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親睦偏
居酒屋に来ました
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たっぷりと洋服を買って。
軽くアミューズメント施設を見物することになって。
案の定見物だけで済むはずもなくて。
はしゃぐツキに付き合っている内に、辺りはすっかり暗くなっていた。
「本当に夕食はここで良かったのか? 朝はファミレスなんて言ったけど、もっと洒落た高い店でも良かったんだぞ?」
「いえいえ、ここでも私は十分満足できますから。何より、個室ってだけでポイント高いですよ♪」
「まあ、ツキがいいならいいけど……」
ツキとやってきたのはチェーンの居酒屋だ。
鉄板焼きでも良かったのだが、ツキの強い希望があったためここになった。
「せっかくのデートですもん……アキラさんには気兼ねなくお酒を飲んでもらって、気持ちよくべろべろに酔っていただきたいんです……♡」
「俺を酔わせてどうするつもりだよ……」
「既成事実……良い言葉ですよね……♡」
「何を言ってるんだか……」
「それとも、私のこと酔わせちゃいますか……?」
もじもじと身をよじって、唇に人指し指を当てるツキ。
「ツキを酔わせて、俺はどうすればいいんだよ?」
「……既成事実♡」
「どっちも同じなのか……」
「それじゃあアキラさんと私の初デートを祝して、かんぱーい♪」
「かんぱい」
互いに持ったグラスを軽く打ち合わせて、その中身を喉へ流し込む。
翠はジョッキの生ビール。
ツキはカルーアミルクだ。
「んー♪ やっぱりこれですよねー……♪」
「本当に好きなんだな、それ」
「はい♪ 甘くて、全然アルコールの味がしなくて、それなのにコクもあって、でも飲みやすくて……大好きです♪」
幸せそうに堂々と宣言するツキ。
オカマバーエンジェルでも、ツキはカルーアミルクが好きだと言っていた。
あの時のツキは猫を被っていて、色々と嘘を吐いていたけれども。
それでも、カルーアミルクが好きだというのは本当だったようだ。
「カルーアミルク以外にはどんなのが好きなんだ?」
「お酒ですか? んー、あんまりないですかねー……カルーアミルクが断トツで好きです♡」
そう言って、ツキはまたグラスに口をつけた。
もう一杯目を飲み干さんばかりのペースだ。
「あ、でもー……」
「なんかあるのか?」
「ビールは圧倒的に嫌いですね♪」
にっこりと微笑んで、翠の持つグラスを見つめるツキ。
まるで恨みでもあるのかと、そう勘ぐってしまうような笑顔だった。
「なんか、最近の若い子って感じだな」
「だってそれ、ただ苦くて飲みにくいだけじゃないですか? 美味しいと思って飲んでます?」
「どうだろうな……。ビールは会社の付き合いで飲み慣れたようなもんだし……。強いて挙げるなら、のど越しとつまみとの相性はビールの美味しさって感じるかな」
「ふーん……」
「なんだよ」
ツキは興味あり気にこちらをじろじろと見ている。
まさかとは思うが――
「アキラさん、一口もらってもいいですか?」
「言うと思った……。でもただのビールだぞ、これ。他のビールと同じ味だ」
「いいんです。ちょっと飲みたいと思っただけなので。ほらほら、ぷり-ず♪」
「仕方ないな……」
ツキにビールを渡す。
ツキは両手でジョッキを持って、
グラスの淵に唇をつけて、
ゆっくりとジョッキを傾けて、
そして――
「……うぇっ」
大げさと思えるくらいに顔をしかめさせた。
「ほら、言ったじゃないか」
「ほんと、美味しくない……これなら、精液の方がまだましですよ……」
文句を垂れながら、口直しと言わんばかりにカルーアミルクを飲むツキ。
「…………」
人の飲んでいる物を精液と比較するのは本当に止めていただきたい。
おかげで、なんだか飲みにくくなってしまった。
軽くアミューズメント施設を見物することになって。
案の定見物だけで済むはずもなくて。
はしゃぐツキに付き合っている内に、辺りはすっかり暗くなっていた。
「本当に夕食はここで良かったのか? 朝はファミレスなんて言ったけど、もっと洒落た高い店でも良かったんだぞ?」
「いえいえ、ここでも私は十分満足できますから。何より、個室ってだけでポイント高いですよ♪」
「まあ、ツキがいいならいいけど……」
ツキとやってきたのはチェーンの居酒屋だ。
鉄板焼きでも良かったのだが、ツキの強い希望があったためここになった。
「せっかくのデートですもん……アキラさんには気兼ねなくお酒を飲んでもらって、気持ちよくべろべろに酔っていただきたいんです……♡」
「俺を酔わせてどうするつもりだよ……」
「既成事実……良い言葉ですよね……♡」
「何を言ってるんだか……」
「それとも、私のこと酔わせちゃいますか……?」
もじもじと身をよじって、唇に人指し指を当てるツキ。
「ツキを酔わせて、俺はどうすればいいんだよ?」
「……既成事実♡」
「どっちも同じなのか……」
「それじゃあアキラさんと私の初デートを祝して、かんぱーい♪」
「かんぱい」
互いに持ったグラスを軽く打ち合わせて、その中身を喉へ流し込む。
翠はジョッキの生ビール。
ツキはカルーアミルクだ。
「んー♪ やっぱりこれですよねー……♪」
「本当に好きなんだな、それ」
「はい♪ 甘くて、全然アルコールの味がしなくて、それなのにコクもあって、でも飲みやすくて……大好きです♪」
幸せそうに堂々と宣言するツキ。
オカマバーエンジェルでも、ツキはカルーアミルクが好きだと言っていた。
あの時のツキは猫を被っていて、色々と嘘を吐いていたけれども。
それでも、カルーアミルクが好きだというのは本当だったようだ。
「カルーアミルク以外にはどんなのが好きなんだ?」
「お酒ですか? んー、あんまりないですかねー……カルーアミルクが断トツで好きです♡」
そう言って、ツキはまたグラスに口をつけた。
もう一杯目を飲み干さんばかりのペースだ。
「あ、でもー……」
「なんかあるのか?」
「ビールは圧倒的に嫌いですね♪」
にっこりと微笑んで、翠の持つグラスを見つめるツキ。
まるで恨みでもあるのかと、そう勘ぐってしまうような笑顔だった。
「なんか、最近の若い子って感じだな」
「だってそれ、ただ苦くて飲みにくいだけじゃないですか? 美味しいと思って飲んでます?」
「どうだろうな……。ビールは会社の付き合いで飲み慣れたようなもんだし……。強いて挙げるなら、のど越しとつまみとの相性はビールの美味しさって感じるかな」
「ふーん……」
「なんだよ」
ツキは興味あり気にこちらをじろじろと見ている。
まさかとは思うが――
「アキラさん、一口もらってもいいですか?」
「言うと思った……。でもただのビールだぞ、これ。他のビールと同じ味だ」
「いいんです。ちょっと飲みたいと思っただけなので。ほらほら、ぷり-ず♪」
「仕方ないな……」
ツキにビールを渡す。
ツキは両手でジョッキを持って、
グラスの淵に唇をつけて、
ゆっくりとジョッキを傾けて、
そして――
「……うぇっ」
大げさと思えるくらいに顔をしかめさせた。
「ほら、言ったじゃないか」
「ほんと、美味しくない……これなら、精液の方がまだましですよ……」
文句を垂れながら、口直しと言わんばかりにカルーアミルクを飲むツキ。
「…………」
人の飲んでいる物を精液と比較するのは本当に止めていただきたい。
おかげで、なんだか飲みにくくなってしまった。
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