騎は逆に浮かび上がるように見えるので、一見して董卓軍ではない事もわかるほど目立つ。

 そんな中で曹操達は河付近まで逃げ切る事は出来たのだが、そこで曹純と虎豹騎は足を止める。

 船が無いのだ。

「……あ、あれ? この辺りじゃなかったかな?」

 曹純が困ったように呟いている。

「じゃなかったかな? じゃねー! てめえ、罰金モノだ! 値十金でも高いわ!」

「えっ? 一桁減? それはあんまりじゃないですか、子廉さん」

「ふざけんな! 大幅に譲歩して値十金だ! 本来なら十金どころか、その首刎ねるところだぞ!」

「まあまあ、そんなにキレないで。もうちょい上流とかかな?」

「その余裕は無さそうですよ」

 曹純と曹洪の口論に、曹操が間に入る。

 ついに董卓軍に追いつかれたのだ。

 追ってきた武将は、徐栄の副将を務めていた李蒙である。

 李蒙は董卓軍の武将らしい攻撃能力を有しながら、同格の武将である徐栄の副将の立場も理解して行動出来る戦術眼を持ち、攻撃に特化しがちな董卓軍の中にあって慎重な意見も出せる貴重な人材だった。

 さすがに呂布には及ばないものの、華雄亡き今となってはこれまで以上に重用されると思われる人物ではないかと曹操は思っている。

 もちろん追手として考えても呂布よりはマシかもしれないが、この場合であれば攻撃に偏った徐栄や李傕と言った猪突の傾向の強い武将か、李粛のような無能の方が好ましかった事は言うまでもない。

 しかも率いている兵数も多く、おそらく二千は下らないと見える。

 個々の能力で言えば虎豹騎の方が圧倒的に上だったとしても、虎豹騎が二十騎もいない事を考えると相手は百倍以上という事になる。

 いかに虎豹騎が精鋭の中の精鋭だからと言って、頑張ってどうにかなる差ではない。

 しかも虎豹騎は総数三百騎であるのに対し、董卓の迎撃部隊の総数は数万であり、万が一にもその全てが集結するような事になったら、それこそどうする事も出来ない。

「一か八か、突撃するか?」

 曹洪が呟くが、それに対して曹純が首を振る。

「それは一か八かですらありませんよ。まず間違いなく、失敗して皆殺しにされます」

「それじゃどうするんだ? 降伏でもするつもりか?」

「それも面白そうですね」

 曹純はそう言って笑う。

「ちなみに孟徳兄の賞金っていくらくらいですか?」

「子和、てめえゴルァ!」

「まあまあ」

 今にも切りかかりそうだった曹洪を抑えながら、曹操は苦笑いする。

「今の賞金は分かりませんけど、私が董卓暗殺に失敗した時の賞金額は確か五十金くらいだったと思いますよ?」

「五十? それは安いなぁ」

「子和、どうするつもりだ?」

「子廉さん、ちょっと落ち着きましょうよ。どう考えても孟徳兄の首はもっと高いから、まずは交渉ですね」

「……孟徳、こいつは切った方が良くないか? 子孝には俺から説明しておく」

 曹洪は切りかかろうとしているが、別の馬に乗っている曹純は曹操を後ろに乗せたまま逃げ回っている。

「子和、何か考えがあるんですね?」

「そりゃ、もちろん」

「私は子和が虎豹騎を率いてきてくれなければ、確実に命を落としていた事でしょう。貴方を信じますよ、子和」

「御意に。きっと上手くいきますよ」

 曹操の許しを得た曹純は、逃げ回るのをやめる。

「曹操! 董卓軍の李蒙である! この場で降伏するのであれば、貴様の率いた兵は見逃してやっても良い! それでなければ皆殺しにするぞ!」

 虎豹騎をの距離を詰めた李蒙が、形式的な降伏勧告を行う。

「董卓軍の将に問う! 金五千でどうだ? それで曹操を引き渡そう」

「吹っ掛けましたね」

 曹純の提案に、曹操は苦笑いする。

「何を馬鹿な事を!」

「じゃ、三千! それなら妥当だろ」

 李蒙が却下すると、曹純は再度提案する。

 妥当どころか、まだまだ相当に吹っ掛けている。

 董卓や李儒との直接交渉であればひょっとしたら取引が成立したかもしれないが、李蒙個人で金三千もの取引をまとめる事は出来ないだろうと曹操は思う。

 それに曹純にしても、ここで取引をまとめて曹操を売ろうとはしていない。

 どう考えても吹っ掛け方が、常識からかけ離れている。

 曹純は李蒙を釣ろうとしているのだ。

 それが李粛であれば欲にかられて上手く釣る事は出来たかもしれないし、自分の攻撃力に絶対の自信を持つ徐栄であれば全軍突撃を誘発させ、虎豹騎で一気に駆け抜けて徐栄を打ち取ると言う賭けに出る事も出来たかもしれない。

 しかし、多少とはいえ慎重さを持つ李蒙にはどちらも期待出来ない。

 曹純の手並み次第、というところである。

「ぐだぐだぬかすな! 殺されたくなければ曹操を渡せ!」

「じゃあ、二千! 土地と将軍位付きで!」

 曹純はまだ食い下がる。

 段々条件が具体的で実現可能なモノになってきている上にえらく本気に思えるのが曹操は気になったが、これまでの流れから李蒙が取引に応じるとは思えない。

「これ以上、貴様らと語る事は無い。曹操を渡せ! なもなくば、皆殺しにする!」

「じゃあ、千五百! 将軍位だけで我慢するから!」

「全軍突撃!」

 ついに李蒙は痺れを切らしたらしく、二千の兵で全軍突撃を仕掛けてくる。

 迎え撃つは虎豹騎が二十騎足らず。

 真っ先に思いつく対応策としては落とし穴などの罠であるが、現実的には数千人を落とす落とし穴を三百人程度の人員で一晩しかない期限で用意する事はまず出来ない。

 また、そういう類の罠であれば虎豹騎が通った跡を行けば罠にかかる事は無い。

 それでも曹純の落ち着きを見ていれば、まったくの無策と言う訳でも無さそうだった。

 と思っていたが、曹純は剣を抜く。

「……おい、子和。まさか何も無いのか?」

 曹洪が眉を寄せて尋ねる。

「念のため、ですよ。念のため」

 曹純は笑顔で言うが、その笑顔が若干引きつっている。

 まさか、無策?

 突撃してくる李蒙は両翼を広げ、僅か二十騎足らずの虎豹騎を逃がさない為に包囲するつもりなのだ。

 負ける要素の無い戦いと言う事もあってか李蒙の部隊は士気が高く、また鶴翼の陣形を保ちながらの突撃にも李蒙の高い指揮能力も見て取れる。

 が、虎豹騎を射程に捉えようとした時、李蒙が予想していなかった事が起きた。

 川の上流側に若干小高くなった丘の様な地形がある事は李蒙も確認していたが、曹純がそちらに近付こうとしなかった事もあり、それほど戦術的に大きな影響が無いと考えて無理に高所にこだわらなかったと言う事もあったので、特に気にしていなかった。

 もし曹純の率いていた虎豹騎の数が多かったら、この丘を巡る攻防になっていたかもしれないが、そこへ行かせない為にも包囲を言う選択を選んだのだ。

 その判断は間違いと言うほどでは無かったかも知れないが、李蒙に油断があったと言う事は間違いない。

 その丘から千本を超える矢が一斉に放たれ、突撃を掛ける李蒙の部隊の側面に降り注いだ。

 見るとそこには無数の旗がはためき、連合軍の一隊と思われる一団が丘の上に現れた。

 一斉に放たれた矢によって李蒙軍の半数が倒れ、突撃の足も止められる。

 その一瞬の隙を見逃さず、丘から漆黒の騎馬隊の一隊が李蒙に向かって突撃を仕掛けて来た。

 数は百騎程度だが、その戦意は極めて高く、馬術の技量も遠目から見ても素晴らしいのが分かる。

 その特徴的な漆黒の騎馬隊が虎豹騎なのは分かるが、指揮官である曹純がこちらにいる事を考えると、あの騎馬隊を率いているのは誰なのかと言う問題も出てくる。

 曹純以外に虎豹騎を率いれそうな人物と言えば曹仁なのだが、その曹仁も夏侯兄弟と共に殿軍を務めているので、虎豹騎を率いているとは思えない。

 だが、その部隊は見事な速度を維持したまま李蒙の元へ突撃する。

 先頭を行くのは虎豹騎の中でも小柄だが、指揮官でありながら先頭を走る勇猛さを持っている武将であり、李蒙の元へ最短距離を走る馬術と、その邪魔になりそうな手負いの兵士達を馬で蹴散らし、踏み潰していく冷酷さも持っている。

