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第二夜

義兄は報いたい

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『……』

 カオルの無言が聞こえる。きっと、俺の言葉を待っている。

 俺の無言が自分の中に響いていく。カオルの言葉の意図がわからなかったから。

「……け、ケン君?」

 焦れたカオルが俺の名前を呼んだ。何か言わなくてはならない。でも、何を言えばいいのかがわからない。カオルが何を望んでいるのかがわからない。

「あぁっ、ええと……手伝うって、何をだ?」

 我ながら阿呆な返答だ。カオルを慮って曖昧にしたはずなのに、わざわざカオルの口から言い直させるなんて。

「その……ケン君が気持ちよくなるお手伝い……。ケン君もしてるんでしょ? だったら、オレもケン君がしてくれたみたいに手伝いたい……」

 カオルが恥ずかしそうに、そして申し訳なさそうに俺の目を見た。

 カオルの瞳は少し潤んで、少し揺れていた。カオルの気持ちが、ようやくわかった気がした。

「……大丈夫だよ。お前はそんなん気にしなくても」

 カオルは被介護者だ。生活の大部分を介護者である俺に頼っていて、その借りはカオルが生きているだけで膨れ上がっていく。だから、きっと俺の役に立ちたいのだろう。他者から与えられる性的快感の気持ちよさを知って、これなら報いることができると思ったのだろう。

「で、でも……!」
「いいんだよ。俺は、お前にそんなこと気にしてほしくないんだ」

 そもそも、借りがあるのは俺の方だから。

 母親は幼い頃に亡くなって、父親は男手一つで俺を育て上げた。成長するまでの世話、人並みの反抗期、学費、生活費、その他色々。たくさんの借りを作って、それを返せるような年齢まで育ったところで、父親はこの世を去った。

 カオルは父親が再婚を決意した女性の一人息子だ。俺が世話になった父親を受け入れてくれて、俺を兄だと慕ってくれる家族だ。だから、報いなければならないのは俺の方なんだ。

「それより、そろそろ動けるようになってきたか? いつまでも下半身丸出しだと風邪引くからな。汗もかいてるみたいだし、蒸しタオル作ってきて体を拭いてやるよ」
「…………」
「カオル?」
「……っ、んー!」

 そっぽを向いていたと思ったら、今度は身体をぐりんと回して俺の体に顔を埋めてきた。照れ隠しだろうか。いつもと同じ甘える仕草だが、高さの都合上、カオルの顔は俺の股間に埋まってしまっている。甘えてくれるのは嬉しいが、絵面がすこぶる悪い。

「じゃれるなじゃれるな。そういうのは後片付けが終わってからにしような」
「んーっ……あむっ!」
「っ⁉ おい、カオル⁉」

 カオルは大きく口を開けると、俺の股間に食らいついてきた。
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