21 / 32
コスプレえっち
チョロチョロ
しおりを挟む
「ひーくん、次のイベントのコスプレこれでいい?」
「ん~?」
ゲーム画面から目を離さないまま、ひーくんは気のない返事をする。
タイミングが悪かっただろうか。
こういう時のひーくんの答えは、聞く前から分かりきっている。
「僕はなんでもいいよ~、ぬいくんが好きなやつならなんでも~」
「もー、そんなこと言わないでひーくんもちゃんと選んで」
ひーくんにそんな気はないのだろうけれど、なんでもいいと言われてしまうと軽視されているように感じてしまう。
ボクの好みを尊重してくれるのは嬉しいけれど、本当はどの衣装がいいとか、もっとお喋りがしたいというのはわがままだろうか。
「でも、僕は本当になんでもいいんだけど……」
「……それじゃあ何? ひーくんはイベントなんてどうでもいいの?」
「そんなこともないけど……ぁっ」
「なっ、何? 本当は着たいやつあるの?」
「んーん。僕はぬいくんが選んでくれたやつがいいっていうのは本当。ただ……ちょっと待ってね?」
「?」
ひーくんは手早くコントローラーを操作すると、ゲームを終了させた。
「もういいよ、ぬいくん。ほら♪」
「……いいって、何が?」
ひーくんの意図はわかりきっていた。
ボクに向かって両手を広げていたから。
それでも、問わずにはいられなかった。
「ハグしよう、ハグ。くっつきながら、次のイベントで着る衣装についてお話しよう?」
「……もしかしてなんだけど、ボクのご機嫌取ろうとしてる? ボクが不機嫌だから、そういうこと言ってるんでしょ」
意地悪な言い方をしている自覚はあった。
でも止められなかった。
ハグしておけば、ボクの機嫌なんてどうとでもなると思われているみたいで。
「違うよ。ぬいくんのおかげで気づいたんだ。僕、ぬいくんとイチャイチャしたいなーって。作業ゲーってついやっちゃう面白さはあるけど、夢中になりすぎちゃうのも考えものだよね」
「ふーん……」
「信じてない?」
「言わなくてもわかるでしょ」
「それじゃあ、ハグもしない?」
「……する」
実際ハグ一つでどうとでもなってしまうのが、余計に腹立たしいのだけれども。
でもそんなイラつきも、ハグしてもらえると思うだけでどうでもよくなってしまう。
「おいで」
「ん……」
ひーくんと向き合う形で、ボクはその大きな胸に顔を埋めるようにして抱いてもらう。
「次のイベントって東京?」
「うん」
「それじゃあお泊まりだね。会社は大丈夫?」
「イベントは土曜だから。日曜もちょっとだけなら遊べる」
「そっか、楽しみだね」
「うん……楽しみ」
ひーくんの大きな手がボクの後頭部を撫でる。
とん、とん、と赤ん坊をあやすように背中を叩く。
こんなことで本当に機嫌が良くなってしまうのだから、我ながらチョロいとは思うのだけれども――
――チョロいからこそ、ひーくんも機嫌を取るために甘えさせてくれるわけで――
――そう思うと、自分のチョロいところも嫌いにはなれなかった。
「ん~?」
ゲーム画面から目を離さないまま、ひーくんは気のない返事をする。
タイミングが悪かっただろうか。
こういう時のひーくんの答えは、聞く前から分かりきっている。
「僕はなんでもいいよ~、ぬいくんが好きなやつならなんでも~」
「もー、そんなこと言わないでひーくんもちゃんと選んで」
ひーくんにそんな気はないのだろうけれど、なんでもいいと言われてしまうと軽視されているように感じてしまう。
ボクの好みを尊重してくれるのは嬉しいけれど、本当はどの衣装がいいとか、もっとお喋りがしたいというのはわがままだろうか。
「でも、僕は本当になんでもいいんだけど……」
「……それじゃあ何? ひーくんはイベントなんてどうでもいいの?」
「そんなこともないけど……ぁっ」
「なっ、何? 本当は着たいやつあるの?」
「んーん。僕はぬいくんが選んでくれたやつがいいっていうのは本当。ただ……ちょっと待ってね?」
「?」
ひーくんは手早くコントローラーを操作すると、ゲームを終了させた。
「もういいよ、ぬいくん。ほら♪」
「……いいって、何が?」
ひーくんの意図はわかりきっていた。
ボクに向かって両手を広げていたから。
それでも、問わずにはいられなかった。
「ハグしよう、ハグ。くっつきながら、次のイベントで着る衣装についてお話しよう?」
「……もしかしてなんだけど、ボクのご機嫌取ろうとしてる? ボクが不機嫌だから、そういうこと言ってるんでしょ」
意地悪な言い方をしている自覚はあった。
でも止められなかった。
ハグしておけば、ボクの機嫌なんてどうとでもなると思われているみたいで。
「違うよ。ぬいくんのおかげで気づいたんだ。僕、ぬいくんとイチャイチャしたいなーって。作業ゲーってついやっちゃう面白さはあるけど、夢中になりすぎちゃうのも考えものだよね」
「ふーん……」
「信じてない?」
「言わなくてもわかるでしょ」
「それじゃあ、ハグもしない?」
「……する」
実際ハグ一つでどうとでもなってしまうのが、余計に腹立たしいのだけれども。
でもそんなイラつきも、ハグしてもらえると思うだけでどうでもよくなってしまう。
「おいで」
「ん……」
ひーくんと向き合う形で、ボクはその大きな胸に顔を埋めるようにして抱いてもらう。
「次のイベントって東京?」
「うん」
「それじゃあお泊まりだね。会社は大丈夫?」
「イベントは土曜だから。日曜もちょっとだけなら遊べる」
「そっか、楽しみだね」
「うん……楽しみ」
ひーくんの大きな手がボクの後頭部を撫でる。
とん、とん、と赤ん坊をあやすように背中を叩く。
こんなことで本当に機嫌が良くなってしまうのだから、我ながらチョロいとは思うのだけれども――
――チョロいからこそ、ひーくんも機嫌を取るために甘えさせてくれるわけで――
――そう思うと、自分のチョロいところも嫌いにはなれなかった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
平凡な研究員の俺がイケメン所長に監禁されるまで
山田ハメ太郎
BL
仕事が遅くていつも所長に怒られてばかりの俺。
そんな俺が所長に監禁されるまでの話。
※研究職については無知です。寛容な心でお読みください。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
SMの世界
静華
BL
翔のバイト先はフェティッシュバー。そこで出会う人はいろいろと濃すぎる人ばかり。そして、ドSな有聖に気に入られたのが運の尽き。SMってなんだよ!
以前、他のサイトで掲載していた作品を加筆修正しながらアップしています。
王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。
なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。
二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。
失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。
――そう、引き篭もるようにして……。
表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。
じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。
ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。
ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる