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ティファニーsaid

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大学生だった私が珍しくハマっていた小説がある

ロマンチックラブマジック、通称ラブマジとかいうちょっとダサい名前の恋愛小説だ

現実じゃ絶対にありえない逆ハーものだけど、イケメン達が中々に魅力的で読んでいた

本当にこんなファンタジーな世界があって、私がヒロインになれたらいいのに…

色々とあってリアルに疲れていた私は、そんな妄想に浸るほど非現実的な事を考えはじめていた


そしてある日目覚めたら、私はヒロインのティファニーになっていた

最初は見慣れない景色と見知らぬおばさんが、自分をティファニーなんて呼ぶから夢かと思ったけど、頬をつねったら痛かった

近くにあった鏡を見ると、元の自分とは比べ物にならないほどの美少女がいて思わず見入ってしまい、しばらく鏡を見続けた


これってラブマジのヒロインよね…?

うそ、まさか転生ってやつ!?

でもいきなり何で…
転生するって事は前の私は死んだって事…?

前世での他の記憶はしっかり残っているのに、何故かこうなる前の記憶だけが抜けてて思い出せない
 
色々な疑問があったけど、正直そんな事はどうでもいい

だってこの顔とスタイルがあればラブマジじゃ無敵のヒロインだし、人生イージーモードじゃない!


それからの私はやりたい放題だった


まずラブマジが始まる舞踏会まで結構長い期間があった
退屈だったから手始めに、気持ちがバレバレすぎる幼馴染のライナスとすぐに身体の関係になった

ラブマジはキスや多少の触れ合いがあるぐらいで濡れ場はないんだけど、書かれてないだけで裏では絶対ヤりまくってると思う

だって思春期真っ盛りの男が多いのに、こんな美少女を前に手を出さないなんてある? 

現にすぐにティファニーの身体は適応した
驚くほど感じやすく、初めてでも全く痛くなかった

他の男達も微笑むだけですぐに私の虜になり、1度身体の関係を築くと何でも私の言う事を聞いてくれて、宝石や洋服なんかも貢いでくれた

たまに街で会う女達が妬んだ目で見てきたけど、私にとっては優越感しか感じなかったし、とにかく楽しくてしょうがなかった


そんなある日、私の義理の兄が帰ってきた

マテリオールってついつい言っちゃって驚かれたけど…

中々のイケメンだったし、こいつも確か私の事を好きなんだよね…
私への気持ちを隠すために王宮の騎士になったんだっけ?

何か可哀想だし、1回ぐらい夢見させてあげるかな…

そう思ってわざわざ手を出しやすいように私から迫ってやったのに、リオお兄ちゃんは飛び出して逃げて行った

お前は誰だって言われても、転生して今は私がティファニーなんだからティファニー以外ないでしょ?

童貞だとは思ってたけど、初恋拗らせすぎてて面倒くさい

まぁリオお兄ちゃんなんか居なくても、私には他の男もメインヒーロー達もいるからいいんだけどね


そう思ってたのに…


あのマナとか言う黒髪のブスと出会ったあたりから、何だか上手くいかなくなってきた

せっかく舞踏会のドレス代を出してくれる公爵と知り合えたのに…

人気の店に行ったら変なオカマ野郎がオーナーで予約制だとか言って、ブスには作るくせに私には作れないって、私を誰だと思ってんの…
ラブマジのヒロインよ!?
  
何故か一緒にいたサミュエルもあんな女を庇って、私に対して威圧的な態度をとってくるし…

その日は仕方なく別の仕立て屋に行ったけど、思い通りにならなくて苛々してしょうがなかった


そして舞踏会の日

お母さんに頼まれたみたいで、あの日以来会ってなかったリオお兄ちゃんが馬車で迎えに来てくれた

あの日の事はもう吹っ切れたのか、リオお兄ちゃんは意外にも普通に話かけてきた


「そのドレスはどうしたんだ?」

「似合うでしょ?
たまたま知り合った公爵がオーダーで作ってくれたの」

「母さんがこの日の為にと毎日合間に縫っていたドレスがあっただろう」

「嫌よ、あんなセンス悪くて古くさいドレス絶対着たくない」


母さんに謝れと言われたけど、本当の事を言っただけだ
それに舞踏会は私の晴れ舞台だし、絶対に着飾って行きたかった

馬車の中は雰囲気が悪いまま、いつの間にかお城についてしまった

本当なら私は馬車のアクシデントに見舞われて、舞踏会に遅れて行くはずなのに…


どう言う事なのか全く何も起きなかった


仕方なくどこかで時間でも潰そうと思っていると、リオお兄ちゃんに呼び止められた


「何してるんだ?
さっさと中に入るぞ」

「私はヒロインなんだから、遅れて行かなくちゃいけないの!」

「ひろいん…?」

「主役は遅れて登場するものでしょ」

「何を言ってるんだ…?」


リオお兄ちゃんは思いっきり顰めっ面をしながら、私を無理矢理中に入れようとしてきた

その内に口論になっていたのに、突然リオお兄ちゃんの口が止まり、顔がポッと赤くなった

そしてマナとか言うあのムカつくブスの名前を呼んだから振り返ると、店であった人物とは思えないほどに大変身をとげた黒髪の女が立っていた




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