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一日目:いつものふたりで、いつもどおりに
ずっと聞かなかったこと
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「ショウは、その……処女よりも非処女の方が好きってことか?」
「好き嫌いって話でもないんだけどな。身持ちが固いのは好感持てるし。でも俺は男慣れしてないっぽい子は絶対ナンパしないし、処女だってわかったらホテルまで行っててもセックスは絶対しない」
「ふ、ふーん……」
男の頃の抄はイケメンで、美男子で、モテ男だった。
顔が良いだけでなく女性の扱いも心得ており、趣味が異性交遊と言っても良いような人間だった。
それでも、抄に彼女がいたことは一度もない。
どれだけ魅力的な女の子がいても告白は絶対しない。
仮に告白されても絶対に交際はしない。
以前その理由を訊いたら、彼女を作るよりもたくさんの女性と一夜を共にする方が魅力的だからと言っていたのをよく憶えている。
それはボクの理解できる範疇の外にある考え方で、その詳細を聞こうと思ったこともなかった。
抄もボクの雰囲気を感じ取っていたのか、自分から話すこともなく、たまに嘘か本当か分からないモテ知識でからかってくるだけだった。
でも、死ね神から死の宣告を受けたせいだろうか。
今までは興味がなかったはずなのに、今は抄のその思考が知りたくて仕方がなかった。
その内面を知れると思っただけで、気持ちが高揚してしまうほどに。
「どした、タク? 顔赤いぜ?」
「うっ……そ、そうか?」
「まさか……童貞を拗らせすぎて、セックスとか処女とかそういう単語を聞いただけで性的興奮を覚えるようになっちまったか?」
「そんなわけあるか!」
「んー? ほんとかー……?」
正直なことを言うと、見た目が美少女なせいで抄の推理もあながち間違ってはいない。
美少女が目の前で性的な単語を口にするなんて、ボクのこれまでの人生ではありえなかったのだから。
そして、興奮を肯定する勇気はボクにはない。
「そ、それよりもさ、いい機会だからもっとショウのナンパの話が聞きたいんだけど」
「へえ、珍しいな。構わないぜ、聞きたいことなんでも言ってみな」
「それじゃあさっきの続きだけど、ショウにとっては処女よりも非処女の方が魅力的ってことか? なんか普通は逆なような気がするけど」
「非処女の方が魅力的っていうよりは、処女が苦手なんだよな」
「どうしてだ?」
「ちょっと、トラウマが……」
処女相手にトラウマ。
いったいどんなものなのだろうか。
処女どころかセックスもしたことのないボクにはてんで予想がつかない。
詳しく聞きたいが、他人のトラウマに踏み入ってよいものだろうか。
抄はなんでも聞いてくれとは言っていたが……。
「……」
「タク、もしかして気遣ってるのか?」
「うっ……わかるのか?」
「そりゃわかるさ。瞳はどんなトラウマなのか知りたくて仕方ないってキラキラなのに、口はだんまりだからな」
「そんなわかりやすく目を輝かせてたのか、ボク……」
「遠慮するなって。タクが知りたいなら教えてやるからさ。俺が処女に対してどんなトラウマを抱えてるのか知りたいんだろ?」
その通りだ。
女性に対してはいつだって前向きな抄が処女だけは忌避する理由。
その経緯が気になって仕方がない。
「教えてくれ、ショウ。お前の過去に、一体何があったんだ?」
抄は冷めたフライドポテトを指先でつまみ上げ、それを口に入れながら静かに語りだした。
「好き嫌いって話でもないんだけどな。身持ちが固いのは好感持てるし。でも俺は男慣れしてないっぽい子は絶対ナンパしないし、処女だってわかったらホテルまで行っててもセックスは絶対しない」
「ふ、ふーん……」
男の頃の抄はイケメンで、美男子で、モテ男だった。
顔が良いだけでなく女性の扱いも心得ており、趣味が異性交遊と言っても良いような人間だった。
それでも、抄に彼女がいたことは一度もない。
どれだけ魅力的な女の子がいても告白は絶対しない。
仮に告白されても絶対に交際はしない。
以前その理由を訊いたら、彼女を作るよりもたくさんの女性と一夜を共にする方が魅力的だからと言っていたのをよく憶えている。
それはボクの理解できる範疇の外にある考え方で、その詳細を聞こうと思ったこともなかった。
抄もボクの雰囲気を感じ取っていたのか、自分から話すこともなく、たまに嘘か本当か分からないモテ知識でからかってくるだけだった。
でも、死ね神から死の宣告を受けたせいだろうか。
今までは興味がなかったはずなのに、今は抄のその思考が知りたくて仕方がなかった。
その内面を知れると思っただけで、気持ちが高揚してしまうほどに。
「どした、タク? 顔赤いぜ?」
「うっ……そ、そうか?」
「まさか……童貞を拗らせすぎて、セックスとか処女とかそういう単語を聞いただけで性的興奮を覚えるようになっちまったか?」
「そんなわけあるか!」
「んー? ほんとかー……?」
正直なことを言うと、見た目が美少女なせいで抄の推理もあながち間違ってはいない。
美少女が目の前で性的な単語を口にするなんて、ボクのこれまでの人生ではありえなかったのだから。
そして、興奮を肯定する勇気はボクにはない。
「そ、それよりもさ、いい機会だからもっとショウのナンパの話が聞きたいんだけど」
「へえ、珍しいな。構わないぜ、聞きたいことなんでも言ってみな」
「それじゃあさっきの続きだけど、ショウにとっては処女よりも非処女の方が魅力的ってことか? なんか普通は逆なような気がするけど」
「非処女の方が魅力的っていうよりは、処女が苦手なんだよな」
「どうしてだ?」
「ちょっと、トラウマが……」
処女相手にトラウマ。
いったいどんなものなのだろうか。
処女どころかセックスもしたことのないボクにはてんで予想がつかない。
詳しく聞きたいが、他人のトラウマに踏み入ってよいものだろうか。
抄はなんでも聞いてくれとは言っていたが……。
「……」
「タク、もしかして気遣ってるのか?」
「うっ……わかるのか?」
「そりゃわかるさ。瞳はどんなトラウマなのか知りたくて仕方ないってキラキラなのに、口はだんまりだからな」
「そんなわかりやすく目を輝かせてたのか、ボク……」
「遠慮するなって。タクが知りたいなら教えてやるからさ。俺が処女に対してどんなトラウマを抱えてるのか知りたいんだろ?」
その通りだ。
女性に対してはいつだって前向きな抄が処女だけは忌避する理由。
その経緯が気になって仕方がない。
「教えてくれ、ショウ。お前の過去に、一体何があったんだ?」
抄は冷めたフライドポテトを指先でつまみ上げ、それを口に入れながら静かに語りだした。
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