「伏兵だと? 小賢しい!」

 それでも勇猛を鳴らす董卓軍の武将である李蒙は、その小柄な人物に対して剣を構えて迎え撃つ。

 突撃した虎豹騎は百騎程度に対し、李蒙軍はまだ千騎以上が残っていると言う事を李蒙はわかっていた。

 ここで指揮官を討てば、丘の連合軍が来るより先に突撃してきた虎豹騎も曹操達も討ち取って、その上で撤退する事が出来ると判断したのだろう。

 が、それは他の虎豹騎と比べて小柄に見えたと言う侮りから、実力を見誤っていた。

 その人物の槍捌きは並の武将を上回り、豪傑として名を挙げた穆順と比べても見劣りするモノではなく、鋭さで言えば穆順さえも上回るほどだった。

 これは敵わないと見ると、李蒙は剣を投げつけて反転して逃げ出そうとする。

「あさはかだな」

 虎豹騎の指揮官がそう呟いた時、李蒙軍の背後には殿軍を務めていた夏侯淵が迫り、一刀の元に李蒙を切り捨てた。

「合図を送れ! 殲滅する!」

 指揮官と思われる人物がそう言うと、虎豹騎の一騎が旗を振る。

 それに合わせて丘の軍も一気に雪崩込んで来て、李蒙の敗残兵達は一斉に逃げちっていった。

「中々の負けっぷりですね、曹操殿」

 指揮官と思われる人物が曹操の元へやって来て、兜と仮面を取る。

「さすが、姐さん。やってくれると思いましたよ」

 曹純はその人物に向かって言う。

「これで分かったでしょう? 貴方は人の下に付くとしたら、それは皇帝に対してのみであり、それ以外に道は無いと言う事を」

 軍師、陳宮が自ら槍を持って虎豹騎を率いて曹操救出に来たのだ。

 実際曹純を曹操救出に向かわせたのも陳宮の指示であり、また残った虎豹騎に曹仁や夏侯兄弟を探させたのも同時進行だった。

「陳宮殿、あの軍があればまだ戦う事が出来るのではないか?」

 ボロボロになりながらも、夏侯淵が敗残兵に襲いかかる連合の兵を見ながら言うが、陳宮は首を振る。

「アレは戦力になりませんよ。連合の兵に見えますが、実際には真っ先に戦場から逃げ出してきた徐州兵です。落ちていた旗を持たせただけで、もう矢も残っていません。上流に船を隠していますから、すぐに撤収しましょう」

 陳宮は戦闘を徐州兵に任せ、さっさと撤収の準備に移る。

「見ろ、子和。アレが値千金の仕事だ。アレと比べると、お前はまだまだ十金程度だ」

「勉強になります」

 曹洪と曹純がそんな事を言いながら撤収の準備をしていると、少し遅れて夏侯惇や曹仁、楽進と言う面々が合流する。

「ところで曹操殿、呂布と言うのはまだ戦場にいますか?」

 陳宮は足を負傷した曹操を船に運びながら尋ねる。

「いえ、おそらくはもう戦場にいないでしょう。何故です?」

「徐州の陳登と言う武将が言っていましたが、とても常識では測れない武神だとか。一度見ておきたかったのですが」

「まあ、その評価ですら大袈裟ではない事は私も保証します。今後出会う事があったとしたら、戦場ではない事を祈っておいた方が良いですよ」

 曹操は船の上で、陳宮に言う。

 五千の私兵を集めて連合に参加した曹操だったが、戦いが終わった後に曹操の元に残った兵数は、途中参加の虎豹騎も含めて二百騎程度まで激減していた。

 正に惨敗だったが、それでもこの戦いに参加した曹操軍の武将達で曹操を見限った者はいなかった。
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