転生したらモブ侍女のはずが…どうしてこうなった！？

イシャールsaid

俺の普段の仕事は殿下の影の側近だ

元々は隣国のファムールという戦争が絶えないスラム街出身の孤児だった
生きる為に盗みや、時には命を守る為に殺しもなんでもやった

その内に人手が足りないとお城の兵隊として雇われる事になった
そこではランク制度になっていて、強ければ強いほど上に上がれるし貰える給金も増えていく
俺には人よりずば抜けた運動神経と戦闘センスがあるらしく、1年かかる所を1週間ほどで最高ランクに到達していた
そしてその時から戦闘狂だとか鬼神だとか変なあだ名で呼ばれるようになっていた

殿下と出会ったのはその時ぐらいだ
たまたま外交でファムールに来ていたらしい、俺の戦闘訓練の様子を見て是非引き抜きたいと言ってきた
給料も破格だったし、別にこの国に未練もないので迷わずその話に乗った

殿下は接してみると歳も近いせいか意外と絡みやすかった
俺の生きる為になってしまった相手の懐に踏み込みやすいチャラチャラした性格も個性だと受け入れてくれたし、影としての仕事も割と気に入っていた


そんな殿下がある日、女について調べろと言ってきた

いつも令嬢達の前で王太子の仮面を張り付けて、作り笑顔を浮かべている
見目もいいその王太子の外面にみんな騙されて、なんとかこの人を自分だけの物にできないだろうか、妃の座も手に入ると裏では醜い争いをしている
まぁそれは影である俺によって殿下には全て筒抜けなのだが…

そんな令嬢達に嫌気がさして、どんな美人が寄ってきてもしばらく女はいいと愚痴を溢していた殿下が、まさか女について調べてほしいなんて…

それもあの殿下大好きで頭のおかしな勘違い女がいるクロムハート家の侍女だという
殿下が気に入るなんてどんだけいい女なんだよと思い、俄然興味が湧いた



潜入調査の日、俺は偽名を使ってシャルと名乗る事にした


「あぁ、初めましてですね
お話は私の代理から面接したと伺っております、今日から働くシャル様ですか？」


わお、今このおじさん背後に立ってたのに気配を全く感じさせなかった…


「あ、そうで～す！シャルって言います、よろしく♪」

「私はセバスチャンと申します、よろしくお願いします」


ふ～ん、このおじさん柔かな顔してるけど全く隙がない
俺の勘だけどこのおじさん絶対強いね、いつか手合わせ願いたいぐらい


「シャル様、今からこの家の主であるアルディス様とヴィヴィアンヌお嬢様に挨拶に行きますが、少しだけ言葉遣いを丁寧にして下さいね」

「は～い」


やべ、使用人なんだからそりゃそうだ

ちょっと気を引き締めてセバスチャンさんの後に続いた