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コスプレえっち
チョロチョロ
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「ひーくん、次のイベントのコスプレこれでいい?」
「ん~?」
ゲーム画面から目を離さないまま、ひーくんは気のない返事をする。
タイミングが悪かっただろうか。
こういう時のひーくんの答えは、聞く前から分かりきっている。
「僕はなんでもいいよ~、ぬいくんが好きなやつならなんでも~」
「もー、そんなこと言わないでひーくんもちゃんと選んで」
ひーくんにそんな気はないのだろうけれど、なんでもいいと言われてしまうと軽視されているように感じてしまう。
ボクの好みを尊重してくれるのは嬉しいけれど、本当はどの衣装がいいとか、もっとお喋りがしたいというのはわがままだろうか。
「でも、僕は本当になんでもいいんだけど……」
「……それじゃあ何? ひーくんはイベントなんてどうでもいいの?」
「そんなこともないけど……ぁっ」
「なっ、何? 本当は着たいやつあるの?」
「んーん。僕はぬいくんが選んでくれたやつがいいっていうのは本当。ただ……ちょっと待ってね?」
「?」
ひーくんは手早くコントローラーを操作すると、ゲームを終了させた。
「もういいよ、ぬいくん。ほら♪」
「……いいって、何が?」
ひーくんの意図はわかりきっていた。
ボクに向かって両手を広げていたから。
それでも、問わずにはいられなかった。
「ハグしよう、ハグ。くっつきながら、次のイベントで着る衣装についてお話しよう?」
「……もしかしてなんだけど、ボクのご機嫌取ろうとしてる? ボクが不機嫌だから、そういうこと言ってるんでしょ」
意地悪な言い方をしている自覚はあった。
でも止められなかった。
ハグしておけば、ボクの機嫌なんてどうとでもなると思われているみたいで。
「違うよ。ぬいくんのおかげで気づいたんだ。僕、ぬいくんとイチャイチャしたいなーって。作業ゲーってついやっちゃう面白さはあるけど、夢中になりすぎちゃうのも考えものだよね」
「ふーん……」
「信じてない?」
「言わなくてもわかるでしょ」
「それじゃあ、ハグもしない?」
「……する」
実際ハグ一つでどうとでもなってしまうのが、余計に腹立たしいのだけれども。
でもそんなイラつきも、ハグしてもらえると思うだけでどうでもよくなってしまう。
「おいで」
「ん……」
ひーくんと向き合う形で、ボクはその大きな胸に顔を埋めるようにして抱いてもらう。
「次のイベントって東京?」
「うん」
「それじゃあお泊まりだね。会社は大丈夫?」
「イベントは土曜だから。日曜もちょっとだけなら遊べる」
「そっか、楽しみだね」
「うん……楽しみ」
ひーくんの大きな手がボクの後頭部を撫でる。
とん、とん、と赤ん坊をあやすように背中を叩く。
こんなことで本当に機嫌が良くなってしまうのだから、我ながらチョロいとは思うのだけれども――
――チョロいからこそ、ひーくんも機嫌を取るために甘えさせてくれるわけで――
――そう思うと、自分のチョロいところも嫌いにはなれなかった。
「ん~?」
ゲーム画面から目を離さないまま、ひーくんは気のない返事をする。
タイミングが悪かっただろうか。
こういう時のひーくんの答えは、聞く前から分かりきっている。
「僕はなんでもいいよ~、ぬいくんが好きなやつならなんでも~」
「もー、そんなこと言わないでひーくんもちゃんと選んで」
ひーくんにそんな気はないのだろうけれど、なんでもいいと言われてしまうと軽視されているように感じてしまう。
ボクの好みを尊重してくれるのは嬉しいけれど、本当はどの衣装がいいとか、もっとお喋りがしたいというのはわがままだろうか。
「でも、僕は本当になんでもいいんだけど……」
「……それじゃあ何? ひーくんはイベントなんてどうでもいいの?」
「そんなこともないけど……ぁっ」
「なっ、何? 本当は着たいやつあるの?」
「んーん。僕はぬいくんが選んでくれたやつがいいっていうのは本当。ただ……ちょっと待ってね?」
「?」
ひーくんは手早くコントローラーを操作すると、ゲームを終了させた。
「もういいよ、ぬいくん。ほら♪」
「……いいって、何が?」
ひーくんの意図はわかりきっていた。
ボクに向かって両手を広げていたから。
それでも、問わずにはいられなかった。
「ハグしよう、ハグ。くっつきながら、次のイベントで着る衣装についてお話しよう?」
「……もしかしてなんだけど、ボクのご機嫌取ろうとしてる? ボクが不機嫌だから、そういうこと言ってるんでしょ」
意地悪な言い方をしている自覚はあった。
でも止められなかった。
ハグしておけば、ボクの機嫌なんてどうとでもなると思われているみたいで。
「違うよ。ぬいくんのおかげで気づいたんだ。僕、ぬいくんとイチャイチャしたいなーって。作業ゲーってついやっちゃう面白さはあるけど、夢中になりすぎちゃうのも考えものだよね」
「ふーん……」
「信じてない?」
「言わなくてもわかるでしょ」
「それじゃあ、ハグもしない?」
「……する」
実際ハグ一つでどうとでもなってしまうのが、余計に腹立たしいのだけれども。
でもそんなイラつきも、ハグしてもらえると思うだけでどうでもよくなってしまう。
「おいで」
「ん……」
ひーくんと向き合う形で、ボクはその大きな胸に顔を埋めるようにして抱いてもらう。
「次のイベントって東京?」
「うん」
「それじゃあお泊まりだね。会社は大丈夫?」
「イベントは土曜だから。日曜もちょっとだけなら遊べる」
「そっか、楽しみだね」
「うん……楽しみ」
ひーくんの大きな手がボクの後頭部を撫でる。
とん、とん、と赤ん坊をあやすように背中を叩く。
こんなことで本当に機嫌が良くなってしまうのだから、我ながらチョロいとは思うのだけれども――
――チョロいからこそ、ひーくんも機嫌を取るために甘えさせてくれるわけで――
――そう思うと、自分のチョロいところも嫌いにはなれなかった。
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