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第四夜
義弟は今を想う
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「それじゃあいってくる」
「……いってらっしゃい」
ケン君が玄関の扉を開けて出ていく。手を振って見送ることも、袖を掴んで引き留めることもできないから。ただ徐々に閉まる扉の隙間を見つめ続けた。
バタンと扉が閉まって、続けざまにカチャリと鍵がかけられる。これでしばらくはケン君とは離れ離れだ。
ペタペタと廊下に響く足の音。こんな音、今まで意識することもなかったのに。四人で住むために引っ越した家は二人でも広すぎるのに、一人だと寂しくて不安になってしまう。
このままケン君が戻ってこないかもだなんて、そんな想像までしてしまうほどに。
「……」
リビングに用意された教科書、筆記用具、タオル。ケン君がいない間に勉強を終わらせて、帰ってきたら内容を見てもらって、それが終わったらふたりで……。
「はぁ……」
教科書を広げても内容が頭に入ってこない。文字を読もうとしても目が滑ってしまって、いつまで経ってもページが進まない。
ケン君が帰ってきた時に勉強を終わらせておくのが一番いい。そしたら、ふたりの時間もたくさん作れる。それはわかっているのに、一向にやる気が出てくれない。
「……ばか」
なんとなく、悪態をついてみた。別にケン君が悪くないのはわかっている。それでも、口に出してみると少しだけ心が軽くなった気がした。
「昨日の今日でひとりにするなんて……」
昨日、それはケン君を初めて気持ちよくしてあげられた日。
昨日、それはケン君が初めて口で気持ちよくしてくれた日。
昨日、それは初めていっしょのベッドで寝た日。
「……えへへっ」
昨日のことを思い返すだけで笑みが漏れてしまう。口角が勝手に持ち上がって、声が抑えられない。
ケン君はオレを拒まないで、口で最後までさせてくれた。
ケン君は少し躊躇してたけど、オレの性器を舐めて精液を口で受け止めてくれた。
ケン君はオレがベッドに潜り込んでも怒らないで、受け入れてくれた。
「ケン君……」
こんな気持ちで勉強なんてできやしない。頭はケン君が帰ってきてからのことばかりを考えてしまって、体はいつの間にかケン君の部屋に向かっていった。
「んっ……」
ばふっと、勢いよくケン君のベッドに倒れ込む。ふたりでいっしょに寝て、いっしょに起きたベッド。キラキラと光りながら舞うホコリも、今はなんだか好ましく思える。
「んーっ……」
枕に顔を押し付ける。ケン君の匂い。いつも甘えさせてくれる時とは少し違う、染みついた匂い。フェロモンとは、こういう匂いのことを言うのかもしれない。
「んっ……んぅっ……」
布団に体を擦りつける。少しでも自分の匂いを移したくて。ケン君が寝る時に、少しでも存在を感じて欲しくて。
「んっ……♡」
浮かれているからだろうか。ただベッドに体を擦っているだけで気持ちがいい。窓から差し込む陽が暖かくて、ケン君の匂いに包まれていて、柔らかな布団が体を受け止めてくれて。
「あっ……♡ はぅっ……♡」
興奮してきた男性器。それをケン君の布団に擦りつけると気持ちがいい。いけないことをしているようで、心の奥がゾクゾクする。
「……枕に匂いが着いちゃったら、ケン君どんな反応するかな♡」
さすがに怒るだろうか。それとも……。
「えへへっ……♡」
枕を股に挟みこんで、顔を布団に埋める。
ただ気持ちよく感じるままに、耽っていく。
「……いってらっしゃい」
ケン君が玄関の扉を開けて出ていく。手を振って見送ることも、袖を掴んで引き留めることもできないから。ただ徐々に閉まる扉の隙間を見つめ続けた。
バタンと扉が閉まって、続けざまにカチャリと鍵がかけられる。これでしばらくはケン君とは離れ離れだ。
ペタペタと廊下に響く足の音。こんな音、今まで意識することもなかったのに。四人で住むために引っ越した家は二人でも広すぎるのに、一人だと寂しくて不安になってしまう。
このままケン君が戻ってこないかもだなんて、そんな想像までしてしまうほどに。
「……」
リビングに用意された教科書、筆記用具、タオル。ケン君がいない間に勉強を終わらせて、帰ってきたら内容を見てもらって、それが終わったらふたりで……。
「はぁ……」
教科書を広げても内容が頭に入ってこない。文字を読もうとしても目が滑ってしまって、いつまで経ってもページが進まない。
ケン君が帰ってきた時に勉強を終わらせておくのが一番いい。そしたら、ふたりの時間もたくさん作れる。それはわかっているのに、一向にやる気が出てくれない。
「……ばか」
なんとなく、悪態をついてみた。別にケン君が悪くないのはわかっている。それでも、口に出してみると少しだけ心が軽くなった気がした。
「昨日の今日でひとりにするなんて……」
昨日、それはケン君を初めて気持ちよくしてあげられた日。
昨日、それはケン君が初めて口で気持ちよくしてくれた日。
昨日、それは初めていっしょのベッドで寝た日。
「……えへへっ」
昨日のことを思い返すだけで笑みが漏れてしまう。口角が勝手に持ち上がって、声が抑えられない。
ケン君はオレを拒まないで、口で最後までさせてくれた。
ケン君は少し躊躇してたけど、オレの性器を舐めて精液を口で受け止めてくれた。
ケン君はオレがベッドに潜り込んでも怒らないで、受け入れてくれた。
「ケン君……」
こんな気持ちで勉強なんてできやしない。頭はケン君が帰ってきてからのことばかりを考えてしまって、体はいつの間にかケン君の部屋に向かっていった。
「んっ……」
ばふっと、勢いよくケン君のベッドに倒れ込む。ふたりでいっしょに寝て、いっしょに起きたベッド。キラキラと光りながら舞うホコリも、今はなんだか好ましく思える。
「んーっ……」
枕に顔を押し付ける。ケン君の匂い。いつも甘えさせてくれる時とは少し違う、染みついた匂い。フェロモンとは、こういう匂いのことを言うのかもしれない。
「んっ……んぅっ……」
布団に体を擦りつける。少しでも自分の匂いを移したくて。ケン君が寝る時に、少しでも存在を感じて欲しくて。
「んっ……♡」
浮かれているからだろうか。ただベッドに体を擦っているだけで気持ちがいい。窓から差し込む陽が暖かくて、ケン君の匂いに包まれていて、柔らかな布団が体を受け止めてくれて。
「あっ……♡ はぅっ……♡」
興奮してきた男性器。それをケン君の布団に擦りつけると気持ちがいい。いけないことをしているようで、心の奥がゾクゾクする。
「……枕に匂いが着いちゃったら、ケン君どんな反応するかな♡」
さすがに怒るだろうか。それとも……。
「えへへっ……♡」
枕を股に挟みこんで、顔を布団に埋める。
ただ気持ちよく感じるままに、耽っていく。
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